臨床眼科 72巻12号 (2018年11月)

特集 涙器涙道手術の最近の動向

企画にあたって 大江 雅子
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 涙道内視鏡が普及したことで,これまで見えなかった涙道内腔や粘膜を直接確認できるようになった。従来,流涙の原因として涙道閉塞を最優先に疑うことが多かったが,涙道内視鏡検査で涙道内腔を確認することで,涙道が原因ではないとの除外診断も可能になった。そのため,現在では流涙は眼瞼外反や眼瞼下垂,眼瞼弛緩などの「眼瞼疾患」,角膜疾患・結膜弛緩症などの「眼表面疾患」,涙道閉塞や狭窄など多くの疾患が関与しており,複数が絡み合って流涙症を発症していることがわかってきた。複数の原因疾患がある場合(特に高齢者に多い),それぞれの流涙への影響度を評価し,治療の優先順位を決定しなければならない。また,眼瞼・眼表面・涙道疾患がない流涙(機能性流涙)においては,既存の外科的アプローチでは治療は困難である。流涙は日常診療においてしばしば遭遇する愁訴であるにもかかわらず,涙道内視鏡を用いた治療に関与している医師以外の眼科医にとっては効果的な治療法の判断が難しいのではないかと思う。加えて,最近の治療法の情報が乏しいため流涙を訴える患者に情報提供することも困難ではないのだろうか?

 今回の特集では,最近の涙器涙道診療のためのアップデートを目的に「眼表面」「眼瞼」「涙道」に分けて,その分野のエキスパートの先生方に診断と治療について解説していただいた。私は流涙症の診断について,柿栖先生には反射性流涙治療のためのドライアイ治療について,横井先生には結膜へのアプローチ法について,渡辺先生には眼形成によるアプローチ法について,野口先生には涙道閉塞の治療について,宮崎先生には特に小児について,竹林先生には耳鼻科医の立場から涙囊炎と間違えやすい疾患について解説していただいた。

流涙症の診断 大江 雅子
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はじめに

 流涙は外来診療において頻繁に遭遇する症状で,涙がにじんだり,あふれる状態をさす。流涙は強い不快感でなく,あふれる涙が眼瞼皮膚の炎症を惹起させることも多い。また最近では,視機能をも障害することがわかってきている。

 従来,流涙症は涙液分泌亢進による分泌性流涙(lacrimation)と涙道通過障害による導涙性流涙(epiphora)に分けられる(表1)。分泌性流涙の原因には結膜炎や異物,睫毛乱生,ドライアイなどがあり,導涙性流涙の原因としては主に涙道狭窄・閉塞が挙げられる。分泌性・導涙性いずれの流涙症の原因にもなりうる疾患に結膜弛緩症や眼瞼疾患がある(図1)。流涙症が必ずしも涙道閉塞(狭窄)でないことは今や周知の事実であるが,流涙の原因となる疾患は「眼瞼」「眼表面」「涙道」の3領域に存在している。高齢者の流涙の多くは結膜弛緩により涙点までの連続性がブロックされたり,眼瞼下垂や下眼瞼の弛緩(外反症含む)によりポンプ機能が低下している。加えて,涙道狭窄・閉塞やドライアイにより眼表面の反射が亢進している場合も多く,流涙の原因は多くの因子が複雑に絡み合っており,前述の通り,原因を涙道閉塞のみに求めないことを理解することが大切である。

ドライアイ治療 柿栖 康二
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はじめに

 ドライアイの定義と診断基準は2016年に改定され,「様々な要因により涙液層の安定性が低下する疾患であり,眼不快感や視機能異常を生じ,眼表面の障害を伴うことがある」と定義されている(2016年,ドライアイ研究会)。また診断基準についても「涙液層破壊時間(tear film break-up time:BUT)5秒以下かつ自覚症状(眼不快感または視機能異常)を有する」と改定された。2006年の定義,診断基準と大きく異なる点は,シルマー試験による涙液量の評価および角結膜上皮障害の評価が除外されたことである。ドライアイのコアメカニズムは,「涙液層の安定性の低下」であると考えられており,涙液層の破壊がドライアイの診断において重要視されている。眼表面には親水性で高分子の糖蛋白質であるムチンが発現しており,涙液の保持などの重要な役割を担っているが,ドライアイ患者においてはムチンの発現が減少していることが知られている1)

