臨床眼科 68巻1号 (2014年1月)

特集 糖尿病黄斑症は今こう治療する

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はじめに

 糖尿病黄斑症はいまや糖尿病網膜症患者の視力障害の原因として重要である。糖尿病黄斑症の有病率は増殖網膜症の有病率をわずかながら上回り,世界人口における推定有病者数は2100万人にのぼる1)。現在では糖尿病黄斑症を糖尿病網膜症全体の治療とは独立した治療の対象として捉えるようになったが,そのような研究の代表的な大規模臨床研究はEarly Treatment Diabetic Retinopathy Study(ETDRS)であろう。ETDRSでは糖尿病黄斑症の評価を正確なものとする目的で,黄斑部が複数枚の眼底写真に収まるように先行するDiabetic Retinopathy Study(DRS)研究(「増殖網膜症に対する汎網膜光凝固の効果」を検討)で用いられたmodified Airlie House fields 7方向ステレオ眼底写真の撮影方法を改変している。ETDRSの結果としては,毛細血管瘤からの漏出を主体とした局所性の黄斑浮腫に対する局所レーザー光凝固,びまん性黄斑浮腫に対するグリッドレーザー(格子状)光凝固の効果が確立された。レーザー治療は現在に至るまで,「視力の維持」が期待できる標準的治療として用いられている。同時に,糖尿病黄斑浮腫の治療として光凝固治療に加えてトリアムシノロンアセトニド(triamcinolone acetonide:TA)局所注射や抗血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor:VEGF)薬などさまざまな薬物療法が用いられるようになり,治療の目標が「視力の維持」から「視力の改善」へと転換しつつある。

 その一方で,治療に伴う副作用や合併症の危惧もある。例えば黄斑局所レーザー,あるいはグリッドレーザーでは治療後の瘢痕拡大の可能性があり,一度瘢痕化した網膜はその後治療による改善は期待できない。局所注射として用いられるTA注射では眼圧上昇と白内障の進行がある。そして現在では抗VEGF薬の承認が待たれている状況であるが,繰り返し注射が必要なこと,臨床試験のような限定的な条件下ではなく,多様な患者を対象として抗VEGF療法が行われた際に,もともと虚血性心疾患や脳卒中の危険が高い糖尿病患者でそれらの循環器疾患発症の危険が高まるといったことが危惧される。

 他方,網膜硝子体術者は以前から増殖糖尿病網膜症に対する硝子体手術後に黄斑浮腫が鎮静化することを経験しており,そこから「糖尿病黄斑浮腫の軽減を目的にした硝子体手術」が行われるようになった。その後,硝子体手術機器は技術の飛躍的な進歩を遂げ,従来の20G硝子体手術からより侵襲が低い23G,25Gあるいは27Gシステムといった小切開硝子体手術(micro-incision vitrectomy surgery:MIVS)へと移行し,特にわが国では糖尿病黄斑症の治療選択の1つになっている。しかしながら,糖尿病黄斑症に対する硝子体手術の効果をそれ以外の治療法と直接比較検討した臨床試験は限られており,硝子体手術の効果が十分に示されているとはいえない。薬物治療,特に認可が迫る抗VEGF療法によって治療期間の長期化,複数回の注射が必要であること,治療費用の増大などが予想されることから治療回数を減らしつつ,視力改善が得られる治療の選択肢として改めて硝子体手術への期待も高まっている。本稿では糖尿病黄斑浮腫に対する硝子体手術について,その適応や効果,問題点などを概説する。

光凝固 平野 隆雄 , 村田 敏規
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はじめに

 糖尿病黄斑症は糖尿病網膜症のすべての病期において発生しうる黄斑部の病態の総称であり,浮腫や虚血そして硝子体による牽引などさまざまな病変によって形成される。糖尿病黄斑症の多くは視力低下の原因となるが,本稿では黄斑症のなかでも頻度が高く,光凝固治療の適応となる糖尿病黄斑浮腫(diabetic macular edema:DME)について解説する。

