臨床外科 69巻6号 (2014年6月)

特集 癌の補助療法アップデート

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 癌の周術期化学療法は進化を続けており,次々に新しいエビデンスが出る状況にある.根拠のはっきりしないまま行われていた時代もあるが,しだいに術後補助化学療法としてのエビデンスが出揃ってきた.そして化学療法の進歩とともに適応を選んで術前にも行われるようになり,食道癌では術前補助化学療法が標準治療となり,臓器によっては放射線療法も併用されている.

 本特集では,こうした現状をしっかり把握したうえで,今後の方向性についての情報を共有したい.

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【ポイント】

◆切除可能進行食道癌は集学的治療の時代を迎え,外科治療成績の向上のために術前補助療法が模索されている.

◆現行よりもさらに強力なレジメンによる術前補助化学療法,あるいは局所制御をより重視した術前補助化学放射線療法による治療成績の向上が期待されている.

◆食道温存治療としての根治的化学放射線療法はさらなる治療成績向上のために,晩期有害事象の軽減とsalvage手術を根治的かつ安全に施行することが求められている.

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【ポイント】

◆術前補助化学放射線治療の治療成績の向上は,わが国の外科治療の良好な手術成績と合わせ予後の延長に期待できる治療である.

◆術前補助放射線治療は遠隔成績の延長には寄与せず,手術が困難な症例に対して,術前照射を個別に行っている現状がある.

◆術後補助放射線治療も遠隔成績の延長には寄与せず,遺残症例に対してのみ行われる場合がある.

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【ポイント】

◆近年増加傾向にある食道胃接合部癌に限定した臨床試験はなく,食道癌・胃癌の臨床を外挿しているに過ぎない.

◆海外では術後局所再発率が高く,術前放射線化学療法により改善が得られているが,わが国では局所再発は少ない.

◆リンパ節転移が強い予後規定因子であるのは世界共通であり,術前補助化学療法の対象として最も適している.

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【ポイント】

◆胃癌の術前補助化学療法は,良好なコンプライアンス,切除可能性の向上,微小転移に対する早期の治療開始などのメリットがある.

◆現時点で術前補助化学療法の有効性が示されているのは,高度リンパ節転移陽性症例に対するS-1/CDDP併用療法のみである.

◆今後,術前診断の正診率に関する観察研究の結果により,StageⅢ症例に対する術前補助化学療法の臨床試験が行われる見込みである.

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【ポイント】

◆わが国では治癒切除後のStage Ⅱ/Ⅲ胃癌に対する補助化学療法はS-1単剤療法が標準である.

◆S-1単剤による術後補助化学療法のStage Ⅲに対する効果は満足できるものでない.

◆Stage Ⅲへのより強力な補助化学療法として,S-1+αレジメンの検証が今後の課題である.

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【ポイント】

◆大腸癌Stage Ⅲの術後補助化学療法では,FOLFOXおよびXELOX,フルオロウラシル/ロイコボリン(LV),カペシタビン,テガフール・ウラシル/LVが第一選択のレジメンとして考慮される.

◆大腸癌の術後補助化学療法では,分子標的治療薬の上乗せの有効性は証明されていない.

◆検査でわからない「微小転移」の可能性を説明し,術後補助化学療法の必要性を患者に理解してもらうことが重要である.

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【ポイント】

◆欧米での進行直腸癌の標準療法は術前化学放射線療法,mesorectal exacision,術後補助化学療法の集学的治療である.

◆わが国でも術前化学放射線療法が普及し,それにより今まで標準治療であった予防的側方郭清が省略できる可能性がある.

◆腹腔鏡下手術の普及などにより,わが国の直腸癌の治療戦略は変革の時期にある.

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【ポイント】

◆大腸癌患者の約20%に認められる肝転移に対する標準治療は肝切除であるが,肝切除後の5年生存率は40~50%程度に留まっており,肝切除後の残肝再発と肺再発の制御が必要である.

◆EORTC40983試験(FOLFOX→肝切除→FOLFOX vs.肝切除→FOLFOX)の結果公表(Lancet 2008)以降は,肝転移を見つけると,その有効性とは別にまず化学療法を行う,あるいは化学療法を行ってから肝切除を考えるという傾向が拡大した.