 ドライアイの治療薬は長年,眼表面の水分量の増加を目的としたヒアルロン酸点眼と人工涙液のみであったが,不足したムチンを補充することで涙液層の安定性の増加を目的としたジクアホソルナトリウム点眼液およびレバミピド懸濁点眼液が発売され,より効果的な治療が選択できるようになった。しかしながら,点眼治療のみでは治療が不十分な重症ドライアイも確実に存在し,そのような場合は追加治療として外科的治療が選択される。近年提唱されている眼表面の異常を層別に診断するTFOD(tear film oriented diagnosis)2)により涙液層破壊パターンがarea breakを呈する症例は,眼表面の涙液量が極端に少なく,角膜上に塗り付ける涙液がほとんどない重症の涙液減少型ドライアイのパターンである。このような症例に対しては,点眼治療だけでは不十分であり,涙点を直接閉鎖することで眼表面の涙液貯留量を増やし,涙液層の安定性を増加させる効果が期待される涙点プラグや涙点焼灼術が選択される。シリコーン製涙点プラグを用いた涙点閉鎖が一般的であるが,症例に応じて液体コラーゲンプラグが選択されることもある。さらに涙点プラグによる効果があるものの,プラグの挿入が困難となった場合は涙点焼灼術が選択される。

 涙液中には角膜上皮細胞の正常な分化と増殖に必須である蛋白質やビタミンA,成長因子などが含まれており,涙液量が極端に少ない重症ドライアイではこうした因子が慢性的に不足しているため,角膜上皮欠損が再被覆されず,遷延性角膜上皮欠損の原因となることがある。重症ドライアイに伴う遷延性角膜上皮欠損の治療として,成長因子や各種サイトカインを有している羊膜を眼表面に押さえつける羊膜被覆術や,強制閉瞼させることで涙液メニスカスを再建させる瞼板縫合があり,それぞれの状況に応じて選択される。

 本稿では,点眼治療のみでは治療効果が不十分な重症ドライアイに対する治療を中心に述べる。

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はじめに

 角膜上の涙液層は,開瞼を契機とする角膜表面への水分の塗り付けと開瞼後の油層の上方伸展に伴う液層の上方移動を経て完成する1)。しかし,この涙液層の形成過程は,角膜に隣接する球結膜に存在しうる隆起性病変の影響を大きく受ける。それは,球結膜の隆起性病変がその辺縁に異所性の涙液メニスカスを形成するためであり2),メニスカスの陰圧は涙液層の形成過程で液層の水分を菲薄化させて3),涙液層を破壊に導く。その原因となる主な結膜疾患として,瞼裂斑,結膜囊胞(なかでも,リンパ囊胞),結膜弛緩症があり,結膜弛緩症は高齢者に高頻度にみられるため4),あらゆる眼表面に非常によく合併している。涙液層の破壊への影響が大きい隆起性病変の場合は,点眼治療で涙液層の破壊に抵抗するには限界があり,隆起性病変に対する外科治療が必要となる。そして,隆起性病変が除去されて結膜が平坦化すれば異所性涙液メニスカスが消失するため,それによってもたらされていた涙液層の破壊の促進が回避され,涙液層破壊時間(tear film breakup time:BUT)の延長が得られるとともに上皮障害は軽減する。

 そこで本稿では,これら3つの結膜病変について,涙液層の異常とその再建の観点から病態と治療を含めながらまとめてみたい。

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はじめに

 眼表面(涙液層)に対する眼瞼の役割には,瞬目による涙液の分配・排出・ターンオーバーといった動的役割と,瞼縁の涙液メニスカスによる涙液の保持といった静的役割がある。眼瞼は,眼表面と適度な圧力をもって接触し,動的静的に絶妙なバランスで眼表面に分布する涙液量および涙液の質を保っている。したがって,眼瞼について考慮することなく流涙症を治療することはできないほど,流涙症と眼瞼には密接な関係があるといえる1)