 DMEは糖尿病網膜症の全進行経過過程で認められ,単純糖尿病網膜症の段階であっても6%程度に生じ,視力低下の原因となるといわれる1)。増殖糖尿病網膜症のように失明の原因とはならないが,就労年齢層における社会的失明の原因として問題となる2)。DMEの病態は非常に複雑で,血管透過性亢進・血管閉塞による血流障害・膠質浸透圧低下・後部硝子体膜の牽引などさまざまな要因が関与して起こる。なかでも,血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor:VEGF)の血管透過性亢進作用がDME発症に果たす役割の大きさは疑う余地がなく,近年のDRCR. net,RESTORE,RISE and RIDE studyなどの大規模臨床研究における抗VEGF薬の良好な治療効果もこのことを裏付けている。わが国では,2013年8月に抗VEGF薬の1つであるラニビズマブ(ルセンティス®)で加齢黄斑変性に加え,網膜静脈閉塞症に伴う黄斑浮腫および病的近視に伴う脈絡膜新生血管の適応が追加された。近い将来,DMEまで適応拡大される予定である。

 前述したDRCR. netやRESTORE studyでは,DMEに対するラニビズマブの良好な治療効果だけではなく,ラニビズマブと光凝固治療(毛細血管瘤直接凝固・グリッド凝固)の比較検討も行われている。結果として,DRCR. net,RESTORE studyともにラニビズマブ単独もしくはラニビズマブと光凝固併用群において光凝固単独群より視力の改善率が良好であったと報告している3~6)。筆者らの施設においても適応外使用ではあるが,図1のように中心窩を含み難治性のDMEに対して抗VEGF抗体の1つであるベバシズマブ(アバスチン®)を用い,即効性のある治療効果を経験しており,前述したような大規模studyの結果も踏まえると,今後抗VEGF療法がDME治療の中心となることに疑念の余地はない。しかしながら,抗VEGF療法には頻回の硝子体注射による眼内炎のリスク,経済的・社会的な患者側の負担や施行する医師側の負担などさまざまな問題が残る。また,実際の臨床の場においては,局所的黄斑浮腫では光凝固単独でも有効な治療効果を経験することは少なくなく,抗VEGF療法の時代に移行しつつある今だからこそ,DME治療における光凝固の意義を再考することは重要なことと思われる。本稿ではDME治療としての光凝固において,従来よりスタンダードに用いられている毛細血管瘤直接凝固・グリッド凝固,汎網膜光凝固と近年その侵襲の少なさと治療効果から注目を集めている閾値下凝固について概説する。

抗VEGF薬 大谷 倫裕
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はじめに

 糖尿病黄斑浮腫(diabetic macular edema:DME)は糖尿病患者の9~10%に起こり,視力低下の主原因の1つとなっている1)。治療としては,毛細血管瘤からの漏出によって起こる局所性浮腫に対しては毛細血管瘤への光凝固が有効である。一方,びまん性浮腫に対しては格子状光凝固2)が行われてきたが,その効果には限界があった。日本国内ではびまん性黄斑浮腫に対し硝子体手術3)が行われることも多いが,視力の改善は50%前後にとどまっている。薬物治療は,ステロイドの硝子体内注射が有効であるものの4),白内障や眼圧上昇などの副作用が指摘されている。

 加齢黄斑変性では,血管内皮細胞増殖因子(vascular endothelial growth factor:VEGF)が脈絡膜新生血管の発症に関与しており,VEGFを標的とした薬物治療はすでに主流となっている。VEGFはDMEの病態にも深く関与しており,抗VEGF薬は今後DME治療の中心になると考えられている。本稿では,DMEとVEGF,抗VEGF薬の有効性について述べる。

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はじめに

 糖尿病黄斑浮腫(diabetic macular edema:DME)は,その発症機序や病態が十分に解明されていなかった頃の治療の選択肢といえば,経過観察か,光凝固(photocoagulation:PC)というシンプルなものであり,その結果は必ずしも満足のいくものではなかった。近年,DMEは高血糖状態によるフリーラジカルの活性化と腎不全などの合併症による浸透圧異常が原因で毛細血管内皮が障害され,これによる毛細血管の透過性亢進が黄斑浮腫という病態を引き起こすことが明らかになった。また,毛細血管の透過性亢進により硝子体内に分泌された高濃度のサイトカインやこれによる二次的な慢性炎症を契機に続発する後部硝子体膜の肥厚や黄斑前膜形成が黄斑牽引としてDMEの増悪に深く関与していることが明らかになった。これらのDMEの病態の診断と形態的変化を含めた重症度評価には,スペクトラルドメイン光干渉断層計(spectral-domain optical coherence tomograph:SD-OCT)や広角眼底観察装置などの検査機器の著しい進歩が大きく寄与している。

