病院 40巻1号 (1981年1月)

特集 「人間性回復」への動き

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 21世紀を目前にひかえて,広く既に欧米諸国で独自の学問研究領域として定着している「バイオエシックス」(Bioethics)の全貌と,その具体的な展開のありさまが,昨年ようやく我が国にも紹介されるに至り各方面の注目を浴びた.

 本稿では,この今までの専門分野のわく組みを破り,更に学際研究のアプローチをも超えて新しく統合されるに至った「生命(ビオス)と倫理(エティケー)についての学問体系」としての「バイオエシックス」が,その研究対象の重要テーマとしている「医療における人間性の尊重」「患者の尊厳と権利」「医療と倫理」等々の問題を手掛かりに,アメリカにおける病院の機能に焦点を合わせて,筆者なりの考察をすすめてみたいと思う.

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病院とは何か

 砂原 ぼくは,ばかの一つ覚えみたいに,長いこと一つの国立の病院にいたというだけの人間ですけれども,佐藤さんは東京白十字病院の院長をされていたときも,地域的なサービスをずいぶんやられていたし,院長をやめられてもインドに1年くらい行かれていた.今は,市ケ谷にある診療所におられたり大学にも関係されたりしている,とにかく,極めて活動的な,医者には珍しいと言ったら怒られるかもしれないけれども,行動的な方で,病院というものをいろいろな側面から,内から外から見てもおられる.あるいは病院の内と外を通じて医療のありようを見ていらっしゃるわけですが,結局,病院とは何だとお考えですか.

 佐藤 最初に答えなければいけないんですか(笑)、先生からまずおっしゃっていただいたら…….

「人間性回復」の試み

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 新しい大学病院の建設などを契機にして,昭和46〜7年からこの10年間に急速に,病院は諸技術革新の成果をハードウエアとして取り入れた.このいわば"にせもの"の発展には次のような欠点を残したと言えよう.

 ①ほとんど無反省に技術革新の結果の道具のみを導入した. ②道具そのものの安全性の確認が遅れたままである. ③道具があてはめられる医療のシステムの検討が残されたままである. ④道具を取り扱う人間の側の準備が不足したままである.

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 医療の歴史をみると,かつては洋の東西を問わず宗教とのつながりが強かった.しかし自然科学の一分野としての医学の発達とともに,その関係は次第にうすれて今日に至っている.

 技術革新の現代社会においては,機能を尊重するあまり,人間を単なる機能の担い手とみる風潮を生じ,この考え方が医療の場にも及んでいる.そこでは人間の生命も健康も病気も,物質現象またはその変化としてとらえられる危険があり,人間の心の問題はおろそかにされがちである.

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 「呆け老人をかかえる家族の会」という珍しい会が昭和55年1月,京都で発足した.それは燎原の火が燃えるように全国に支部ができかかり,現会員およそ900.

 互いに励まし合い,看護の仕方を模索しつつ,その輪を広めている.

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 人は一度は必ず死ぬという厳然たる真実の前に立って,そのドラマの幕引きをする医師は,なんともやり切れないその場面を荘重に,しかも厳粛に演出しなければならない羽目に立たされているのである.

 そう遠くない昔は,各家庭で家族に看護されながら死を迎えていた.現在の核家族化の進行と狭い住居により,更には最近の医学の進歩による十分な手当てを受けるためには,どうしても入院治療となる場合がほとんどである.

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 医療費の不正請求,脱税,最近では富士見産婦人科病院における乱診,乱療など,医療の荒廃に対して厳しい社会的批判が高まっている.しかし,このような事例は医療界全体からみれば極めてまれなケースであろう.大多数の病院は矛盾に満ちた医療制度のもとで「いたわりの心をもって行う医療」「来てよかった病院」を目指し,医療の高度化と病院の人間化に努めているはずである.

 とはいうものの,院内における個々の設備や患者サービスについて考えてみたとき,あらゆる面で患者中心の医療が行われているかとなると疑問な点も多い.

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 離島救急患者の家族のために,その待機宿舎が長崎県により本院内に設置されたのは,昭和47年10月である.これは,当院から県当局に要望して早速実現の運びになったものであるが,きっかけは離島の知己の開業医から私に寄せられた依頼によるものである.

