臨床眼科 66巻8号 (2012年8月)

特集 第65回日本臨床眼科学会講演集(6)

原著

  • 文献概要を表示

要約 目的:白内障手術で,単焦点眼内レンズと多焦点眼内レンズを組み合わせたmonovisionの変法をhybrid monovisionと定義し,手術から1年後の視機能を検討する。対象と方法:両眼の白内障手術で,優位眼に単焦点,非優位眼に回折型多焦点眼内レンズを挿入した30例を対象とした。男性4例,女性26例で,平均年齢は63±12歳である。結果:術後の両眼開放状態での遠方裸眼視力は平均1.38,近方視力は平均0.95であった。近見眼位は術前13.5±5.9Δ,術後10.5±5.0Δで,明らかに斜視化した症例はなく,満足度は概して良好であった。結論:両眼の白内障手術で,優位眼に単焦点眼内レンズ,非優位眼に回折型多焦点眼内レンズを挿入することで,良好な裸眼視力が遠方と近方で得られ,斜視化はなく,有効な老視矯正法であると評価される。

  • 文献概要を表示

要約 目的:トーリック眼内レンズによる乱視矯正効果の報告。対象と方法:アクリソフ®IQ眼内レンズを挿入し,手術1か月後に1.0以上の矯正視力が得られた92眼を対象とした。術前の角膜乱視は,倒乱視53眼,直乱視31眼,斜乱視8眼である。術前と手術1か月後に波面センサーにより波面収差解析を行い,角膜乱視と術後の眼球乱視を極座標として表示し,乱視矯正効果を評価した。結果:約91%の症例で0.7以上の裸眼視力が得られた。用いた眼内レンズの円柱度数により分けた3群すべてに倒乱視化の傾向があった。結論:トーリック眼内レンズで乱視が矯正され,術後の裸眼視力が向上した。倒乱視が残存する傾向があり,適応の決定と眼内レンズのスタイルの選択にノモグラムが必要である。

  • 文献概要を表示

要約 目的:網膜芽細胞腫に対し眼球保存治療を行った9例の報告。対象と方法:対象は2001~2010年に九州大学病院で治療した網膜芽細胞腫41例のうち保存治療を行った9例9眼。診療録から治療経過などを後ろ向きに調査した。結果:両眼性が8例,片眼性が1例であった。両眼性は進行眼を摘出し僚眼に保存治療を行った。国際分類の内訳はA群0眼,B群5眼,C群4眼,D群0眼,E群0眼であった。全例で全身化学療法とダイオードレーザー治療を行い,メルファラン硝子体注入2眼,小線源治療2眼,放射線外照射2眼,選択的眼動脈注入1眼を行った。結論:眼球保存治療を行った9眼は重篤な副作用がなく,国際分類B群で5眼(100%),C群で3眼(75%),眼球保存を達成した。

  • 文献概要を表示

要約 目的:単焦点眼内レンズを用いたマイルドモノビジョン法の満足度に影響する因子を後ろ向きに検討した結果の報告。対象と方法:術後6か月が経過し,術後の満足度調査が可能であった102例(男性30例,女性72例。平均年齢72±7歳)に対し,術後の満足度を従属変数とし,重回帰分析(stepwise法)を行った。結果:満足度は優位眼の眼軸長(標準偏回帰係数β=-0.27),術後両眼開放近見log MAR(β=-0.23),術後非矯正下近見立体視(β=-0.19)により,有意に回帰された(決定係数R2=0.15,p<0.05)。結論:満足度には優位眼の眼軸長,術後両眼開放近方視力,術後非矯正下近見立体視が関与していた。

  • 文献概要を表示

要約 目的:増殖糖尿病網膜症に対する20ゲージと25ゲージ硝子体手術の成績の比較。対象と方法:過去64か月間に増殖糖尿病網膜症に対して硝子体手術を行った連続86症例を対象とし,術後1年までの成績を診療録に基づいて検索した。前半の24か月間は20ゲージで43眼,後半の40か月間は25ゲージで43眼に手術を行った。結果:術後の視力の経過には,両群間に有意差がなかった。術後の硝子体出血は20ゲージよりも25ゲージで有意に少なく(p=0.016),術後の高眼圧も同様に少なかった(p=0.029)。結論:増殖糖尿病網膜症に対する25ゲージ硝子体手術では,20ゲージと同様な視力転帰が得られ,術後の硝子体出血と高眼圧が有意に少なかった。