 DMEへの理解が深まるにつれ,最近ではさまざまな視点からの新たな治療の試みが行われている。現在,DMEに対する代表的な治療はPCのほかに,抗血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor:VEGF)薬やステロイドによる薬物投与,硝子体手術などである。とりわけ,欧米ではかつてないほどの薬物治療の全盛時代になっており,抗VEGF薬を含め,多くの薬剤の臨床試験が行われている。しかしながら,どれひとつ根治的な治療薬剤が見出されていないのが現状である。治療の選択肢は増えたものの,どの治療をどういうタイミングで行うのかということに関してはさまざまな試みが試行錯誤で行われているのが現状であり,今のところその多くは臨床現場のそれぞれの経験に委ねられているところが大きい。本稿では,最近のエビデンスに基づく知見と現在進行中の臨床試験などを主に述べてみたい。

特集 眼底疾患と悪性腫瘍

原発性眼内リンパ腫 後藤 浩
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はじめに

 眼内リンパ腫は稀な疾患であるが,高率に中枢神経系(central nervous system:CNS)リンパ腫を併発するため,眼科医がかかわる疾患のなかでは最も生命予後不良な疾患の1つである。一方,本症はぶどう膜炎と誤診されやすいこと,すなわち仮面症候群としての側面を有していることから,診断や治療は常に遅れがちな疾患でもある。実際,本症の60~90%にCNSリンパ腫を発症1,2)し,その5年生存率は30~60%3,4)ときわめて不良であるにもかかわらず,眼症状出現からリンパ腫としての診断が確定するまでに平均1年以上の時間を要しているのが現状である3)

 CNSリンパ腫が先行し,すでに診断が確立している場合は眼内リンパ腫の診断は比較的容易である。しかし,眼症状が先行した場合は,まず眼科医がこの疾患に遭遇することになるので,眼底検査などによって本症に特徴的な所見を確認し,鑑別疾患の1つとして眼内リンパ腫を想起することが求められる。

 本稿では,眼内リンパ腫の臨床的特徴と診断へのアプローチ,さらに現在行われている治療法について概説する。

腫瘍関連網膜症 上野 真治
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はじめに

 悪性腫瘍患者において腫瘍細胞の直接の浸潤や転移などによらず,自己免疫機序の遠隔効果によって中枢神経系に異常が生じるものを腫瘍随伴症候群(paraneoplastic syndrome)と呼ばれている。その病因としては神経組織に発現している蛋白が腫瘍組織に異所性に発現することにより,腫瘍組織に発現した蛋白と神経組織の蛋白がともに非自己と認識され,自己抗体が発現し攻撃を受けることによると考えられている。腫瘍随伴症候群で最も有名なのがLanbert-Eaton症候群で,これは腫瘍内に神経終末に発現するカルシウムイオンチャネルを発現し,それに対する自己抗体が出現することにより神経終末のカルシウムチャネルが傷害され,筋肉の脱力と易疲労性が生じる。

 同様の機序で,網膜に障害を生じるものが腫瘍関連網膜症(paraneoplastic retinopathy)と呼ばれる。上皮由来の悪性腫瘍により視細胞を傷害するものを癌関連網膜症(cancer assoicated retinopathy:CAR),また主にメラノーマにより双極細胞に対する自己抗体が発現し双極細胞の機能障害を生じるものは,メラノーマ関連網膜症(melanoma associated retinopathy:MAR)と呼ばれている。それら以外にも,上皮由来以外の悪性腫瘍であるリンパ腫や肉腫などによる視細胞の傷害も腫瘍関連網膜症の1つとして知られている。今回は腫瘍関連網膜症のなかでも頻度の高いCARと,最近自己抗体の抗原の1つが見つかり,病態の解明が進んできたMARを中心とした双極細胞に対する自己抗体による腫瘍関連網膜症について詳述する。

脈絡膜悪性黒色腫 鈴木 茂伸
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はじめに

 成人の眼内に生じる原発性悪性腫瘍で最も多いのは悪性黒色腫である。典型例は色素を伴う隆起病変で,ドーム状やマッシュルーム状の形状をとり,漿液性網膜剝離を伴うことが多い。通常は臨床診断に基づき治療方針を決定する。治療はレーザー,放射線治療,眼球摘出,局所切除などが行われる。転移を生じやすい腫瘍であり,常に生命予後を考えて診療にあたることが重要である。本稿では,疫学,診断,治療,予後について解説する。

