臨床眼科 71巻7号 (2017年7月)

特集 第70回日本臨床眼科学会講演集[5]

原著

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要約 目的:筆者が開発した3つのハプティクスをもつ眼内レンズ(IOL)の死体人眼での固定状態の報告。このIOLは無水晶体眼の毛様溝に無縫合で固定できる。

対象と方法:人眼用に開発した全長13.2mm,13.5mm,13.7mmの3種類のIOLを,7眼に白内障手術に準じて挿入した。その安定性を,IOL表面をフックで圧迫,外側から強膜を圧迫,IOLを挿入した眼球を高さ30 cmより落とす,の3方法で検討した。

結果:13.2mmのIOLは,1眼で十分な固定が得られなかった。13.5mmと13.7mmのIOLをそれぞれ3眼に挿入した場合には,直接または外部からの圧迫に対し,十分な安定性を示した。落下実験では,13.5mmのIOL 3眼中1眼,13.7mmのIOL 3眼中2眼で,1個のハプティクスが外れた。

結論:13.5mmと13.7mmのIOLでは,圧迫実験では十分な安定性を示したが,落下実験では成績が不十分で,改良が必要と考えられた。

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要約 目的:眼内レンズ(IOL)固定困難症例に対するSulcus-Subcapsular fixation(SSF)の術後屈折誤差について検討する。

対象と方法:SSFは後囊破損時やチン小帯脆弱において,将来的にIOL偏位のリスクが高い場合に後囊温存時にもIOL支持部を毛様溝に置き光学部を水晶体囊の下に嵌め込む固定法である。SSFと囊内固定群(対照群)の術後3か月における屈折誤差について検討した。

結果:屈折誤差はSSF:−0.09±0.55D(n=40),囊内固定:+0.03±0.24D(n=40)で有意差は認めなかった(p=0.1794,マン・ホイットニーのU検定)。

結論:IOL固定困難症例に対するSSFは囊内固定と比較して有意な屈折誤差はなく,囊内固定と同度数のIOLを使用できる。

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要約 目的:ニボルマブ投与後に発症したVogt-小柳-原田病(原田病)様の汎ぶどう膜炎の報告

症例:77歳,男性

所見と経過:咽頭悪性黒色腫に対しニボルマブを投与された翌日に,両眼の視力低下を自覚し当科を初診した。両眼の前房内に炎症細胞とフィブリン,硝子体混濁,脈絡膜皺襞を認めた。蛍光眼底造影検査で視神経乳頭の過蛍光と多発する点状漏出がみられ,汎ぶどう膜炎と診断し,プレドニゾロン20mgの内服を開始した。治療開始3日目に炎症所見の悪化と漿液性網膜剝離を認め,原田病様の病態を疑い,両眼にトリアムシノロンテノン囊下注射を施行したところ,1か月後にぶどう膜炎の改善を得た。

結論:ニボルマブの免疫関連有害事象として原田病様の汎ぶどう膜炎を生じる可能性があり,留意が必要である。

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要約 目的:手術をせずに良好な視力が得られた後部円錐水晶体の1例の報告。

症例:3歳9か月の女児が,右眼の視力不良で紹介受診した。

所見と経過:初診時の矯正視力は,右0.4,左1.0であった。右眼の水晶体後面が,中央からやや内下方部が硝子体側に円錐状に突出し,突出部の後囊下に混濁があった。屈折は,右+2.0D()cyl−2.5D 15°,左+0.5Dであった。健眼遮蔽と眼鏡装用を開始した。右眼の矯正視力は,3か月後に0.9,9か月後に1.0になった。初診から5年後の現在,右眼視力1.2を維持し,立体視も正常である。

結論:後囊突出部が後極部を避け,混濁が進行しない後部円錐水晶体では,手術加療なしで良好な矯正視力が維持される症例がある。

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要約 目的:硝子体手術の直後には円孔の閉鎖が得られず,3か月後に円孔閉鎖が確認された1例の報告。

症例と経過:69歳女性が2か月前からの左眼視力低下で受診した。左眼の矯正視力は0.1であった。左眼眼底にstage Ⅳの黄斑円孔があり,最小円孔径は467μm,円孔底径は947μmであった。その1週間後に水晶体再建術と経毛様体扁平部硝子体手術を行い,2乳頭径の内境界膜を剝離した。術後3日間のうつ伏せをした。術後5日目の光干渉断層計(OCT)で円孔は非閉鎖であり,1か月後も同様であった。3か月後のOCTで円孔は閉鎖していた。視力は0.15であった。術前と比較し,術後1か月では黄斑の耳側網膜が50μm鼻側に移動し,3か月ではさらに31μm移動していた。

