耳鼻咽喉科 59巻12号 (1987年12月)

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 唾液腺腫瘍の術前診断は,画像診断(唾液腺造影,シンチグラム,超音波など)の進歩,とくにCTの一般臨床への普及により,その腫瘍の位置,大きさ,形状,拡がり,周囲臓器との関連などは術前に詳しく診断が可能となってきた。また画像診断により良性,悪性の判定あるいは病理組織型の推定診断も試みられている。

 ワルチン腫瘍(Warthin's tumor)と膨大細胞腫(oncocytoma)は好酸性細胞(oncocytic cell)より成る唾液腺腫瘍で,おのおのの発生頻度は唾液腺腫瘍の5〜10%,1%といわれており稀な腫瘍ではない。また50〜60歳以上の男性に多くみられ,Tcシンチグラムでホット像を示すなどの臨床的特徴があるが,術前の病理組織型診断は容易でない。

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はじめに

 咽喉頭異常感の原因診断とX線検査法において最も重要な対象疾患は咽頭部および食道の悪性腫瘍で,ついで咽頭部および食道の良性疾患である。また咽喉頭異常感についての診断態度としては,異常感を有する患者が癌の早期診断の点で一般外来患者に比して臨床的high riskにあるグループとして,早期のあるいは微小な器質的異常の検出に適した方法を充分にとる必要があると考えている。

 今回バリウム造影検査の結果と種々の器質的異常,疾患に対する検査法の問題点と対策について報告したい。

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I.はじめに

 鼓室が健康であることの証拠は,最も簡単には鼓膜所見に反映される。鼓膜が正常であれば,多くの場合,中耳全体が正常と考えてよい。X線写真にみる中耳含気蜂巣の発達と含気状態とは,また,いま一つの有力な証拠となる。よく発達した含気蜂巣を認めれば,中耳は健康と考えてまず間違いがない(図1)。広大な乳突洞ならびに蜂巣は,このように正常中耳を示す信頼でぎる証拠であるが,生理学的には,頭蓋骨を軽量化する,音響インビーダンスになんらかの影響を与えるなど,いささか曖昧な意義づけにとどまり,特別重要な意義が与えられてきたとは思われない。

 筆者らは慢性中耳炎,鼓室形成術などの臨床的観察ならびに理論的考察にもとついて,よく発達した乳突洞・蜂巣の存在は,中耳の健康を示す単なる結果であるというよりも,むしろそれをもたらす重要な生理学的意義があるとの結論を得たので報告する。

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I.はじめに

 小児滲出性中耳炎の患者には急性中耳炎の既往があることが多い。外来で観察していると急性中耳炎にて貯留した中耳貯留液が長期にわたって存在しているような症例が多くみられる。これらの例に鼓膜切開を施行すると,急性中耳炎に比し粘稠度のきわめて高い液が吸引されることが多い。これに対し成人の滲出性中耳炎は小児に比較すると粘稠度の低い中耳貯留液であることが多く,再度の鼓膜切開,吸引によっても治癒しない例が多くみられる。最近ムコ多糖であるヒアルロン酸が小児滲出性中耳炎の中耳貯留液中に存在することが調べられている。われわれは小児の急性中耳炎(以下AOM),小児の漿液性滲出性中耳炎(以下SOMs),小児の粘液性滲出性中耳炎(以下SOMG),成人のSOMsについて中耳貯留液中のムコ多糖,糖タンパクの有無を調べ,若干の考察を加え報告する。

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I.緒言

 副鼻腔嚢胞は比較的頻度の高い疾患であり,最近増加の傾向にある1,2)。嚢胞の成因から考えると,術後性,外傷性,特発性(原発性)の三つに分類される。今回われわれは副鼻腔嚢胞症例のうち副鼻腔手術や外傷などの既往を有しない原発性嚢胞症例を中心に,術後性嚢胞症例との比較において臨床的に検討し,若干の考察を加えた。

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I.はじめに

 われわれ神経耳科医が日常臨床において眼振検査中に,一見観察では眼球が「キョロ,キョロ」と動いたとしか思われないような非眼振性自発性異常眼球運動にしばしば遭遇することがある。