 流涙症を引き起こす眼瞼疾患には,内反症や外反症,兎眼症など,眼瞼の形態異常や機能異常によって引き起こされる疾患と,一見流涙の原因となるような眼瞼異常はないにもかかわらず流涙症をきたす導涙機能不全(機能性流涙)に分けられる。前者の眼瞼疾患は,正確な診断と適切な手術によって改善することが多い。導涙機能不全による流涙症は難治であるが,下眼瞼弛緩や眼瞼下垂を伴っていれば,手術によって流涙症が改善する可能性がある。

 本稿では,流涙症に対する眼形成的アプローチについて,流涙症を引き起こす眼瞼疾患の手術治療を中心に解説する。

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はじめに

 小児の流涙は分泌性流涙と導涙性流涙に分かれる。導涙性流涙の原因は涙道疾患であり,涙道治療は手術治療が優位であることが多いが,成人と違って自然治癒をきたす疾患や,先天涙囊ヘルニアによる気道閉塞のように緊急治療を要する疾患もあるため,正確な診断をし,適切な治療の選択が必要である。

涙道閉塞の診断と治療のコツ 野口 敦司
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はじめに

 近年,涙道内視鏡の普及により病態の理解が進み,診断,治療の質が上がってきている。平成30年(2018年)4月の診療報酬改定によって涙道内視鏡検査が新設され(640点),涙道内視鏡検査のみでも点数が取れることとなった。涙道診療への関心がさらに高まることは間違いなく,現在は涙道内視鏡を使用していない施設においても,今後導入を検討するところが増えてくることが期待される。涙道内視鏡下で閉塞部位を内視鏡で直接穿破する方法(direct endoscopic probing:DEP)1)に加え,シースを涙道内視鏡に装着し閉塞部位を穿破するシース誘導内視鏡下穿破法(sheath guided endoscopic probing:SEP)2)が報告され,その後,シースをガイドとして涙管チューブを挿入する方法(sheath guided intubation:SGI)3)と組み合わせて普及していった。

 一方,涙管チューブ挿入術は鼻涙管閉塞に対しては再閉塞をきたす可能性が高く4),長期では術後の再閉塞率が術後3,000日で64%であると報告されている5)。鼻涙管閉塞に対しての涙管チューブ挿入術の治療には,ある一定の再発があることを念頭に置くべきであり,涙囊鼻腔吻合術(dacryocystorhinostomy:DCR)のほうが再閉塞が少なく,治療成績がよい。また,基本的な検査法である涙管通水検査は涙道内視鏡が普及したとしてもやはり重要な検査であることに変わりはなく,涙道の状態について正しく診断したうえで正しい術式を選択することが大切である。

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はじめに

 涙囊鼻腔吻合術(dacryocystorhinostomy:DCR)は慢性涙囊炎に対する最終的な治療法で,手術が成功すれば症状は劇的に改善する。ただ,涙囊が腫脹し,涙点からの持続的排膿を認めるだけで慢性涙囊炎と判断するのは危険である。直接的に涙囊炎になっているのか,間接的に涙囊炎になっているのか,または全く別の病態で涙囊炎のように見えているのかを常に頭に入れておく必要がある。本稿ではそのような涙囊炎と間違えやすい疾患の鑑別診断について,筆者の経験に基づいて説明する。

連載 今月の話題

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 重度に進行し失明した網膜色素変性患者の視機能を再建するために,網膜に多点電極を埋植して電気刺激を行う網膜刺激型人工網膜は,過去20年間の研究開発を経て,実際に臨床に用いられるようになってきた。このため,今後重要になってくるのが人工網膜装用患者の視覚リハビリテーションである。本稿では,現時点での人工網膜の開発状況と筆者らが実際に臨床試験を行った際の人工網膜装用患者の視覚リハビリテーションについて述べる。

連載 症例から学ぶ 白内障手術の実践レクチャー・術中編10

虹彩のマネージメント 石井 清
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Q 虹彩後癒着を伴った散瞳不良症例の白内障手術を行う際に,散瞳を得る方法で留意すべき点はどのようなことですか? 原発閉塞隅角緑内障で浅前房,レーザー虹彩切除術も施行されています(図1)。

