臨床眼科 71巻2号 (2017年2月)

特集 前眼部診療の最新トピックス

企画にあたって 前田 直之
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 前眼部疾患は,そのアクセスの容易さも手伝って,古くから診断的価値の高い検査法や有効な治療法が確立されている。

 しかしながら,医学の進歩と患者サイドの要求水準の上昇によって,標準的検査や治療の限界がみえてくるようになり,より低侵襲かつ高精度の医療が求められている。

前眼部3次元画像解析 上野 勇太
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はじめに

 光干渉断層計(optical coherence tomography:OCT)が眼科領域の断層イメージングに用いられるようになり,その技術は眼底3次元画像検査用として導入が開始され,前眼部検査用へ応用されるに至った1)。前眼部の断層像は細隙灯顕微鏡を用いて得ることが可能であり,現在でも眼科医の診察機器としてゴールドスタンダードであることは揺るぎないが,可視光を用いるために混濁組織に弱く,定量的な評価も困難であるといった欠点がある。

 長波長光源を使用した前眼部OCTの開発により,細隙灯顕微鏡が苦手とする混濁組織やその奥の構造物を明瞭に描出することが可能となった。当初はタイムドメイン方式でスキャン速度や解像度に問題があり使用する場面が限られていたが,フーリエドメイン方式の1つであるスウェプトソースOCTの登場により3次元的な形態計測や画像化が可能となったため,臨床面・研究面における注目度が一気に高まった。

 前眼部に特化した前眼部3次元OCTとしてはCASIA(トーメー社)が汎用されており,角膜形状解析や前房・隅角の定量的な測定,緑内障手術後の濾過胞評価などさまざまな分野に使用され,有用性について多くの報告がなされている2〜4)。さらに2015年12月にはその後継機であるCASIA 2(トーメー社)が発売された。本装置では従来のCASIAよりも前後方向の測定範囲が拡大し,焦点深度が改良されたために,水晶体の画像化や形態計測が可能となったのが特筆すべき点である。また,表1に示した通り,測定点の増加やスキャン速度の向上といった改良点もあり,画像の重ね合わせも可能となったため,より鮮明な前眼部断層像が得られるようになった。

 本稿では,前眼部OCT CASIAを用いた前眼部3次元画像解析の使用方法について,その特徴である混濁組織の描出,定量的解析などに焦点を当てながら概説するとともに,最新機種であるCASIA 2についても若干の私見を交えながら紹介したい。

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はじめに

 本稿では,角膜ジストロフィが疑われる患者が来院した場合,どのように考えて診察をし,遺伝子診断を行っていくべきかについて,山口大学医学部附属病院(以下,当院)での自験例を基に私見を記していきたいと思う。

 角膜ジストロフィは,日常診療で時に遭遇するどちらかといえば稀な疾患である。角膜ジストロフィは,角膜所見が典型的な症例であればその遺伝子変異まで類推することも可能である。筆者らは今まで200人以上の角膜ジストロフィを遺伝学的に同定してきた。しかしながら,予想が間違っていたり,想定していなかった遺伝子変異が見つかったりしたこともあった。角膜ジストロフィ症例については,その表現型(角膜所見),病理学的所見,遺伝学的所見から総合的に診断することが理想的である。しかしながら,角膜ジストロフィが遺伝性疾患である以上,やはり遺伝学的所見が最も診断的価値が高い。特に,非典型的な角膜所見を呈する角膜ジストロフィの症例では,遺伝子検査のみが確定診断に至ることのできる大切なツールといえる。

 炎症所見の乏しい両眼性の角膜沈着を診察したときに,まずは角膜ジストロフィを考えるものだが,当然角膜ジストロフィ以外の可能性もある。例えば,角膜変性症(degeneration),全身疾患の一症状としての角膜病変,内服薬などの投与薬剤と関連した角膜病変などさまざまな可能性がある。角膜所見のみから診断が確信できないとき,とかく「何らかの角膜ジストロフィではないか」と考えたくなるものである。この場合に遺伝子検査を行い角膜ジストロフィの可能性の有無を確定することにも重要な意義がある。