  • 文献概要を表示

要約 目的:X線断層撮影の変法であるトモシンセシスを涙囊造影に応用した報告。対象と方法:慢性涙囊炎が併発した鼻涙管閉塞4例4側を対象とした。男性1例と女性3例で,年齢は41~79歳(平均59歳)である。涙囊造影の際にトモシンセシスで撮影し,得られた三次元のデータから冠状断の画像を再構成した。結果:骨の重なりで不鮮明化した画像部分が少なく,涙小管,涙囊,涙道閉塞部がいずれも単純撮影より明瞭に描出できた。多断面の連続描写で,造影部位を含めた涙道の立体的観察ができた。撮影開始から再構成までの時間は3~5分であった。結論:トモシンセシスは涙囊造影に有用である。

  • 文献概要を表示

要約 目的:鼻涙管完全閉塞の症例に,涙道内視鏡下チューブ挿入術を行った成績の報告。対象と方法:過去11か月間に涙道内視鏡下チューブ挿入術を行った鼻涙管完全閉塞の17例19側を対象とした。涙道洗浄を術後に行い,再閉塞の有無を調べた。結果:12側(63%)が再閉塞していた。再閉塞がない7側中6側に,チューブを抜去したのち涙道を内視鏡で検索し,4側に狭窄があった。再閉塞した12側中6側に涙囊鼻腔吻合術を施行し,全例で良好な結果を得た。結論:鼻涙管完全閉塞のある症例では,チューブ挿入術の効果は限定的である可能性があり,涙囊鼻腔吻合術が将来必要になることがある。

  • 文献概要を表示

要約 目的:鼻側階段状視野欠損で初発した内頸動脈瘤の症例の報告。症例:61歳女性が鼻側階段状視野欠損で紹介受診した。31か月前に眼精疲労で近医を受診し,視力は正常であった。19か月前に乳頭の蒼白化があり,視力と視野は正常であった。所見:矯正視力は右0.5,左1.5で,眼圧は正常,乳頭の陥凹/乳頭比は右0.7,左0.4であった。Goldmann視野で右眼に上鼻側階段状視野欠損があった。初診の2か月後に行った頭部の単純CTで右内頸動脈瘤が発見され,動脈瘤コイル塞栓術が行われ,以後9か月後の現在まで視機能は維持され,経過は良好である。結論:鼻側階段状視野欠損を初発症状として内頸動脈瘤が発症することがある。

  • 文献概要を表示

要約 背景:東日本大震災は2011年3月11日に起こった。筆者は3月24~27日まで兵庫県医師会が派遣した医師団に加わり,石巻市で診療を行った。目的:石巻市仮設診療所で行った眼科診療の報告。対象:4日間に受診した眼科患者59名を対象とし,解析した。結果:男性23名,女性36名が受診した。年齢は70歳代が23名(39%)と最も多く,60歳以上が41名(69%)を占めた。受診疾患は,アレルギー性疾患25%,緑内障22%,白内障21%,眼底疾患14%,ドライアイ4%,その他14%であった。急性緑内障,網膜裂孔,網膜出血の重症者3名は石巻赤十字病院に紹介した。結論:震災の13日後には眼科医療のニーズが高まっていた。今後の大災害発生の際には,全国的な眼科組織による早急な支援チームの派遣が望まれる。

  • 文献概要を表示

要約 目的:ドライアイに対するジクアホソルナトリウム3%点眼液の効果の報告。対象と方法:過去4か月間に受診したドライアイ患者25例25眼を対象とした。男性4例,女性21例で,平均年齢は65歳である。ジクアホソルナトリウム3%点眼液の点眼を1日6回行い,54.1±26.7日間の経過を観察した。結果:数量化した前眼部生体染色所見と涙液層破壊時間は,投与後に有意に改善した。視覚的アナログ尺度に換算した自覚所見のうち,「目が乾いた感じがする」と「光をまぶしく感じる」の2項目は,投与後に有意に改善した(各p=0.0003,p=0.0001)。局所刺激感のため2例が点眼を中止した。結論:ジクアホソルナトリウム3%点眼液は,短期間の観察でドライアイに有効であった。