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患者:73歳,男性

主訴:両眼視力低下,難聴

既往歴:左大腿部に悪性黒色腫(肺転移あり),右眼上鼻側網膜裂孔(網膜光凝固術後)

現病歴:2016年1月に左大腿部病変を全摘生検,左鼠経リンパ節郭清術も施行され,悪性リンパ腫(pT2aN2aM0 stage ⅢC)と診断された。その後,肺転移も出現しニボルマブ(抗PD-1抗体製剤)による治療を12週間行ったが,肺病変は縮小しなかった。BRAF遺伝子変異も明らかとなったため,2016年4月上旬ダブラフェニブ(BRAF阻害薬)+トラメチニブ(MEK阻害薬)併用療法に変更となった。変更後12週目に両眼の視力低下を自覚,7月上旬に当科を紹介され初診となった。なお,変更後8週目に近医眼科を定期検査目的で受診した際は,特筆すべき異常所見はなかった。

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要約 目的:視神経周囲炎により視力が低下した甲状腺眼症の1例の報告。

症例:71歳女性に複視が突発した。その翌日から右眼視力が低下し,8日後に受診した。

所見と経過:矯正視力は右0.04,左1.2で,右眼に外転制限があり,内斜視であった。右眼のRAPDは陽性で,右限界フリッカ値は大きく低下していた。眼底に著変はなかった。血液の抗サイログロブリン抗体と抗ペルオキシダーゼ抗体が陽性であった。眼窩MRIで,造影T1強調画像の軸位断で右内直筋の筋腹に高度な肥大と炎症の所見があり,右視神経の周囲に造強効果がある視神経周囲炎があった。冠状断では,右内直筋と下直筋の炎症が眼窩先端部に及んでいた。メチルプレドニゾロンによるミニパルス療法で,3日後の1クール終了時に右矯正視力は0.9に回復し,2クール後には右眼の眼球運動制限も改善した。

結論:本症例での視神経周囲炎は,甲状腺眼症に伴う外眼筋の炎症が眼窩先端部から視神経周囲に波及したと推定される。

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要約 目的:角膜上皮障害のあるデュオトラバ®使用症例でミケルナ®に変更3か月後の角膜上皮障害を比較検討した。

対象:2017年1月1日〜2017年8月31日に済生会有田病院でデュオトラバ®にて緑内障治療していた19例19眼。平均眼圧は13.6±3.2mmHg,平均点状表層角膜症(SPK)スコアは1.42±0.77点,平均涙液層破壊時間(BUT)は2.47±0.90秒であった。デュオトラバ®以外の併用薬のある症例を含んでいる。

方法:デュオトラバ®からミケルナ®に変更前と変更3か月後の眼圧,SPKスコア,BUTについて対応あるスチューデントのt検定を用いて後ろ向きに統計学的検討を行った。

結果:ミケルナ®変更3か月後の眼圧,SPKスコア,BUTはそれぞれ13.9±3.6mmHg,0.89±0.74点(p<0.05),3.53±2.03秒であった。点眼変更後で眼圧とBUTに有意差はなく,SPKスコアは統計学的に有意な改善がみられた。

結論:ミケルナ®はデュオトラバ®と同等の眼圧下降効果があり,角膜上皮障害を軽減する可能性がある。

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要約 目的:化学療法が1年間行われた難治性多発性骨髄腫の1症例での眼底所見の経過報告。

症例:68歳男性が未治療の多発性骨髄腫IgA-λ型として,内科から紹介され受診した。高蛋白血症と高度の貧血があった。

所見と経過:矯正視力は右0.6,左0.7で,両眼に網膜中心静脈閉塞症様の所見があった。化学療法とデキサメタゾンの全身投与が開始され,2か月後に血清IgAが低下し,眼底所見が改善した。その後,内科治療への反応が低下し,初診から13か月後に血清λ型の顕著な増加,高度の貧血,血小板の減少があり,網膜出血が増加し,左眼には網膜前出血が生じた。

