病院 78巻5号 (2019年5月)

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へき地医療や政策医療など採算性の低い医療を行う自治体病院は,地域医療の最後の砦になっている場合も多い.

民間病院と協同して地域の医療を守れるか.病院の統合・再編のあり方についてうかがう.

特集 地域の医療を残すために—病院の統合・再編

巻頭言 伊関 友伸
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 わが国の病院の病床数は,1961年の国民皆保険の達成,高度経済成長による国民の所得向上,さらには1973年の老人医療費の無料化などを契機として急激にその数を増やしてきた.1985年の医療法改正により,都道府県における地域医療計画の策定と病床の規制が実施されたものの,その後の駆け込み増床を含め,1992年には168万床に達するに至った.

 OECD Health Statistics 2018によると,わが国の人口1,000人当たりの病床数は13.1床で,米国2.8床,英国2.6床,ドイツ8.1床,フランス6.1床に比べても多い状況にある.人口1,000人当たりの臨床医師数は,日本2.43人,米国2.58人,英国2.82人,ドイツ4.19人,フランス3.15人で,世界的に見ても過大な病床数に少ない医師が分散配置され,過酷な勤務体制を生んでいる面がある.

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●2025年の超高齢社会を見据えて,各地域において質が高く効率的な医療提供体制を構築するため,都道府県は医療計画の一部として「地域医療構想」を策定し,一部の医療機関では統合・再編が行われている.

●今後,追加データなどを示しながら,統合・再編を含めたさらなる見直し検討を促進させる.

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●統合・再編病院は,大規模病院を中心に医師数・診療単価を向上させている.

●公立病院の経営統合は医師採用力や救急医療の強化を主目的とするため病院施設も統合し,医師を集約化する傾向が強い.これに対して民間病院では,経営難に陥った病院の救済目的の経営統合が多いため,施設統合までする必要はなく,当面の資金手当てや経営改善指導などで対応している.

●経営統合にせよグループ経営にせよ,スケールメリットにより医師らの採用が容易になること,資金調達や購買に有利になることがメリットである.ただし,統合には障壁もあり,提携関係で経営統合に劣らない成果を上げる方法を取り入れる例もある.今後も規模のメリットを追求する統合・再編が増えるのではないかと考えられる.

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●病院の統合・再編事例の成功例からは,医師が集まることで医療提供体制が安定するなどのメリットが読み取れる.

●統合・再編にあたっては,行政や地域住民の意向,職員の処遇や周囲の医療機関との関係などの課題があり,合意形成が難しい.

●公的医療機関は民間医療機関を補完する役割に重点化すべきという一方的な視点に基づくのではなく,地域の医療を残すために多面的な視点に基づく統合・再編の議論を期待したい.

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●2004年度に始まった新臨床研修制度に端を発し,兵庫県丹波市にある県立柏原病院と柏原赤十字病院は,大学の医局員引き揚げにより極端な医師不足に見舞われ,いわゆる医療崩壊が顕在化した.

●2病院という「箱」でなく,医療を残そうと考え,筆者らは病院統合の必要性を早くから訴え続けたが,病院統合は長く議論の俎上に上がらなかった.病院建替え時期に未到達だったこと,統合で生じることが予想される職員処遇,負債の清算などの諸問題など主に開設者側の事情による.

●「県立柏原病院の小児科を守る会」「丹波医療再生ネットワーク」「たんば医療支え隊」をはじめ市民総がかりで医療を守る活動を展開し,「医師ら医療関係者にとって温かい地域になろう」との思いは根付いた.ただ,市民運動が2病院統合に直接的に関わることはなかった.

●県立県営の新病院が2019年7月1日に開院する.3月末で閉院した赤十字病院にあった地域包括ケア病床,感染症病床は病院が,健診センターと1次診療機能は病院併設の丹波市健康センターが,それぞれ引き継ぐ.健康センターは県が指定管理者となり,総合診療医の育成拠点にする.県・市が投じる事業費は212億円.