結論:術後3か月で円孔が閉鎖した要因として,内境界膜剝離による網膜の鼻側移動が関係している可能性がある。

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要約 目的:釘打機で穿孔性眼外傷を生じた2症例の報告。

症例と経過:1例は43歳男性で,鉄材に釘を打ち付ける作業中に釘が跳ね返り,左眼を受傷した。長さ3cmの釘が角膜輪部に刺入し,眼底の血管アーケードの下耳側で再度強膜を穿孔していた。釘の頭部は眼外にあった。水晶体を摘出し,硝子体切除,異物除去ののちに角膜と強膜の穿孔創を縫合した。6か月後に1.0の矯正視力を得た。他の1例は41歳男性で,長さ5mmの針金が左眼角膜輪部から2mm後方の位置に刺入していた。異物は釘打機の釘を束ねるワイヤーであった。1か月後に1.2の矯正視力を得た。

結論:釘打機により生じた眼外傷は,1例では釘による穿孔であり,他の1例では釘を束ねるワイヤーによる穿孔であった。

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要約 目的:低眼圧黄斑症を伴う毛様体解離に対し,硝子体手術,眼内レンズ挿入と縫着,ガスタンポナーデ,毛様体冷凍凝固術が奏効した2症例の報告。

症例:1例は50歳男性で,1年前に左眼白内障手術を受けた。最近眼圧の上昇と,囊外固定されていた眼内レンズの偏位が生じた。その整復術を受けた翌日に低眼圧が生じて紹介受診した。他の1例は42歳男性で,野球ボールによる鈍性外傷から18日後,低眼圧で紹介受診した。

所見と経過:1例には隅角の上方180°に,他の1例には下方120°に毛様体解離があった。1例には眼内レンズ整復から14日後,他の1例には受傷から82日後に,硝子体手術,眼内レンズ挿入と縫着,ガスタンポナーデ,毛様体冷凍凝固術を行った。2例ともに,毛様体解離と低眼圧黄斑症はそれぞれ1か月後に治癒し,手術から6か月後まで良好な視力と眼圧を維持した。

結論:低眼圧黄斑症を伴う毛様体解離の2症例に対し,硝子体手術,眼内レンズ挿入と縫着,ガスタンポナーデ,毛様体冷凍凝固術が奏効した。

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要約 目的:生後1か月の乳児のヘルペス角膜炎の1例報告。

症例:生後20日頃から左眼の充血,眼脂が出現し,レボフロキサシン点眼にて眼脂は減少したが,角膜混濁・潰瘍所見を認め,当科を紹介され受診した。

所見:左眼角膜に樹枝状形態を伴う地図状潰瘍,実質の円板状浮腫,結膜充血を認めた。角膜擦過物のPCRにて単純ヘルペスウイルス(HSV)DNA陽性,血液検査にてHSV IgM高値から単純ヘルペス角膜炎と診断した。アシクロビル眼軟膏およびフルオロメトロン点眼に加え,アシクロビルの全身投与も併用し,所見は改善した。

結論:生後1か月の乳児にヘルペス角膜炎が発症した1例を経験した。アシクロビルの局所および全身投与による治療が有効であった。

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要約 目的:トラスツズマブエムタンシン(T-DM1,カドサイラ®)による治療後に角膜障害が生じた症例の報告。

症例:再発乳癌に対して化学療法中の75歳の女性が,2015年9月からT-DM1の投薬を開始された後に,両眼の視力低下を自覚し,11月に受診した。

所見と経過:受診時の矯正視力は右(0.2),左(0.2p)と低下していた。右眼に角膜上皮びらん,左眼に偽樹枝状病変を伴う角膜上皮障害がみられた。T-DM1の投与中止後に両眼の角膜障害は寛解した。

結論:T-DM1は角膜上皮障害が生じる可能性がある薬剤として注意が必要である。

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要約 目的:関節リウマチに,強膜炎による漿液性網膜剝離と肥厚性硬膜炎による視神経症を合併した症例の報告。

