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はじめに
糖尿病黄斑浮腫(diabetic macular edema:DME)は,その発症機序や病態が十分に解明されていなかった頃の治療の選択肢といえば,経過観察か,光凝固(photocoagulation:PC)というシンプルなものであり,その結果は必ずしも満足のいくものではなかった。近年,DMEは高血糖状態によるフリーラジカルの活性化と腎不全などの合併症による浸透圧異常が原因で毛細血管内皮が障害され,これによる毛細血管の透過性亢進が黄斑浮腫という病態を引き起こすことが明らかになった。また,毛細血管の透過性亢進により硝子体内に分泌された高濃度のサイトカインやこれによる二次的な慢性炎症を契機に続発する後部硝子体膜の肥厚や黄斑前膜形成が黄斑牽引としてDMEの増悪に深く関与していることが明らかになった。これらのDMEの病態の診断と形態的変化を含めた重症度評価には,スペクトラルドメイン光干渉断層計(spectral-domain optical coherence tomograph:SD-OCT)や広角眼底観察装置などの検査機器の著しい進歩が大きく寄与している。
DMEへの理解が深まるにつれ,最近ではさまざまな視点からの新たな治療の試みが行われている。現在,DMEに対する代表的な治療はPCのほかに,抗血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor:VEGF)薬やステロイドによる薬物投与,硝子体手術などである。とりわけ,欧米ではかつてないほどの薬物治療の全盛時代になっており,抗VEGF薬を含め,多くの薬剤の臨床試験が行われている。しかしながら,どれひとつ根治的な治療薬剤が見出されていないのが現状である。治療の選択肢は増えたものの,どの治療をどういうタイミングで行うのかということに関してはさまざまな試みが試行錯誤で行われているのが現状であり,今のところその多くは臨床現場のそれぞれの経験に委ねられているところが大きい。本稿では,最近のエビデンスに基づく知見と現在進行中の臨床試験などを主に述べてみたい。
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