- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
涙道内視鏡が普及したことで,これまで見えなかった涙道内腔や粘膜を直接確認できるようになった。従来,流涙の原因として涙道閉塞を最優先に疑うことが多かったが,涙道内視鏡検査で涙道内腔を確認することで,涙道が原因ではないとの除外診断も可能になった。そのため,現在では流涙は眼瞼外反や眼瞼下垂,眼瞼弛緩などの「眼瞼疾患」,角膜疾患・結膜弛緩症などの「眼表面疾患」,涙道閉塞や狭窄など多くの疾患が関与しており,複数が絡み合って流涙症を発症していることがわかってきた。複数の原因疾患がある場合(特に高齢者に多い),それぞれの流涙への影響度を評価し,治療の優先順位を決定しなければならない。また,眼瞼・眼表面・涙道疾患がない流涙(機能性流涙)においては,既存の外科的アプローチでは治療は困難である。流涙は日常診療においてしばしば遭遇する愁訴であるにもかかわらず,涙道内視鏡を用いた治療に関与している医師以外の眼科医にとっては効果的な治療法の判断が難しいのではないかと思う。加えて,最近の治療法の情報が乏しいため流涙を訴える患者に情報提供することも困難ではないのだろうか?
今回の特集では,最近の涙器涙道診療のためのアップデートを目的に「眼表面」「眼瞼」「涙道」に分けて,その分野のエキスパートの先生方に診断と治療について解説していただいた。私は流涙症の診断について,柿栖先生には反射性流涙治療のためのドライアイ治療について,横井先生には結膜へのアプローチ法について,渡辺先生には眼形成によるアプローチ法について,野口先生には涙道閉塞の治療について,宮崎先生には特に小児について,竹林先生には耳鼻科医の立場から涙囊炎と間違えやすい疾患について解説していただいた。
Copyright © 2018, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.