症例:82歳女性が左眼の視力低下,充血を主訴に受診した。40年来の関節リウマチがあり,初診時の左眼視力は(0.1),上強膜血管の拡張,漿液性網膜剝離を認め,ガドリニウム造影MRIで強膜肥厚に加えて,前頭部を中心に硬膜の肥厚と増強効果を認めた。強膜炎,肥厚性硬膜炎の診断にて副腎皮質ステロイドのパルス療法を行い,症状は改善し,視力は(1.0)まで回復した。

結論:本症例は関節リウマチに強膜炎,肥厚性硬膜炎を同時に合併したと推察され,診断にはガドリニウム造影MRIが有用であった。

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要約 目的:トーリック眼内レンズ(IOL)の軸ずれが屈折に与える影響の自覚値および理論値による解析。

対象と方法:トーリックIOLが明らかに軸ずれした9眼を対象として,軸ずれ時の自覚的屈折値を,挿入したIOL度数,軸ずれ角度,および術後のケラト値などから計算した理論値,および軸ずれがないと仮定した理論値と比較した。

結果:軸ずれ角度の平均は37.1±21.1°(最小13°,最大81°)であった。軸ずれ時の自覚的屈折値および理論値の球面度数は1.03±0.49Dおよび0.86±0.76Dで,軸ずれがない理論値の0.18±0.55Dと比較して有意に遠視になっていた(ともにp<0.01)。自覚的屈折値および理論値の円柱度数は2.50±0.48Dおよび2.14±0.66Dと,軸ずれがない理論値0.80±0.50Dと比較し,有意に乱視が強かった(ともにp<0.01)。また等価球面値の軸ずれ時の自覚値は,理論値および軸ずれがない理論値と比べ(p=0.47,0.48),ともに有意差はなかった。

結論:トーリックIOLが軸ずれすると,乱視矯正効果が減弱するだけでなく,球面度数が遠視化し,乱視軸が変化する。

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要約 目的:九州大学眼科外来を受診時に視神経症が疑われ,入院精査を行った症例について検討した。

対象と方法:2013年1月〜2015年12月の間に視神経症が疑われ,入院精査した61症例について,診療録をもとに後ろ向きに検討した。

結果:原因としては炎症性が最も多く,16例(26%)であった。次いで虚血性,圧迫性,遺伝性,感染性と多彩な原因を認めた。髄液検査を施行した症例は22例(36%)であった。ステロイドパルスを施行した症例は27例(44%)であった。

結論:視神経症の原因に報告と比べて年代間での差はなかった。髄液検査やステロイドパルスを施行した症例も多く,入院での精査・管理は有用と思われた。

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要約 目的:後天内斜視での最大斜視角を効率的に検出するため,片眼遮蔽法,Prism Adaptation Test(PAT),両者の併用の3法を比較した報告。

対象と方法:網膜正常対応の後天内斜視7例を対象とした。男性3例,女性4例で,年齢は8〜35歳,平均19.6歳である。方法1として,来院時,遮蔽後,遮蔽とPAT併用後の斜視角を測定した。方法2として,来院時とPAT後の斜視角を測定した。

結果:方法1では,来院時と遮蔽後とで斜視角の有意差はなく,PAT併用後に斜視角が増加した(p<0.05)。方法2では,来院時よりもPAT後に斜視角が有意に増加した(p<0.05)。方法1と2の間には,最大斜視角とPATの回数に有意差がなかった。

結論:網膜正常対応の後天内斜視では,PATのみを行うことで効率良く最大斜視角を得られた。

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要約 目的:サイバーナイフ治療が奏効したと考えられる脈絡膜悪性黒色腫の1例の報告。

症例と経過:73歳女性が悪性黒色腫の肝転移で眼科を紹介受診した。矯正視力は右1.0,左1.2で,右視神経乳頭の上耳側に褐色から灰白色の隆起性病変があった。画像検査などの結果,脈絡膜悪性黒色腫と診断された。ニボルマブなどによる化学療法ののち,脈絡膜腫瘍と肝転移は進行し,初診から16か月後に右眼視力は0.1に低下した。網膜光凝固ののち,腫瘍に対するサイバーナイフ治療を総線量28Gyで7分割して行った。その14か月後,視力は0.8に改善し,脈絡膜腫瘍は縮小し,照射前の5.1mmから3.1mmの高さになった。初診から33か月後の現在,眼と全身の状態はほぼ安定している。