  • 文献概要を表示

要約 目的:広隅角デジタル撮影装置であるRetCam®を用いた隅角検査の報告。対象と方法:手術のために入院した緑内障患者50名50眼を対象とした。Goldmann 2面隅角鏡とRetCam®で各4方向の隅角を撮影し,その結果を比較した。隅角の広さの判定にはScheieの分類を用いた。結果:隅角鏡とRetCam®で判定される隅角の広さは,Grade 0とIの広隅角では100%で一致し,隅角が狭くなるにつれ一致率が低下し,RetCam®によるほうが広く判定された。RetCam®による圧迫隅角検査は容易で,周辺虹彩前癒着の有無の判定が可能であった。結論:RetCam®で隅角の撮影記録ができた。RetCam®では撮影時に眼球が圧迫されやすく,狭隅角眼では隅角の広さの定量的評価が困難である。

  • 文献概要を表示

要約 目的:ポリープ状脈絡膜血管症に対して光線力学療法が行われ,9か月後に漿液性網膜剝離が再発し,脈絡膜が菲薄化した症例の報告。症例:72歳女性が6か月前からの右眼視力低下で受診した。矯正視力は右0.15,左1.5で,右眼黄斑部に橙赤色の隆起と漿液性網膜剝離があった。諸検査の結果,ポリープ状脈絡膜血管症と診断し,4か月の間隔で低出力光線力学療法とラニビズマブの硝子体注射を行った。2回目の治療から9か月後に漿液性網膜剝離が再発し,脈絡膜厚は減少していた。以後ラニビズマブの硝子体注射を毎月1回15か月間続けたが,ポリープ状脈絡膜血管症が再発し,脈絡膜厚が再度増加した。結論:ポリープ状脈絡膜血管症の治療経過中に,脈絡膜厚が増減した。

  • 文献概要を表示

要約 目的:片眼性網膜色素変性と診断された症例の健側眼に光干渉断層計検査を行い,異常がみられた報告。症例:50歳女性が左眼の夜盲で紹介受診した。裸眼視力は左右とも1.2で,右眼の眼底,視野,蛍光眼底造影所見,網膜電図は正常であった。左眼には網膜色素変性に特有な眼底所見,輪状暗点があり,網膜電図は消失または振幅の低下があり,片眼性網膜色素変性と診断した。右眼の光干渉断層計検査で,上耳側血管アーケードの周辺部にIS/OSラインの不連続があり,この部位に視細胞層の菲薄化があると判断した。結論:本症例の健側眼にみられた光干渉断層計所見は,網膜色素変性の初期変化である可能性がある。

  • 文献概要を表示

要約 目的:内視鏡を併用した硝子体手術で,術中に発見した周辺部の眼底病変の報告。対象と方法:過去20か月間に黄斑円孔18眼と黄斑上膜38眼に対して23ゲージ硝子体手術を行った54例56眼を対象とした。男性26眼,女性30眼で,年齢は48~86歳(平均68歳)である。全症例につき,内視鏡で周辺部眼底を観察した。50眼(89%)で白内障手術を併用した。結果:術中の内視鏡による検索で,周辺部網膜の病変が9眼(16%)に発見された。その位置は7眼が5~7時方向にあった。術後に低眼圧が3眼,網膜剝離が1眼に生じた。結論:硝子体手術時の内視鏡による観察で,16%の症例に周辺部網膜病変を発見できた。

  • 文献概要を表示

要約 目的:特発性黄斑円孔に対する硝子体手術の成績と,トリアムシノロンアセトニド(TA)の使用が術後視力に及ぼす影響の報告。対象と方法:過去12か月間に黄斑前膜と内境界膜切除術を行った特発性黄斑円孔47例47眼を対象とした。男性25例,女性22例で,年齢は44~81歳(平均64歳)である。25眼ではTAを使用し,26眼ではインドシアニングリーン(ICG)をTAと同時または単独で使用した。6か月以上の術後経過を追った。50歳以上の33眼では,あらかじめ水晶体を摘出した。結果:TAとICGの非使用群では,TA単独使用群よりも視力が有意によかった(p<0.05)。TAとICGを併用した群とICG単独使用群との間に,術後視力に有意差がなかった。TA使用群では非使用群よりも,術後1か月の眼圧が有意に高く(p<0.05),術後6か月の網膜厚が有意に大きかった(p<0.05)。結論:特発性黄斑円孔に対する硝子体手術中のTA使用は,術後の視力,眼圧,網膜厚に影響した。これにはTAの消炎作用と網膜への毒性が関与している可能性がある。

