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あとがき
坂本 泰二
pp.1274
発行日 2012年8月15日
Published Date 2012/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410104342
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この原稿を書いている現在は7月上旬です。先週まで,網膜関連の学会でヨーロッパに行っておりました。ユーロ圏の経済危機の最中ですので,さぞ混乱しているのではないかと思っておりましたが,至って平穏で拍子抜けしました。むしろ,ヨーロッパの友人からは,わが国の原子力発電の危険性について,多く質問されました。今週から,関西電力大飯原発が再稼働します。本号が皆様に届くころには,夏の電力需給の結果も明らかになっているでしょう。ヨーロッパの友人が指摘していたような事態になっていなければよいのだがと心配しております。
さて,今月の話題は久米島スタディについてです。最近,中国やシンガポールで眼科領域に関する大規模疫学調査が行われています。洗練されたデザインやその規模の大きさから,この分野ではわが国は太刀打ちできないという諦めに似た意見もあります。久米島スタディは,日本が世界に先駆けて行った素晴らしい疫学調査です。今回の論文を読みますと,その内容は学問的にみても非常に優れており,決して他の疫学調査に劣るものではありません。この研究を企画,実行された先生方には,深い敬意を表したいと思います。考えてみれば,日本人の疫学調査は,日本でしか施行不能ですし,そのデータを臨床に活用できるのも日本だけです。今後も,この種の研究はわが国で施行されてこそ意味があり,継続が必要であると感じました。
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