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はじめに

 ポリメラーゼ連鎖反応(polymerase chain reaction:PCR)は感染症の病因診断に近年広く利用されるようになってきた。一方,眼科領域疾患では,PCR検査はいまだ先進医療あるいは一部の施設のラボベースの研究的検査にとどまっている。このため,PCR検査の有用性や限界に関しては必ずしも十分な理解が得られていない。そこで本稿では,いったいどういった疾患の診断にPCRが有用あるいは必須であるのか,さらには今後どのように応用されるようになるのかの展望をまとめてみたい。

 特に先進医療として眼感染病原体PCRを担当している施設として,臨床医が実際にPCRをオーダーするうえでどのように検体を準備したらよいのか,どのようなPCR法がベストチョイスなのか,さらに返ってきた結果をいかに解釈したらよいのかを解説したい。

眼表面疾患の再生医療 大家 義則
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再生医療とは

 「再生医療」に当たる英語は“regenerative medicine”や“tissue engineering”が挙げられるが,このなかでもtissue engineeringの概念を打ち立てたのはRobert LangerとJoseph P. Vacantiである1)。Langerらによるとtissue engineeringとは,「生物学や工学の原理を用いて損傷を受けた組織を再建するための機能的な代用物を作製する,多分野にまたがる新しい学問」である。その実現のためには,細胞,増殖因子,細胞外マトリックスの3因子が非常に重要であると考えられ,これらを組み合わせて目的とする組織の人工的な再建を行う。すなわち培養細胞を用いて患者の損傷された機能を再建するような方法も含まれるし,コラーゲンや人工のポリマーを用いて増殖因子などを投与することで機能を再建する方法も含まれる。

 また,その対象となると考えられる組織や臓器は非常に多岐にわたっており,皮膚,骨,軟骨,血管,肝臓,腎臓,角膜,膀胱,肺,歯などがその対象となると考えられる。「再生医療」という言葉が注目を浴びているのは,この技術の発展により,対症療法的な現在までの治療方法から培養細胞などを用いた根本治療へと変化させるパラダイムシフトとなる可能性があるからである。

羊膜移植術 中村 隆宏 , 外園 千恵
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はじめに

 羊膜は,妊婦の子宮内で胎児と胎盤を包んでいる最内側の膜(約100〜150μm)であり,単層円柱上皮である羊膜上皮,生体内で最も厚いといわれている基底膜,およびコラーゲンに富む実質組織(海綿層,緻密層)より構成されている(図1)。通常分娩時に医療廃棄物として扱われているが,羊膜を用いた治療の試みは,さまざまな分野で古くから行われており,例えば外科および皮膚科領域において腹部手術時の癒着防止や皮膚熱傷後の被覆(パッチ)による上皮修復促進,また人工膣形成術などに臨床応用されてきた。眼科領域では1995年にマイアミのグループが眼表面疾患に対する羊膜移植の有用性を動物実験レベルで報告1)したのを皮切りに世界中で研究が行われ,現在では眼表面疾患に対する羊膜移植の臨床効果は国際的に認められている。本稿では,羊膜移植のこれまでの歴史,現状および将来的展望を概説する。