結論:脈絡膜に原発した悪性黒色腫に対し,ニボルマブの投与は生命予後に,サイバーナイフ治療は視機能温存に寄与したと解釈される。

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要約 目的:眉間および鼻唇へのヒアルロン酸製剤や自己脂肪組織の誤注入により網膜動脈閉塞をきたすことが報告されている。側頭部へのヒアルロン酸製剤注入により網膜動脈閉塞をきたした1例を経験したので報告する。

症例:34歳女性。左側頭部に美容目的にてヒアルロン酸製剤を注入した直後から左眼痛と急激な視力低下を訴えた。

所見:左眼の矯正視力は0.05,眼圧は12mmHgであった。眼底は多発性の乳白色化病変を呈し,蛍光眼底造影検査にて網膜動脈内に多数の塞栓を認め,網膜動脈分枝閉塞症と診断した。保存的加療にて矯正視力は1.2まで改善したが,視野障害を残した。

結論:過去に報告のない側頭部の動脈への誤注入によって網膜動脈閉塞が生じたと考えられた。

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要約 目的:網膜有髄神経線維に併発した硝子体黄斑牽引症候群に対し,硝子体手術を行った1例の報告。

症例:73歳女性が右眼の変視症と視力低下で受診した。左眼には15年前に特発性黄斑円孔が発症し,その4年後に裂孔原性網膜剝離が生じ,手術で治癒している。

所見と経過:矯正視力は右0.5,左0.7で,右眼に網膜有髄神経線維に併発した硝子体黄斑牽引症候群があった。これに対し,硝子体手術を行った。網膜有髄神経線維は下方の血管アーケードの周囲と下耳側の中間周辺部にあった。術中の所見として,この部位の後部硝子体膜は肥厚し,その一部が器質化して網膜に嵌入していた。この部位は網膜と硝子体の癒着が強固で,人工的に後部硝子体剝離を作成することが困難であった。術後に0.6の右眼視力が得られた。

結論:網膜有髄神経線維に併発した硝子体黄斑牽引症候群では,有髄神経線維がある部位で網膜と硝子体の癒着が強く,硝子体手術が困難であった。

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要約 目的:開放隅角緑内障に対するリパスジル点眼薬追加による短期的な眼圧下降効果の報告。

対象と方法:過去11か月間に受診した原発開放隅角緑内障50例50眼を対象とした。男性28例,女性22例で,年齢は32〜88歳,平均66歳である。受診時に使用していた点眼薬に1日2回のリパスジルを追加または変更し,その1〜2か月後の眼圧を,診療録の記述に基づいて検討した。

結果:リパスジル使用前の平均眼圧は18.5±4.4mmHgであり,その1〜2か月後の平均眼圧は15.8±3.8mmHgであった。眼圧下降は有意であった(p<0.01)。眼圧下降幅は2.7±3.1mmHg,眼圧下降率は13.4±1.5%であった。

結論:原発開放隅角緑内障に対するリパスジル点眼薬の追加または変更で,1〜2か月後に眼圧は有意に下降した。

連載 今月の話題

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 従来のRVOの治療は,格子状光凝固やトリアムシノロン硝子体内注射が中心であった。2013年にラニビズマブが適応承認を取得し,現在では抗VEGF薬硝子体内注射が標準治療である。本稿では,抗VEGF薬硝子体内注射の大規模臨床試験の最新の知見を紹介するとともにRVOの黄斑浮腫に対する新しい候補薬に関しても述べる。

連載 熱血討論!緑内障道場—診断・治療の一手ご指南・第18回

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今月の症例

【患者】75歳,男性,開放隅角緑内障

【家族歴】祖母,母親,叔母,従兄弟2人,兄弟姉妹4人が緑内障

【現病歴】9年間点眼治療を続けている。3剤で眼圧はローティーン(ノンコントノメータ)で経過しているが,視野進行があるため当科へ紹介され受診した。

今月の表紙

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 症例は56歳,男性。2003年にドイツで右眼白内障手術を施行され(詳細不明),2015年12月に眼内レンズ(以下,IOL)脱臼をきたしたため,近医より紹介受診となった。当院初診時,右眼IOLは下方に完全脱臼しており,眼底下方には2か所網膜円孔の併発を認めた。視力は右0.07(1.2×+6.0D()cyl−0.5D 180°),左0.07(1.2×−4.5D()cyl−0.75D 90°),眼圧は右17mmHg,左16mmHgであった。翌日,IOL摘出および強膜内固定術・硝子体手術を施行し,1時部位に虹彩切除(以下,PI)を置いた。術直後はIOL正位であったが,術後4日目でIOL captureを認めたため,IOL整復術と6時部位にPIを追加施行した。その後経過は良好であったが,2016年7月の再診時に再度IOL captureを認めた。幸いにも翌日自然軽快していたが,今後もIOL captureを繰り返す可能性はある。

