理学療法と作業療法 16巻8号 (1982年8月)

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はじめに

 治療医学における「診断」のように,リハビリテーション医学における評価の位置づけの高さはよく知られていることである.

 先人達は「リハビリテーション(以下,リハと略す)は評価に始まり,評価に終る」と,評価の重要性とその神秘性について唱えている.

 しかし,診断学が長い歴史の中で培われ,膨大な情報量の分析・整理の結果として,大成されてきたのに比べ,評価学としての成り立ちは今一歩を踏み出したにすぎない.

 今回,総論的ではあるが作業療法士(OT),理学療法士(PT)の立場から,これまでの臨床経験と浅薄な知識をもとに「評価」のとらえ方,また評価過程における患者の問題整理の方法について考えてみたい.

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 Ⅰ.はじめに

 作業療法は,我が国のリハビリテーション医学の分野では,十余年の歴史しか持たない言葉であるが,精神科領域では歴史も古く,明治39年に呉秀三はヨーロッパのコロニーを見て来た話として,「癲狂村の話」1)を書きその中で作業療法を詳しく解説している.内容は,精神病者を拘束した状態から解放した無拘束法の効果と,自由にしたうえで作業療法を行わせた効果についても述べている.作業療法の効果には,精神的な効果として,患者の行動を安定させ異常な体験を縮小する.知的な能力の低下を妨げる.身体的な効果として,体力が増し新陳代謝も高まり身体が丈夫になる.さらに経済的な効果として,作業によって病院にも利益があり,それは患者にも還元される.また患者は手に職を覚えることで,職業訓練にもなる.しかし,経済的効果については「もとより病院に患者で儲けさせる考えはない」1)と断言している.呉が述べている作業療法の精神面,身体面の効果の基準は,精神医学の診断的側面である症状,症状の変化,行動の変化,身体の変化で,主に観察的方法である.客観的な評価は,コロニーでの全入院患者総数の何割が作業療法に参加しているか,作業をすることのできた患者と入院総患者との割合,作業日数と在院日数との割合,精神病者の作業力,すなわち健康者一人の平均作業量を患者なら何人でこなせるか,などである.70余年前から今日まで作業療法の効果をみる方法については,観察的方法での記述が多く基本的には変りがない.その理由は精神医学の基本的方法が変っていないからではなかろうか.現在の精神医学での精神病者のとらえ方について,西丸ら2)は一般医学と同様に精神医学も症状をとらえ,その症状の背後にひそむ人間のある異常な事態(病気)により生じる特有な精神・身体的状態をとらえることとしている.それは概してその事態にとっては非特異的な現象であり,病気のような異常な事態はその個人の精神身体領域にさまざまな現象をひき起こす.これを症状という.器質的疾患をその対象とする一般医学ではこのような意味の症状をよりどころに,その成立理由をその個体の身体構造と内的,外的条件との間に因果関係を追求していくことにより症状を成り立たせている基礎疾患に到達しようとしてきた.しかし,精神医学では中枢神経系の器質的損傷に基づく精神疾患の身体・精神症状には援用されるが,ひとたび現在のところ身体的原因の見出だせない精神疾患に対峙すると,「そこに現わされている諸症状,とりわけ精神症状を我々はどのようにとらえ,どのように理解してきたのであろうか.この問題こそが,従来からの精神医学,とりわけ精神病理学の中心課題の一つであったのであり,それは精神医学の方法論としてすでに古くから幾多の先達らによって繰り返し論ぜられてきたのであったし,この方法論の相違がまた精神医学の諸立場を生み出してきたと言えよう」2)と述べているように,症状はとらえられるが,その成立理由が不明であることが問題である.作業療法においても症状の変化をとらえることを中心にしており,このことがその症状のとらえ方により,作業療法の中にも種々の考え方がある理由であろう.さらに,作業療法の教育に用いられることの多いWillard and Spackman著の「作業療法」の精神科作業療法の部分を見ると,第3版(1965)3)には診断(diagnosis)という言葉があり,第4版(1975)4)以後に評価(evaluation)という言葉に変っている.

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 Ⅰ.はじめに

 中枢神経系損傷によって脳の正常な発達が妨害されると,運動発達が遅滞または停止する.同時に,異常姿勢反射活動が解発され,異常な姿勢・運動パターンが出現する.このことの重要性は,理学療法士,作業療法士などが脳性麻痺,成人片麻痺に代表される上位運動ニューロン損傷患者の感覚―運動障害を理解するために,認識しておかなければならない.

 ここで,異常姿勢反射活動は患者の運動動作を支配し,立ち直り反応や平衡反応といった正常姿勢反応の発達や出現を阻害したり,抑制したりする.随意的な巧緻動作や運動の学習には,その協調性や防御のために必要な正常姿勢反応の活動が必須のものとなる.

