今月の表紙
色素性傍静脈網脈絡膜萎縮
久保 保乃花
1
,
林 淳子
1
,
坂本 泰二
2
1倉敷成人病センター
2鹿児島大学
pp.955
発行日 2023年8月15日
Published Date 2023/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410214868
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- 文献概要
症例は65歳,男性。約25年前に網膜変性を指摘され,以降眼科を受診していなかったが,数年前より続く視力低下で当院を受診した。初診時の視力は右(0.2),左(0.15)であり,前眼部は白内障以外に特記事項なく,眼底には両眼の網膜静脈の走行に一致して骨小体様の黒色色素沈着ならびに網膜色素上皮の萎縮を認めた。また,両眼に黄斑上膜ならびに網膜浮腫,黄斑分離を認め,視力低下の原因と考えられた。鑑別のため,採血を施行するも梅毒や結核,サルコイドーシスなどの感染や炎症性疾患は否定的であり,網膜電図では桿体・錐体ともに振幅低下を認めた。視野検査では,萎縮部位に一致して視野欠損していた。以上から色素性傍静脈網脈絡膜萎縮と臨床的に診断した。網膜浮腫に対してアセタゾラミド内服およびブリンゾラミド点眼で,現在自覚症状は改善傾向にある。
散瞳型眼底カメラは白内障の影響を大きく受けたため,本撮影には走査型超広角眼底撮影装置ZEISS CLARUS 700(Carl Zeiss社)を使用した。この写真は,正面と4象限の5枚の写真をモンタージュしている。正面撮影では中心にフォーカスを合わせ,周辺部撮影では中心よりも周辺にフォーカスを合わせて撮影することで,眼底の広範囲にフォーカスが合った写真となった。また,撮影後にはコントラストの編集などは行っていないが,病変部と網膜のコントラストが高く,印象深い写真となった。
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