結論:本症例は過粘稠度症候群により網膜中心静脈閉塞症様の変化が生じ,内科的加療により眼底所見がいったん改善した。経過中に貧血網膜症が生じ,顕著な血小板減少が加わったことで網膜前出血が生じたと考えられる。

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要約 目的:増殖糖尿病網膜症(PDR)に対する小切開硝子体手術の視力予後に関する因子の報告。

対象と方法:増殖糖尿病網膜症に対し,過去8年6か月間に初回小切開硝子体手術を行い,6か月以上の経過が追えた220眼を対象とした。単純硝子体出血155眼,黄斑外網膜剝離43眼,黄斑部網膜剝離22眼であり,視力が改善した183眼と不変または悪化した37眼について,周術期因子との関係を解析した。

結果:単純硝子体出血群では,他の2群よりも高年齢で,後部硝子体剝離形成と汎網膜光凝固の頻度が高く,増殖膜の頻度が低かった。視力改善群は,視力が不変または悪化した群よりも,術前の矯正視力が不良で,硝子体出血と後部硝子体剝離の頻度が高く,増殖膜の頻度が低かった。多変量解析による検討では,術前に増殖膜がないことが術後の視力改善と有意に関連していた(p=0.02)。

結論:PDRに対する小切開硝子体手術では,手術時の増殖膜の有無が視力予後に関係する。

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要約 目的:遠視性不同視弱視(以下,不同視弱視)がある3症例で,それぞれ6歳,13歳時に中心窩形状を測定比較した結果の報告。

症例:症例1は5歳男児で,左眼に不同視弱視があり,調節麻痺薬による屈折は右(1.2×+2.00D),左(0.4×+5.25D)であった。眼鏡装用のみで左眼視力は(1.2)を獲得した。症例2は6歳男児で,右眼に不同視弱視があった。調節麻痺薬による屈折は右(0.15×+7.25D),左(1.2×+1.25D)で,眼鏡装用と健眼遮閉による弱視訓練で弱視眼視力は(1.2)になった。症例3は5歳女児で,左眼に不同視弱視があった。調節麻痺薬による屈折は右(1.2×+2.25D),左(0.15×+7.50D()cyl+1.00D 100°)で,眼鏡装用と健眼遮閉による弱視訓練で弱視眼視力は(1.2)になった。

結論:3症例すべてで両眼の眼軸長が延長し,遠視度数は減少した。中心窩網膜厚は3症例すべてで,健眼,弱視眼で厚くなった。一方,中心窩陥凹度は,3症例すべてで健眼では浅く,弱視眼では深くなった。不同視弱視3症例の中心窩形状は,健眼と弱視眼ともに7年間で変化を認めた。

今月の表紙

黄斑円孔 安藤 和歌子 , 寺崎 浩子
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 症例は45歳,男性。1年前に左眼の視力低下を自覚し,最近増悪したため近医を受診した。近医にて黄斑円孔を指摘され,当院を紹介され受診となった。

 初診時視力は右0.09(1.2×−4.25D()cyl−0.50D 115°),左0.05(0.3p×−5.50D)であった。左眼の黄斑部に円孔を認め,黄斑円孔と診断された。治療として,白内障手術併用硝子体手術を施行した。術後1か月の視力は左(0.05×IOL)(0.7×−4.50D()IOL)で,円孔は閉鎖されている。

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 今,眼底画像診断における最もホットなトピックは,紛れもなく,OCTアンギオグラフィである。つい先日までは,OCTアンギオグラフィは研究レベルの技術であり,臨床でのルチーンな応用には程遠いように思われていたが,昨今の撮影スピードや撮影範囲の改良,画質解像度の著しい向上などにより,蛍光眼底造影に代わる,もしくはかなりの分野では,蛍光眼底造影と異なる情報を得ることができ,造影検査を凌駕する診断機器となっている。しかも非侵襲である。これからもOCTアンギオグラフィが画像診断の最もホットなトピックであり続けることは間違いない。

