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はじめに
1974年日本リハビリテーション医学会は,従来よりのROM測定法を改め,開始肢位が解剖学的肢位を基本とするいわゆるzero-starting methodを採用し,American Academy of Orthopedic Surgeonの定める方式1)を骨子としたROMテストを公示した2).しかしこのテストは,実際臨床で使用する立場にあるPTやOTだけでなく,学生教育の場に於てですら,使いずらかったり,不合理な点がかなり指摘されてきたため,より臨床的でかつ計測になじみやすい実践的計測法の検討の必要性が,日本理学療法士協会会員によりせまられてきた註).このような状況を考え,1978年同協会学術部,中に評価検討委員会が設置されるに至り,ROMテストを始めとする理学療法士と直接関係する種々の検査や計測を含めたリハビリテーショソ評価の方法論やそのあり方を再検討するべく活動方針が決定された.ところで本委員会設置の究極の目的は,ただ単にROMテストを再検討することにあるのでなく,理学療法士自らが日常臨床で使用する多くの検査・測定法をより信頼性,妥当性あるいは再現性の高いものにもっていくべく検討研究し,リハビリテーション医学の中で重要な位置を占める評価そのものの学問としての体系化を目指すことにあることは,日本理学療法士協会の会員なら誰でも理解できうるものと信じる.同年東京に於ける第13回日本理学療法士協会全国研修会では,この評価の学問的体系化の必要性が再確認され3),次いで第14回全国研修会(大阪)では,その各論的討議がスタートするに至った4).第15回全国研修会(浜松)では中でも懸案となっているROMテストのうち上肢の第2号試案を5),第16回全国研修会(札幌)ではその最終試案と下肢ROMテストの第1号試案及び脊柱のROMテストの問題点が提示され,ROMテストに関しては一通りの検討が終ったことになる.今後はより実践的な試案を作成し,できるだけ多くの方に実際使って頂き,最終的には,我が国のリハビリテーション医学会で共通して使えるものにもっていくことが是非とも必要であり,当面の課題でもあるが,この稿ではこれらの点を踏まえ,評価検討委員会による上肢ROMテスト試案作成までの経緯,試案の紹介を行い,さらに今後の課題などについても,若干の私見を混じえてふれてみたい.
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