◆術前化学療法には,①一定の頻度でprogression of diseaseを認める,②毒性のため肝切除後の合併症が増加,③画像上complete remissionになったときは肝転移巣切除が困難,④高いコスト,という大きな問題点がある.

◆大腸癌肝転移切除例に対する補助療法の至適投与法は確立しておらず,肝切除周術期の補助化学療法を正当化するエビデンスは依然としてないのが現状である.

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【ポイント】

◆膵癌では早期より微小転移が発生している可能性があり,集学的治療法が治療成績の向上に重要と考えられる.

◆術前化学療法により早期から補助療法を導入することで,治療成績の向上に役立つと考えられるが,今後の臨床試験の結果を待つ必要がある.

◆切除困難と考えられた局所進行膵癌に,化学(放射線)療法により腫瘍縮小をはかり外科切除を行うdown staging療法が有用である.

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【ポイント】

◆膵癌は手術単独での根治の可能性には限界があり,治療成績向上をめざした術後補助療法の臨床試験が積極的に行われてきた.

◆膵癌の術後補助化学療法としてゲムシタビン塩酸塩とS-1を比較した第Ⅲ相比較試験(JASPAC-01)の結果がわが国から報告された.

◆2013年現在では,膵癌の術後補助化学療法としてS-1単独療法が推奨される.

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【ポイント】

◆現在,切除不能胆道癌の標準治療はゲムシタビン+シスプラチン(GC)療法である.

◆術前・術後補助化学療法が有用であるというエビデンスはないが,術後補助化学療法の第Ⅲ相無作為比較試験が現在進んでいる.

◆今後の展開として,多剤併用療法の確立や分子標的薬の導入が期待されている.

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はじめに

 これまで閉塞性黄疸の解除法としての胆道ドレナージには外科的ドレナージ,経皮経肝ドレナージ,そして内視鏡的経乳頭的ドレナージが行われてきた.近年,第4の胆道ドレナージ法として超音波内視鏡(EUS)を用いた,経消化管的なEUSガイド下胆道ドレナージ(EUS-BD)が行われている1,2).EUS-BDはほかのドレナージが不適応あるいは不能な症例がおもな対象となるものの,最近ではEUS-BD専用デバイスも開発されており,症例によっては今後第一選択となる可能性を秘めている.そのような観点から2013年に発刊された「急性胆管炎・胆囊炎の診療ガイドライン」3)やTokyo Guideline 2013(TG13)の中で,EUS-BDは推奨度の記載はないものの,EUS-BDは特殊な胆管ドレナージとしてガイドラインにも追記されている3,4).そこで本稿では,閉塞性黄疸解除を目的とした新しいEUS-BDについて概説する.

病院めぐり

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 本土最南端の鹿児島県では,最近桜島の活動が活発で,年間約900回程度の爆発的噴火が観測されています.風向きで噴煙の方向が異なり,桜島上空の風向きが天気予報で放送されています.

 慈愛会の理念は「医療の原点は慈愛にあり」で,1934年に故今村源次郎先生が産婦人科今村医院を開業され,1950年財団法人となり今年は創立80周年です.

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■■はじめに

 胃上部早期癌に対する噴門側胃切除・食道胃吻合法は,術後逆流性食道炎が起きるとQOLが低下するとして適応に慎重な施設も多い.しかし,腹部食道が全長温存可能で,残胃を約2/3以上温存できる症例を選択し,逆流防止機構を備えた吻合を行えば術後のQOLは良好で患者満足度も高く,優れた術式である.本稿で紹介する方法は,以前開腹手術で行っていた手縫い縫合による食道残胃前壁吻合と同様の形態を腹腔鏡下に再現できるように考案したものである1).再建を安全・確実に行うためのポイントとして,①噴門周囲の良視野を確保するための肝臓鉤の使用,②適切な断端距離を確保するための術中内視鏡施行,③連続縫合手技の習得,が挙げられる.

臨床の疑問に答える「ドクターAのミニレクチャー」・25

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素朴な疑問

 開腹手術では腹腔内にドレーンを置くことが多い.ドレーンの目的は術後合併症の発見や予防であるが,最近は感染に留意して閉鎖式吸引ドレーンが主流であり,多くのドレーンはあたかも無用であったかのように抜去される.消化器の手術では必ずドレーンを置かないといけないのだろうか.ドレーンを置かないと術後合併症が増えるのだろうか.

