視点
社会経済の構造変化と医療政策の課題
村上 正泰
1
1山形大学大学院医学系研究科医療政策学講座
pp.502-503
発行日 2012年7月15日
Published Date 2012/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401102471
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はじめに
急速な少子高齢化と人口減少の進展にどう対応していくかという問題は,今後の日本社会のあり方を大きく左右する重要な論点になっている.国立社会保障・人口問題研究所が今年1月に発表した「日本の将来推計人口」1)によれば,日本の総人口は2048年に1億人を割り,2060年には8,674万人まで減少し,これから50年で人口が約3割減るという推計が示されている.そして,2060年における65歳以上の老年人口の割合は39.9%に達するとされている.こうした人口動態の変化は,経済成長に制約を課すことになる一方で,社会保障費の増大を不可避なものにする.「社会保障・税一体改革」の議論が求められるのもこのためであり,今後の医療を取り巻く環境にも大きな影響を与えるのは必至である.実際,今年度の診療報酬・介護報酬同時改定は,一体改革で示された2025年度の医療・介護提供体制の将来像に向けた「第一歩」と位置付けられている.
しばしば指摘される通り,医療政策では,基本的な命題として,「質」と「アクセス」と「費用」のバランスをどのように達成するかということが問われる.そこに人口動態による社会経済の構造変化という制約条件が加わってくるため,問題は一層複雑化する.
本稿では,少子高齢化が急速に進む状況下での今後の医療政策の課題について考えてみたい.
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