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はじめに

 フェムト秒レーザー(femtosecond laser:FSL)は超短パルス(約600〜800フェムト秒)で照射可能なネオジウム近赤外線(波長1,053nm)レーザーで,極めて小さい範囲に高出力のレーザーを照射することができる。1点に照射されるレーザーのエネルギー量は,「照射エネルギー(J)/(ビームスポット面積・レーザーパルス時間幅)」で表すことができる。つまり照射エネルギー総量を抑えても,小さな範囲に超短時間でレーザーを照射することで,照射された部位に大きなエネルギーを与えることができる。例えば,1μJの照射エネルギー量で,600fs(フェムト秒)=600×10−15秒でレーザーを照射すると,1点にかかるエネルギー量は10−6/600×10−15=1.67MWとなる。この強い光エネルギーで分子結合を切断し,レーザー照射周囲に熱拡散することなく分子を除去する。これを光分裂(photodisruption)といい,この光分裂によって作製された点状の空洞をつなげて組織を切断するのがFSLの特徴である。フェムト秒とは照射可能なレーザー照射持続時間のことで,1フェムト秒は1×10−15秒にあたる。FSLはある程度透光性がある組織に対し,あらかじめ設定した任意の深さで種々の形状の切開を作製することができる(図1)1,2)

 近年,このFSLの眼科手術に対する応用が多く報告されている。これまでに屈折矯正手術3,4),白内障手術5),角膜移植1,2)などへの応用が報告されている。特にレーザー照射が浅層に行われるlaser in situ keratomilesis(LASIK)の角膜フラップ作製では本来のmicrokeratomeによるフラップ作製より,均一な深さで粗さの少ないフラップを作製できる3,4)。また,FSLを用いた独自の術式で小切開創から角膜実質層を角膜内で切開したうえでstripする屈折矯正手術(refractive lenticle extraction:ReLEx)が報告されている5)。LASIKと同様に角膜に対する手術である角膜移植への応用も数多く報告されており,これまでtrephine bladeで角膜に対し垂直に切ることしかできなかった角膜切開創を種々の形状で作製することによって目的に合った角膜移植を行うことができる。

今月の表紙

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 症例は25歳の女性。ヌーナン症候群,特発性血小板減少性紫斑病の発症を機に眼底出血をきたし視力が低下した。硝子体手術を考慮するも小児期より重症な両眼性の結膜炎があり,細菌培養をしたところメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin-resistant Staphylococcus aureus:MRSA)が検出され,眼内炎のリスクがあるため硝子体手術は施行せず結膜炎の経過観察をしていたところ,転居に伴い当院を紹介され受診した。

 当院での初診時視力は,右0.04(0.06×−5.75D()cyl−0.5D 180°),左0.02(0.05×−7.75D()cyl−0.5D 180°)であった。両眼ともに結膜炎,角膜パンヌス,角膜混濁を認めた。当科でも培養を行ったところMRSAは検出されず,通常の黄色ブドウ球菌が検出された。レボフロキサシン(クラビット® 1.5%)を使用し経過観察中である。

連載 今月の話題

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 日常診療において視野検査は診断および病状進行の評価を行う際にとても重要な役割を担っている。本稿では,その視野検査の近年の動向を述べたい。

連載 熱血討論!緑内障道場—診断・治療の一手ご指南・第13回

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今月の症例

【患者】31歳,男性〔職業・看護師(整形外科クリニック)〕

【現病歴】2010年,コンタクトレンズ検診で緑内障を指摘された。ベースライン眼圧は16〜18mmHg。正常眼圧緑内障と診断され,点眼が開始された。以後,眼圧は11〜13mmHgで落ち着いていた。しかし最近になり,右眼の視野が急速に進行したため,精査目的にて当科へ紹介された。

【処方薬】プロスタグランジン関連薬/交感神経β遮断薬配合点眼剤 両眼1日1回

【既往歴】大学時代にラグビーの試合で上腕を骨折

【持参視野所見】図1に示す。

連載 蛍光眼底造影クリニカルカンファレンス・第14回

Vogt-小柳-原田病 菅野 幸紀
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疾患の概要

 Vogt-小柳-原田病(Vogt-Koyanagi-Harada disease:VKH)は,全身のメラノサイトを標的とする自己免疫疾患と考えられており,東洋人に多くみられ,わが国でも数多く報告されている。眼所見として,脈絡膜のメラノサイトに対する自己免疫反応により多発する漿液性網膜剝離(serous retinal detachment:SRD)や,視神経乳頭の発赤腫脹が特徴的である。眼外症状として,色素細胞を多く有する組織が障害されることにより無菌性髄膜炎,感音性難聴,皮膚の白斑や白髪など多彩な症状を呈する1)。多くの場合,HLA-DR4が陽性である。2001年に報告された改定診断基準2)により,完全型,不完全型,疑い例に分類されるが,日本人では皮膚所見を伴う完全型の症例は少ない。

