公衆衛生 76巻7号 (2012年7月)

特集 在宅医療・地域包括ケア

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在宅医療・地域包括ケア

 わが国では,総人口が減少するなかで高齢化率は上昇を続け,平成25(2013)年には65歳以上の高齢者が国民4人に1人の割合となります.とりわけ80歳以上の増加が著しく,地域における医療提供体制や介護サービス体系の見直しが求められています.

 このようななか,改正介護保険法が平成24(2012)年4月に施行されました.今回の法改正の狙いは,日常生活圏域ごとに医療,介護,生活支援サービスなどを一体的に提供する体制を整え,要介護者が重度化しても住み慣れた地域で生活を継続できるようにするという「地域包括ケアシステム」の構築です.地域包括ケアの考え方は,平成18(2006)年度の制度改正でも取り込まれ,小規模多機能型居宅介護(デイサービス,訪問介護,宿泊を一体的に提供するサービス)や,夜間対応型訪問介護などが創設されました.しかし,これらが十分機能しているとは言い難く,在宅重視の理念とは裏腹に「施設志向」が強まっているという指摘もあります.

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 「世界で最も進歩している国は,デンマーク.日本は14位,米国18位,ソ連42位――.米ペンシルベニア大が,国民生活の観点から世界各国を評価したランキングを発表した」

 「124か国を対象に,国連,世界銀行のデータなどを使い,保健・医療,人権,一人当たりの国民所得など46項目を調査して評価した」

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地域包括ケアの意味

 2012年4月から施行された今回の介護保険法改正は,「地域包括ケア」の推進にあるとされている.ただ,この言葉は前回の2005年介護保険法改正の際にも使われており,専門的にはそれ以前から使われてきた用語でもある.

 今回意図されている「地域包括ケア」は,1つには地域包括ケア研究会が『地域包括ケア研究会報告書』(2010年3月)で提唱した考え方である.もう1つは,厚生労働省が示す「地域包括ケア」がある.両者には基本的に違いはないが,まずはそれらを紹介しておく.

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今,なぜ地域包括ケアか?

 日本においては,今後20年で,高齢化の正念場を迎える.後期高齢者が2005年から2030年に向けて1,100万人から2,200万人に倍増し,しかもそれが大都市部を中心に進行する.史上未曽有の経験が始まっている.

 地価の高い大都市部においては,限られた期間での土地の確保が難しく,入所施設中心の従来型の政策での対応は困難と見込まれる.また,現在の日本人の病院死亡率は80%程度となっているが,大都市部の病床では今後の入院需要すべてを賄うことは困難であり,高度急性期の医療を担当する病院が機能不全に陥ったり,孤独死が激増するといった事態が危惧される.

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 日本の総人口に占める65歳以上人口の割合(高齢化率)は年々増加しており,2011(平成23)年の高齢化率は23.1%であった1).それに伴い,死亡数も年々増加し,2011年は123万人を超えると推計され2),今後も死亡数は増加すると予測される.これらより,高齢者の終末期をどのように過ごすかが今後の大きな課題である.

 2010(平成22)年,内閣府が60歳以上の男女を対象に実施した「高齢者の住宅と生活環境に関する意識調査」結果によると,虚弱化したときの居住形態では「現在の住居に,特に改造などはせずそのまま住み続けたい」と回答した人が37.1%,「現在の住宅を改造し住みやすくする」と回答した人が24.9%と,60%以上が在宅で過ごしたいと回答している3).しかし,2010年の死亡場所別死亡割合では,病院や施設内が85.1%に対し,自宅が12.6%4)と,圧倒的に病院や施設内で終末期を迎えている高齢者が多い.医療制度改革等において在宅推進の方針が掲げられてから久しいが,在宅推進が促進されているとは言い難い現状にあると言える.

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はじめに

 日本の危機的な医療提供体制の中で,様々な遠隔医療の実証実験が行われてきた.最近国が補助した医療分野における事業は,健康管理,カンファレンスやコンサルテーション,救急搬送,在宅医療などに大別でき,本稿ではこれらを概観する.とりわけ在宅医療では,医師が遠隔からテレビ電話等を用いて診察を行うことも,法解釈上問題のないことが示されており,本稿では代表的な例を紹介する.これらは既に実用段階にある.最後に,遠隔からの在宅医療に対する患者や家族のアンケート調査結果を示し,受け入れる素地のあることを紹介したい.