「離島の住民は,本土に比べて経済的に非常に苦しい.重症の緊急患者をヘリコプターで輸送治療されることには,深く感謝していますが,このため家族が旅館に宿泊する費用1日約3千円の支出が想像以上に大変なのです」

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 生活水準の向上に伴い食生活も豊かになりましたが,その半面高血圧,糖尿病などの成人病が増加の傾向にあります.医学医療の進歩はすばらしいもので,難病と言われるものも高度の医療で次々と克服されていますが,多くの病気は食事との関係も深いため食事療法を必要とする患者が増えています.ここに住む地域住民が健康で長生きするためには,健康増進,予防,早期発見,治療,社会復帰と一貫したシステムとチームワークで活動することが大きな効果を生むと考えます.私たちの病院は4年前に「給食」から「栄養」科に名称を変え,他のパートと協力して病院の内外で栄養指導を行っています.

 当院のある茅野市は長野県の中心諏訪湖の東,八ケ岳山麓に位置します.人口は4万3千の農村地帯で蓼科,白樺湖の保養地をひかえ極めて自然環境に恵まれたところです.

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 病院という所では,そこで働く人々の勤務時間に合った運営がなされていたのが今までの基本的な姿であったように思う.夕方5時を過ぎるころから,数少ない人たちで多くの患者を守って行くことは心的,物的に多くの問題があろう.

 給食部門の職員もこの例に漏れず,他部門との関係があったにしても,多くは早く帰りたいとの意識が心の根底にあったことは否めない.その結果,ひどい所では4時30分に夕食を出すという現象もみられている.「患者のため」の食事ではなく,「職員の勤務時間のため」の食事時間ではないかと思う.

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 問診の重要性に気付いたのが昭和40年ごろである.そこで比較的多い腰痛に自覚,他覚症状の項目を何度も考え直して,もうこれ以上のものはないところまで設問内容を吟味して問診カードを作ってみた.

 いよいよスタートしてみたが,問診で100数項目を聞くためには,1人に30分以上かかり,患者も医療側もそんなにしつこく聞かなくてもよいではないかと反論の多い時代であった.

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 医学の日々の進展とともに新薬が次々に開発され,病院における薬剤師の業務量は年々,膨張の一途をたどっている.そして業務の合理化,調剤や製剤の技術向上,患者待ち時間の短縮などに薬剤師の心が向けられ,薬を投げ与える,すなわち投薬という言葉に象微されるように,患者と薬剤師との人間的な触れあいは全く失われてしまった.しかし近年になって患者サービスの一環としていろいろ試みられ,患者と薬剤師の間における人間性回復の兆しがみえてきた.

 当院においても,患者との唯一の接点である薬の交付窓口での応対に眼が向けられた.薬を渡すとき,一日も早く病がなおるように祈りを込めて,「おだいじに」と声をかけることから始まった.用法の難しいものは使用説明書を作製して薬袋のなかに入れるとともに交付時には声をかけて説明するようにしている.初めての患者には,処方箋発行時に(新)の記号を付け,その患者には「使用法は分かっていますか」と聞いて使用法について間違いのないようにていねいに指導する.また薬の相談窓口を設け,薬について分からないことは何でも相談に応じている.

「人間性回復」の試み 資料

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 アメリカ病院協会は以下の諸権利を遵守することが,より効果的な医療に役立ち,患者や,担当医,および病院にとっても,大きな満足をうる途であることを期待して,ここに患者の権利章典を提示する.本協会はまた診療の最も中心たるべき患者に代わって,会員病院が本章典を支持することを期待する.適切な医療において,医師・患者関係の重要さは周知されている.この伝統的な医師・患者関係は,医療が組織的な構造によって提供されるとき,新しい局面を迎える.法律的にも,病院組織が患者に対して責任のあることは判例として確立されている.つまり以下の諸権利は肯定されるという認識は成立しているのである.

 1.患者は親切・丁寧な医療をうける権利がある.

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なぜ『人間性の回復』か

 中川 非常に私的な話から申しますが,私は「医学概論」を担当しています.ときどき外国へ行ったり,外国の人たちと接触する機会があり,横文字の名刺が必要になります.そこで,14,5年前に勝手にMedical Humanitiesという英語を名刺に刷り,あちこちで渡していたのです.当時はいちいち説明しないと分かりませんでしたが,7,8年前から,英語圏の人ですとすぐ分かるようになりました.

 というのは,アメリカでは,この言葉が制度化されています.医学部を含め保健科学関係の大学には必ずメディカル・ヒューマニティーズのセクションができました.社会科学は前からありますが,医療と人文科学の関係領域を扱います,デパートメント・メディカル・ヒューマニティーズに教授が12人もいるところもあります.