●教育の充実により病院を再建する方針を掲げた院長の就任により,県立柏原病院は研修医が集まる病院に生まれ変わった.新病院は医学生の宿泊部屋を備えるなど,「教え学ぶ文化の醸成」をハード面から支えることも意識し整備された.

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■はじめに:西北五保健医療圏の状況と自治体病院機能再編成の必要性

西北五保健医療圏の状況

 西北五医療圏(以下,当医療圏)は,青森県西北部に位置し,2市4町(五所川原市,つがる市,鰺ヶ沢町,深浦町,鶴田町,中泊町)で構成され,人口は県内の6つの二次医療圏の中で5番目(131,631人)で,その面積は2番目に広い(1,752.78km2.東西約35km,南北約95km).人口減少率,高齢化率(34.5%)とも6医療圏の中で最も高く,過疎化,高齢化の進んだ地域である.

 2001年から自治体病院再編成の検討が始まったが,その当時,当医療圏には,五所川原市立西北中央病院,公立金木病院,鰺ヶ沢町立中央病院,木造町立成人病センターおよび鶴田町立中央病院の5つの自治体病院があり,当医療圏の急性期医療,救急医療の大部分を担っていた.

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 三重県桑名市にある桑名市総合医療センターは,1市立病院と民間2病院の再編統合により誕生した,全国でも数少ない官民統合型の総合病院である.構想開始から12年,2018年5月より新病棟にて診療が始まったが,ここに至るまでには数多の紆余曲折があった.

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■統合までの経緯

西群馬病院の状況

 西群馬病院は昭和19(1944)年,国立結核療養所として開設され,昭和52(1977)年には肺がんに対する診断治療を本格的に開始した.以後,がん治療に力を入れ,平成5(1993)年には群馬県初となる緩和ケア病棟を開棟.平成15(2003)年には地域がん診療連携拠点病院の指定を受けるなど,県内のがん診療をリードする存在となり,がん専門病院として医業収支で黒字経営を達成していた.

 しかし,昭和45(1970)年前後に建築された病棟の老朽化が進み,新たな病院建築の必要性が高まった.

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要旨

[目的]看護職と看護補助者(以下,補助者)の補助者役割認識を測定する尺度を作成し,信頼性と妥当性を検討する.

[方法]2017年6〜9月に地域包括ケア病棟の看護職3,781名と補助者1,316名を対象に調査を行った.補助者役割を示す19項目について,看護職には「補助者に求めているか」,補助者には「看護職から求められていると思うか」,および「補助者として担いたいか」を尋ねた.項目を患者にとっての機能とチームにおける役割に分けて探索的因子分析を行い,看護職と補助者共通の因子構造を採用した後,尺度の信頼性と妥当性を検証した.

[結果]〈広い視野をもち多様な段階に対応する〉〈ケアを通じて患者の力を引き出す〉〈一員としてネットワークを築く〉〈チームの患者情報を豊かにする〉の4因子計16項目を抽出した.各因子のα係数は0.76〜0.85であった.基準関連妥当性なども確認された.

[結論]補助者役割認識を測定する尺度を作成し,一定の信頼性と妥当性を確認した.

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■法人を支える理念経営

 社会医療法人生長会(大阪府)は,1955年の設立以来,地域のトータルヘルスケアを担う経営を展開してきた.社会福祉法人悠人会と合わせ,事業所数は44,職員数は約5千人を数える.法人の理念である「AIF(愛の医療と福祉の実現)フィロソフィ」が法人内に浸透し,患者をパートナーと捉え,医療者と患者がチームを組む関係づくりを目指している.創設者の故・岸口繁氏が提唱した理念経営が,今も法人に脈々と受け継がれている.

連載 アーキテクチャー×マネジメント・53

大森赤十字病院 小林 健一
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■町工場が集まる下町・大森

 JR京浜東北線で品川駅から2つ目の大森駅は,町工場が多く集まるエリアとして知られる大田区のほぼ中心に位置する.かつて文化人・政治家・実業家らの邸宅街であったエリアと,町工場が数多く密集する下町とが隣接する地に,大森赤十字病院はある(図1).

