耳鼻咽喉科 28巻10号 (1956年10月)

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 緒言

 耳鼻咽喉科領域の悪性腫瘍も一般に予後不良であるが,特に上咽頭の悪性腫瘍に於ては,位置的関係からその発見が遅れ,而も治療の面でも困難な場合が多く,最も治療効果が期待される手術療法でも困難且つ不完全を免れず,更に早期に転移を来し易い事実をも伴つてその予後は極めて不良と考えられている。

 我々は最近,原病巣も既に極めて進行し,而も頸部淋巴節等への転移をも来して居た上咽頭肉腫症例で,放射線療法等の他,8-アザグァニン(AZAN)の使用が,特に著効を収めたと考えられ,夫々興味ある臨床経過を取つた3例に遭遇したので,当科領域の本剤使用報告の少い点に鑑み,茲にその大要を報告する次第である。

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 緒言

 近時,化学療法の進歩により耳鼻咽喉科領域に於ける急性炎症の治療に格段の進歩が齎らされた。一例を挙げると,急性中耳炎に対する手術が行われる事は殆んど無くなつてきている。

 今日に於ける化学療法は施設資材の許す限り,原因菌を探索して確認し,速かに抗生剤の感受性の測定を行つた上で最も適切な抗生物質を選定しこれを迅速且強力に投与する事を,あくまで原則としなくてはならない。しかるに抗生物質登場初期に於ては,今日のようにほぼ理想的な化学療法が行われると言う訳にはゆかず,その劃期的と言われた効果を過信するの余り,手術時期を逸し重大な結果を招来した事も少くなかつた。このようなmasking effectについては昭和24年に鳥居1)により報告が提出されており,又昭和26年には,本教室の西端,野村2)はペニシリンの大量使用により臨床症状が隠蔽せられ,中耳炎より脳膿瘍を発来,手術が遅れた為,遂に死に至らしめた一例を報告した。その報告では抗生剤感受性と云うことが現在程重視されていなかつた当時の化学療法による弊害,特に臨床所見の隠蔽による手術時期の喪失を強調している。

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 我が教室に於ては夙にSMの副作用に注目し臨床及び実験的研究を行い,耳喉26巻2号,医事新報1617号にその一部を報告して来たが今回SM筋注により一過性反応を呈した患者を経験したのでSM過敏症を中心として前述2報告以後の文献を加え考察し発表する次第である。

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 耳鳴は古来謎の疾患と云われている様にその原因が単一でないのみならず,耳鳴発現の本態に就いても種々の仮説があるが今尚不明で,又分類も人により非常にまちまちで,更に治療法も種々あるが不確実である1)3)7)8)9)。耳鳴に対する星状神経節遮断の効果に就いては既にAtkinson1),Zöllner8),Hoogland13),Gerhard Nagel28),Passe37),Rudolf38)等により述べられているが,我々は外耳,耳管,中耳に異常なく,頭蓋内にも腫瘍,炎症等を認めず,又既往に中毒,外傷がなく更にメニエル氏病,内耳梅毒等を除外し得た患者中耳鳴を主訴とする21例を撰び,之に0.5%プロカイン10〜20ccによる星状神経節遮断を行いその効果を観察し得たので茲に報告する。

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 緒言

 我々は日常耳鳴を訴える患者に屡々遭遇するが衆知の如くそれら患者に於て耳鳴の原因を耳鼻咽喉科的所見に求め得られる場合と,然らざる場合とが存在する。又自覚的に何等の疾患を有しない健康者に於ても耳鳴を訴えるものは比較的多い。

 さて耳鳴の統計的観察に関しては既に幾つかの報告を見るが,耳鼻咽喉科疾患乃至全身疾患を有するものに就ての観察が多い様である。茲に於て我々は健康者を含めてアンケートによる耳鳴の統計的観察を行つたのでその大要を報告する次第である。

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 Ⅰ.緒言

 中耳炎治癒後鼓膜穿孔し高度の難聴を遺す不快なる現象を見る者が多く,この伝音系難聴に対する聴力増強に関しては従来人工鼓膜なる名称のもとに多くの臨床的実験が報告されて居り,既に18世紀に於てMartin, Pernellは鼓膜の欠損或は穿孔を人工的に補う事を試みた。始めて小綿塊を使用し之に所謂人工鼓膜なる名称を与えたのは,1848年Yearsleyで,爾来種々の無刺戟性且つ最も有効的な人工鼓膜えと研究が進められて来た。しかし人工鼓膜は19世紀に至り少しく進歩せりと雖も見るべきものは無く僅かに綿塊,ゴム,金属板,パラフインガーゼ,鶏卵殻の薄膜,竹紙,特殊絆創膏,よしの葉,グツタペルカ等が用いられているにすぎない。近年合成樹脂の医学的応用に関し各方面に亘つて種々実験されておるが,ポリエチレン樹脂も亦その一種で1936年合成されたものである。

 本樹脂の性質は比較的強靱で非吸湿性,柔軟性を帯び熱に対しては軟くなり種々の型にして使用出来る事から現今管状または食品包装薬品包装等に使用されて居る。殊に本樹脂は有害なる可塑剤を全く必要としない点でビニール樹脂の如き組織刺戟性がなく,発癌作用等も全くない事が実験的に確められて居る。常温では強酸,濃アルカリ等にも侵されず勿論一般に使用されている消毒剤等にも安定である。又本樹脂を膜及び管状として動物及び人体に用いて何等の組織的変化の無かつた事が報告されて居る。仍で著者は以上の如き数々の利点を有するポリエチレン樹脂により人工鼓膜を試作し各種伝音系難聴者に就き聴力増強程度を考察しいさゝか好結果を得たのでこゝに報告し諸賢の御批判を仰ぎたいと思う。