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 新潟駅から車で西に20分ほど行くと,日本海に面した防風林を背に風変わりな建物が目につく.社会福祉法人新潟市社会事業協会信楽園病院(320床,小川健比子氏設計)である.更に病院の裏側にまわると,各種福祉施設が視界いっぱいに取り囲んでいる.すなわち特別養護老人ホーム,軽費老人ホームA型,B型,老人福祉センター,保育園,児童センター,精薄児収容施設などで,医療と福祉の総合センターを形成している.

 信楽園病院の診療内容を一般の総合病院との比較でみるとき,極めてユニークである.というのは,守備範囲を成人病に重点をおき,可能な限りの診療レベルの高さを維持しようとしていることである.患者の大半は大学病院,がんセンター,市民病院,地区開業医からの紹介患者である.したがって,慢性疾患が主体で,急性期の疾患は従である.また,外来診療は退院患者のフォローアップに的をしぼり,1日100名前後の予約患者を扱い,いわゆる一般外来患者は極めて少ない.

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 畏友内野先生は32歳で済生会港病院長に就任したが,病院が爆撃により焼失したため,長い間空屋になっていた木造の吹田町役場の一室で看護婦3人と診療所を開設.医療器具や薬品もすべて自宅より持参し,爾来外部からの財政援助を受けることなく,独力で隣接地を買収するなどして,病床数500,外来1000人の現在の吹田病院に成長させ,また肢体不自由児施設も併設,更には特別養護施設も現在建設中と病躯に鞭打って大車輪の活躍で,その奮闘振りは現代の社会に異彩を放っている.

 なおその間ストライキで閉鎖寸前の泉尾病院長を引き受けて,これを解決再建させ,また茨木診療所長も兼務して病院に昇格させている.学問的にも37年目本で最初にサリドマイド児に関する論文を発表,発売禁止のきっかけを作り,新産児発汗の論文は現在もイギリス,アメリカの学術雑誌に引用されている.

リハビリテーション・その現状

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 考えてみれば日本というのは不思議な国であり奇妙な社会である.映画については専門的に何も勉強したことのない人が映画評論家,医学の勉強は全くやったことがないのに少し物を書きスポンサーつきで外国を一周し見て回りいつの間にか医事評論家と自称,他称し,音楽の専門的な勉強を何もやっていない人が音楽療法を論じたりする.永らく外国で生活をし再度日本に住みつくと,自分の見方が狂っているのではないかと自問自答を繰り返してしまう.というのは,リハビリテーションに関しても同じような印象が強いからである.全くリハビリテーション医学についての専門的なコースを経たわけでもなく,専門的な施設での研修を2〜3年単位で終了もしていない人が,ある日突然にリハビリテーション科,リハビリテーション部,リハビリテーション診療科などの担当者としてお目見えする.それだけリハビリテーションの重要性が認識されて,今後おのおのの病院施設でリハビリテーション中心の医療が展開されるのかと期待をもって見守っていると,全く逆の感を受けることもある.キリスト者が信者であるために陥る危険性ということがよく論じられるが,リハビリテーションにも多分にそのような危険性がある.

設備機器総点検

消煙焼却炉 玉川 雄司
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 図は当院の南端部(裏口)の地下室の平面図で,昭和41年第1期工事の時に,斜線の入った上側の室(約12m2)を焼却炉室とし,当初は,オイルバーナーのついた炉を設置していたが,バーナーはごく初期に故障したままで,その後は厨芥は焼かなくなっていた.約10年余たった2年前くらいから炉の調子が悪くなり,炉室内に煙がたまり,煙を排出すれば近隣の民家へ迷惑を及ぼすばかりでなく,階上の病室や地下室の廊下にまで煙が広がり,出入口周辺のよごれもひどくなっていた.

 昨年来の工事が終わるに際して,病院の裏口に当たる,炉室周辺の整備と美化を目指す中で焼却炉の入替えも一つのテーマになった.

講座 解説・新しい医療機器・7

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はじめに

 オートフロロスコープは,その特徴であるマルチ・クリスタルを生かして,特にダイナミック・イメージ・データのファイルを迅速に行い,かつそのデータの処理が実用性及び応用性に富んだシステムである.

 特に近年最も関心のあるダイナミック心臓核医学診断にその威力を発揮する.

医療の周辺 社会学(家族関係論)—老人と家族・3

老親扶養の居住形態 奥山 正司
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 ここでの目的は,老親扶養と居住形態(Living Arrangement)のかかわりを老人問題の脈絡の中で明らかにすることである.また,ここで言う老親扶養とは,家族的扶養に限定し,親の側から子への扶養を意味するのではなく,もっぱら老親に対する子からの扶養を意味している.