仮面症候群 中尾 久美子
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はじめに

 原発性あるいは続発性に眼内に発生した悪性腫瘍は,ぶどう膜炎や網膜剝離のような腫瘍とは思えない眼所見を呈し,容易に診断できない場合がある。このような病態を仮面症候群といい,仮面に惑わされて診断や治療が遅れると視力予後が非常に悪くなるばかりでなく,生命予後にかかわる重大な問題を引き起こす可能性があるので,仮面に騙されないようにしなくてはいけない。

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 本邦での後発医薬品の添加剤は先発医薬品と異なる場合がほとんどである。点眼薬の後発医薬品を選択する場合,まず,大切なことは後発医薬品の有効性や安全性などの特徴を把握することである。異なる添加剤が使用されている以上,添加物による影響は無視することはできない。今後は経済性,利便性を最優先するのではなく,後発医薬品の基礎的,臨床的データの構築とデータに基づいた薬剤の選択が肝要である。

連載 何が見える? 何がわかる? OCT・第12回

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Point

◎OCTで黄斑部網膜内層を観察したり計測できる。

◎平均値は偽陽性と偽陰性が生じる頻度が高いことに留意する。

◎確率マップの網膜神経線維層欠損パターンは緑内障の診断力が高いが強度近視には要注意。

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 《眼科臨床エキスパート》という新シリーズが医学書院から新たに刊行されることとなり,『All About開放隅角緑内障』がそのシリーズ嚆矢として出版された。このようなシリーズ本は,かつて『眼科プラクティス』(文光堂)などいくつかが刊行されたが,本シリーズの竜骨はその道のエキスパートの経験とエビデンスに基づいた「新しいスタンダード」をわかりやすく〈解説する〉ことにあるとされている。従来このようなシリーズ本では,例えば眼科プラクティス「緑内障診療の○△……」というようなタイトルで,緑内障全体が一冊にまとめられるのが常であったし,また医学書院より2004年に刊行された北澤克明岐阜大名誉教授監修の教科書『緑内障』でも開放隅角緑内障についてはその約十分の一が費やされていたにすぎない。しかるに本書『All About開放隅角緑内障』は開放隅角緑内障に的を絞って約400ページの大部である。眼科の中の一疾患群のさらにその中の一疾患に対して「All About」と題するために400ページ一冊を要するということは,近年の開放隅角緑内障に対する新知識・新知見の集積の速さを実感させられる。しかも,編者が序で述べているように,本書は開放隅角緑内障に関する,最先端も含めた知識のすべてを詰め込んだ百科事典的レビューをめざしたものではなく,精読すべき教科書として上梓されたとある。ページを開いてみると,いわゆる「明日からの臨床にすぐに役立つ」○△シリーズ本とは,少し趣きを異にしている。まず最初に全体の45%の頁数が,開放隅角緑内障という眼疾の本態の理解のために費やされている。この前半を読了しない者は,次の診断,治療の項を読む資格がない。すなわち開放隅角緑内障患者を外来診療する資格がないとまでは言わぬとも,常に病態の本質をわれわれが現時点でどこまでかわかっており,どこからがわかっていないかを理解した上で,患眼を診察・治療すべきという編者の緑内障研究者としての矜持が伝わってくるようである。このような順序で読み進めていけば,診断のために近年開発されたいくつかの新しい方法論の必要性と限界,およびそれらにより得られた所見も理解しやすく,種々薬物や術式の選択の必然性もおのずと読者が理論的に納得できるのではないだろうか?

 診断,治療の項を読みつつ,常に前半を参照すれば,開放隅角緑内障の実際臨床と基礎の現在進行形が,より体系的に理解できるようになると思われる。本書により,40歳以上で約4%の有病率と考えられている開放隅角緑内障患者のわが国における診断と治療のレベルが一段とステージアップすることはもちろんとしても,「もっと原発開放隅角緑内障がわかりたい」と思う若い眼科医も増えるのではないかという期待もできそうである。

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 本書は《眼科臨床エキスパート》という新シリーズの1冊である。「ぶどう膜炎」というと,眼科臨床の中では「困った……」という症例が一番多い分野ではないだろうか。症状から一目瞭然で,すっきりと治療に反応する患者さんも結構多いが,一方で,なんとなくステロイドで軽快してしまう患者さんや,ひと通りの血液検査や全身チェックなどでは原因がわからず,だらだらと経過を見ている患者さんも多い。