 このようなニーズを背景に,今回,満を持して出版されたのが,𠮷村長久先生(北野病院病院長)編集の本書『OCTアンギオグラフィコアアトラス』である。手に取って表紙を見ただけで,選び抜かれた表紙を飾る画像が美しく,画像診断に卓越したセンスを有する𠮷村先生ならではのこだわりを感じさせる。序で𠮷村先生自身が,OCTアンギオグラフィはまだ新しい診断機器であり,この時点でアトラスを出版することが良いか考えたが,名著『加齢黄斑変性 第2版』(医学書院,2016)を出されたときにOCTアンギオグラフィの所見を盛り込めなかったことが,本書を執筆された動機であると述べられている。なるほど,本書は単独で素晴らしい名著であるが,さらに『加齢黄斑変性 第2版』とともに読むと,𠮷村先生の一貫した画像に対する美学を痛感していただけるのではないかと思われる。

海外留学 不安とFUN・第35回

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研究生活のあれこれ

 研究室での最初の日々は右も左もわからない状況であったため,必死になって研究室メンバーに付いて回っていました。恥を捨ててわからないことを素直に聞けば丁寧に教えてくれる優しい研究室メンバーにも恵まれましたが,嫌味も沢山言われることもありました。でも「その英語ってどんな意味なの? なるほど! 皮肉か! 勉強になります」という感じで前向きに過ごしていたら段々と打ち解けていけたように思います。

 その他にも「主張すること」に関する文化的な違いを感じるときが多々あり,私が育ってきた日本(長野,栃木)の文化とは全く正反対の文化に慣れるのに苦労しました。特に毎週水曜日にある研究報告会での発表はいつも苦労しており,先輩研究員から「ボスが喜ぶのを待つな。自分のデータに自信をもって,そのデータを自分が興奮しながら発表しないとだめだ」と助言してもらいながら毎週奮闘しております。

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目次

欧文目次

ことば・ことば・ことば オノマトペ
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 天気の話をしていて,「日本には雨の種類が多い」という話題になりました。考えると,日本にはこれを調べるのに便利な辞書があります。「逆引き○辞苑」という本で,見出し語が語尾の順に並べてあります。春雨ならメサルハ,俄雨ならメアカワニで引くことができます。糠雨,氷雨,黒い雨まで出ていて,なるほどと思いました。

 ところが,日本語では種類が少ないという逆の場合もあります。「なく」がその例で,こちらには泣く,鳴く,啼くのどれかで済ませていますが,英語だと「誰がなくか」で表現が違います。啼くのが犬だとbow,猫ならmiaow,豚の場合にはgruntまたはsqueakが普通ですが,犬の啼き方にもbarkだけでなく,whine,howl,bay,gnarlなど種類があります。狼だとhowlまたはyellです。

べらどんな AMD
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 戦前のことであるが,ドイツには教授が何年かごとに大学を移る習慣があった。円盤状黄斑変性に名を残しているクーント(Hermann Kuhnt, 1850-1925)もその例である。

 まずイエナ大学の眼科の教授になった(Jena, 1881-1902)。そのあと東プロイセンの首都にあるKönigsberg大学の教授になる(1902-1907)。それからボン大学に招聘され,70歳まで在任した(1907-1920)。

学会・研究会 ご案内

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アンケート用紙

次号予告

あとがき 寺崎 浩子
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 本年は10月に日本臨床眼科学会が終わり,今月は落ち着いて秋の夜長を楽しむ時間ができるのではないでしょうか? 今月号の特集は「涙器涙道手術の最近の動向」です。流涙症は,涙液の通過障害だけではなく外眼部のいろいろな状況から起こり,涙液分泌減少も併存する場合があるようです。最近の対処法について細かく述べられています。

 今月の話題は「人工網膜と視覚リハビリテーション」です。欧米では市販されている機種がありますが,大変高価であり,本邦での開発の発展が望まれます。移植部位と網膜の関係でいくつかの方法がありますが,いずれの方法にしても移植手術に加えてリハビリテーションを行わないと,得られた視覚が活用されないわけですから,重要なのはトレーニングを本格的に行うことです。網膜色素変性では遺伝子治療も盛んに議論されるようになり,少しでも早く患者が福音を得られるように新しい医療が始まるといいと思います。

基本情報

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臨床眼科
72巻12号 (2018年11月)
電子版ISSN:1882-1308 印刷版ISSN:0370-5579 医学書院

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