病院 78巻4号 (2019年4月)

対談

病院食の未来 東口 髙志 , 今村 英仁
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病院食は,日々進化を遂げている.

一方,働き方改革と人材不足,そして食品衛生法の改正によって,病院食の提供は困難に直面している.

NSTの普及に努め,長年にわたり日本の栄養管理の質向上に取り組んできた東口氏に,これからの病院食のあり方を聞く.

特集 どうする,病院食

巻頭言 今村 英仁
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 食事を取れるようになったら退院が求められるような現代の病院において,改めて病院給食の目的を問われたとき,どのように返答するのだろうか.

 1994年の健康保険法の改正により「入院時食事療養費」制度が導入された.病院給食は医療の一環として食事療養という名称が付いたが,一方で,療養の給付からは外された.その際の厚生労働省の説明は,「日常生活でも食事は普通に取るのだから,その生活コストに相当する部分は患者の自己負担で行うべき」というものだった.その結果,それまでの「冷たい,早い,まずい」(適温適時は1992年に制度化)という患者の病院食に対する意識は,「食事代を負担するのだからそれ相応のおいしい病院食を提供すべき」との考え方に変わった.病院側もそれに応えて努力を重ね,本誌の2014年5月号特集「病院食再考」では,さまざまな明るい病院食の未来が語られていた.それがわずか数年後に病院給食の危機が叫ばれるようになるとは,誰が予想しただろうか.

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●高齢社会を迎えて,食事療法は多様化,個別化しつつある.

●食事療法を実施する病院給食の運営が危機的状況になる.

●病院給食の合理化は,病棟での臨床栄養管理と連携して実施されなければならない.

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●食事療養費は年々抑制されている.

●手厚い栄養管理を行うほど,個人対応が増え,人件費・食材料費ともに増加する.

●経営安定化のため,不効率(個人対応)と効率(時間・生産ライン)の両立を図る必要がある.

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●現在,病院給食を受託する給食会社は,受託数の増加と人手不足によって,受託が困難な例が増えつつある.

●病院給食の提供を継続するには,人手不足の解決と働き方改革の実行が不可欠である.

●人材確保には採用上の工夫が,また働き方改革には工数減や院外調理の検討などが求められる.

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●食品衛生法の改正により,全ての食品等事業者にHACCPに沿った衛生管理の実施が求められることとなる.

●衛生管理計画の策定・実践・記録を通じて,衛生管理の状況を「見える化」する.

●給食施設については,大量調理施設衛生管理マニュアルや事業者団体の手引書を参考に,簡略化されたアプローチによる衛生管理が可能である.

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●病院における給食提供にとどまらず,病院来訪者や職員へのランチ提供,地産地消の取り組みとして地元農家の野菜販売や農業法人設立と食材栽培,さらに地域多世代交流施設での食の提供にも取り組んでいる.

●これらの取り組みを通し,星総合病院が考える病院給食の在り方,地域全体で食と健康について考えることが,病院給食の課題解決の糸口になる.

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●新病院建て替え工期に併せ,ニュークックチルシステムを導入し,運用している.

●業務の集約により,スタッフ一人当たりの業務量が増えた.調理機器の視点から見た業務スケジュールの組み立て,また幅広い年齢層のスタッフに対し,業務の標準化が有効である.

●必要人員削減がメリットとして目立つニュークックチルシステムであるが,厨房機器類のメンテナンス,更新費用も含めた長期的なコスト管理も重要である.

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●2019年4月から施行される働き方改革を推し進めるためには,「患者さんのため」から「職員のため」に考え方を変える必要がある.

●当院では職員の業務効率化のために,セントラルキッチンシステムを導入した.結果,労働者の負担の軽減につながり,中規模病院では作ることができなかった食形態を作ることができた.