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要旨

症例は65歳,女性.直腸肛門部原発悪性粘膜下腫瘍の診断で,腹会陰式直腸切断術を施行した.免疫組織学的所見でc-kit陽性でありGISTと診断された.術後約2年4か月後のCT検査において,右肺底部,肛門右側および腟右側にそれぞれ1 cm,2 cm,1.2 cm大の結節を認め,いずれも転移が疑われたため,メシル酸イマチニブ400 mg/日の投与を開始した.その結果,投与2か月後のCT検査では,右肺底部の結節は5 mm大に縮小し,肛門右側および腟右側の結節状陰影も腫瘤としての同定が困難であるまでに縮小した.メシル酸イマチニブ投与後約9年が経過しているが,新たな再発は認めず,経過良好である.長期にわたりメシル酸イマチニブの再発GISTに対する有効性が認められている貴重な症例である.

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要旨

症例は19歳,女性.右乳房のしこりを訴え受診した.右C領域に径2.0 cmの腫瘤を触知した.マンモグラフィーでは不整形な腫瘤陰影を呈し,超音波では径2.3 cmの境界粗糙な楕円形腫瘤像であった.針生検では線維腺腫とされたが,経過観察中に急速に増大したため若年性線維腺腫と診断し,初診から14か月後に摘出した.病理組織診断は乳腺症型線維腺腫で,径は5.6 cmであった.若年性線維腺腫は通常,巨大化してから受診するため,増大の経過を追った報告は見あたらなかった.巨大化前にその予測はできず,線維腺腫に対しては,悪性疾患を除外したのちも,巨大化の可能性にも配慮し,特に若年者では慎重な経過観察が必要であると思われた.

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要旨

症例は57歳,女性.主訴は右乳腺腫瘤.右BE領域に小豆大の硬い腫瘤を触知した.乳房撮影ではMLOで右Lに微細分葉状の等濃度腫瘤影,超音波検査では右BE領域に13 mm大の辺縁粗雑な腫瘤を認めた.腋窩リンパ節腫大や遠隔転移を認めず,針生検で浸潤性乳管癌と診断された.右乳癌(T1cN0M0 StageⅠ)と診断し乳房切除術,センチネルリンパ節生検を施行した.切除標本の病理所見はMatrix-producing carcinomaであった.術後タモキシフェン20 mg/日を投与し,術後5年の現在,再発を認めていない.本症例のような新たな分類の稀少特殊型では治療に資する情報が少なく,大規模な症例集積が望まれる.

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要旨

患者は64歳,男性.右腰背部膨隆を自覚し受診した.腹部CTにて右上腰ヘルニアの診断となり,腹腔鏡下修復術を施行した.右中腋窩線上に入れたポートから,拡張バルーンで後腹膜腔にスペースを確保した.ついで,臍・右季肋下・右下腹部の3ポートで,経腹的に右傍結腸溝を切離し,後腹膜のスペースと連続させヘルニア門を正面視した.ヘルニア門は7.5×5.0 cmであり,PCOメッシュをアブソーバタックTMで背側筋膜に固定した.術後6日目に退院し,15か月を経て再発を認めていない.最近のメッシュには癒着防止シートがコーティングされており,腹膜閉鎖の必要もないため,腹膜外腔アプローチと経腹的アプローチの併用法は,安全で確実に行える手術法である.

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要旨

症例は70歳代,女性.左乳房の腫瘤を主訴に来院した.左乳房AC領域に15×10 mm大の腫瘤を触知し,針生検で浸潤性乳管癌と診断した.細胞異型度が比較的低く,索状配列を示す部分があり,免疫染色を行ったところ神経内分泌細胞の存在が示唆された.乳房切除と腋窩郭清を行った.病理所見は乳管内成分優位の浸潤癌で,約90%の細胞にシナプトフィジン,クロモグラニンA,NSEが陽性であった.HER2は0,エストロゲン受容体,プロゲステロン受容体とも90%以上陽性であった.乳房原発神経内分泌癌と診断した.術後アロマターゼ阻害薬を投与し,術後2年経過したが無再発生存中である.わが国でも今後は神経内分泌細胞マーカー検査により乳腺神経内分泌癌と診断した症例を集積し,その特徴を解析することが必要と思われた.