 診断には眼底検査,フルオレセイン蛍光眼底造影(fluorescein angiography:FA)およびインドシアニングリーン蛍光眼底造影(indocyanine green angiography:IA),光干渉断層計(optical coherence tomography:OCT)が用いられるほか,無菌性髄膜炎の証明のための髄液検査や感音性難聴の有無の検索のための聴力検査を行う。

連載 目指せ!眼の形成外科エキスパート・第30回

DCR:鼻外法vs鼻内法 鈴木 亨
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はじめに

 涙囊鼻腔吻合術(dacryocystorhinostomy:DCR)には鼻外法と鼻内法がある。両術式の比較は,鼻内法が一般化してきた1990年代からDCR論文で話題になるテーマの1つである。PubMedで検索できる最新の比較研究では,鼻涙管閉塞症に対するDCRの術後1年では両術式とも成功率100%で,差はないとの結論に至っている1)。本稿では,まずこの論文の概要を紹介する。

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 眼表面は細隙灯顕微鏡で最初に観察する部位であるため,誰でも眼表面疾患の異常所見は目にしているはずである。典型的な所見・疾患は,自信を持って診断・治療ができるものの,実際には確定診断に至らない症例も多いのではないだろうか? 眼表面疾患は角膜・結膜という二つの組織の異常状態ではあるものの,その原因はさまざまである。眼表面を覆っている涙液の異常,外界にさらされているための外的要因,感染症,免疫異常,変性症,眼瞼異常など眼表面疾患に及ぼす因子は多岐にわたり,それらが単独または複合的に影響して病態を形成している。眼表面疾患診療の醍醐味は,所見からどのような因子が影響しているか推測しながら治療戦略を立てることにある。

 このたび発刊された,島﨑潤先生編集の《眼科臨床エキスパート》『角結膜疾患の治療戦略—薬物治療と手術の最前線』は,治療戦略との題名があるが,正しい診断をした上で,治療戦略を立てるといったコンセプトで構成されており,治療戦略を立てるまでのプロセスが詳しく解説されている。

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 「医療現場をこれほどまでに赤裸々に,リアルに書いていいものだろうか」という驚きがこの本を読んで生じた感情だった。いてもたってもいられず,本書の書評を書かせてほしいと出版担当者にお願いしてしまった。「医師はいかなる時も平静の心を持って患者と向き合うべきである」と説いた臨床医学の基礎を作ったウィリアム・オスラー先生の「平静の心」を揺るがす内容なのである。

 「医師は患者に必要以上に感情移入してはいけない」

海外留学 不安とFUN・第14回

シンガポールの生活・2 柳 靖雄
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医療レベルは日本と同レベル

 シンガポールの医療レベルは日本と同程度です。眼科疾患に関しては角膜疾患(感染症)や,ぶどう膜炎の原因が日本とは多少異なりますが,私の専門の網膜疾患についてはほとんど同じです。日本では皆保険制度ですべての検査,治療に点数がつき,患者の医療費負担が抑えられているわけですが,異なるシステムですので,コスト面を考慮し若干の診療方針の違いが存在します。

 他のアジア諸国の病院と同様に病院の規模は大きく,Singapore National Eye Centreだけで1つの診療棟となっており,年間延べ約30万人の患者が訪れ,手術は約16,000件も行われています。米国,英国,オーストラリアでの医師免許は書類手続きのみで医籍登録が可能で,海外からの医師も数多く一緒に働いています。眼科においては世界的な指導者が各領域で揃っており,指導体制も充実しています。