連載 医療提供体制の変貌 病院チェーンと保健・医療・福祉複合体を中心に・1【新連載】

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■はじめに 連載開始に当たって

 日本の医療提供体制(旧・医療提供制度)の研究は,病院勤務医時代からの私の中心研究テーマです.私は1972年に東京医科歯科大学医学部を卒業した直後に,川上武先生の指導を受けながら,医療問題の研究を始め,1974年に「戦後医療機関の変遷」を発表しました1).それ以来現在まで45年間,医療提供体制の構造分析(実証研究.量的研究)や政策研究,理論研究を続けてきました.

 実証研究の中で特に思い出深いのは1980年代後半に行った病院チェーンの全国調査研究と1990年代後半に行った保健・医療・福祉複合体(以下,複合体)の全国調査研究で,ともに『病院』誌に掲載しました2,3).両研究では,官庁統計の空白(盲点)を埋めるため独自の全国調査を行い,得られた結果の医療経済学的考察を行いました.両研究はその後大幅に加筆して,医学書院から出版した単行本(『現代日本医療の実証分析』4)と『保健・医療・福祉複合体』5))に収録しました.私は,両者は日本の医療提供体制の「認識枠組み」を変えた研究と自己評価しています.両研究を含め,「医療提供体制の変貌」の主要研究は,昨年出版した『医療経済・政策学の探究』6)に再録しました.

 私は2000年以降も医療提供体制(改革)の政策研究は継続していますが,本格的な実証研究は,『病院』誌に2001年に発表した「京都府の介護保険指定事業者の実態調査」7)以降,20年近く行えていません.

 言うまでもなく,2000年前後以降,日本の医療提供体制は大きく変貌しています.それについての研究論文や事例報告も少なくありませんが,今村英仁氏が指摘しているように,私の「著書以降,このテーマについて全国を網羅した詳細な実態調査と医療経済学的分析を行った著書[や論文(筆者注)]」は発表されていません8).そこで本連載,「医療提供体制の変貌-病院チェーンと保健・医療・福祉複合体を中心に」(隔月掲載)で,ほぼ20年ぶりにそれに挑戦したいと思います.

 その「導入」として,第1回では,病院チェーンと複合体についての私の今までの主な研究のポイントを紹介するとともに,当時の私の分析・予測の妥当性を検証します.第2回は,私以外の諸研究のレビューを行います.第3回は,既存の官庁統計を用いて,2000年以降の医療提供体制の変貌を示します.言うまでもなくこれには大きな限界があるので,第4回以降は,独自調査に基づいて,病院チェーンと「複合体」の最新の全体像と特徴的な動きを明らかにしたいと思います.ただし,この部分は「探索的(走りながら考える)研究」にならざるを得ないので,第4回以降の具体的テーマはまだ示せません.ご了承ください.

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 ふくやま病院(兵庫県明石市)は,旧病院の老朽化に伴い,JR西明石駅前から,山陽電鉄・西新町駅の高架化によって生まれた駅前広場に移転・新築された.旧病院から2.5km離れた土地での建て替えに際して,譜久山剛理事長は新しい地域の住民にどのような病院が求められるのかを探りたいと考えた.そこで,コミュニティデザインの第一人者である山崎亮氏(studio-L代表)の手を借り,まず病院職員が話し合う機会を設けた.病院幹部と職員の想いは「病気を防ぎ,在宅復帰を支援して,人が健康になれる場所にしたい」という方向で合致し,「『また来てね』と言える病院」というコンセプトが固まったという.

連載 アーキテクチャー×マネジメント・52

加古川中央市民病院 河合 慎介
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 総務省による公立病院改革のガイドライン1, 2)では,①健全経営,②再編・ネットワーク化,③民間的経営手法の導入の3つの視点が示された.特に再編・ネットワーク化について,病院間での機能の重複や競合を避けて適切な機能分担を図ること,他の医療機関と経営主体の統合再編や事業譲渡なども検討することが言及された.兵庫県下でも統合再編が積極的に推進され,これまでに北播磨総合医療センター(2013年),県立尼崎総合医療センター(2015年),公立朝来医療センター(2016年)が整備され,今後も予定されている病院や,さらに検討中の病院もある(図1).ここではその一例として加古川中央市民病院の統合再編のプロセスや運営の実態と建築計画の関係を報告したい.

