耳鼻咽喉科 26巻6号 (1954年6月)

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 従来我が国に於て釀母菌症Blastomycosisと呼ばれていたものは戦後には専らモニリヤ症Moniliasis又はキヤンデイダ症Candidiasisと呼ばれて報告されているために,新しい疾患が抗生物質の使用によつて登場して来たかの印象を受けているものも少くないようである。戦後真菌類疾患の分類が米国学派の影響を受けて,我が国に於ても変化していることは確かであるから,この時に当つて,我々の領域に於て口腔,咽頭の釀母菌症と呼ばれてきたものは,抗生物質の出現によつてどんな影響を受けたか,又真菌学Mycologyの上から見て,どんな位置にあり,どんな病名で呼ばれたらよいかということは考えてみる要があると思つた。更に,我々の釀母菌症と呼んできたものはどんな疾患であり,その潰瘍はどんな特徴をもつているかを明かにすることが必要であると思つた。従来文献に発表された内外の報告例は極めて少く,且つその病状の記載が一定していないために,文献を通覧したのみでは,上気道粘膜の釀母菌症はどんな疾患であるかということは全くわからない。

 私は教室に於ける研究15-20を基礎にしてこれ等の問題に就いて考えてみた。臨床家各位の参考に供し,本疾患がもつと注意されることを望んで茲に記載することにした。

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 緒言

 喉頭,食道に異常感覚を訴えて我々を訪れ,舌根扁桃肥大,喉頭の変化,食道の変化等が証明されない場合には,我々は喉頭或は食道の知覚異常と考えていたのである。

 而して喉頭,食道の異常感覚としでは,次のものを挙げることが出来る。即ち 1.異物感として総括されるものには,圧迫感球のある感じ,針のある感じ,何かある感じ,虫のいる感じ,等色々の訴えがある。

 2.疼痛感としで総括されるものには,刺す樣な感じ,引きさく樣な感じ,切られる樣な感じ,焼ける樣な感じ,引張られる樣な感じ,つき刺される樣な感じ,掻痒感,虫のはう感じ等色々の訴えがある。

 3.温度感覚としでは熱のある感じ,熱い感じ冷い感じ等がある。

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緒言

 乳樣突起削開に際して注意せられているものの一つにS状洞の走行異常特に前進と浅在がある。従来これは中頭蓋窠底の下降とともに所謂危険性側頭骨として特別な考慮が払われ,臨床的並に解剖学的に調査研究が行われている。その主な研究対象は,乳樣蜂窠を削開する前に危険性側頭骨を予知する種々の目標の信頼度を追求確立することであり,更に根本的な成因について誼索する研究である。殊に成因については先天説と後天説が対立していて,これが解決には更に多角的観察の必要性が痛感せられる。

 余は最近施行した乳樣突起削開260例中に遭遇したS状洞の走行異常例について,種々の方面から成因の考察を行い興味ある成果を收めたので茲にその大要を報告し諸家の御批判を仰がんとするものであるが,更にS状洞の前進と関係ありとせられている数種の予知目標を計測的数値によつて明らかにするため,解剖学的観察を行つたので,それ等の成績を報告し参考の資料に提供したい。

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要約

 頭部を傾斜或は捻転した時と,しない時の温度性眼震の性欣を比較した。被験者は丙耳機能検査を行つた患者54名で刺戟は5℃の冷水10ccを用いた。比較検討された歌態は次の如く,側臥位の場合と坐位で頭部を出来るだけ側傾した時。腹臥位の場合と坐位で頭部を出来るだけ前傾した時。背臥位の場合と坐位で頭部を出来るだけ後傾した時。正常坐位セ頭部を出来るだけ捻転した時としない時に就て,以上各群同一患者を観察した。その結果頭部を出来るだけ側傾してその上側耳に注水した場合は,側臥位時の上側耳に注水した場合に比べて眼震速度は遅くなるが振幅は逆に大きくなるのが見られ,亦正常坐位で頭部を出来るだけ捻転方向の側の耳の温度性眼震は捻転しない時に比べて眼震がやや微弱になるのが認められた。温度性第2相眼震は側臥位の上位耳と背臥位の時認め,頭部を傾斜した時はやや発現率が少ない。

