総合リハビリテーション 23巻12号 (1995年12月)

特集 脳卒中の急性期治療

今月のハイライト
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 今月は脳卒中の急性期治療に関して,それぞれの専門家に執筆を依頼したが,鋭い指摘に加え,未解決な点や論議のある箇所もあり,リハビリテーションに携わる方々は本特集を機会に一層の臨床研究をされることを期待する.

脳梗塞の内科的治療 岡田 靖
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はじめに

 脳梗塞には発症機序や重症度の異なる病型があり,急性期の治療を行う際には個々の症例の病型,病態を考慮して安静度や日常生活動作の拡大を図る必要がある.ここでは脳梗塞の内科的治療の紹介と急性期リハビリテーションを施行するうえで問題となる病態について解説を加える.

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はじめに

 第一線の病院の脳外科において脳血管障害は日常の診療で遭遇することの多い疾患である.本稿ではそのなかでも高血圧性脳内出血,脳動脈瘤破裂によるクモ膜下出血,および急性期脳梗塞に焦点をあて,1991年4月から1995年3月までの自験例を検討し,これらの疾患とリハビリテーションについて考えてみる.

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はじめに

 脳卒中の早期リハビリテーションは,筆者らにとって既に日常化している方法であるが,必ずしも普及しているとはいえない.再発への危惧や効果への疑問があるためであろう.またリハビリテーションが実際には慢性期医療であるため,急性期脳卒中を経験するリハビリテーション医が必ずしも多くないためもあろう.

 筆者は先に早期リハビリテーションの原理と方法について提案したが1),この論文ではさらにいくつかの点について見解を述べたい.リハビリテーション開始の遅れにより後遺症が重くなることは,全ての医療スタッフが痛感していることであり,「早期リハビリテーション」とは具体的にいつから,何を行うのか,多くのリハビリテーション関係者に関心を寄せて頂ければと願う.

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はじめに

 脳卒中リハビリテーションの開始の遅れは,廃用症候群を招き,特に高齢者では不可逆的障害を起こしうるので,早期からのリハビリテーション開始が重要である1).しかし,脳卒中患者では,2~5割もの患者に見られる症状悪化や1-6),さまざまな合併症は急性期ほど多いことが報告されており1),安全管理も不可欠である.急性期のリハビリテーションをより安全に進めるためには,増悪や合併症の危険度の高さによる患者の層別化と,危険度に応じたリハビリテーション・プログラムの層別化が必要である.

 本論では,脳卒中急性期の増悪や合併症について取り上げ,自験データを交え検討する.

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 わが国における脳卒中急性期リハビリテーションの歩みと問題点

 1.リハビリテーション草創期の状況

 脳卒中のリハビリテーションは早期に(急性期から)始めるべきもので,早期に開始するほど成績が良い(はずだ)ということは,30年以上前のわが国のリハビリテーションの本格的導入期から誰しもが口にしていたことであった.当時の故砂原茂一氏の名言を引けば,数か月も寝かせておいて,それからリハビリテーションをやろうなどというのは「一度するめにしておいて,それから水にいれて烏賊に戻そうとするようなもの」であった.欧米のリハビリテーションを見てくれば誰しもそう言いたくなるのは当然であった.

 しかし識者が何と言おうと,当時の日本の現実は,リハビリテーションのできる病院はほとんどが山間の遠隔地にある温泉地にしかなく,そういう病院に入る患者の大多数は急性期はおろか,発症後2~3か月あるいはそれ以上経っているのが普通であった.都市部の総合病院で早期からリハビリテーションを行っていたのはきわめて例外的に,九州労災病院(服部一郎氏),東京大学付属病院リハビリテーション部(上田)など,本当に数えるほどであり,それもすべてが急性期からであったわけではなかった.

