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■はじめに 連載開始に当たって
日本の医療提供体制(旧・医療提供制度)の研究は,病院勤務医時代からの私の中心研究テーマです.私は1972年に東京医科歯科大学医学部を卒業した直後に,川上武先生の指導を受けながら,医療問題の研究を始め,1974年に「戦後医療機関の変遷」を発表しました1).それ以来現在まで45年間,医療提供体制の構造分析(実証研究.量的研究)や政策研究,理論研究を続けてきました.
実証研究の中で特に思い出深いのは1980年代後半に行った病院チェーンの全国調査研究と1990年代後半に行った保健・医療・福祉複合体(以下,複合体)の全国調査研究で,ともに『病院』誌に掲載しました2,3).両研究では,官庁統計の空白(盲点)を埋めるため独自の全国調査を行い,得られた結果の医療経済学的考察を行いました.両研究はその後大幅に加筆して,医学書院から出版した単行本(『現代日本医療の実証分析』4)と『保健・医療・福祉複合体』5))に収録しました.私は,両者は日本の医療提供体制の「認識枠組み」を変えた研究と自己評価しています.両研究を含め,「医療提供体制の変貌」の主要研究は,昨年出版した『医療経済・政策学の探究』6)に再録しました.
私は2000年以降も医療提供体制(改革)の政策研究は継続していますが,本格的な実証研究は,『病院』誌に2001年に発表した「京都府の介護保険指定事業者の実態調査」7)以降,20年近く行えていません.
言うまでもなく,2000年前後以降,日本の医療提供体制は大きく変貌しています.それについての研究論文や事例報告も少なくありませんが,今村英仁氏が指摘しているように,私の「著書以降,このテーマについて全国を網羅した詳細な実態調査と医療経済学的分析を行った著書[や論文(筆者注)]」は発表されていません8).そこで本連載,「医療提供体制の変貌-病院チェーンと保健・医療・福祉複合体を中心に」(隔月掲載)で,ほぼ20年ぶりにそれに挑戦したいと思います.
その「導入」として,第1回では,病院チェーンと複合体についての私の今までの主な研究のポイントを紹介するとともに,当時の私の分析・予測の妥当性を検証します.第2回は,私以外の諸研究のレビューを行います.第3回は,既存の官庁統計を用いて,2000年以降の医療提供体制の変貌を示します.言うまでもなくこれには大きな限界があるので,第4回以降は,独自調査に基づいて,病院チェーンと「複合体」の最新の全体像と特徴的な動きを明らかにしたいと思います.ただし,この部分は「探索的(走りながら考える)研究」にならざるを得ないので,第4回以降の具体的テーマはまだ示せません.ご了承ください.
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