 現在,右眼視力は0.1(1.2×−3.25D()cyl−1.0D 180°),眼圧は18mmHg,顕鏡的にはIOLは正位で,前眼部炎症は認めず,眼底も特記すべき事項はなく,経過観察している。

海外留学 不安とFUN・第19回

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海外生活の不安

 2012〜2015年の3年間,米国マサチューセッツ州ボストンにあるハーバード大学医学部関連病院のMassachusetts Eye and Ear Infirmary(MEEI)に留学させていただきました。帰国して早2年が経ちましたが,私の経験した留学についてご紹介させていただきたいと思います。

 ボストンは,ハーバード大学やマサチューセッツ工科大学(MIT)をはじめとする大学,研究機関などが多くあり,世界中から研究者や学生が集まってきているため街はさまざまな国籍,人種で溢れています。日本人研究者や留学生も多く,日本人の勉強会,同好会などの日本人コミュニティが多数存在し,またボストンの生活情報が溢れる現地日本人によるブログがあったり,日本人同士の部屋の引き継ぎや,moving saleの情報交換ができる掲示板があったりとネットによる情報も容易に入手できます。私を含め女性の単身留学者も多く,生活面においてはかなり安心できる街であることも特徴です。

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要約 目的:上斜筋麻痺における病的外方回旋の頻度と優位眼の影響を検討した。

対象と方法:上斜筋麻痺患者17名(両側性3名)。眼底写真上で他覚的回旋偏位角(DFA)を計測し,hole-in-the-card法で優位眼を特定した。

結果:麻痺眼20眼のうち9眼(45%)で病的外方回旋を認めた。片側性患者の麻痺眼DFAにおいては,麻痺眼優位の患者が健眼優位の患者よりも有意(p<0.01)に小さかった。片側性患者の健眼DFAは,正常者よりも大きかった(p<0.05)。

結論:上斜筋麻痺での麻痺眼における病的DFAの出現頻度は高くない。健眼でもDFAは増大している。優位眼はDFAに影響する。麻痺に対する運動適応・感覚適応も作用した結果,各眼のDFA値が決まるのであろう。

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要約 目的:乳癌原発の両眼転移性脈絡膜腫瘍に対し,放射線・分子標的薬・抗癌剤・ホルモン製剤の併用療法が奏効した1症例の報告。

症例:41歳女性が,3か月前から右眼の視野欠損を自覚しており,2週間前より急激な視力低下となったため眼科受診した。

所見と経過:視力は右手動弁,左1.5であり,右眼に胞状の網膜剝離と耳側上方に白色の隆起があった。左眼の下方と鼻側上方に白色の隆起があった。蛍光眼底造影で,腫瘍全体が色素で染まり,顆粒状の漏出点があった。全身検査で乳癌があり,両眼の転移性脈絡膜腫瘍と診断した。放射線・分子標的薬・抗癌剤・ホルモン製剤の併用療法が行われ,両眼の脈絡膜腫瘍は瘢痕化ないし縮小し,右眼の網膜剝離はやや改善した。初診から3年後の不帰の転帰まで,左眼は1.0の視力を維持した。

結論:転移性脈絡膜腫瘍の早期発見と治療で,患者のquality of visionを維持することができた。

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 網膜ジストロフィの多くは遺伝性,進行性の視機能障害を生じる。網膜色素変性を除けば比較的まれな疾患が多く,ほとんどが治療法のない疾患ということもあって,多くの眼科臨床医にとっては興味の対象になりにくい分野かもしれない。

 しかし近年の分子生物学の進歩や,OCTをはじめとする眼底イメージングの発達により,個々の疾患の病態の理解が,以前に比べると格段に深まってきた。近い将来,正確な診断に基づいた特異的な治療法が開発されるようになるのではないかとの期待も抱かせる。さらなる発展を支える研究者には細胞レベル,分子レベルで捉えた,網膜に関連する基礎医学的知識が必要になる。