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要約 目的:網膜剝離に対して強膜バックル手術が行われ,その19年後に周辺部角膜浸潤が生じた症例の報告。

症例:75歳の女性が左眼の充血,疼痛,視力低下で受診した。19年前に左眼の裂孔原性網膜剝離に対し,シリコーンスポンジとシリコーンバンドの縫着が行われ,復位が得られた。18か月前に子午線方向に縫着したシリコーンスポンジが結膜上に露出した。シリコーンバンドの除去後に,感染と推定される炎症がシリコーンスポンジの周囲に生じ,これを抜去した。

所見と経過:矯正視力は右0.6,左0.2で,左眼に強膜炎と,下方240°に血管侵入を伴う周辺部角膜浸潤があった。上皮欠損はなく,前房蓄膿があった。抗菌薬の点眼と全身投与で角膜と強膜の所見は寛解し,8日後に治癒した。視力は0.6に改善した。

結論:周辺部角膜浸潤と前房内炎症の原因として,ブドウ球菌に対するアレルギー反応や自己免疫反応よりは,バックルの除去後に潜伏していた感染巣の再燃が考えられる。本症例は抗菌薬の投与で治癒した。

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要約 背景:半側空間無視は視覚にかかわる病態であるが,眼科医が診断と治療にあたる機会は少ない。半側空間無視でしばしば検出される同名半盲様視野には,経過中に回復し,代償が生じることがある。

目的:半側空間無視の代償期に同名半盲様視野が回復し,代償機能を得た2症例の報告。

症例:1例は77歳男性で,右側頭葉から頭頂葉にかけて脳出血が生じた。他の1例は78歳女性で,右後頭葉に脳出血が生じた。

所見と経過:両症例とも線分二等分試験と時計描写試験は半側空間無視のパターンを呈し,左右眼に類似性がない同名半盲が検出された。いずれも2か月後に正常化した。

結論:半側空間無視は,慢性期に入っても改善することがある。左側の同名半盲が回復傾向を示す症例の中には,後頭葉視覚野の障害による典型的な同名半盲ではなく,半側空間無視によるものが混在している可能性がある。

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要約 背景:網膜細動脈瘤(retinal macroaneurysm)が傍中心窩部に生じることは稀である。

目的:網膜細動脈瘤が傍中心窩部に生じた壮年者の報告。

症例と経過:50歳の女性が右眼の傍中心暗点で受診した。矯正視力は右1.0,左1.2で,右眼の中心窩に接して0.3乳頭径大の内境界膜下出血があった。4週後にこの出血は0.5乳頭径大になり,インドシアニングリーン蛍光眼底造影で網膜細動脈瘤と推定される赤色点が中心小窩より512μm離れた部位にあった。視力は7週後に0.08,12週後に0.15,19週後に0.8になった。

結論:本症例は傍中心窩部に生じた網膜細動脈瘤の稀有な例と考えられた。

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要約 目的:70歳になるまでの4年間に急速に視力が低下したらせん型乳頭周囲脈絡膜ジストロフィと考えられる1例の報告

症例:70歳男性が両眼の視力不良で紹介受診した。4年前に両眼の耳側視野狭窄を自覚し,矯正視力は右1.0,左0.2であったという。

所見と経過:矯正視力は右0.2,左0.1で,両眼に乳頭周囲から広がる眼底の色調異常と脈絡膜萎縮があった。光干渉断層計で中心窩囊胞形成があった。フルオレセイン蛍光眼底造影とインドシアニングリーン蛍光眼底造影で,網膜色素上皮と脈絡膜毛細血管板の萎縮があった。乳頭周囲脈絡膜ジストロフィと診断した。以後7年間の経過観察で,格別の悪化はない。

結論:本症例での乳頭周囲脈絡膜ジストロフィは,70歳になるまでの数年間に急速に視力が低下したと推定される。

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要約 目的:外転神経麻痺を契機として発見された未破裂巨大脳底動脈瘤の症例の報告。

