看護教育 62巻4号 (2021年4月)

特集 電子教科書とICT活用

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令和2年度から実施される新学習指導要領をふまえた「主体的・対話的で深い学び」の視点の授業改善などの目的で、「学校教育法等の一部を改正する法律」等関係法令が平成31年4月から施行され、学習者用デジタル教科書が制度化されました。看護基礎教育においては、文部科学省の検定教科書と扱いが異なりますが、ICT化の大きな流れを受け、電子教科書を利用する教育機関が着実に増えてきています。

本特集では、すでに自施設で電子教科書を活用されている先生方に、その実践を共有していただきました。みなさまにとって、導入や活用のヒントとなれば幸いです。

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導入にあたっての状況

神山 本校(報徳看護専門学校)では、電子教科書の導入より先に、平成27年4月からiPadの全学年貸与が始まりました。ペーパーレスを推進するとともに、オンラインでの出席管理などの業務のサポートにつながる、という観点での導入です。

 ただ、当時は学内のWi-Fi環境が整っておらず、授業中に全員でiPadをWebに接続するのが難しかったので活用などが少し停滞気味でしたが、平成29年にIT推進係を立ち上げて、そこからはずみがつき、翌年に「やってみようか」と電子教科書を採用しました。

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電子教科書の導入とICT環境の整備

―看護基礎教育においても、電子教科書を用いる教育機関が増加しています。貴学ではすでに電子教科書を導入されて5年が経過したと伺いました。電子教科書やICTの活用について教えてください。

足立 本学は2007(平成19)年に看護学部が設立されました。当時、すでに学部を問わず全学生にiPadを無償提供する取り組みが行われていました。学内のICT環境も、キャンパス内全域をカバーしたWi-Fiがつながる情報教育環境を整備していました。

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電子教科書導入のねらい

 泉佐野泉南医師会看護専門学校(以下、本校)で電子教科書を導入するきっかけとなったのは、2019年の春期休暇中の教員会議です。会議では学生ロッカーが教科書のあまりの重みで歪んでいることと、教科書を忘れて、教務室に貸りに来る学生が増えてきたことが報告されました。教員には、毎日3〜4教科の講義のために重い教科書を持ち歩いて困っている学生の姿が思い浮かびました。このままではせっかく購入した教科書を効果的に学習に使えていない状況が続くことが予想され、より効果的に学習する環境を整えるために、電子教科書を導入することが問題の解決につながるのではないかと考えました。

 しかしながら情報不足のまま電子教科書を導入することはリスクを伴うため、実際に電子教科書を先行して導入されている学校に、見学を申し込みました。見学時に本校教職員から出てきた質問事項に答えていただき、本校でも導入が可能であると確信し、電子教科書の導入に踏み切りました。

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教育、学習を見直すなかでのICT導入

→はじまりは、新しい学生観との出会い

 恥を忍んで告白するが、2010年当時の看護リハビリ新潟保健医療専門学校(以下、本校)の3学年平均の退学率は10%で、その年行った定期試験の初回合格率は70%を下回っていた。

 当時の教室では、教員は数十枚にもおよぶスライドを見ながら90分しゃべり続け、学生の多くはそれを子守唄に、そして配布された分厚いプリントを枕にして寝ていた。一方、教員室では、受講態度の悪い学生やテスト結果を肴に学生の怠惰を非難する教員の会話が飛び交っていた。

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はじめに

 東京都立看護専門学校(以下、都立看学)では、第5次カリキュラム改正に向けて2015(平成27)年より検討委員会を立ち上げ、昨年、本誌にて新カリキュラム編成過程の概要と試案を報告した1)。その後も検討を重ね、このたび、4つの力(感じ取る力、考え構成する力、表現する力、成長する力)を発展させ、また対象を生活者としてとらえることを大切にし、看護実践能力を段階的にていねいに育てられるよう、基礎分野14単位、専門基礎分野22単位、専門分野70単位で構成するカリキュラムを完成させた(図)。

 今回は、前回報告できなかった臨地実習にフォーカスを当て、実習カリキュラムの概要を前後編の2回に分けて報告する。

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 福島県看護学校協議会では、会員校が協働し、共通する看護教員ラダー、およびガイドラインを作成しました。本誌では2号にわたり、取り組みの経緯と内容をご紹介します。前編では、2019年に作成され、2021年3月に改訂された看護教員ラダーガイドラインを全文掲載します。

『看護教育』編集室

連載 はじめての医療経済学・1【新連載】

なぜ国民皆保険なのか 康永 秀生
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はじめに

 このたび、「はじめての医療経済学」というタイトルで、医療経済や医療政策に関する連載をさせていただくこととなりました。筆者は現在、東京大学大学院医学系研究科公共健康医学専攻において、おもに臨床疫学と医療経済・政策学の教育と研究に携わっています。

 経済学というとカネの話か、と誤解されることも多いのですが、経済学は時間・人・モノなどを含めた資源を効率的に使うことを考えたり、人々の意思決定の根本にある原理を考えたりする学問です。医療に関しては、過剰な受診をする患者や不必要な処方を行う医師などをどうすれば減らせるか、といったことも研究の対象です。なお、経営学とは異なります。