 そこで,立ち直り反応・平衡反応を評価する際,理学療法士,作業療法士が理解しておく必要のある以下の項目について述べてみる.

 ①立ち直り反応・平衡反応の機能的意義とその特徴

 ②評価の実際

 ③評価と治療との統合

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 Ⅰ.はじめに

 与えられたテーマは,「PT・OTに必要な言語障害テストの知識と実際」であったが,原則として,PT・OTが言語障害の評価を行うことは,まずないはずである.言語障害の患者(児)を評価し,訓練,治療を行う専門職として,言語治療士(ST)が存在するからである.

 故に,テーマは,STが行った評価を,PT・OTはどう読めば良いか.つまり,PT・OTが,STから得る情報を,より良く理解する上で必要な言語障害テストの知識と実際と考えることにしたい.

 とはいえ,現状では,STの数が不足しているのでSTから情報を得たい,知りたいと思っても,それが不可能な場合が多い.

 その対策の一つとして,あらかじめPT・OTの養成課程の中で,言語障害・言語治療の基礎的な事柄を学んでおくことが求められるが,果してそれはどれほど実施されているだろうか.

 近畿地方(大阪,京都,滋賀,奈良,三重,和歌山,兵庫)を例にあげて調べてみると,PTの養成校は,国公私立合わせて5校,OTは2校あるが,教育カリキュラムの中で正式に言語障害,言語治療の講義を取り入れているところは,現在までのところ皆無である注1)

 PT・OTサイドのカリキュラムの事情もさることながらSTの学問体系の確立が不十分であること,身分法も出来ていない現状からみれば当然のことかも知れない.

 現状はともかく,本稿では言語障害の中から,失語症を取り上げ,筆者らが行っている評価の一部を,実際的・具体的に紹介したい.

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はじめに

 1974年日本リハビリテーション医学会は,従来よりのROM測定法を改め,開始肢位が解剖学的肢位を基本とするいわゆるzero-starting methodを採用し,American Academy of Orthopedic Surgeonの定める方式1)を骨子としたROMテストを公示した2).しかしこのテストは,実際臨床で使用する立場にあるPTやOTだけでなく,学生教育の場に於てですら,使いずらかったり,不合理な点がかなり指摘されてきたため,より臨床的でかつ計測になじみやすい実践的計測法の検討の必要性が,日本理学療法士協会会員によりせまられてきた註).このような状況を考え,1978年同協会学術部,中に評価検討委員会が設置されるに至り,ROMテストを始めとする理学療法士と直接関係する種々の検査や計測を含めたリハビリテーショソ評価の方法論やそのあり方を再検討するべく活動方針が決定された.ところで本委員会設置の究極の目的は,ただ単にROMテストを再検討することにあるのでなく,理学療法士自らが日常臨床で使用する多くの検査・測定法をより信頼性,妥当性あるいは再現性の高いものにもっていくべく検討研究し,リハビリテーション医学の中で重要な位置を占める評価そのものの学問としての体系化を目指すことにあることは,日本理学療法士協会の会員なら誰でも理解できうるものと信じる.同年東京に於ける第13回日本理学療法士協会全国研修会では,この評価の学問的体系化の必要性が再確認され3),次いで第14回全国研修会(大阪)では,その各論的討議がスタートするに至った4).第15回全国研修会(浜松)では中でも懸案となっているROMテストのうち上肢の第2号試案を5),第16回全国研修会(札幌)ではその最終試案と下肢ROMテストの第1号試案及び脊柱のROMテストの問題点が提示され,ROMテストに関しては一通りの検討が終ったことになる.今後はより実践的な試案を作成し,できるだけ多くの方に実際使って頂き,最終的には,我が国のリハビリテーション医学会で共通して使えるものにもっていくことが是非とも必要であり,当面の課題でもあるが,この稿ではこれらの点を踏まえ,評価検討委員会による上肢ROMテスト試案作成までの経緯,試案の紹介を行い,さらに今後の課題などについても,若干の私見を混じえてふれてみたい.

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 リハビリテーション医療におけるチーム・アプローチは,その概念や日常運用の面では広く知られている.しかし,それが本来の機能をはたしているかは疑問視される方も多いのではなかろうか.医師,種々のパラメディカル・スタッフによる診断・評価,目標設定,リハ計画と実施,再評価などは,どこの病院や施設でも,そのパターンは整っていることだろう.しかし本当に納得のいくリハビリテーションが行われているだろうか.一人一人の患者・障害者に対して最適なリハビリテーションを行うためのシステムは一見存在しているようにみえても,実態としては機能していないのではなかろうか.日頃感じている,これらの問題点を分析し,今後の方向を模索してみよう.