 本論文要旨は著者の一人高橋が第10回近畿耳鼻咽喉科学会で報告した。

 恩師長谷川教授の御懇切なる御指導御校閲に深謝する。

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 緒論

 吾々は先に副鼻腔への藥液置換法として改良Proetz法を発表した。改良Proetz法によると,慢性副鼻腔炎の患者に於て,単なるProetz法に比して藥液が篩骨洞に非常に良く入る。上顎洞にも良く入るが,然し場合により入らないことがあり,又上顎洞の自然口の位置から入る藥液の量もそう多くないことを認めた。特に粘度の高い液体ではさらに入り難い。

 又改良Poetz法の研究途上,稀でにあるが膿汁が上顎洞を完全に満して空気が全く存在しない場合のあることに気がついた。この場合上顎洞の膿汁を自然口から,鼻腔に出す改良Proetz法前処置を行う前に,ある程度以上の空気を上顎洞に入れておく必要を認めた。この空気を入れるのに自然口から入れていた。併しどうせ空気を入れるなら,膿汁を全部空気と置き換え,次で藥液を入れれば良いわけで,ここにこの経自然口上顎洞藥液置換注入法を考え出したわけである。又この方法は上顎洞根治手術後に,自然口の部位から結締織内に再生して来る。

気になる鼻 S
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 私の知つてる或る婦人に,妙な癖を持つているのがある。35,6歳の中流婦人で,相当の財産と閑暇とを持ち,人柄もよく快活で,顏立も10人並というところ,まあそこいらにざらにある女なのである。ところで,何かのついでに,鼻の話が出ると,彼女はひどく敏感で,即座に片袖で自分の鼻を押え,片手を振つて,鼻の話は止めませうと云うのだ。そのくせ,彼女の鼻はいくらか団子鼻ではあるが,さほど醜いものではない。それを自分でひどく醜悪だと自信しているらしい。或は鼻で何かよほど不幸な目にあったものらしい。―彼女に云わすれば,意志や修養など自分の力ではどうにもならない肉体的欠陷は,当人の前で口にすべきではないのである。

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 副鼻腔炎特に前部副鼻腔炎を鼻内より手術する場合,半ば盲目的に行わなければならず,不徹底であることはまぬがれない。

 殊に本邦人は狭鼻型が多い事が重要な一因子を持つているのは勿論であるが,例をHalle氏鼻内手術にとればLappenを作る際,前の切線形成の困難性は鼻前庭と固有鼻腔の境界即ち皮膚と粘膜との境界(鼻閾)が堤状に隆起している為で,此を圧迫すれば此の切線を施行すべき部位は明視野に現れて来る。

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 低い鼻を高くし醜い鼻を美しくしようとする試みは,非常に古くから行われ,その材料もパラフィン,骨,象牙,合成樹脂等多くのものが使われ又プロテーゼ自身にもいろいろな工夫がなされているが,こゝに高度の鞍鼻に対して特殊なプロテーゼを插入して良い結果を收めたので報告する。

重複兩側上顎癌の1例 勝田 三郞
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 緒言

 悪性腫瘍の重複は剖検上差程少くないが耳鼻咽喉科領域に於ける臨床例としてはMenzelの食道及び扁桃腺の扁平上皮癌,小野の食道及び舌の扁平上皮癌,粟田口の扁桃腺の扁平上皮癌及び食道の基底細胞癌,笹井,近藤の下顎及び硬口蓋の扁平上皮癌及び筋肉腫,小林の上顎洞の扁平上皮癌及び直腸の腺癌,Bonatiの咽頭及び舌根部の棘上皮細胞癌の6例に過ぎない。

 余は最近両側上顎洞に原発せる扁平上皮癌の1治験例を経験したので報告する。

上顎洞内埋伏歯牙の1例 明石 壽也
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 緒言

 上顎歯牙が位置異常として鼻腔内に出現せる例を始めて報告したのはAlbinus(1754)で,本邦に於ても金杉(明治34年)が報告して以来比較的屡々見られる。然し歯牙が上顎洞内に出現せる例は泰西ではDubois(1878),Marshall(1886),Spitzer(1889)等の報告があり,本邦に於ても明治40年久保(猪)が記載して以来和田(明治42年),天野(明治43年),浜地(明治43年)等の報告があるが比較的稀有な疾患で内外文献を通じて40数例を集め得るに過ぎない。

 私は最近左慢性副鼻腔炎急性増悪症の診断の下にX線撮影を行い,左上顎洞内に歯牙樣陰影を発見し,副鼻腔炎根治手術により上顎洞内より得た歯牙及びその周囲組織を検索したので報告する。