 住宅が建て込んだ土地で,地域住民の健康を支えてきた大森赤十字病院は,2011年に大規模な現地建て替えを行った.本稿では,住宅密集地域に立地する都市型病院の建て替え事業のプロセスと,新しい病院での経営戦略を見てゆく.

連載 事例から探る地域医療再生のカギ・27

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■何が問題だったのか

病院経営乗っ取り事件の発生

 医療法人八女発心会は,福岡県八女郡広川町で事業を展開する法人である.広川町は人口約19,800人,全国有数のお茶の産地で,最近は九州自動車道広川インターチェンジに隣接する利便性を生かして工業団地が整備され,多数の企業が立地している.

 八女発心会は,姫野病院,介護老人保健施設舞風台,サービス付き高齢者向け住宅舞風台,有料老人ホーム歌楽楽,有料老人ホーム姫野タワー棟,ナーシングホーム奏,久留米リハビリテーション学院,企業内保育所おひさま,はなまる保育園などを運営する.

連載 事例と財務から読み解く 地域に根差した中小病院の経営・15

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 千葉市の南東,緑区のニュータウン,おゆみ野地区にある,おゆみの中央病院は,2014(平成26)年3月開設と,比較的新しい病院である.地域の医療・介護事業を含めた社会資源について,単なる連携にとどまらない,それぞれの結びつきを深化させた統合ヘルスケアネットワークの実現を目指し,地域貢献活動を中心とした取り組みにより,地域基盤を支え,自院の医療の質の向上につなげている.

 これらの取り組みは,地域包括ケアシステムの構築において,医療・介護の連携が一層求められる中で,参考となる事例と考えられる.また,病院開設に際して,地域の医療ニーズを踏まえた病棟構成検討の経緯についても,新規病院開設時や病床機能再編の際の参考になる事例と考え,今回紹介する.

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■メンタルヘルス不調とは

 近年,労働者の受けるストレスは拡大傾向にあると言われ,実際,精神障害などに係る労災補償は請求件数,認定件数とも増加傾向にある.また,厚生労働省の平成29年労働安全衛生調査によれば,過去1年間にメンタルヘルス不調により連続1カ月以上休業した労働者は0.4%,退職した労働者は0.3%との統計が出され(「医療,福祉」業界でも全体と同割合),単純計算で言えば,毎年,職員250人に1人が1カ月以上休職し,330人に1人が退職することになる.なお,自殺者については全体的に減少傾向にあるものの年間2万人を超え(うち,医療・保健従事者は323人),自殺の原因・動機に勤務問題が含まれる者は約2,000人も含まれている注1

 そもそもストレス自体は,現代社会において,社会生活上不可避のものであり,特に人の生死に関わる場面が多く,精神的にも肉体的にも緊張度の高い職務に従事する医療機関の職員は,他の業界に比して,日常的に強いストレスに晒されているともいえる.

連載 多文化社会NIPPONの医療・20

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 年々増加している外国人のカテゴリーの一つである「留学生」は,訪日客と同じように,誘致のための数値目標が政府によって掲げられている.2008年に「30万人」と設定されて以降,日本人の18歳人口が減少するなか経営の厳しい各大学も留学生確保に熱心に取り組んでいるが,学生数の増加が著しいのは日本語学校である.ただし,統計の数値を理解するためには注意点もある.2010年にはそれまで別に存在していた日本語学校や専門学校の就学ビザを,大学や大学院の留学ビザに統合しているからである.2019年1月に文部科学省が発表した2018年の留学生数は298,980人,前年比で31,938人(12.0%)増となった(図1).目標の30万人まであとわずかとなったタイミングで,次のような報道があった.

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78巻5号 (2019年5月)
電子版ISSN:1882-1383 印刷版ISSN:0385-2377 医学書院

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