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はじめに

 東京・山谷地域は,日本の三大寄場(日雇い労働者が多く集まる場所)の一つとして発展した.かつて山谷は多くの労働者がその日の仕事を求め,活気を見せていたが,現在では日雇いの仕事はほとんどなく,その日暮らしの労働者はホームレス生活を余儀なくされることもある.過酷な生活の中,労働者は高齢化し,病気を持つ人たちが多くなった.そして,山谷地域は現在日本が持つ「単身,高齢,貧困,病気」といった多くの問題を先取りした地域にもなっている.

 訪問看護ステーションコスモスは2000年に山谷地域で設立され,現在まで活動を続けている.

 本稿では,訪問看護ステーションコスモスのこれまでの歩みと,現在行われている山谷地域包括ケアを紹介する.

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はじめに

 人口統計によると,1945~1948年頃に生まれた団塊の世代が後期高齢者を迎える2020~2030年には,年間の死亡者が現在の100万人からおおよそ1.5倍の150万人に増えることが予想されている.好むと好まざるによらず,多死時代を迎えることは明らかである.今までのように病院で最期を迎えることが困難な時代が来ることが予想されることを意識し,厚生労働省は,地域で看取ることができる社会を整備するために,2006年に在宅療養支援診療所を新設し,動き始めた.2012年の医療保険,介護保険の改正では,さらに地域での看取りが行えるように,重点的に見直しがされている1)

 めぐみ在宅クリニックは,このような時代背景をもとに,緩和ケアを地域で提供できることを目的に,2006年10月に横浜市瀬谷区で開設された.開設以来,2012年3月までに,在宅(含む介護施設)での看取りは830人を超え,病院で最期を迎えた200人を合わせると,合計1,000人以上と関わりを持つ活動を続けている.クリニック内には訪問看護ステーションを併設せず,すべてそれぞれの地域で活動する訪問看護ステーションと連携し,地域包括支援センター,居宅介護事業所などと連携しながら,地域緩和ケアチームを構成し,活動を続けてきた.特に,ホスピス病棟での経験を活かして,単に症状緩和や看取りを提供するだけではなく,全人的なケアを在宅で提供するための援助モデルを取り入れ,緩和ケアの研修会を定期的に開催している.これらの経験をもとに,がんの在宅緩和ケアの実践についての現状と課題を概説する.

難病の在宅医療の実践 小西 かおる
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はじめに

 難病の在宅医療は,常に患者・家族の要望が機動力となり,これらの要望に対し支援者が真剣に向き合ってきたことにより発展してきた.正確なアセスメント力,高度な医療管理力,柔軟なマネジメント力が要求され,患者・家族とともに自分自身の生き方,家族のあり方を問われることに出会う.難病の在宅医療にかかわるうちに,支援者自身がケアされ,成長させられていることに気づく.

 本稿では,神経難病を中心に,難病の在宅医療の特徴と,近年の社会情勢の変化に伴う課題や今後の方向性について概説する.

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はじめに

 急速な少子高齢化と人口減少の進展にどう対応していくかという問題は,今後の日本社会のあり方を大きく左右する重要な論点になっている.国立社会保障・人口問題研究所が今年1月に発表した「日本の将来推計人口」1)によれば,日本の総人口は2048年に1億人を割り,2060年には8,674万人まで減少し,これから50年で人口が約3割減るという推計が示されている.そして,2060年における65歳以上の老年人口の割合は39.9%に達するとされている.こうした人口動態の変化は,経済成長に制約を課すことになる一方で,社会保障費の増大を不可避なものにする.「社会保障・税一体改革」の議論が求められるのもこのためであり,今後の医療を取り巻く環境にも大きな影響を与えるのは必至である.実際,今年度の診療報酬・介護報酬同時改定は,一体改革で示された2025年度の医療・介護提供体制の将来像に向けた「第一歩」と位置付けられている.

 しばしば指摘される通り,医療政策では,基本的な命題として,「質」と「アクセス」と「費用」のバランスをどのように達成するかということが問われる.そこに人口動態による社会経済の構造変化という制約条件が加わってくるため,問題は一層複雑化する.

 本稿では,少子高齢化が急速に進む状況下での今後の医療政策の課題について考えてみたい.