 第一には最近のリハビリテーション医療での対象疾患や障害の変化があげられる.四肢・脊髄障害に対する医療は技術的にかなり進歩し,治療手順の体系化も大略は行われ,残された問題は社会・心理的側面に重点が移行した.一方では,中枢神経疾患,とくに変性疾患が老人問題と平行してリハビリテーションの対象として増加したものの,それら疾患や障害の予後についての知識や対応手段の確立が不十分である.さらに,脳性麻痺をはじめとして小児リハビリテーションでは,発達の問題を重視するようにはなったものの,それは社会環境と切り離せない側面をもつこと,および社会変化の加速現象に対して,リハビリテーション・スタッフの意識や技術が追従しきれなくなっていることなどがあげられる.

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 1981年を初年度とする国際障害者年行動計画はむこう10年間の完全参加と平等へむけて進みはじめている.東京都の行動計画をみると在宅サービスを重視する方向がうち出されており,こうした傾向は,ねたきり老人対策等でも施設収容のみでなく,在宅ケアを必要とするという提言が多い.

 世界的にも地域ケア,プライマリーケアの重要性が叫ばれ,その主要な保健問題としてリハビリテーションサービスが含まれている.

リハビリテーション・インフォメーション

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 日本臨床心理学会は1959年発足,学会としてはまだ若い青年期と言えるかもしれない.当時,心理学界の中では一番大きく,権威的でもある日本心理学会から,臨床畠の人達が職能的側面に重きを置く方向で,分離・独立したと言える.

 若さゆえ新鮮さをもって発足,その雰囲気を保ってはいたが,1960年代後半には,各臨床現場の矛盾の多い状況は問題にされないまま,個々の研究業績を主とした発表の場となっていた.

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 近年,リハビリテーションの過程で,障害者の機能の改善や回復を図るために体育・スポーツを応用することは多く,病院・リハビリ諸施設で専門の体育指導員を置くところも増え,治療体育という領域ばかりでたく,社会復帰した後の生涯体育という領域へと広がっている現状である.一般にいう身障スポーツの発展は昭和39年開催された東京パラリンピック以降であり,今日その種目,施設,用具,指導者,組織などの発展は大きい.

講座

老人 6.老人と家族病理 吉沢 勲
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 プロローグ

 リハ科事務室での会話

 P氏「今日外来で診たトラバアサンの嫁さんよ.すごく変なんだよ.『歩かれると家の中汚すからそんな訓練やめてほしい』なんて言うんだよ…….参ったなあ.」

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 Ⅰ.はじめに

 「子どもの最初の教師は母親である」とよくいわれるように,母親は子どもの発達に大きた影響を与える.とりわけ,乳幼児期における子どもへの母親のかかわりは重要である.かかわりの対象となる子どもに障害が認められる場合には,母子関係にいろいろな問題が生しやすい.障害児の早期指導や早期療育が叫ばれ,その取り組みが活発に実践されている今日,まず最初にこの時期の母子関係の問題とその原因を愛着の成立過程と自立の感情の発達に焦点をあてて,少し細かくみていくことにする.次に,巨視的な視点から,障害幼児をもつ母親のストレスや自己意識をとらえ,あわせて母子関係の改善や母親指導の基本的な考え方を提起したい.障害児における母子関係の把握には,きめ細かい見方と同時に広い視点が不可欠だからである.

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 本書は標題からもわかるように,問題行動をもつ患者が自立していくのを助けるのにどう対処したらよいかを示す看護婦のための手引き書である.しかし,訳者も云うように,ひとり看護婦のみでなく,慢性患者に関わる多くの人口,たとえば理学療法士,作業療法士,保健婦,療護施設の職員にも役立ちそうである.

 「行動変容プログラム」を一般病棟に入院するいろいろの問題をかかえた患者に対して看護婦が組み,それを実践していくわけであるが,症例が豊富で興味深い.行動変容技法は,精神薄弱児の身辺処理訓練(例えばトイレットトレーニング)に使われるのは一般的だが「自立をめざす」一般患者にも適用し,多くの成功例を本書で知り得たことは,我々リハビリテーション関係者にとっても心づよい.行動変容技法に関心をもつ私などは,「よし,それでは私も本格的にトライしてみるか」という気になる.

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文献抄録

編集後記 奈良 勲
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 一般臨床医学において「診断」という作業は重要な位置を占めている.この「診断」を中心にして種々の医療がおこなわれるのである.

基本情報

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理学療法と作業療法
16巻8号 (1982年8月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:0386-9849 医学書院

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