 ところで,親世代が必ず結婚して子どもを持ち,また同様に子の世代も必ず結婚することを前提にして考えれば,これまでの老人層は,人口学的にみて老後をみてもらえる子ども夫婦が老親夫婦1組に対しておおよそ3組あった.もちろん,その場合,老親は子夫婦のうち1組の子夫婦に依存すればよいわけであるから,他の子ども夫婦はそれほど扶養負担を感じなかったというのが大方の事実である.ところが,今後(21世紀以降)の老人層は,一夫婦当たり平均すればせいぜい1組の子夫婦しか持たないことになる.したがって,もし,子夫婦の側に突如,扶養できなくなる事態が生ずれば,他の子夫婦がいないばかりでなく,子どもによる扶養を期待できない老親が著しく増加することが予想される.それがここ数年来,ひとり暮らしや老夫婦のみの世帯が大幅に増加していること(もちろん,これだけの理由ではないが)に端的に示されている(表3).

病院職員のための医学知識

超音波診断 北村 次男
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 最近,ほとんどの病院で超音波診断ができるようになり,それぞれの施設の事情で,内科,外科,産婦人科,小児科,放射線科などいろいろな専門科で実際の診断が行われているようです.超音波診断科として独立した診療科をもつ大学や病院も,ぼつぼつ出てきました.このまだ新しい超音波診断について簡単に解説してみよう.

病院管理の工夫

幹部入門講座の試み 岡野 博
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 当院では昭和49年より自発的参加を前提とした,リーダーシップ研修課程という幹部への入門講座を開講し,今年で第7期生を迎える.当院の中堅幹部(係長主任クラス)の約7割がこの卒業生で占められるに至り,病院を思い管理的立場から行動し,病院への帰属意識の高い幹部職員が育ちつつある.

 例えば今年の院外研修会においても,既存の幹部ではでき得なかった実例研究を見事さわやかにやってのけた.この実例研究とは自分が抱えている現実の問題を,教材として研修の場にさらけ出し,お互いに研讃し合う,効果的な研修法である.よほどの自信がない限り自分の恥部を公開できないのだが,このクラスは見事クールにやってのけた.

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 第一線医療機関における職員はすべて患者中心にあるべきであるという理念のもとで,当院では各部門が従来の慣習を打破し,研鑚と努力を重ねながら医師を中心としたチーム医療の中に技術集積し,患者中心の医療を行うべく実践に移しつつある.この間,皆で患者サービスに直接,間接に徹しようという提唱が病院側よりなされ,必然的にベッドサイド看護の重要性が再認識された.当院の中央管理システムのもとで看護業務の分析がなされ,その結果専門的な看護業務と更には看護助手の協力を得て行い得る看護業務の合計は60%であり,その他の業務が40%もあることが判明した.そこで他部門でもでき得る業務は各部門が分担,協力し,看護婦はより多くの時間をベッドサイドで看護に専念すると同時に看護技術の高度化を計ることになった.

 このような当院の基本的な考え方のもとで,薬剤科では今まで看護婦に委ねていた注射薬の混合作業を分担することになった.このことは薬剤師にとっても,従来注射薬の配合に関して受動的な立場で関与して来たものが,薬剤学的な基礎知識をもとにして自らの手で混合調製することにより,今までよりも一段と専門性を発揮できるとともに病院薬剤師としての機能拡大の可能性にもつながることであった.

与薬ミスをなくす工夫 新藤 妙子
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 日ごろ私たちが行っている看護行為が私たち看護婦の中にどのように位置づけられているのかを考え,その中で看護の安全性を追求することは看護婦にとって欠くことのできない問題であると思います.この立場から「与薬」の問題を取り上げてみました.

 与薬は疾病の治癒及び症状の緩和に大きな役割をもっています.それゆえに安全でかつ正確でなければなりません.しかし病棟においてその与薬の誤りが患者さんから指摘されるという実態もあります.今回は与薬に対する現状の認識と問題点を探求することを目的とし入院患者全員(与薬の自己管理者を除く)を対象にアンケートを実施し,更に1年間改善の試みとして薬に記名する方法を実施しました.ここではその後の結果も含めて報告したいと思います.

統計のページ

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国公立病院勤務の医療従事者の所得

3)国立大学附属病院の非常勤医員の給与(つづき)

 前回断片的にのみ紹介した国立大学附属病院非常勤医員についての詳しい資料(医員数,日額単価,年間推定給与)を入手したので,表18に示す.