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 10月6日に日本理学療法士協会と日本作業療法士協会の設立30周年記念行事が東京で催された.式典においては厚生大臣ご本人のご出席を賜り,祝辞を述べられたのを始め,多くの関係者から理学療法士(PT),作業療法士(OT)の成長ぶりや今後への期待度が語られた.その折り,20数年前に英国留学中に知り合いになった先生と久し振りにお話しする機会があった.当時先生は処方を出してもそれに十分に答えられない日本のPT,OTの知識,技術の未熟さ,また教育制度の在り方などを熱っぽく語られていた.そして,今PT,OTがチームの同僚としてなくてはならない存在に成長したことを非常に喜んでいただいた.さて,本当にチームの同僚と言っていただけるレベルまで教育され,成長しているだろうか.

 現代学生気質というのか,臨床実習でよく問題となることに,社会性がない,責任感がない,積極性がない,言われたことしかしない,時間・期限が守れない,人間関係がとれない,言葉づかいがよくない,精神的自己管理ができない等々,ないないづくしで実習以前の問題点が多々指摘される.

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はじめに

 “下腿の振り出し”は歩行にとってきわめて重要な過程である.健常者は膝を介して“下腿の振り出し”をコントロールし,膝の屈曲および伸展を調整している.しかしながら,膝を失った大腿切断者は下腿部分をもはや自分の意志どおり自由にコントロールすることは不可能である.したがって“下腿の振り出し”を健常者のそれに近づけるためには,義足の膝継手に何らかの遊脚相制御機構が必要となってくる.従来の義足の遊脚相制御装置には摩擦や伸展補助装置,さらにはより良好な制御を行うものとして油圧,空圧制御装置がある.しかしこれらの制御装置では,変化する歩行速度に対して十分な対応は不可能である.

 ゆっくりした歩行から速い歩行まで,切断者のニーズに合わせた気ままな歩行ができることを目指して,インテリジェント大腿義足1-3)は,当センターで15年に及ぶ研究開発の結果できあがったものであり,遊脚相制御にマイクロコンピュータを導入し,任意の歩行速度で歩くことを可能にした.本研究の目的は,このきわめて優れた遊脚相制御装置をもつインテリジェント大腿義足を用いて,義足歩行における遊脚相制御の意義についてエネルギー消費の観点から検討することである.

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はじめに

 特別養護老人ホームは,身体上または精神上の障害を持ち在宅で介護が困難な高齢者のための入居型福祉施設であり,全国にほぼ20万人の入居者がいると目されている.身体的・社会的に制限された条件で生活する高齢者にとって,他の入居者や職員等との意思疎通が円滑に行われることは,生活の質を高めるための一つの欠かせざる条件と考えられるが,このような施設の入居者におけるコミュニケーション障害に関する報告はきわめて少ないのが現状である.

 この研究の目的は,特別養護老人ホームに居住する高齢者のコミュニケーション障害の実態やその生活行動との関係について予備的な調査を行い,今後の調査および援助の方向性について若干の指針を得ることである.

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はじめに

 救命救急センターがあるような総合病院での医学的リハビリテーションの展開は,どこの施設でもたくさんの困難を抱えている.われわれも,このような現状を少しでも改善する目的で,幾つかの試行を重ねてきた.まだ効果を検証するには期間が不足するが,総合病院における急性期リハビリテーションを中心とした医学的リハビリテーションのシステム化の1例として紹介する.

講座 医療・保健で必要なデータベース

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はじめに

 近年における医学研究の急速な進歩に伴い,研究成果として生産される学術文献は膨大な量にのぼっている.そのなかから必要とする文献情報を迅速かつ的確に探し出し,研究活動に活用するためには,コンピュータを用いた検索システムの援助が不可欠である.研究者が,質の高い検索作業を行うためには,コンピュータの検索機能やデータベースの特質を知り,これを使いこなさなければならない.

 本稿では,検索システムを利用するうえでの機能,用語を解説し,さらに実際例に触れながら適切な検索手順について述べることとする.なお,検索機能説明に際しては,当館でサービスを行っているSALY,JOIS(MEDLINE等),CD-ROM(DIALOG OnDisc MEDLINE)のシステムを使用した.