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要旨

当院ではTAPP導入の初期から腹膜縫合部への癒着防止にセプラフィルム®を用いてきた.当初は12 mm portから挿入していたが,reduced port size surgeryとして3 mm,5 mm,5 mmのportでTAPPを行う場合が多くなり,セプラフィルム®も5 mm portから挿入するようになった.5 mm portからの挿入に際しては,port内部の水分を徹底的に除去し,CSプロシージャパックの1枚を6分割して適度な湿度を与え,5 mmの腸鉗子に巻き付けて挿入するなどの工夫が必要である.この方法で行えば,5 mm portからでもほぼ全例でセプラフィルム®の挿入が可能である.TAPPでは比較的長い腹膜縫合部ができるため,セプラフィルム®による癒着防止を行うことを推奨する.

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趣 旨:近年の生命科学分野において研究者間の交流,ネットワーク,および共同研究が急速な発展に寄与しており,これらの交流は革新的な発見から臨床応用まで少なからぬ貢献ができると考え,アジア・オセアニア地域における共同研究に対する助成を行います.

助成研究テーマ:生命科学分野におけるアジア・オセアニア諸国との交流による学際的研究.特に老年医学,再生医学,感染症,疫学,医療機器,漢方,その他.

応募資格:アジア・オセアニア地域の海外在住の研究者と共に共同研究を実施する日本在住の日本人研究者(募集締切日7月31日時点の年齢45歳以下).

昨日の患者

家族の絆 中川 国利
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 30年近くも同じ病院に勤務していると,同一患者さんに2回,3回と手術をしたり,患者さんの伴侶,子供,さらには孫まで手術することがある.そのたびに医療を介して,それぞれの家庭の実情や絆を垣間見る.

 70歳代前半のTさんは10年ほど前に,胃癌で手術をした.術後に癒着性腸閉塞となり,癒着剝離術を行った.さらにはお酒好きが高じて慢性膵炎となり,しばしば入退院を繰り返した.また奥さんは乳癌,娘さんは急性胆囊炎,息子さんは急性虫垂炎で,さらにお孫さんは鼠径ヘルニアで手術を行った.そのたびにTさん一家が集まり,睦まじく家族の介護をした.

1200字通信・66

言葉と文字と人格と 板野 聡
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 今年の冬のオリンピックでは,競技場以外でもいろいろな話題がありました.その中に,2020年の東京オリンピックで重要なポストに就いている方のご発言もありました.元々そうした失言をなさることで有名な方のようではありますが,人にはそれなりの立場があり,発言には時と場所を考えることが大切であり,何より相手を思いやる気持ちが必要ということではないでしょうか.話題になった選手が,帰国直後の会見で「後悔されているのでは」と大人の対応をされ,その場を丸く収めたのは流石でしたが,その後,その言葉に「後悔はしていない」と答えたそうです.こうなると,この方が悪いのか,この方を選出した側が悪いのか,複雑な気持ちになってきます.

 今回のこの出来事をきっかけに,改めて人が発する言葉には,その人の人格や人柄がそのまま表れるものだと感じることになりました.言葉には,昔から「言霊」と言うように,それを発した人間の魂というか「想い」が宿るもののようです.相手を励まし,時には逆境を克服する無限の力を与えることもあれば,一方で,心無い一言で相手を傷つけ,時には取り返しのつかないことになる「言刃」もあるようです.人は「言葉」で思考するわけですから,発せられる言葉はその人の「思考」そのものと言っても過言ではないでしょう.そう考えて観ていると,人が発する言葉には,その話し方も含めて,その方の人柄が表れてくるのも納得できることになります.人柄とは,その人の生い立ち,受けた教育や躾によって形成されたものでしょうから当然のことではありますが,心して言葉を発しなければならないと反省することになりました.

ひとやすみ・112

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 病を患う入院患者さんは,とかく心が落ち込みがちである.そこで病室に笑いをもたらし,少しでも患者さんの気持ちが明るく前向きになることを願い,積極的に語りかけることにしている.

 術前に不眠を訴える患者さんには,「手術中は必ず眠れますから大丈夫です.しかし,手術が終了したら,惰眠をむさぼらないですぐに起きてください」.直腸癌や鼠径ヘルニアで下腹部の剃毛を行う際には,「手術室でライオンの鬣を切りますが,すぐに元のようになりますからご安心ください」.臍からの単孔で腹腔鏡下手術を行う際には,「臍を縦に切りますか,横に切りますか.美人には縦長が多いですから,縦に切りましょう」.