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 今年の1月,動物愛護団体の里親募集の呼びかけに応え,福島第一原発の警戒区域内で保護された猫を引き取った.尻尾の長い茶トラの雄猫.右目が白濁し,猫エイズウイスルに感染してはいるが,まだまだ元気だ.

 福島第一原発の周辺では,事故で住民が緊急避難を余儀なくされた後,それまで人間とともに暮らしてきたペットや家畜が,生きる術もないままとり残された.原発から20km圏内が警戒区域に設定され,避難が長期化する中,多くの動物たちが餓死したが,この猫キティは運よく助かった.命を見殺しにするわけにはいかないと,敢えて警戒区域内に入って救援活動を続けてきた人々に救われたのだ.

連載 保健活動のtry! 学会で発表しよう 論文を執筆しよう・16

「考察」 中村 好一
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 さて,いよいよ,主要4部の最後となる「考察」である.4部の中では最も重要かもしれない.

連載 災害を支える公衆衛生ネットワーク~東日本大震災からの復旧,復興に学ぶ・4

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専門職の短期派遣の検証を

 東日本大震災が甚大かつ広範囲にわたる複合災害だったこともあり,阪神淡路大震災や新潟中越地震の経験を踏まえ,福島県を除く被災地には発災直後から,全国の自治体が躊躇することなく,多くの公衆衛生専門職を派遣し続けた.陸前高田市でも全国からの短期派遣のみならず,一関市や名古屋市からの中・長期派遣の公衆衛生専門職が応援体制をとり,被災地の復旧,復興を支えてきた1)

 また,発災から数か月程度の急性期に短期派遣の支援が必要ということは,感覚的には理解されている.しかし一方で,支援を送り込む側も,受け入れる側も,そもそも被災地のどのようなニーズに対応するために,被災地で行われるどのような公衆衛生活動のために,どれだけの期間,どのようなマンパワーが必要かの共通理解がなされないまま,専門職の短期派遣が行われ,そして気がつけば終了していた,という感が拭い切れないのではないか.

 本稿では専門職の短期派遣を振り返り,その意義と課題について検証を試みた.

連載 講座/健康で持続的な働き甲斐のある労働へ─新しい仕組みをつくろう・4

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 派遣,パートタイマー,契約などの非正規雇用者の割合は,今や雇用者全体の3分の1を超え,女性においては過半数に達している.非正規雇用者増加の結果,労災事故,メンタル不調,受診抑制や保険の不支給が見られるが,一方,正規労働者の過重労働は少しも減っていない.非正規雇用は職場を分断し,すべての労働者の権利を弱め,健康にも影響する差別の問題と捉えるべきである.日本ではこの問題についての実証研究は必ずしも多くなく,海外との競争の中で労働コスト削減のため非正規雇用は必要悪との論もある.しかし,現行制度の下でもこれら労働者の健康を守るためにできること,なすべきことは多く,とりわけ公衆衛生専門職の果たす役割は大きい.

連載 「笑門来健」笑う門には健康来る!~笑いを生かした健康づくり・4

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 糖尿病は網膜症,腎症,神経障害などの合併症を引き起こすだけでなく,虚血性心疾患,心臓突然死,脳卒中などの循環器疾患の重要な危険因子の1つでもあることが知られています.平成22(2010)年の国民健康・栄養調査によると,糖尿病が強く疑われる者の割合は,男性17.4%,女性9.6%であり,平成14(2002)年に比べて男女とも増加していることが報告されています.したがって,糖尿病を減らすことが,わが国の循環器疾患対策には重要と考えられます.

 ところで,糖尿病の予防・治療というと,真っ先に思い浮かぶのが食事療法と運動療法です.厳格な食事制限や定期的な運動を継続し,体重を標準体重に近付けることが糖尿病のコントロールのためにとても重要なことですが,制限された生活はなかなか辛いものがあります.ちなみに筆者は,幸い血糖値は基準範囲内ですが,過体重とまではいかないものの標準体重をオーバーしているため,ここ数年間ダイエットに取り組んでいます.しかしながら,日々の食欲を抑えることができず,体重減少する前にリバウンドが来てしまうような状態で(単に体重が増え続けている状態とも言いますが),日々悩んでおります…….もし,笑うだけで体重が減ったり,糖尿病が予防できたり,血糖値のコントロールが良くなるなら,こんなに楽なことはありません! では,本当に笑うと血糖値が下がるのでしょうか?