  • 文献概要を表示

要約 目的:脈絡膜皺襞を伴った急性後部多発性斑状色素上皮症(APMPPE)の1症例の報告。症例:64歳男性が3週間前からの右眼視力低下で受診した。矯正視力は右0.7,左0.6で,右眼後極部に黄白色の滲出斑があった。光干渉断層計(OCT)で後極部に漿液性網膜剝離と脈絡膜皺襞があった。フルオレセイン蛍光造影での逆転現象からAPMPPEと診断し,初回量としてプレドニゾロン30mgを経口投与し,漸減した。3週間後に右眼矯正視力は1.0に回復し,OCTでの脈絡膜皺襞も消失した。結論:APMPPEでは脈絡膜皺襞が生じることがあり,本症での炎症が高度なときには広範囲に脈絡膜に炎症が及んでいる可能性がある。

  • 文献概要を表示

要約 目的:妊娠14週の女性に発症した原田病にステロイドパルス療法が奏効した報告。症例:31歳女性が3日前からの頭痛を伴う両眼の変視と視力低下で受診した。妊娠14週4日であった。所見と経過:矯正視力は右0.9,左1.0で,右眼に+2.5D,左眼に+0.75Dの遠視があった。前眼部に炎症所見はなく,両眼の眼底に漿液性網膜剝離があり,原田病と診断した。胎児に対する危険が大きい妊娠12週を過ぎているので,メチルプレドニゾロン1,000mg/日によるパルス療法を3日間行い,4日目からプレドニゾロン25mgの内服に切り替えた。治療開始から12日で漿液性網膜剝離は消失し,近視化した。妊娠38週4日で出産し,母子に異常はなく,13か月後の現在まで問題はない。結論:妊婦に発症した原田病に対し,眼外症状を重視したステロイドのパルス療法が奏効した。

連載 今月の話題

  • 文献概要を表示

 日本緑内障学会,久米島町,琉球大学の主催により久米島町眼科検診(久米島スタディ)が沖縄県久米島町において行われた。多治見市で行われた疫学調査の結果を踏まえ,原発閉塞隅角緑内障が多いことで知られていた沖縄での緑内障の有病率を推定することが主な目的である。そのため久米島スタディでは,1次スクリーニングから隅角鏡検査を行った。10%の無作為対象者には超音波生体顕微鏡検査を明室,暗室条件下で行い隅角構造の解析も行った。また,沖縄では翼状片の頻度も高いことが臨床経験上知られていたため,翼状片の有病率とその性状についてデジタルカメラ撮影を行い,詳細に検討した。本稿では,久米島スタディの結果として現在までに報告された内容を発表論文に基づき紹介する。

  • 文献概要を表示

ファイトクラブにようこそ!

今回は,バックリング手術後の複視,流涙の症例を検討します。

このような症例に遭遇したら,どう対処するか一緒に考えましょう。

連載 眼科医にもわかる生理活性物質と眼疾患の基本・32

  • 文献概要を表示

はじめに

 本連載もかなり回が進み,これまでいろいろな眼の病態にさまざまな生理活性物質が関係していることをみてきた。近年,さまざまな疾患の病態が分子のレベルで理解されるようになり,それに伴って分子標的療法といわれる新しい治療法が開発され,実際に眼科の臨床にもいくつか導入されてきた。この連載のそもそもの目的の1つは,このような時代の趨勢にあって,例えば血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor:VEGF)や腫瘍壊死因子α(tumor necrosis factor-α:TNF-α)に対するモノクローナル抗体製剤を眼科臨床で用いる際に,少なくともその基礎的な背景を理解していたほうが臨床医としてその力量の幅が拡がるであろうという点にある。そしてそれはまた,今後新たに開発されるであろう他の分子標的薬への理解の助けともなるであろうという点をも包含する。要するに医学全体を動かしている時代の流れに,眼科医としてうまく棹(さお)さして生きていくことができるよう企画されたものであった。

 そこで今回は次号の話題に入る前に,「そもそも生理活性物質とは何なのか」という根本的な疑問を解決するために,いったん立ち止まって知識を整理したい。

連載 つけよう! 神経眼科力・29

一過性黒内障 橋本 雅人
  • 文献概要を表示

一過性黒内障とはどういうものなのか?

