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書評と紹介 —仙波恒雄監訳・解説—「アメリカの精神医療」
道下 忠蔵
1
1石川県立高松病院
pp.76
発行日 1981年1月1日
Published Date 1981/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541207367
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精神医療転換への他山の石
日米の医療のあり方の違い
精神医療のあり方をめぐって入院中心から外来,地域医療への転換が論ぜられ,熊本県で我が国初の「精神衛生社会生活適応施設」の建設が進むなかで本書が発刊された.冒頭の解説にあるように,この本は,監訳者仙波が54年9月日本精神病院協会の米国精神医療調査団の一員として訪米し,アメリカ各地の精神医療施設を視察して来た際入手した資料のうち,アメリカの精神医療の現状を概観するのに適当と思われるものを選んでまとめたものである.
仙波については改めて紹介するまでもないと思うが,精神医療の改革,特に病院医療から地域医療への展開に,民間精神病院の立場から精力的に取り組んでいる精神医療界のホープである.彼は昭和45年千葉病院長に就任以来,人間尊重,病院の開放,社会復帰そして地域医療など,現在の精神医療が当面している難しい課題に勇敢に挑戦し,その成果をまず50年発刊の『精神病院・その医療の現状と限界』(星和書店)に集約している.その後も千葉病院を舞台として,特に慢性患者の社会復帰についての現場でのいろいろの実践を試みつつ,精神医学界にその経験や考え方を発表し関係者の注目を集めている.
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