連載 フィールドに出よう!・7

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 途上国で研究をするためにフィールドワークを計画している人の中には,所属教室の研究者の調査先でデータ収集をさせてもらう人や,あるいは,既存のプロジェクトが活動を行っている場所を研究フィールドにする人もいるだろう.一方で,特にそのようなフィールドへのリソースがなく,自ら初めてフィールドを探す必要がある人もいる.

 本稿では,後者のような方々に多少なりとも参考としてもらえるよう,私が大学院の研究過程で経験したルワンダでのフィールド探しと,調査実施までの道のりをご紹介したいと思う.

連載 リレー連載・列島ランナー・40

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はじめに

 前回のランナー郷右近初女さんは私の妻と助産師時代の友人であり,妻を通じて私にリレーのバトンが渡されました.私は地方病院の一外科医師ですので,公衆衛生という観点からは何もお話することができません.そのうえ私自身が4月から異動になるため何度もお断りしましたが,結局書くことになってしまいました.読者のみなさんにとっては的外れな部分が多々あるかもしれませんが,農村の地域中核病院が抱える苦悩をお話したいと思います.

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緒言

 わが国における自殺死亡数は1998年に急増し,3万人を超えて以降その水準で推移し1),自殺死亡率は諸外国と比較しても高い水準にある2).よって,自殺予防の推進は,わが国が直面する重要な課題のひとつである.

 これまで,わが国に限らず,季節,月,曜日,時刻などによって自殺死亡がどのように変動するかについて議論がなされてきた3~7).自殺の時間的分布はその背景にある社会・文化的要因により異なると考えられるとともに,そこにある程度の傾向が見出せるなら,それに基づいた自殺対策や啓発活動3),ひいては自殺関連の報道に注意を促す貴重な知見となると考えられる.

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 「キリマンジャロの雪」というと,1954年に映画にもなったヘミングウェイの小説を連想しますが,本作品の題名は,ヘミングウェイの作品ではなく,1966年にフランスでヒットした同名の歌からとられているということです.もっとも,本作品のなかでも歌われるその曲の歌詞では,キリマンジャロを憧れの観光地として描いており,主人公の夫婦もそこへの旅行を計画するのですが,キリマンジャロを歌の文句に現れるほど有名にしたのは,ヘミングウェイの小説だと言われています.あながち無関係とも言えないかもしれません.

 舞台はフランスのマルセイユ.工場労働者の整理解雇をくじ引きで決めるシーンから映画が始まります.主人公のミシェル(ジャン=ピエール・ダルッサン)はその会社の労働組合の委員長のようで,労働者たちが見守る中,退職者を決めるくじを引き,名前を読み上げていきます.何番目かに自分の名前の書いたくじを引き当てます.組合の幹部でもある義弟が,「はずしておかなかったのか?」と尋ねますが,「公平に選ぶんだ」と言って,彼は工場を去って行きます.短いシーンのなかで,主人公の誠実な人柄を表現する演出です.

沈思黙考

専門分化と組織 林 謙治
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 近代社会は18世紀アダム・スミスの指摘のように,分業によって著しい発展を遂げてきた.分業は効率を最大化するためであった.ところで分業は限られた分野に精力を注ぐことを要請されるわけだから,当然専門化の方へ向かうことになる.現代社会に生きるわれわれは生まれて以来,ある意味では専門家となることを要請され,程度の差こそあれ,熟練工,一定分野に精通した知識を持った労働者,あるいは高度の専門家として特化される職業に就くことが期待されている.小中学校の義務教育時はともかく,高校では理科系もしくは文科系志望であるかを問われ,大学では専門教育を受けることになる.医学部の場合では,大学教育だけでは一般診療さえおぼつかず,さらに長期間の訓練を受けてやっと一人前の職業人として育つ.