 園田康平先生と後藤浩先生が編集された『所見から考えるぶどう膜炎』を一読し,ぶどう膜炎の診療は,まず正確な所見を取ること,得られた所見を的確に解釈できる知識を持つこと,鑑別診断すべき疾患をできるだけ多く思い浮かべられるようにすることの大切さを教えられた。

今月の表紙

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 症例は70歳,女性。前医で白内障術後に角膜後面沈着物の増加を認め,当科へ紹介となった。

 視力は右0.3(0.4),左0.4(0.7)。眼圧は右18mmHg,左19mmHgであった。細隙灯顕微鏡検査では,両眼に角膜後面沈着物を認め,また内皮スぺキュラーにて,広範囲にguttataを認めた。

やさしい目で きびしい目で・169

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 高知県では,広く全国の方に高知県を知ってもらい,好きになってもらうことを目的に,「高知県は,ひとつの大家族やき。高知家」というコンセプトコピーを発表しました。インターネット上のプロモーションビデオには県出身の女優さんが「高知の人はうんと人なつっこうて,心がぬくうて,お互いを家族みたいにおもっちゅう」と土佐弁で呼びかけています。私の子育てもまさにこのコピーのごとく,家族のように温かい医局員の集まる「高知大眼科家」に支えられながらの子育てと仕事の両立生活です。

 私は医師8年目の秋に,産前休暇2週目で長男を出産しました。快適な妊婦生活であったため,楽観主義の私は「なんとかなるかなあ」と,育児休暇は取らず産後2か月で復職しました。ただ私の実家も主人の実家も県外であるうえ,主人は県外勤務であったため,平日は母一人子一人という少し不安のあるなかでの新生活のスタートでした。実際ふたをあけてみると,何とかなっているのは医局の先生方,秘書さん,院内託児所の保母さんと多くの方々の助けのおかげで,日々誰かに感謝する毎日です。

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要約 目的:網膜周辺部に出血が生じたC型肝炎ウイルス網膜症の1症例の報告。症例:61歳男性がインターフェロン投与前の眼科的検査のため紹介受診した。43年前に腹膜炎の手術の際に輸血を受けた。11年前にC型肝炎が発見され,1年前に肝細胞癌に対して肝切除を受けた。所見:矯正視力は右1.2,左1.0で,両眼底の耳側周辺部に毛細血管瘤と出血斑が多発していた。インターフェロン投与は行わなかった。1年間の蛍光眼底造影による経過観察で,耳側周辺部の無灌流領域が拡大した。結論:インターフェロン網膜症では網膜出血と軟性白斑が生じることがある。本症例では眼底周辺部に無灌流領域と毛細血管瘤が主要な病変であった。

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要約 目的:緑内障に対する選択的レーザー線維柱帯形成術の長期成績の報告。対象と方法:選択的レーザー線維柱帯形成術を行った62例87眼を対象とした。男性55眼,女性32眼で,年齢は39~83歳,平均65歳である。原発開放隅角緑内障が71眼,落屑緑内障が16眼,術前の緑内障点眼数は平均3.1剤であった。術前の平均眼圧は21.4±5.0mmHgであった。術後の経過を少なくとも6か月,平均33.6か月追跡した。結果:平均眼圧は,術後6,12,24,36,48,60か月すべての時点で術前値よりも有意に下降した(p<0.001)。重篤な副作用はなかった。結論:緑内障に対する選択的レーザー線維柱帯形成術は安全で,6か月以上の期間,有意に眼圧が下降した。

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要約 背景:抗癌剤パクリタキセルでは,副作用として囊胞様黄斑浮腫が生じることがある。目的:パクリタキセルとヒト血清アルブミンが結合したナブ・パクリタキセルによる治療中に囊胞様黄斑浮腫が生じた症例の報告。症例:52歳の女性が3か月前からの視力障害と変視で受診した。10年前に左側の乳癌と診断され,手術を受けた。6年前に肝に遠隔転移が生じ,パクリタキセルを含む化学療法を受けた。5年前に癌性胸膜炎が生じた。10か月前からナブ・パクリタキセルの全身投与が開始された。所見:矯正視力は右1.2,左0.9で,両眼に囊胞様黄斑浮腫があった。光干渉断層計検査でこれに相当する所見があった。1か月後に矯正視力が右0.9,左0.4に低下し,ナブ・パクリタキセルの投与を中止した。休薬から1か月後の視力は不変であったが,光干渉断層計による囊胞様黄斑浮腫の所見は改善した。5か月後の視力は不変で,囊胞様黄斑浮腫の所見は消失した。結論:ナブ・パクリタキセルの全身投与で囊胞様黄斑浮腫が生じた可能性がある。