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 緒言

 種々なる組織成分より成る所謂混合腫瘍が屡々発生機転の複雑な部位に生ずる事は衆知の如くであり,我が領域鼻咽腔,咽頭,口蓋に於ては内外胚葉の形成過程に於て其の陥入,萠芽の転移を来し易いので,組織学的,腫瘍学的に興味深い症例が見られる。

 我々は最近比較的稀有と思われる鼻咽腔類畸形腫の一例を経験したので,此処に報告し諸賢の御批判を仰ぎ度いと思う。

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 当今,婦人の化粧を説いた本には,何れも鼻柱の低いものは,鼻柱に白粉をこく塗ることで,高く見えるからであると云つている。鼻の化粧は昔から説かれたものと見える。室町初期の古書「めのとのそうし」に,婦人の化粧法を説いた中に,鼻の化粧について,「はなは,人の顔のうちにさし出てたかく,めにたつものにて候,あひかまつてしろくおんけはひ候,さし出て見にくき物にて候」(群書類従卷477)とあつて,鼻柱に,白粉をぬれば,高く見えて見悪いものであるから,必ず塗るべからずと教えている。此の頃は鼻の高いのは見悪くいものとして,好まれなかつたと見える。また応永年代の古書「身のかたみ」という婦人の化粧を説いた本に,耳と鼻とについて,第4.御みゝはおんぐしのはづれよりありありとさしいでたるは,みにくきものにて候,おんぐしのびんのわきよりいでたる筋を十すぢばかり御とり候て,かみよりかかりたる御びんを,やまとぐしにて,みぐしけづりかけられ候てうつくしうかゝり,みみはさしいて候まじく候。

 第5.御はなは,顔のうちのぐに,とりわきさしいりに,めにたつものにて候,けしようのうちにて御心ををそへられ候へ,こくしろくあそばされ候な,よそのところよりはちと薄く御けはひ候べく候。

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 緒言

 耳鼻咽喉科領域に於て最も多く行われる手術は恐らく,口蓋扁桃摘出術であろう。しかし此の問題は,従来より,扁桃機能の問題と共に種々論議され,特にその手術適応術式,合併症等に関しては枚挙にいとまのない位の論説が発表されており略,論議し盡された感がある。最近中,小学校における保健衛生管理の進歩と共に其の集団摘出キー部行われる樣になり,又特異体質,其の他の原因に基づく二三の偶発症例も報告され,再び,重要視されて来ている反面,最も手近かな問題である手術後食慾,特に其の食事摂取に関しては案外等閑視されている樣な印象を受ける。

 私等は京都府立医科大学附属伏見病院耳鼻科にて昭和27年7月中旬より,9月に亘る約45日間に満4才より,満20才に亘る80余例の扁桃摘出を行い,主として術後の食慾,食事摂取に関し観察を試みた所考えさせられる2〜3症例に遭遇したので総括報告する。

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 緒言

 頸部淋巴腺腫瘍を来すものには種々の原因に依る炎症,鼻,咽,喉頭領域に於ける腫瘍の転移等があり,其の診断,治療上屡々困難に相遇することがある。

 本例は梅毒に依り左側声帯及声門下腔組織に腫瘍樣腫脹を来したと思われる症例にして診断,治療,経過上興味があるので茲に報告する次第である。

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 Ⅰ.臨床方面緒言

 Badonは古来漢法や民間藥として用いられて居つた植物,日本産大戟科に属するMallotus Japonicus J. Mueller(あかめがしは)の主成分を抽出したものであつて,其の主成分は其の構造がBergeninに一致する下記の樣な物質であつてBadon粉末は本化合体の3.4%を含有して居る。

 本剤の臨床面に於ける応用は古来苦味製剤として内服すれば整腸用として知られているが,其他の純藥理作用に就いては未だ完壁の域に到つて居ないが,数年間の我臨床の経験に基いて之を概説すれば組織細胞の賦活作用を有し,臨床的効果として諸種の悪性腫瘍の疼痛に対する抑制緩和作用と,食慾増進作用,潰瘍傷面の治療作用を有して居る事は確実の樣である。

CURRENT MEDICAL LITERATURE
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PERRET P An unusual case of fulminating laryngotracheobronchitis in an adult. 1-8.

SERCER A Notes on the cause and correction of protruding ears. 9-16.

基本情報

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耳鼻咽喉科
26巻6号 (1954年6月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:0386-9679 医学書院

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