 一過性黒内障(amaurosis fugax)とは,網膜の一過性虚血による視力消失発作のことをさし,一過性単眼盲(transient monocular blindness)と同義語で用いられている。ギリシア語で“amaurosis”は黒内障を,“fugax”は一過性を表す。1829年,Hooper1)が器質的異常のない視力低下を示す疾患をamaurosisと最初に提唱したのが始まりである。1902年にはPosey2)が同様の疾患をtransient monocular blindnessとして報告し,さらに同年Weiss3)がamaurosis fugaxと報告したため,その後両者は混同して使用されてきたが,近年では徐々にamaurosis fugaxという名前でほぼ統一されつつある。一過性黒内障の原因は内頸動脈系の循環障害による網膜細動脈の一時的虚血であるが,日常診療において患者が眼科を訪れたとき,その症状は消失していることがほとんどである。したがって,問診が診断の重要なカギを握ってくる。

  • 文献概要を表示

 症例は32歳,男性。急性の右中心視力低下を主訴に前医を初診した。右黄斑部に約1乳頭径大の多房性漿液性網膜剝離(SRD)を伴った網膜下レベルの黄色滲出斑があり,フルオレセイン蛍光眼底造影では滲出斑は過蛍光を示し,後期で著明な蛍光漏出を示した。精査目的で当院を初診した。右眼の矯正視力は0.1で,眼底は黄斑部に約1乳頭径大の網膜色素上皮(RPE)レベルで暗い青色と黄色が混在した病変があったが,前医での所見は消失していた。光干渉断層計検査では視細胞内節外節接合部の欠損と,一部にRPEから視細胞レベルでドーム状の高輝度所見があった。前医での眼所見からUAIMと診断した。NIDEK社製共焦点走査型ダイオードレーザー検眼鏡F-10を用いた検査では,網膜の異常所見よりさらに広い範囲に,中央に低輝度,その周囲に円周状の高輝度所見が幾重にも取り囲むような特徴的な所見があった。また,その最周辺にはリング状の低輝度所見を伴っていた。さらに周辺部のSRDがあった範囲にリング状の陰影があった。

 撮影は,散瞳薬使用下で近赤外レーザー光のダークフィールドLモードで撮影した。黄斑部病変の低輝度と高輝度病変を鮮明に描出するようコントラストを工夫した。

  • 文献概要を表示

 著者の尾身茂先生は2009年に帰国されるまで,20年間近くにわたり世界保健機関(WHO)の西太平洋事務局(WPRO)で活躍されてきた。前半は感染症の対策官としてポリオ根絶などの課題に取り組み,後半の10年間はWPROの地域事務局長として西太平洋地域の保健・衛生全体の責任者としてSARS(重症急性呼吸器症候群)への対応などでリーダーシップを発揮された。そのWHO勤務の間に経験した,ポリオ・結核・SARS・鳥インフルエンザなどの対策に当たった経験をまとめたものが本書である。

 2003年のSARSの流行でも明らかになったように,21世紀の感染症対策にはグローバルな視点からの対応が必要である。しかし国際的な感染症対策の現場には多くの困難がある。本書ではそのような困難な現場で,尾身先生がいかにして1つ1つ問題を解決し道を切り拓いてきたかが,いくつかのエピソードを交えながらダイナミックに描かれている。またWHOでの感染症対策だけでなく,尾身先生が日本に帰国してすぐに発生した2009年の新型インフルエンザに,国の諮問委員会の委員長として対応に当たった際の出来事や,東日本大震災への支援についても述べられている。さらには,日本の社会の根底にある問題を見据えて,日本の医療や地域の公衆衛生のあるべき姿についても多くの示唆に富む提言がなされている。