 専門訓練の結果,分業が可能となるわけだが,それぞれの職種の中に独自の言語,行動様式が生まれ,いわゆる組織文化が醸成される.各専門分野は構成員の共通利益,出身地などさまざまな次元があり,錯綜する複雑な関係がさらに緊密度により修飾され,社会のありようを規定している.筆者が長い間,厚労省の公衆衛生の教育研究機関に在職したわけだが,下線部分の3つのキーワードだけでも,対外的な接触においてさまざまな調整のために多大なエネルギーを要した.特に指定管理職に就いてからの10年間は,ほとんどこれに忙殺されてきた.対外的な調整は言葉を代えて言えば,厚労省・公衆衛生・教育研究機関の3つのキーワードを組織内に一体化させないと,たちまち存在価値を問われかねないことを意味する.公衆衛生と言っても,霞ヶ関の行政の立場と,国立保健医療科学院(以下,科学院)の教育研究の立場は同じとは言えない.行政には政策施行のための調整機能が求められ,常に科学的でなくても,Politically Correctである必要がある.また,それを実行するための行政権限が付与されている.失敗した場合,責任を負わなければならない立場にある.科学院がPolitically Correctばかりに同調していると,Scientifically Incorrectに陥りかねず,社会的信用を失う.もちろんPolitically CorrectとScientifically Correctが同時に成り立つのが理想的である.大学はPolitically Correctであることを無視できる立場にあるが,実際の施策は政治的に動いているので,賛成反対は別として,政治の意味を理解しないと,公衆衛生の立場を失うこともまた真実である.

列島情報

災害弱者対策 日置 敦巳
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 震災の検証を踏まえ,その対策の一つとして,災害時要援護者支援体制づくりが進められている.岐阜県内42市町村における災害時要援護者避難支援対策に関する計画を策定している市町村数は,2010年9月末時点では29市町村(69.0%)であったが,2011年3月末には40市町村(95.2%)となった.福祉避難所の指定等については,2011年9月末時点で27市町村(2010年15市町村)が指定,または協定締結が完了(うち19市町村では,さらに追加を検討中)しており,残る15市町村では検討中であった.指定先の内訳は,高齢者施設164,障害者施設29,児童福祉施設176,その他社会福祉施設38,小中学校・高校34,公民館11,その他23であった.

 要援護者情報の収集については,①市町村が個人情報保護審査会での了承を経て民生委員等に情報を提供,②希望に基づく登録,③支援が必要な者の同意取得,および,④その組合せによるものとなっていた.災害時要援護者マップは28(電子21,紙7)の市町村が整備して更新中であり,12市町が整備中,2町村で未着手であった.

お知らせ

国際看護研究会 第15回学術集会
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日時:9月15日(土)10:00~17:30

会場:国際協力機構JICA横浜(神奈川県横浜市)

第33回 保健活動研修会
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日時:平成24年8月22日(水)~8月24日(金)

開催場所:自治医科大学地域医療情報研修センター(自治医科大学構内施設)

 〠329-0498 栃木県下野市薬師寺3311-160

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テーマ:福島を元気に 福島から元気を

開催の趣旨と目的:地震・津波・原発事故と未曾有の災害に見舞われた福島.私たちの暮らしのあり方,価値観も大きく揺るがされました.復興に向けた努力が続いていますが,先が見えず今後どうなるのか不安な日々を過ごしている住民も多く,支援活動をしている公衆衛生関係者も多くの困難を抱えています.このような状況だからこそ,今回の震災・原発事故後の活動を振り返ると同時に,今後の保健活動,未来へどう生かしていくかを考える機会を持ちたいと思います.また,福島を元気にと全国から集まる参加者へ,福島がどのような状況にあるのかを伝え,今後必要な支援も含めて,広く発信する機会として本セミナーを開催します.

日 時:平成24年7月14日(土)~15日(日)

場 所:日本大学工学部(予定)

公衆衛生Books

―大谷藤郎(著)―『消えた山』
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●故大谷藤郎氏最後のメッセージ(本書第1章 自伝「消えた山」序章より一部抜粋)

 厚生省現役時代にも,OBになってからも,あなたはどうして役所での通常の仕事の他に,ハンセン病を一生の仕事としたのか,どうして精神障害や難病の社会的問題に立ち向かっていったのか,という質問を受けました.私の答えは,『ひかりの足跡』に書いてある青年時代の肺結核による挫折であり,小笠原登先生,曽田長宗先生,若月俊一先生や岡田靖雄先生などにお会いできて直接啓発を受けたことでした.具体的にはその通りなのですが.その根本で私に人間として社会における正義から後退することを許さず,緊張の社会主義の中におらしめるよう常に強要し続けたそれは,「消えた山」事件の遺言であります.しかしながら,このことについては,今までだれにも話してこなかった.なぜ話さなかったのか.話せなかったのです.

