1200字通信・66
言葉と文字と人格と
板野 聡
1
1寺田病院外科
pp.689
発行日 2014年6月20日
Published Date 2014/6/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407105094
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今年の冬のオリンピックでは,競技場以外でもいろいろな話題がありました.その中に,2020年の東京オリンピックで重要なポストに就いている方のご発言もありました.元々そうした失言をなさることで有名な方のようではありますが,人にはそれなりの立場があり,発言には時と場所を考えることが大切であり,何より相手を思いやる気持ちが必要ということではないでしょうか.話題になった選手が,帰国直後の会見で「後悔されているのでは」と大人の対応をされ,その場を丸く収めたのは流石でしたが,その後,その言葉に「後悔はしていない」と答えたそうです.こうなると,この方が悪いのか,この方を選出した側が悪いのか,複雑な気持ちになってきます.
今回のこの出来事をきっかけに,改めて人が発する言葉には,その人の人格や人柄がそのまま表れるものだと感じることになりました.言葉には,昔から「言霊」と言うように,それを発した人間の魂というか「想い」が宿るもののようです.相手を励まし,時には逆境を克服する無限の力を与えることもあれば,一方で,心無い一言で相手を傷つけ,時には取り返しのつかないことになる「言刃」もあるようです.人は「言葉」で思考するわけですから,発せられる言葉はその人の「思考」そのものと言っても過言ではないでしょう.そう考えて観ていると,人が発する言葉には,その話し方も含めて,その方の人柄が表れてくるのも納得できることになります.人柄とは,その人の生い立ち,受けた教育や躾によって形成されたものでしょうから当然のことではありますが,心して言葉を発しなければならないと反省することになりました.
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