症例:62歳の男性が1年前からの右方視時の複視で紹介受診した。40年前に外斜視の手術を受け,6年前に高血圧と診断された。

所見と経過:矯正視力は左右眼ともに1.0で,右眼に−2D,左眼に−1Dの近視があった。眼位は近視で6Δ,遠見で正面と左方視で4Δの外斜位,右方視で25Δの内斜視があり,右眼に外転制限があった。単純CTで右橋部に径25mmの塊があり,MRIで橋部の塊内部は等または低信号,MRAでこの塊は脳底動脈の前方にあり,脳底動脈とともに右方に偏位していた。椎骨血管造影で動脈瘤への血液流入はなく,内部が血栓化した未破裂巨大脳底動脈瘤と診断した。以後11か月間の保存的治療で所見に著変はない。

結論:脳底動脈の巨大動脈瘤は,頻度は低いが外転神経麻痺の原因となりうる。

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欧文目次

べらどんな 魔の山
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 古い話ではあるが,医学部の入学式での学部長の話をしっかり覚えている。「私は予言しますが,君たちの10人に1人は卒業できないでしょう」と言うのである。びっくりしたら,まだ先があって,「卒業できないのは,病気,特に結核が原因」だと言われる。

 ちょっと嬉しくなった。「勉強はしなくてもよいから,病気だけはしないように」と解釈できるからである。

ことば・ことば・ことば 落下
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 だれでもcataractは「白内障」だと思っていますが,基本的な意味は「滝」です。それも日本にあるような小さな滝ではなく,幅が何百メートルもある「瀑布」のことです。

 世界には三大瀑布があります。アメリカとカナダの間にあるNiagara Falls,アフリカの南部にあるVictoria Falls,それにブラジル・パラグアイ・アルゼンチンの国境になっているイグアス瀑布(Cataratas del Iguaçu)がそれです。

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あとがき 坂本 泰二
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 原稿を書いているのは2016年の師走です。今年の驚きは,何と言っても米国大統領選挙でのトランプ氏の勝利でしょう。トランプ氏勝利の日に,各国の友人とメールのやり取りをしましたが,勝利を予想していた人はいませんでした。トランプ氏勝利の理由についてさまざまな分析がなされていますが,社会の分断とそのことに対する感情的反発が底流にあるというのが大方の答えです。しかし,それが所謂革命という形を取らず,ポピュリズムあるいは反知性主義に向かうと早くから喝破していたのが英国のGuardian紙です。最近の同紙の論評では,この動きは国の政治だけでなく,世界中のあらゆる投票行動に影響するとのこと。わが国でも,地方間あるいは大学間格差が拡大し分断されつつあります。そのことに対する感情的反発が,反知性主義的行動に向かうと考えるとぞっとしますが,あながち杞憂とは言えないでしょう。難しい時代になったものです。

 さて,「今月の話題」は視野検査の新しい流れについてです。緑内障は,現在のわが国の中途失明原因の首位を占める重要な疾患です。緑内障研究が進むにつれて,個々の状態を的確に判断すること,予後を考えたきめ細かな治療が重要であることがわかってきました。それには,視野検査は不可欠のものです。視野検査のゴールドスタンダードは長らくGoldmann視野計でしたが,最近は別の方法に変わられつつあり,本稿ではそのことについてわかりやすく解説されています。さらに,前眼部診療のトピックスについて,気鋭の研究者にご寄稿いただいております。前眼部は,わが国が世界をリードする領域であり,世界初の診断や治療の試みがなされつつあります。ただし,わが国の患者が,それら最先端治療の恩恵に浴するには,臨床家がその治療を正しく理解する必要があります。各項では,多くのイラストを用いて説明されていますので,多忙な診療の合間の短い時間でも,前眼部診療について理解することができると思います。

基本情報

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臨床眼科
71巻2号 (2017年2月)
電子版ISSN:1882-1308 印刷版ISSN:0370-5579 医学書院

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