 読者の皆さんの多くは、看護師養成学校の教員をされていると思います。すでに医療経済や医療政策に関する知識をおもちの方もいるでしょうし、逆に「経済」「政策」といった言葉に苦手意識をもつ方も少なくないかもしれません。本連載は、まずは医療経済や医療政策に興味をもっていただき、その基本知識を身につけていただくことを主眼とします。

 大学や専門学校では、カリキュラムの大部分が医学・看護の基礎知識や看護技術などの習得にあてられ、学生が医療経済や医療政策について深く学ぶ機会は少ないかもしれません。なかにはメディアによってやや歪められて伝えられている「医療崩壊」や「医療現場の疲弊」というワードに敏感に反応し、不安をいだいている学生もいるでしょう。そういった不安は、知識の不足に起因することもありますので、ある程度の基礎知識を身につけておくことは、今後ますます必要となっていくと思われます。

 これまで日本では、医療経済や医療政策は政府や職能団体に任され、現場の医療従事者は決められたシステムの枠内で、日常臨床を最適化することに終始してきました。しかし多くのシステムは老朽化し、変化する医療需要に対応しきれず、それ自体が機能不全に陥りつつあります。これからは、個々の医療従事者が医療経済や医療政策の基本を理解したうえで、医療現場でまさに生じている課題を認識し、その改善や是正に向けた提言を発していくことが重要になるでしょう。

 このような状況の変化に伴い、読者の皆さんは、看護教育者として、学生に医療経済や医療政策の正しい知識を伝えるよう求められる機会が増えるかもしれません。現状を冷静に分析し行動することの重要性を伝えていくために、教育者自らが素地を身につけておくことは今後きっと役に立つでしょう。本連載で得られた知識を、各学校の授業で学生に解説していただければ大変ありがたく思います。

 本連載では、医療従事者になじみの深いテーマを各回に設定し、それらについて医療経済・政策学の基礎知識をまじえて解説します。第1回のテーマは「なぜ国民皆保険なのか」です。中学校や高校の教科書にも、日本が国民皆保険制度をとっていることが書かれていますが、その理由までは書かれていません。なぜそうしているか、結論を簡潔に言うと、企業や個人の合理的な行動に任せていると、保険本来の機能が果たせなくなってしまうからです。

 今回はまず保険の理論をわかりやすく解説してから、海外(特にアメリカ)の医療保険制度を俯瞰して、日本の国民皆保険制度のどこがいいのか、国民皆保険でないとどうなるのかなどを解説していきます。

連載 ナーシング・リープ 看護教育を一歩前進・4

経験学習×看護教育 寺本 美欧
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この連載では、私がこれまで出会った「教育に関するキーワード」を1つ選び、理論家や文献から得た知識をご紹介しながら、等身大の目線で看護教育への応用を考えていきます。小さな一歩でも、日々積み重ねていけば大きなリープ(跳躍)になるという希望を込めて。

連載 看護教員のICT活用教育力UP講座・7

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連載のねらい

IoT(Internet of Things)やAIなどのデジタル技術によりさまざまな知識や情報が共有され、新たな価値が創造される社会となりました。医療においても、病院、診断・治療、健康・生活システムにICTが導入される時代へと進んでいきます。看護学生が看護実践能力とともに情報活用能力を身につけることができるように、まずは私たち教員がICT活用を進めていきませんか?全12回の連載により看護基礎教育での「ICTを活用した授業設計」の習得をめざします。

*本連載の動画や資料を視聴するためにはQRコードを読み取る必要があります。QRコード読み取りの詳細は第1回をご確認ください。

連載 発達障害など、対応が難しいと感じる学習者への教育・支援・4

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本連載では、教育者が対応に難しさを感じる学習者に対しての、教育・支援のあり方のヒントをお伝えします。ところで、看護の教育や支援のゴールはどこでしょうか。国家試験の合格でしょうか、就職できることでしょうか。筆者は、「学習者支援のゴールは、多様性のある学習者が生きがいをもって社会で役割を果たせることへの支援」と考えます。理想論ではありますが、対処ではなく、そうした支援をめざし、Q&Aの形式にてできるだけのアイディアをご紹介します。

連載 教育哲学を使って考えてみよう・4

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私たちがいつの間にか当たり前だと思い込んでしまっている事象を、立ち止まって考えてみる。教育哲学を実践する連載です。答えではなく、新たな問いへ。あなたをいざないます。

連載 看護教育×法律相談 知っておきたいトラブル対応のポイント・16

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相談

 来年(2022年)4月から、改正民法が施行され、18歳で成人となると聞いています。すでに選挙権を得る年齢が早くなったことや、成人式をいつ行うのかといったことはよく報道されていますが、看護基礎教育に関しては、どのような影響が考えられるでしょうか。特に準備や指導が必要なことが増えるようでしたら、教えてください。

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目次

INFORMATION

新刊紹介

基本情報

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看護教育
62巻4号 (2021年4月)
電子版ISSN:1882-1391 印刷版ISSN:0047-1895 医学書院

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