やさしい目で きびしい目で・152

  • 文献概要を表示

 最近,学会でもトピックな子育てと仕事の両立について書いてみました。

 私は,眼科歴11年,病棟医長になり早6年目。子供は小学生1人。卒後,入局したのは外科。1年目に妊娠・出産。産後1か月半で22時までの保育園に子供を預け,職場復帰。しかし,それまで子持ちの女医は医局におらず,まさにアウェー。一大決心し,翌年,眼科へ転科。眼科に決めた理由は,働くママさん達がいたこと。転科後もフルタイムで勤務。ママさん先生に子育ての相談をしたり,保育園が休みのときは子供を医局に同伴し,みんなにみてもらったり。保育園のお迎え時間を過ぎたときは,保育士さんが自宅でお風呂に入れ,お迎えまで預かってくれました。執刀中に学校から子供が熱発したと連絡があったときは,医局秘書さんが代わりにお迎えに。こんな風に周りの人達に子育てに協力してもらい,支えられてなんとか眼科医として独り立ちできました。

  • 文献概要を表示

要約 血管内大細胞型B細胞リンパ腫に対する放射線治療後に放射線網膜症が発症し,硝子体手術を行った症例の報告。症例:48歳男性が両眼の視力低下で受診した。6か月前に脳梗塞として発症した血管内大細胞型B細胞リンパ腫に対して化学療法と放射線治療を受けていた。経過:右眼に-8D,左眼に-6.5Dの近視があり,矯正視力は左右眼とも0.8で,両眼に網膜の軟性白斑が多発し,蛍光眼底造影で網膜に虚血があった。軟性白斑と網膜出血が増悪し,6か月後に視力が右0.3,左0.1に低下した。網膜に光凝固を行ったが,左眼に硝子体出血が生じ,初診から11か月後に硝子体手術を行った。血管内リンパ腫の再燃はなく,最終視力は右0.04,左指数弁である。結論:原疾患が脳内の塞栓性病変であったことと,放射線照射に化学療法を併用したことが,網膜症の経過に影響したと考えられる。

  • 文献概要を表示

要約 目的:水痘初感染後に網膜血管炎が発症した成人例の報告。症例:31歳男性が5日前からの左眼視力低下で受診した。受診の16日前に全身に水疱が生じ,水痘と診断された。抗ウイルス薬の投与を受け,8日後に発疹はすべて痂皮化した。所見:矯正視力は右1.2,左0.6で,左眼に豚脂様角膜後面沈着物,前房内微塵,硝子体混濁,乳頭の発赤腫脹,眼底全周の網膜静脈周囲炎があった。PCR法で前房水から水痘・帯状疱疹ウイルスDNAが検出された。急性網膜壊死の治療に準じ,アシクロビル,ベタメタゾン,アスピリンの全身投与を行った。2週間後に硝子体混濁は消失し,左眼視力は1.2に改善した。結論:水痘に罹患したのちに網膜血管炎が生じることがある。本症例では抗ウイルス薬で治癒が得られた。

  • 文献概要を表示

医療者自らなぜ電子化を行ったのか

 2005年に日本眼科学会は眼科の電子化に関する望ましいあり方を示したが,必ずしもそれに従った電子化が行われるとは限らない。

 津山中央病院では,1999年にPDFファイルで診療記録の保存を行う独自の電子カルテ(CTC社)が導入されたが,眼科の部門システムとしては,視力,非接触型眼圧計による眼圧(以下,ノンコン),限界フリッカ値(critical flicker frequency:以下,CFF),メモ書きを電子カルテに保存する検査用インターフェースが病院エンジニアにより作製されたのみで,その他はすべて全科共通の電子カルテ機能が用いられていた。そのため検査のほとんどは紙に記載,あるいは印刷を行ってスキャナで取り込む必要があった。眼科の電子化が十分に整わなかった背景には2004年に常勤医が不在となり,その後2010年9月まで非常勤医のみで診療を行っていたという事情がある。2009年の時点では眼科部門システム導入の見込みがなかったため,筆者らは眼科検査の電子化を自らの手で行うことにした。作業途上の2010年4月には眼底カメラが,2010年10月には光干渉断層計(optical coherence tomograph:以下,OCT)が病院により電子カルテと接続された。