 これら眼球が「キョロ,キョロ」と動いたとしか思えないような,正常,病的の判断の比較的困難な異常眼球運動のうち,①Zickzackbewegung1),②Fixationsrucke2),③Lightning eye movement3)について新たに視運動後眼振検査(optokineticafter nystagmus test(OKAN))4)を行うことにより,これら異常眼球運動のOKAN検査における態度によって,臨床診断学的にその正常か,病的かの判断について検討を加えた。

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I.はじめに

 耳介癌はわが国では比較的報告が少ない。耳介癌は大部分が扁平上皮癌,基底細胞癌である。今回われわれは病理組織学的に興味ある耳介癌の1例を経験したので報告する。

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I.緒言

 進行性鼻壊疽は鼻腔を中心に炎症性肉芽性変化が起こり漸次壊死化の進行する予後不良疾患の総称である。今回われわれは副鼻腔炎術後に発生したと思われ,その臨床経過により進行性鼻壊疽と診断し,免疫組織学的には悪性組織球症であった1症例を経験したので報告する。

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I.緒言

 薬包の一種であるPTP(Press through Package)を誤まってのみこんでしまうケースは多数報告されており,PTPは食道異物として珍しいものではなくなってきている。しかし分別のある大人が薬を内服するさいにその包装をのみこんでしまうという常識的には考えられない事故は,これまで知られてきた異物症とはいささか範疇を異にするものと考えられるが,PTP誤嚥の本態に関する考察はほとんど行われていない。

 著者はこの問題を検討する目的で,当教室で経験したPTP異物症18例を分析するとともに診断,治療,予防について考察を加えた。

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I.はじめに

 鼻結石の成因の一つには核の存在が必要とされるが,長い年月のうちに吸収されて一見無核のことも多いようである。証明された核としては綿花や紙,植物などが多く,いずれも外因性異物で内因性のものは少ない。今回著者らは鼻腔に逆生,萌出した歯牙を核として結石を生じたきわめてまれな症例を経験し摘出した。その表而および割面の走査電顕的観察とX線マイクロアナライザーによる鼻石の元素分析を行ったので,若干の文献的考察を加えて報告する。

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I.はじめに

 この腫瘍の多くは顎骨中心性に発生するが,時に口腔粘膜および歯肉などの口腔軟組織から生じることもある。いずれにしても口腔領域に発生する粘液腫は比較的まれな疾患である。病理組織学的には星状,ないしは紡錘状の細胞が繊細な線維を含む粘液様基質のなかに散在しているのが特徴とされているが,その本態および成因についてはいまだ一致した見解はみられない。

 今回右側上顎に発生した粘液腫の1例を経験したので,その文献的考察を加えて報告する。

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I.はじめに

 アミロイドーシスはアミロイドのび漫性あるいは限局性の沈着による疾患で,CohenとCalkinsがアミロイドの本態は細線維であることを明らかにしてからこの疾患の研究は長足の進歩をとげた1)。さらにCongo赤染色陽性で緑色複屈折を呈し,電顕で幅8〜15nmの分枝を示さない細線維の集積であることがアミロイドの定義として広く支持され,かつその前駆物質が均一のものではないことが判明してより,種々の分類1)が呈示されているのが現況である。

 以前より臓器限局性アミロイドーシスの存在は知られており,その位置づけはさまざまであるが,その中でも稀有例にあたる両側口蓋扁桃アミロイドーシスの症例を経験したので,若干の文献的考察とともに報告する。

鏡下咡語

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 医学会にしろ雑誌にしろ存続するものには必ずその歴史がある。先頃は日本の耳鼻咽喉科の90年に亘る発達の歴史を誌して学会から出版された。委員の人達が数年に亘っての熱心な編纂で恐らく日本医学会史の中での白眉として後世に遺ることであろう。

 われわれが今当面しているこの「耳鼻咽喉科」誌の発刊以来の歴史,その経緯なども現在では明確の様であっても,将来に向ってその成長とそれに伴う変革を想う時,やはりその都度大小様々な事柄や変遷を記載しておけば将来思わぬ事で役に立つことがあろうとは,文化史的な方面から考えれば自明のことである。

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基本情報

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耳鼻咽喉科
59巻12号 (1987年12月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:0386-9679 医学書院

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