看護学雑誌 55巻9号 (1991年9月)

特集 患者が心を閉ざす時

心のケアはナースが主役 保坂 隆
  • 文献概要を表示

はじめに

 医療の現場においては,患者が心を閉ざしたとしても,創傷の治癒過程はさして影響を受けないだろうし,種々の検査は計画通りに進められるために,医師がことさら“患者が心を閉ざす”ことを問題視する場合は少ないと言える.

 例えば,十分な説明もなしに検査,検査と続けている場合に,患者が不満を抱き“心を閉ざす”ことは,本来ならあってはならないことではあるが,程度の差こそあれ,比較的日常的に見られるものである.その場合,直接的な被害者は患者自身であるが,患者は見舞いの家族に八つ当たりすることもあるだろうし,訪室するナースにも八つ当たりすることもある.これは,本来なら医師に向かうはずの攻撃性が方向転換して,家族やナースに向けられたものであり,置き換え(置換)という心理機制である,この八つ当たりは次のようなさまざまな形をとり得る.

  • 文献概要を表示

疎外とは

 疎外は“うとんじ,よそよそしいこと”という意味である.うとんじるとは“おろそかにする,親しまぬ,遠ざける,いみ嫌う”とある.患者が医療者に疎んじられたりおろそかにされていると感じることが患者の疎外感である.

 患者中心の看護を任じ,医療の主体は患者であるという看護において,患者が疎外されるはずはないのであるが,医師やその他のメンバーとチームを組んで行なわれる医療の現場では,患者の疎外感は意外に多く存在するようである.

  • 文献概要を表示

はじめに

 Fさんは,いわゆる重症者である.気管切開しており,人工呼吸器の助けがなければ生きていけない.

 食事は経管栄養である.人間としての欲求,しゃべること,声を出すこと,おいしいものを味わうこと,それを食べること,そして自分でやりたいことができること,それらの欲求が満たされない毎日.通常のコミュニケーション手段が障害された上に,日常的なケアの様々な場面での行き違い,心のすれ違いが数多くあった.その度に彼は怒り,嘆き,悲しみ,あるいは不安に陥り,またある時は希望と喜びを取り戻す.そんな毎日を過ごしている.

  • 文献概要を表示

突然,目の前が真っ暗に?!

 「モウマクハクリを起こしているみたいね」という眼科医師の言葉に,私は一瞬戸惑った.

 病気にまるでといっていいくらい縁がなかった私には,「モウマクハクリ」という言葉の意味がなかなかのみ込めなかった.

  • 文献概要を表示

●編集室より

 本年5月18, 19日の両日,東京で行なわれた「国際看護理論家会議」は様々な反響をもたらした(本誌Vol. 55, No.8, SCOPE参照).今回来日した理論家の1人,マーサ・E・ロジャーズ博士の理論について,本稿の筆者・坂口千鶴先生はアメリカニューヨーク大学大学院修士課程で学んで来られた.

 今回,帰国されて間もない坂口先生に,ロジャーズ看護理論がどのような思想や科学理論に影響を受けたのか,分かりやすく解説していただいた.本稿は,言わば日本人の目から見たロジャーズ看護論の背景を探る一考察である.

  • 文献概要を表示

 私たち,浜松医科大学病院看護理論勉強会のメンバーは,さる5月18, 19日に東京・高輪プリンスホテルで開かれた第4回国際看護理論家会議に参加しました.

 このグループは,浜松医科大学病院に勤務する臨床看護婦の集まりです.勉強会では,抄読会を中心に月に1回看護理論を臨床で実際に応用するために看護理論の基礎から学習しています.

連載 症状の起こるメカニズム[観察のポイント]・33

出血傾向 橋本 信也
  • 文献概要を表示

出血傾向とは

 出血傾向とは,これといった原因がなく自然に出血したり,あるいはわずかの刺激による出血が容易に止血しない場合をいいます.