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 Ⅰ.緒言

 1880年Hartmannの報告以来,聾唖の研究は各方面に於て行われ,我国に於ても,田中,豊田を始め多くの学者に依り業績の発表が為されて居る。而して其の間研究対象は聾学校生徒,病院入院或は外来受診者に就いて行われて居るのであるが,長期に亘る統計的観察の発表文献は少く,一方入院,外来患者に就いても其の大部分は幼少者で,其の後再度来院する事は殆んどなく,其の後の経過に関しては不明のままであつた。且つ亦其の後の経過に就いての調査成績の発表も殆んど見て居らない現状である。時恰も恩師立木教授開講15週年に当り,著者は最近15年間の我教室受診聾唖者に就いて各種の統計的観察を行い,一方文書照合,聾学校に於ける調査に基く成績を総括し,聾唖研究の一資料に供したいと考える。

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 副鼻腔の手術に経験のある者は誰れも感ずる事と思うが,極度に制限された視野の下で手術を行うので,先ず出血の問題があると思う。次に鎮痛の問題で此れは中々麻酔が困難である。全身麻酔で行えば良い様なものであるが,直接気道と連絡している為に出血液の嚥下の恐れがある事それを防こうとすれば色々わずらはしい前処置を行わなければならない。而も直接頭蓋顏面壁に侵襲を加える為に麻酔が醒め易い。従つて全身麻酔の進歩甚だしい現在に於てさえも副鼻腔の手術は局麻法に依る事が一番多い。

 吾々が副鼻腔め手術に於て最も望しいものは,出血量が少く,鎮痛作用があつて而も意識が残存する麻酔法(麻痺法と言つた方が正しいかも知れない)である。

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 Ⅰ.緒言

 耳性下垂膿瘍としては,咽後膿瘍の報告は多数あるが,口蓋扁桃周囲膿瘍は比較的に少い。私達は異物によつて慢性穿孔性中耳炎が急性増悪を起し,口蓋扁桃周囲膿瘍を併発した一症例を経験したので,茲に其の大要を報告し御批判を得たい。

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 緒言

 喉頭の良性腫瘍として吾々が臨床上比較的屡々遭遇するのは,乳嘴腫,繊維腫,嚢腫,粘膜ポリーブ及び混合腫瘍等であるが,ノイリノームは極めて稀である。

 抑々ノィリノームはシユワン氏鞘の神経繊維細胞より発生する外胚葉性腫瘍で,中枢神経に好発すると言われるが,稀には末梢神経にも発生する。而して喉頭ノイリノームの症例は私達の知る所では我が国で1例,海外でも僅かに6例を見るのみである。

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 緒言

 1932年Clausenがはじめて気管内挿管麻酔後に於ける肉芽腫の発生を報告した。爾来欧米に於ては本症の30数例が報告されている。我国に於ては気管内麻酔は昭和25年頃より行われた様であるが昭和28年3月多田が初めて本症の1例を報告し,爾来第1表に示す様に10余例の報告がある。我々も最近声帯後3分の1部直下の声門下腔側壁に生じた本症の1例を経験したので報告する。

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 緒言

 化学療法の普及が各科領域の手術の後療法に大いなる改革を斉らした事は諸家の認める所である。その化学療法も全身投与法,局所投与法と年年進歩を続け,耳鼻咽喉科領域では特に局所投与法が著しく普及している。

 我々は最近数例ではあるが副鼻腔,口腔,咽頭の手術後にChloramphenicol(Paraxin,-山之内)を全身的に投与し,その臨床的効果の観察と細菌学的研究を行つたので此処に報告する。

Sturge-Weber氏病の1例 梅田 良三
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 緒言

 1879年英国人Sturgeは顏面右側の血管腫と同側の緑内障を有し,左手に始まる癲癇様痙攣発作を併発せる症例を報告し,1922年Weberはこの種患者の頭蓋レントゲン像で,特有な二重輪廓を呈せる波状の石灰化像を見出した。

 更に1936年BergstrandとOlivecronaは顔面紅色母斑,緑内障,脳の石灰化を主徴候とし,癲癇様痙攣発作共の他の脳症状を併発せるものを一独立疾患とし,之をSturge-Weber氏病と呼称した。本邦に於ても十数年前から本症の報告が見られるようになつたが,本疾患主症状からして最初に我が科を訪れる事の尠きは当然であり,我が科領域における本文献の見当らないのも又当然と思われる。私は最近顏面の紅斑並に流涎を主訴とする幼児で本症と考えられる症例に遭遇したので茲に報告する。

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 1.まえがき

 1943年ストツクホルム大学有機化学研究所のLöfgren及びLundquistは,化学的には塩基性アニリドであり,Cocaine,Procaine類の局所麻酔剤とは構造を異にする一連の化合物を合成し,その内の一つω-Diethylaminoacet-2,6-XylidideをXylocaineと名付けた。其の構造式は次に示すようである。

 本薬剤に関しては多くの研究者達によつて広汎な薬理試験及び臨床試験が行われ発表されている。

CURRENT MEDICAL LITERATURE
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Ann. otolar., Par. 71:2-3 1954

ARSLAN M Toennies chair for exact stimulation of the vestibular apparatus. 133-22

ROURNIER J E, RAINVILLE M J Prophetic value and mode of action of the artificial tympanum. 123-34

基本情報

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耳鼻咽喉科
28巻10号 (1956年10月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:0386-9679 医学書院

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