実践講座 ソーシャルワークの技法

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はじめに

 ソーシャルワークの技法としてのコミュニティ・オーガニゼーション(community organization)について,一般病院におけるソーシャルワーク実践の経験から考察したい.

 コミュニティ・オーガニゼーションといえば行政が政策を展開するうえでの手法や社会福祉協議会の活動が連想され,病院のソーシャルワークの方法としての取り込みはあまり馴染まないという印象があるのではなかろうか.

 しかし高齢化,疾病の慢性化,障害者の増加,さらに家庭や地域社会の機能変化などにより,医療をとりまく状況が大きく変わりつつある現在,病院はもはや医学的治療のみを提供する場ではなく,幅広く保健福祉活動や地域活動を抱え込まざるをえないというのが実情となっている.

 そのなかでソーシャルワーカーの業務内容も貧困層の経済的援助を主とした時代から大きく変化してきている.とくに近年の早期退院,在宅ケア指向のなかで,退院援助や地域活動がソーシャルワーカーの業務のなかで占める割合が大きくなっている.また1989年に厚生省よりだされた「医療ソーシャルワーカー業務指針」においても,退院援助や地域活動は経済的援助や心理社会的援助,受診受療援助とともにソーシャルワーカーの業務の柱としてあげられている.

 退院援助や地域活動には当然コミュニティ・オーガニゼーションの知識や技術をもつことが必要となる.本稿においては,病院におけるソーシャルワーカーによるコミュニティ・オーガニゼーションの適用について未熟な実践ではあるが紹介してみたい.

一頁講座 リハビリテーション関連法律用語

6.交付と給付 土手 敏行
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 現在,身体障害者福祉法上に「交付」または「給付」という用語が使用されているものは,第15条で身体障害者手帳の交付が,第18条第2項で日常生活用具の給付が,第19条で更生医療の給付が,第20条で補装具の交付がある.

 これを法文上に規定された年次別に説明を加えることとする.

Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション

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 前回の本欄では,「人間の絆」(北川悌一訳,講談社)の末尾で,主人公の医師フィリップが自らの過去や障害を受容していく過程を論じたが,『人間の絆』には,もう一つ,別の人生の受容の仕方が描かれている.それは,経済的困窮に陥って医学校を休学していたフィリップが友人ヘイウォードの死を知る場面である.フィリップは,かつて「大きな万能性を秘めて,将来に対する情熱にあふれていた」この友人が,何も達成しないまま,つまらぬ病気で死んだことを聞かされて,「人生の意味って,なんなんだろう?」と自問する.「努力ばかりかさねて,結果はじつにとるに足りないものだ.青春時代の輝かしい希望の代償は,にがにがしい幻滅なのだ.苦痛と病疫と不幸が,はかりを重くおしつけている」.

 さらにフィリップは,自らの人生を顧みて彼自身の「肉体におしつけられた制約,友人に恵まれなかったこと,青年時代をつつんでいた愛情の欠如」などに思いを馳せる.「最高と思ったことばかりしてきたつもりだったのに,なんという失敗をしでかしたことだろう」.しかも,「ほかの人間は,彼以上の利点はべつにないのに,成功し,さらに,利点をずっと多くもっているほかの人間は,失敗している」のだ.

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 1.新しい学会の設立背景

 いま,障害児・者の教育をとりまく環境は急速に変化しつつある.たとえば,国連総会で採択された「障害者の機会均等化に関する基準規則」(1993年12月)では,障害者に対する十分で「適切な支援サービス」(適切なカリキュラム,質の高い教材,補助教員の加配,継続した教員研修など)の提供を前提とした「統合された環境(integrated settings)」での教育の機会均等を原則に打ち出している.