 出血傾向の起こる原因としてはさまざまなことが考えられますが,血管壁の異常,血小板の異常,凝固能の低下,線溶系の亢進などを挙げることができます.

連載 ケーススタディ[ナースのための心理的アプローチ]・33

  • 文献概要を表示

Jさんのプロフィール

自殺念慮の強いJさん

 20歳の女子大生.小心で神経質,プライドが高く,ささいなことで傷つきやすい.境界例(神経性食欲不振症)と診断されたが,治療的には神経遮断薬投与が奏効し,ロールシャッハ・テストでは精神分裂病が疑われ,自殺念慮も強いという所見であった.

6年前の夏頃から食欲不振が始まり,3か月間精神病院に入院した.5年前にも睡眠薬を多量に飲んで救急車で運ばれるなど,自殺企図が数回あり,当科を受診,その後3週間入院した.Jさんは「頭が混乱して気を失う」「自分に行動が指示されている気がする」「人に動かされているようだ」などと訴えていた.

連載 看護研究のすすめ[看護情報学からのアプローチ]・6

論文の書き方 辻 和男
  • 文献概要を表示

はじめに

 研究を進めるために,論文の読み方,テーマの見つけ方などについて述べてきましたが,論文を上手に読めるということは,論文を上手に書けることでもあります.したがって今回は,“論文の書き方”について述べてみます.

 さて,読む人の信頼に応えられるような論文はどのように書けばいいのでしょうか.書く順を追って説明することにしましょう.

連載 自己創造講座[本当の自分を求めて]・6

  • 文献概要を表示

自己喪失の時代

 人間の人間である所似(ゆえん)は,その個性的な存在性にあります.1人1人が他の人とは違った唯一無二の存在である点が,他の生物とは根本的に違う点だと思うのです.

 例えば鳥を例にとると,鳥は全く没個性的で,その没個性的な1羽1羽が集まって群れをなしているに過ぎません.群れ全体が大きな1羽と考えることもできます.つまり本能や自然性に支配されて個性はなく,1羽の形態を調べれば,以下同様になるわけです.

連載 忍冬のように[私が生きているということ]・18[最終回]

病人として,看護婦として 水上 學
  • 文献概要を表示

苦難に直面した時

 私たちの人生には,失業,病気,貧困など,幾たびかの艱難(かんなん)辛苦があります.苦難はまた,いつの世にも人の生命や心を脅かします.

 そのような不幸に直面した時,人は何を支えに生きていくのでしょうか.そして,何を励みとしてどんな方法で苦難という関門を突破していくのでしょうか.私の蔵書の1冊に,『隠されたる神——苦難の意味』(山形謙二著,キリスト新聞社)があります.この本には苦難や痛みの意味が綴られていて,私は自分を見失いかけた時,折りにふれ,この本と対面します.

連載 スウェーデンからこんにちは・6

私の入院体験 本間 マサ子
  • 文献概要を表示

私の入院体験

 みなさんこんにちは,ご機嫌いかがですか.

 この手紙を書いている今は4月の上旬です.太陽の出る日が多くなり,暖かくなってきました.勤務の帰り道で,野性の三つ葉を摘んできては,おひたしやテンプラにしています.日本のスーパーなどで売っているものより,やはり香りが強く美味です.何と言っても野性ですものね.

連載 あした天気にしてあげたい[わたしの救急奮闘記]・6

甦れ、鼓動 中村 恵子
  • 文献概要を表示

DOA

 「DOA患者」.この言葉が,最近新聞紙上などで目につくようになった.“Dead on Arrival”の略なのだが,日常語としてそのまま使われてしまうことに驚きを覚え,ある種の抵抗を感じるのは私だけであろうか.

 “DOA”とは,「病院到着時死亡」ではなく,到着時にはすでに心肺機能が停止している状態,もしくはその患者を指している.私たちは,いつどのような場で心肺機能停止の人に遭遇するか分からないが,もしそういった人に出会った時には,その原因のいかんにかかわりなく,直ちに心肺蘇生法(CPR)を施す術を持つべきと考える.特に救急の場で働く看護婦は,そのような患者と対する機会が必然的に多くなるので,心肺蘇生法の理論と実践技術を習得しておくことが必須であり,大事な基礎となる.