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要約 目的:多発性後極部網膜色素上皮症に対して通常の半量の光線力学的療法を行った2症例の報告。症例:両症例とも男性で,年齢は58歳と68歳であった。いずれも片眼性で,胞状網膜剝離があり,罹患眼の初診時の矯正視力は,それぞれ0.9と0.1であった。多発性後極部網膜色素上皮症と診断し,初診からそれぞれ7か月と1か月後に,エネルギー量を半分にした光線力学的療法を実施した。両症例とも視力が2段階以上上昇し,以後1年間再発がない。赤外蛍光眼底造影では脈絡膜血管の透過性亢進があり,術後改善した。視細胞内節/外節ラインは術後3か月で回復した。結論:胞状網膜剝離を伴う多発性後極部網膜色素上皮症に対し,低量の光線力学的療法が奏効した。

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欧文目次

べらどんな ブルッフ先生
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 Karl Wilhelm Ludwig Bruchは1819年にドイツのMainzで生まれた。マイン川をはさんでFrankfurtの対岸にある町である。

 医学をGiessenとBerlinで学び,23歳で医師資格を得た。その2年後に「脊椎動物の色素顆粒についての研究」を発表し,Heidelberg大学の講師になった。

ことば・ことば・ことば 要約
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 学術論文にはほとんど必ず要約がつきます。抄録ということもあります。英語なら代表的なのがabstractで,下に述べるようにsummaryなどの違った表現も多数あります。

 Abstractはラテン語系の単語です。これを分解するときには,ab-ではなくabs-で切ります。語幹のtractは「引っぱる」という意味の動詞に由来し,そのもっとも単純な例がtractor「トラクター」です。算術の「引き算」はsubtractionですし,列車のtrain,attraction,extraction,contractionなどなど,数多くの仲間がいます。

べらどんな 新知見
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 同じ話を何度も発表するのは良い趣味ではない。「あのスライドを見るのはもう××回目」と言われた有名人が何人もいる。それでも,とびきり良い研究については,繰り返して発表し,大勢の同業者に知ってもらう義務があると思う。

 「あれは凄い発見」だと今でも思われるのは,30年ばかり前に教室の村岡兼光君が出した業績である。増殖糖尿病網膜症に蛍光眼底を行い,その超初期像を解析して,乳頭からの新生血管,いわゆるNVDが乳頭のどこから出ているかを見たものである。質の良い蛍光像が得られた48眼だったと記憶している。

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あとがき 下村 嘉一
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 今年は夏から冬にかけてあっという間に季節が移り変わり,秋の紅葉はまばらでしたが,皆さん不安になりませんでしたか。これも地球温暖化の影響なのでしょうか。

 本号は2014年最初の号で,「糖尿病黄斑症は今こう治療する」と「眼底疾患と悪性腫瘍」の2本の特集が掲載されています。両者ともその道のエキスパートが執筆されているので,素晴らしい読み物になっております。熟読して頂ければ明日からの診療に役立つこと確実です。「今月の話題」では,金沢医大の福田正道先生に「緑内障点眼薬後発品(いわゆるジェネリック)の特性」を執筆して頂きました。ラタノプロストの後発品が現在23品目もあるとは驚愕しました。しかもそのほとんどの点眼薬の安全性,有効性,眼内移行などは不明です。そのうえ,欧米での後発品は原則として,添加剤を含めた成分はすべて同じであることを知り,さらに驚きました。抗緑内障治療薬は長期間の使用が要求され,主剤あるいは防腐剤による障害がよく報告されており,他の点眼薬に比べてさらに注視すべきものです。何故,このような事態になったのでしょうか。ご存知の諸兄がいらっしゃいましたら,ぜひお教え頂ければ幸いです。

基本情報

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臨床眼科
68巻1号 (2014年1月)
電子版ISSN:1882-1308 印刷版ISSN:0370-5579 医学書院

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