 またユネスコの「特別なニーズ教育に関する世界大会」(1994年6月)において採択された「特別なニーズ教育に関するサラマンカ声明と行動大綱」では,「すべての子ども達のための学校」(School for All;SFA)という標語で,学校がいろいろな違いを持った子ども達の学習と発達,連帯と平等の場となることを強く求めている.そのために,なによりも通常の学校が一人ひとりの子どものニーズに応えられるように変革されるべきであるとしている.同時にサラマンカ声明では,障害児に対して,障害の程度や種類によっては特別な教育が必要であることも否定していない.そのことは,子どもの最善の利益を第一義的な権利として掲げる「子どもの権利条約」(1989年11月国連総会採択)でも,その第23条(障害児の権利)で「障害児の特別なケアへの権利」と「障害児の特別なニーズ」を承認しているのである.

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 1.失調型脳性麻痺の病型と病因の検討

  愛知県立第一青い鳥学園 赤木滋・岡川敏郎

 脳性麻痺の分類の中で失調型とされるものは非進行性失調症候群という概念で表現され,それは大きな2つの臨床型に分類される.先天性小脳性失調症と失平衡症候群の2型であり,さらにそれらは痙性の有無により分類される.小脳症状を主とする先天性の非進行性失調症の3例について,周産期異常の有無,運動発達,言語発達,失調症状,知能および神経学的所見と,CTやMRIによる検査所見などから,病型および病因について検討した.2例は先天性小脳性失調症であり,1例は両下肢に痙性を有する失平衡症候群で知的にも言語の面でも発達が大きく障害されている.3例とも家族歴,出生歴に特には異常がなく,中枢神経感染症の既応もない.病因としては胎生期の小脳の形成異常や循環障害等が考えられるが,鑑別疾患として変性疾患を全く否定することはできず,長期にわたる経過の観察と詳細な検討の余地が残されている.

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 スポーツに起因する膝靭帯損傷の病態と治療に関して,過去10年以上にわたり世界に発信し続けている国際的Knee surgeonのひとり,史野根生先生の編集による「膝のスポーツ傷害」が刊行された.誰にも負けない膝に対する情熱を感じさせる先生の本とすれば,表紙の薄い緑色はいささか地味すぎないかと思いつつ,本を手に取った.がしかし,抑え気味なのは表紙だけで,内容はやはり熱かった.

 史野先生の前書きによると,「本書は,1章では臨床に関連の深い解剖学・生体力学的知識を簡潔に網羅することに努めた.2章では,近年のトピックである靱帯損傷膝に対するアプローチの仕方から具体的治療法までを詳述した.

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 文字どおりリハビリテーション医学に関わる文献のレビューである.全体を総論,障害・疾患,関連領域の3分野に分け,さらに項目分類し,各項目ごとに10個ずつの文献を掲載し,その他に関連文献を加えている.項目の冒頭には概観が記され,各項目分野での近年の研究の流れやトピックスなどを紹介している.著者は,現在それぞれの分野で活躍中の第一線の研究者であり,実践的で臨床に生かせる文献選択となっている.

 医学の著しい進歩に伴い,情報量は増大し,なかでもリハビリテーション分野は対象となる範囲が広いため,全体に目を通すことは限られた日常の時間の中では困難である.特に日頃関心の薄い分野はなおざりにされやすい.

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文献抄録

編集後記
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・ワープロには慣れているのですが,コンピュータとなると触ったこともありません.インターネットとかパソコン通信とか,大体どういうものかぐらいはわかっていますが,それも頭の中だけです.そんな私にも,今回の「講座」欄で紹介されている「文献検索入門」はよくわかりました.あたかも自分で実際に,文献検索をしているかのような感じにもなるほどでした.わかりやすい構成と明快な文章です.これから私も,という方は是非ご一読を.

基本情報

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総合リハビリテーション
23巻12号 (1995年12月)
電子版ISSN:1882-1340 印刷版ISSN:0386-9822 医学書院

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