特集 患者が心を閉ざす時
心を開いてくれたFさんとの出会い—患者-看護者関係を乗り越えて
綿貫 成明
1
1脳神経外科病棟
pp.797-800
発行日 1991年9月1日
Published Date 1991/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661900457
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
Fさんは,いわゆる重症者である.気管切開しており,人工呼吸器の助けがなければ生きていけない.
食事は経管栄養である.人間としての欲求,しゃべること,声を出すこと,おいしいものを味わうこと,それを食べること,そして自分でやりたいことができること,それらの欲求が満たされない毎日.通常のコミュニケーション手段が障害された上に,日常的なケアの様々な場面での行き違い,心のすれ違いが数多くあった.その度に彼は怒り,嘆き,悲しみ,あるいは不安に陥り,またある時は希望と喜びを取り戻す.そんな毎日を過ごしている.
Copyright © 1991, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.