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 SWOG(The Southwest Oncology Group)は,1956年に創設され,400以上の医療機関,のべ4,000人以上の医師が臨床試験に参加し,2,000を超える学術発表を行ってきた米国最大のがん臨床試験グループである.本書は,SWOGの統計家が臨床医に向けて発刊した臨床試験方法論の解説書の和訳書第2版であり,訳者は,国立がん研究センター多施設臨床試験支援センター長,福田治彦氏を代表とするJCOG(Japan Clinical Oncology Group)データセンターのメンバーで構成されている.JCOGは1978年に発足し,現在16研究グループ,約200の医療機関が参加するわが国最大のがん臨床試験グループである.したがって本書は,わが国最大のがん臨床試験グループJCOGが最も信頼を寄せ,同様の「哲学」を共有すると考えている米国SWOGの臨床試験方法論を渾身の力を込めて紹介した教科書であるといえよう.

 原書では,「conservativeな」行動哲学が一貫して貫かれている.この厳格なポリシーは訳者が序文で紹介しているように,「真にはよくないものをよいと誤って判断する偽陽性の誤りを小さくすることを優先する立場」であり,分子標的薬をはじめとする高額な薬剤が相次いで開発されるがん臨床試験の現場では極めて重要な哲学といえる.本書は単なる統計学的方法論の解説書ではなく,臨床試験を立案遂行する上でのまさに行動哲学を示した骨太の教科書となっている.この第2版(原書第3版)では,分子標的薬の試験デザインの特殊性などに関する新たな記述が加わり,臨床試験方法論は,時代の趨勢,要請に応えて刻々と進化するものであることを痛感させられる.

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原稿募集 「臨床外科」交見室

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あとがき 小寺 泰弘
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 読者の皆様,今年は日本外科学会学術集会に参加されましたでしょうか? 日本外科学会は現在,NCD運営の財源確保やその膨大なデータの有効利用,そして変わりゆく専門医制度への対応という大きな課題を背負っております.新しい専門医制度の枠の中で,将来的には各診療科の適正な医師数を設定しなければならないかもしれません.医師たち自身の手で現状を正しく把握し,将来を見据えて適切な医師数を決め,特定の診療科や地域への医師の偏在をなくすようにすること,すなわちprofessional autonomyを働かせて現在の医療のもつ問題点を解決することが求められております.そして,実際に手術の件数を反映させてその施設,または施設群で受け入れ可能な修練医の数を決めるべきという見解も出ております.しかし現実には,市中病院における消化器外科医は,人数が多いこと,様々な技能をもつことが評価され(と言えば聞こえがよいですが,都合よく利用され,と言い換えることもできます),専門とすべき消化器外科の手術以外にも,その病院で必要とされる様々な業務に携わり,病院を支えています.突然新しい考え方のもとで人数制限を行ったとして,これに伴って腫瘍内科をはじめとする,本来は必要だが今までは育成されていなかった人材の供給が間に合わなくなるようでは,新たな問題が生じてしまいます.

 消化器外科の教授は補助化学療法に興味がなく患者さんの愁訴によりいとも淡泊に中止してしまうくせに,化学療法を握って手放さないのでけしからんという腫瘍内科の教授の声を聞きました.一方,たまたま補助化学療法も腫瘍内科で行うようになった関連病院の外科医師から,正直,楽ですよという声も聞きました.大好きな手術だけ行っていればよいという夢のような世界に向けて世の中が着実に動いているとすれば,それを止める理由はありません.しかし,腹膜転移を起こした悲惨な腹腔内の状況を見ることができるのは外科系の医師のみであり,そうした赤裸々な所見をfeed backしないところで癌の基礎研究など成立しないでしょう.外科系の医師は癌をもっとも深く理解し,その研究,そして治療計画立案に欠かせない歯車であるべきであり,腫瘍内科医に言われるがままに必要な技術を発揮するだけの存在になってしまうとすれば,大変残念です.そういう思いを込めた特集テーマで本号を編纂しました.癌の集学的治療の現在の到達点について,学んでいただければ幸甚です.

基本情報

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臨床外科
69巻6号 (2014年6月)
電子版ISSN:1882-1278 印刷版ISSN:0386-9857 医学書院

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