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精神医療転換への他山の石

日米の医療のあり方の違い

 精神医療のあり方をめぐって入院中心から外来,地域医療への転換が論ぜられ,熊本県で我が国初の「精神衛生社会生活適応施設」の建設が進むなかで本書が発刊された.冒頭の解説にあるように,この本は,監訳者仙波が54年9月日本精神病院協会の米国精神医療調査団の一員として訪米し,アメリカ各地の精神医療施設を視察して来た際入手した資料のうち,アメリカの精神医療の現状を概観するのに適当と思われるものを選んでまとめたものである.

 仙波については改めて紹介するまでもないと思うが,精神医療の改革,特に病院医療から地域医療への展開に,民間精神病院の立場から精力的に取り組んでいる精神医療界のホープである.彼は昭和45年千葉病院長に就任以来,人間尊重,病院の開放,社会復帰そして地域医療など,現在の精神医療が当面している難しい課題に勇敢に挑戦し,その成果をまず50年発刊の『精神病院・その医療の現状と限界』(星和書店)に集約している.その後も千葉病院を舞台として,特に慢性患者の社会復帰についての現場でのいろいろの実践を試みつつ,精神医学界にその経験や考え方を発表し関係者の注目を集めている.

新 病院建築・37

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はじめに

 「国立身体障害者リハビリテーションセンター」は,厚生省の種々の審議会,及び委員会を経て,我が国最初の大規模,かつ総合的なリハビリテーションの専門機関として設立された.その要旨は,我が国のリハビリテーション技術の研究・開発,専門技術職員の養成・研修,国内外の情報資料の収集・提供,さらに全国のリハビリテーション施設の指導的活動を行うとともに,多数の各種障害者を収容し,医療から職能訓練に至るまでの総合的,かつ高度なリハビリテーションを行うことを目的としている.

 施設の発足は,在京3センター(国立身体障害センター,国立東京視力障害センター,国立聴力言語障害センター)の移転統合によって始まり,各種障害者の構成は,肢体障害者100名,視力障害者280名,聴力言語障害者100名,内部障害者100名の合計580名を対象としている.

病院精神医療の展開

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 精神病院の管理者責任の問題は,その対象事項によっていくつかに分かれる.主たるものは,①精神病院としての構造,施設及び人員整備の特性,②診療の適正保持及び入退院の要否に関する特殊の判断,③患者と保護義務者間並びに保護義務者と医療側間の特殊の人間関係の問題,④精神障害者と一般社会人との間の社会的連帯の特性の問題などである.

 一方,その特殊とか特性とかいう表現について,「何が特殊,特性であるのか」という現代的感覚並びに知性に基づく反省または反論が「患者の人権(または人格権)」高揚という形で台頭し,それが患者の保護及び治療に新たな法的並びに医療的影響を与えつつある,という基本問題が加わる.にもかかわらず他方で,精神障害者による瞠目的な突発事故が起こると,たちまち,その渦中に入った近親者または"近接者"の見解がこれまた印象的に動揺する,という特殊性もまたみられる.

民間病院の経営と管理

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 私どもの病院は病床180床で,入院患者数は過去9年間の年間平均1,878名,外来患者年間70,677名である.常勤医師11名(歯科1,分院2を含む)他にパート医師8名の総合病院で,埼玉県上尾第二団地と,江東区大島団地内にそれぞれ診療所を有している.従業員総数は180名で,組合はない.

 まず私自身の日課について述べよう.毎朝8時15分に病院に入る(木曜日は休診).私と相前後して医局の先生方も出勤してきて,ただちに「申次ぎ」を行う.処置簿に基づいて4病棟ある各棟の婦長から,入院患者一人一人(総数180名前後)の状態の報告を受け,その日の処置を点検し,新たにオーダーを出したり,変更したり,または中止する.この処置簿は前日のものを各棟の婦長または主任が,清書またはコピーしておいてくれる.これが終わると,前日までに処理された入院患者全部のX線写真,CT,検査成績,心電図を見る.これによってオーダーの追加,変更を行う.

随想

生きてゆくつらさ 原田 禹雄
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 昭和55年の秋は,長島架橋がマスコミをにぎわわせ,長島愛生園の創立50周年の式典があったりで,長島もはれがましいことであった.

 同じ長島に,愛生園とは別に,いまひとつ邑久光明園という国立のらいの療養所があることは,あまり知られてはいない.創立70周年をこえ,680名の入園者がいる.

基本情報

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病院
40巻1号 (1981年1月)
電子版ISSN:1882-1383 印刷版ISSN:0385-2377 医学書院

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