文庫の窓から

  • 文献概要を表示

多数の著作をもつ王好古

 今回は王好古の『湯液本草』を取り上げる。

 王好古は字を進之,後には海蔵老人と名乗った人で,李東垣とともに張元素に師事していたが,張元素が亡くなると兄弟子の李東垣の指導を受けたと伝えられている。著作の多いことで知られており,現存のものとしては『陰証略例』『医塁元戎』『此事難知』『湯液本草』『海蔵癍論萃英』『伊尹湯液仲景広為大法』がある。ほかは散失してしまったらしいが,熊均の説によれば『活人節要歌括』『三略集』『癍診論』『光明論』『標本論』『小兒吊論』『傷寒弁惑論』『辨守真論』『十二経薬図解』『仲景一集』も著したという。また,『錢氏補遺』という医書もまとめたとされるが,現存しない。

--------------------

欧文目次

第30回眼科写真展 作品募集
  • 文献概要を表示

 第66回日本臨床眼科学会(京都)会期中の2012年10月25日(木)~28日(日)に開催される「第30回眼科写真展」の作品を募集します。

べらどんな オンコセルカ症
  • 文献概要を表示

 東南アジアとアフリカで代表される赤道に近い地域には,さまざまな熱帯病がある。

 マラリアもその1つである。ところが,いまから70年前に日本が東南アジアで戦争をしたときには,陸軍にも海軍にもマラリアの専門家はいなかった。

べらどんな 神様
  • 文献概要を表示

 学会発表でもそうだが,学生の講義でも「神様」が話題になることは絶対にない。それが昔の偉い先生はそうでなかった。

 小川鼎三という教授が解剖学講座に居られた。脳がご専門で,赤核の研究で学士院賞を受賞された先生であり,「碩学」という表現がぴったりの学者であった。

ことば・ことば・ことば クリクラ
  • 文献概要を表示

 卒業した大学から毎月のように「医学部だより」が送られてきます。ちょっとした新聞スタイルで,退任や新任の教授の挨拶やOBのクラス会の報告が載っています。学生からの投稿もありますが,最近号に「クリクラがどうとかした」という文章が3本も出ていました。

 クリクラははじめて耳にしました。キャバクラのような新しいクラブでもできたのかと思ったのですが,すこし調べたら臨床実習のことで,50年前の学生が「ポリクリ」と呼んでいたあれです。

学会・研究会 ご案内

投稿規定

希望掲載欄

著作権譲渡同意書

アンケート

次号予告

あとがき 坂本 泰二
  • 文献概要を表示

 この原稿を書いている現在は7月上旬です。先週まで,網膜関連の学会でヨーロッパに行っておりました。ユーロ圏の経済危機の最中ですので,さぞ混乱しているのではないかと思っておりましたが,至って平穏で拍子抜けしました。むしろ,ヨーロッパの友人からは,わが国の原子力発電の危険性について,多く質問されました。今週から,関西電力大飯原発が再稼働します。本号が皆様に届くころには,夏の電力需給の結果も明らかになっているでしょう。ヨーロッパの友人が指摘していたような事態になっていなければよいのだがと心配しております。

 さて,今月の話題は久米島スタディについてです。最近,中国やシンガポールで眼科領域に関する大規模疫学調査が行われています。洗練されたデザインやその規模の大きさから,この分野ではわが国は太刀打ちできないという諦めに似た意見もあります。久米島スタディは,日本が世界に先駆けて行った素晴らしい疫学調査です。今回の論文を読みますと,その内容は学問的にみても非常に優れており,決して他の疫学調査に劣るものではありません。この研究を企画,実行された先生方には,深い敬意を表したいと思います。考えてみれば,日本人の疫学調査は,日本でしか施行不能ですし,そのデータを臨床に活用できるのも日本だけです。今後も,この種の研究はわが国で施行されてこそ意味があり,継続が必要であると感じました。

基本情報

03705579.66.8.jpg
臨床眼科
66巻8号 (2012年8月)
電子版ISSN:1882-1308 印刷版ISSN:0370-5579 医学書院

文献閲覧数ランキング(
9月14日~9月20日
)