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■はじめに

 本稿で紹介する東八幡平病院は,岩手県の県庁所在地である盛岡市の北西部に位置する八幡平市にある.八幡平市は2005(平成17)年に西根町,松尾村,安代町の3町合併により誕生した.松尾村には,かつて日本で最大の硫黄生産量を誇った松尾鉱山があった.しかしながら,産業構造の変化と海外からの輸入の増加,石油精製工場において脱硫装置の設置が義務付けられたことによる副産物としての硫黄生産の増加などにより,需要量が激減し,1969(昭和44)年に倒産することになる.一時期1万人以上の人口を抱えた鉱山地域の人口は激減した.その後,北部の安比高原のリゾート開発などに取り組むが,経営難から経営権が海外資本に売却されるなど,厳しい状況が続いている.

 図1は八幡平市の人口の状況を見たものである.2018年現在で2万5千人の人口は今後さらに減少し,2040年には1万5千人程度になると予想される.その原因はコホート分析の結果からも分かるように,少子化,若者層の流出,そして死亡の増加である.2015年の65歳以上人口割合は36.2%,75歳以降人口割合21.1%であるが,これが2040年にはそれぞれ52.8%,35.9%になると予想されている.

 図2は上記の人口推移を前提としたときの傷病構造の変化を見たものである.外来はいずれの傷病においてもすでに減少局面にあり,また入院も肺炎,骨折,脳血管障害,慢性心不全が2030年くらいまで現状と同レベルであるが,その後は減少局面に入る.その他の傷病についてはすでに減少傾向が続いている.要介護高齢者の数も2025年くらいまでは現状と同レベルであるが,その後急速に減少する(図3).

 市内の医療機関の状況は,国民健康保険西根病院(内科・外科・小児科),東八幡平病院,診療所8カ所(うち2カ所は国保診療所),歯科診療所9カ所となっている.

 人口減少と高齢化が進む地域で,地域医療を担う病院をいかに維持していくかは非常に重要な地域政策である.こうした地域においては限られた人的資源で効率的にサービス提供を行うことが求められるが,それは必ずしも国の医療・介護政策と整合性のあるものではない.特にこうした地域で地域医療を担う病院が民間病院である場合,経営の自立性も求められるため,一般財政などからの補助が入る公立病院とは異なり,社会経済状況,医療・介護政策の状況を踏まえながら,より厳しいマネジメント姿勢が必要となる.

 本稿ではこうした問題意識に基づいて,厳しい社会経済環境の中で八幡平市において地域リハビリテーションの実現を目指している東八幡平病院の取り組みを紹介する.

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■労災保険給付に関する調査を侮ってはならない

 労働基準監督署による調査のうち,①使用者が労働基準法などの労働法令を遵守しているかどうかの立入調査(臨検監督)については,前回解説したとおりである.今回は,②労働者の行った労災保険給付の申請を認めるべきかどうかの判断のための調査について述べる.

 上記②の調査は,労災保険給付の支給の可否を判断するための調査であり,労働基準監督署による直接的な指導や処分などのための調査ではなく,仮に,労働者災害(以下,労災)として認定されたとしても,それ自体で直接使用者に何らかの支払義務などが発生するものではないこともあり,一般に,労働基準監督署による調査といえば臨検監督が連想されることが多い.

連載 多文化社会NIPPONの医療・19

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 全国的には大きく報じられなかったが,2018年12月に静岡地方裁判所が出した判決は,外国人医療に関わる全ての人に大きなインパクトをもつものであった.論点の一つが「応召義務」である.

 まず,概要を紹介しよう.

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病院
78巻4号 (2019年4月)
電子版ISSN:1882-1383 印刷版ISSN:0385-2377 医学書院

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