連載 のんちゃんのでこぼこMYロード・6

連載 プッツン看護婦物語・13

  • 文献概要を表示

だから、何なのさ。

 「看護婦が大卒にならなきゃ、待遇なんて良くなるはずはないよ。今の世の中、大卒で当たり前なんだし——」

 「医者と比べりゃ、看護婦は人間的レベル低いし、おもしれえ人もいねえ」

  • 文献概要を表示

 今,話題の看護を展開している「札幌麻生脳神経外科病院」をご存じだろうか.この病院は,1985年4月に開設,現在病床数145(稼働数121),基準看護,特2類,3交替制勤務を採用している.看護スタッフは看護婦65,准看護婦20,保健婦11,ナースエイド30,病棟クラーク4で構成され,看護職対病床数は約1:1.日本全国に蔓延している看護婦不足の現状では,考えられないような看護体制である.

 十分な看護婦数の中で看護はいったい何ができるのか.この問いに自信を持って答えているのが札幌麻生脳神経外科病院の看護婦たちである.実際,この病院の看護部は医師に遷延性意識障害と診断された患者の意識を回復させ,見事社会復帰をさせている.その数は20を超えるという.

ズームイン

  • 文献概要を表示

 札幌麻生脳神経外科病院の看護は本号グラフ欄(778-783ページ)でも紹介したが,医師も見放した植物状態の患者を社会復帰するまでに回復させている.それも20を超す症例があるという.この成功の秘密はどこにあるのか.確かに患者に対する看護職の数は日本の現状では信じられないくらいに多いが,果たして,それだけでこのようなことを看護が成し得るだろうか.取材をしてみて,この病院の看護婦をはじめとする病院全体が奇跡の看護を生み出しているように思えてならない.今月は看護部長・紙屋克子さんの話を中心に,札幌麻生脳神経外科病院の看護を紹介する.

 札幌麻生脳神経外科病院が誕生したのは1985年4月.開設目的は「高度専門医療水準の向上を図りながら救急医療に責任を持つ地域の中核病院として,住民のニーズに積極的に対応し,創造的な地域医療実現のために貢献する」.

  • 文献概要を表示

 看護記録に割く時間が多い,あるいは業務時間内に記録を書ききれないために残業するという話はよく聞く.

 患者の状態を克明に記録に残すことの意義は重要なことであるが,“記録する”ことに,あまりにも時間をかけ週ぎていないか.

  • 文献概要を表示

 松木さんは,さる6月8-9日に滋賀県大津市で開かれた日本看護診断研究会の発起人の1人である.設立総会では,世話人代表に選ばれた.

 最近よく耳にする“カンゴシンダン”という言葉.看護理論,看護過程と同様,何となくとっつきにくい感じがする.なぜ今,看護診断なのかを聞いてみよう.

  • 文献概要を表示

木須さん「高校卒業する時,就職先が一応決まっていたんです.だけど,何か資格が欲しかったのと,桜ヶ丘病院の初代総婦長を個人的に知っていまして,その方がとても信頼できる方で,この人が看護の方がいいよと,いろんなことを話してくれて,高校の先生方には迷惑をかけてしまったんですが,進路を変えて看護の道を選んだんです」

佐藤さん「進路にはずいぶん迷いました.看護を選ぶといっても,その頃だと男の看護婦?なんて聞かれて,説明するのも大変だったんですよ.今は随分変わってきて,大分わかってくれるようになりました.人の世話をしたり面倒見るのが好きなものですから,ずっと続けてこれたんでしょう」

基本情報

03869830.55.9.jpg
看護学雑誌
55巻9号 (1991年9月)
電子版ISSN:1345-2746 印刷版ISSN:0386-9830 医学書院

文献閲覧数ランキング(
7月27日~8月2日
)