 祖母も父も死ぬまで口をつぐみました.父が遺言の中で申しましたように裁判で決着し,集落の人々と和解した以上,C集落で今までどおり仲良く住めることが第一であり,無用の発言は控えてきたというものです.私も村の小学校に6年通い,そんなことがあったと知らないまま,みんなと仲良く暮らしてきたのでした.今さら,この事件を書くのは如何,と思いましたが,ハンセン病,精神障害者の人々が受けている現実の苦しみや悲しみを思いますと,偏見差別は誰にでも誤解無知によって起こるものだということを言う必要がある.わが家の村八分事件を秘密にしておくのは正義に反すると考えました.もちろん個人的な恨みなどは毛頭ありません.

予防と臨床のはざまで

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 今回は前々号,前号に引き続き,「第30回国際産業衛生学会」3日~6日目までの雰囲気を一気にお伝えします.

 3日目最初の基調講演は,福島医科大学衛生学・予防医学講座の福島教授から,“Radiation exposure issues in the aftermath of the Fukushima Daiichi nuclear power plant accident and the role of occupational health”と題して,震災後の原発事故とその後引き起こされた放射線曝露を含む住民,労働者,地域社会への様々な影響について報告されました.早朝の講演でしたが会場一杯の参加者が集まりました.福島先生は,3.11以降,地元福島県で起きたことを静かに淡々と話されました.想定外の津波,引き起こされた原発事故,住民を震撼させた水素爆発,避難区域設定をめぐる混乱,その後の風評被害,子どもの外出禁止,長閑で平穏だった生活や風景が一変してしまったこと.多くの日本人にとって,この1年間見聞きし続けた現実が,世界中の研究者,産業保健実践者に伝えられました.原発施設内での事故処理・復旧作業は過酷で,産業保健的課題(放射線,瓦礫撤去,メンタル,ストレス性高血圧等)も多いことが示されました.そして今なお6万人以上の住民が福島県外へ避難中で,ホットラインの相談推移から,働く人の懸念は「休業可否→休業補償→失業・県外への転職」と移り変わったことが示され,今回の震災は住民の健康のみならず,産業そのものに多大な影響を与えたことが想像されました.この状況下で日本中が復興のために必死の努力を続けていること,今後地域が再生し人々の健康が守られるため,住民や労働者自身,地方自治体,中央政府にそれぞれ大きな役割があることが示されました.最後にしだれ桜のスライドが映し出され,聴衆から1分以上鳴り止まない拍手が贈られました.私の2つ目の発表「企業と産業保健スタッフの震災対応について」もこの日無事終了し,福島先生と同一日程であったこともあり,暖かく聞いて頂けました.

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投稿規定

あとがき・次号予告 阿彦 忠之
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 「2025年問題」という用語を新聞等で見かけることが多くなりました.わが国では総人口が減少していくなかで,2025年には「団塊の世代」が後期高齢者となるため,超高齢社会を見据えた高齢者の生活支援や地域包括ケアの充実が喫緊の課題であるといった論調で紹介されています.本年4月施行の改正介護保険法も,2025年問題を強く意識したものであり,その目玉である地域包括ケアと在宅医療に関する課題や今後の在り方などについては,本特集の中で幅広く紹介できたと思います.

 地域包括ケアでは,保健・医療・福祉・介護等に関する多職種・多部門の参画と連携が求められます.その重要度が高まるにつれ,最近は各部門を所管する国(厚生労働省)の部局から「縦割り」で追加される事業が目立ちます.本号で白澤政和先生がご指摘のように,介護保険事業の推進拠点としての機能を担う「地域包括支援センター」は老健局が所管し,後発の「在宅医療連携拠点機能を担う機関(病院等)」は医政局の所管事業として追加されました.国からの通知を受けて各都道府県では,これら2つの推進拠点を地域包括ケアの体系図の中に並列して記載し,役割分担や連携をどのように進めるのか? 悩んでいるのではないかと思います.しかし,地域レベルでは推進拠点を一体化したほうがよいことは明白です.

基本情報

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公衆衛生
76巻7号 (2012年7月)
電子版ISSN:1882-1170 印刷版ISSN:0368-5187 医学書院

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