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 眼形成手術と言えば,特殊な手術機器や手技を要し,手術の結果に美容的な要素が絡んでくることもあって,私たち一般の眼科医にとっては敷居を感じさせる分野である。しかし,本書で採り上げられている「眼瞼」「眼窩」「涙道」は,整容の目的だけでなく視機能の改善と維持に密接に関わってくる部位である。本書では眼瞼下垂,眼瞼内反症,眼窩壁骨折,甲状腺眼症,鼻涙管閉塞など,眼科での外科的治療が期待される疾患について,わが国の第一人者の先生方が解説されている。

 本書は「総説」「総論」「各論」の3章で構成されており,第1章の総説では,編集者の一人である高比良先生が,眼形成手術の目標,眼瞼・眼窩・涙道の解剖と病態,検査法と手術適応,麻酔・手術器具・基本手技,そして代表的な疾患の治療について,18ページの短いスペースにまとめておられる。ここで概念をつかんだ後,第2章の総論では,眼瞼・眼窩・涙道の解剖・生理,診断と治療について,さらに詳細に学び,第3章の各論に入っていく。特に基本的な検査についてはこの第2章にまとめて記載されているが,眼瞼下垂の検査など,特別な機器を用いることもなく簡便な方法で有用な情報が得られるのを知れば何だか得をした気分になる。

文庫の窓から

『格致餘論』 安部 郁子 , 松岡 尚則
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 『格致餘論』は元代に著わされた医学書である(図1〜6)。序文には30歳の時に母親が脾を患ったことをきっかけに医学を志し,母の病を薬で治療したと述べられている。どの医者にも治せなかった病を,『素問』を3年学び,さらに医学を2年学ぶことで自らが快方に向かわせたというこの人物こそ,以降の医学に大きな影響を与えた朱丹溪(1281〜1358)である。朱丹溪は名を震亨,字を彦修といい,義烏(現在の浙江省義烏市)の出身。住まいが赤い渓流の傍らにあったことから,門人たちは丹溪翁と尊称したという。その医学は李東垣の「李」と朱震亨の「朱」をとって「李朱医学」と呼ばれ,現代中国医学へとつながりを持ち,わが国にとっても戦国期に取り入れられ曲直瀬道三らによって大きく広められている。

 『格致餘論』という書名は『礼記』大学に理想の政治への初段階として,ものごとの道理を窮めただすことが求められており,これを「格物」といい,また朱子学で知識を窮めて物事の道理に通じることを「致知」というが,こうした言葉から「格致」と名付けたらしい。序文では「古の人は医学を,我々儒者にとっての格物致知の一事とした」ので『格致餘論』としたとある。

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欧文目次

ことば・ことば・ことば 蝶と蛾
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 医学用語には,虫の「蝶」がほとんど出てきません。「蛾」になると皆無ではないかと思います。

 イギリスでも蝶と蛾はあまり評価されていません。そもそもbutterflyという名詞は,複合語なのです。なんでもバターを作っていると,魔女が蝶の姿になって盗みにくるという迷信が関係しているそうです。

べらどんな 水と電気
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 自動的に食器を洗う装置のことを食洗機というらしい。

 その食洗機を20年前から使っているが,具合が悪くなった。食器はちゃんと洗えるのだが,水が外に漏るのである。「もう寿命」と判断して,新しいのを買いに総合電器店に行った。

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次号予告

あとがき 下村 嘉一
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 皆さん,今年のゴールデン・ウィークはどう過ごされましたか。ARVOに参加された方も多いと思いますが,私は日本国内で留守番をしました。

 北朝鮮が初めて高度2000キロに達するミサイルを日本海に発射し,韓国では日本に抗する新大統領が就任し,トランプ大統領が米国中心の対外強硬政策をとるなど,世界の中で,特に極東地域は大変危険な状況になっております。さらに,世界各地でパソコンが「ランサムウェア(身代金要求型ウイルス)」に感染し,データが暗号化され読めなくなる事態に陥っています。

基本情報

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臨床眼科
71巻7号 (2017年7月)
電子版ISSN:1882-1308 印刷版ISSN:0370-5579 医学書院

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