看護教育 62巻5号 (2021年5月)

特集 なにを、どう教える? はじめての看護学概論

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異動や昇進に伴い、看護学概論・総論といった看護学の導入的な授業を担当されることとなった先生も多いかと思います。これまで専任教員として指導を重ねられてきた先生であっても、ご自身の専門領域ではない科目、またはじめて看護を学ぶ学生に対して、なにをどのように教えてよいか迷われることもあるかもしれません。特に、看護理論や法律・制度などの抽象的な内容を初学者にうまく指導するためには、授業での工夫が求められるでしょう。

そこで本特集では、看護学概論の指導経験をおもちの先生から、新たに授業を担当される先生、またすでに担当されている先生に向けて、ご自身が悩んだことやそれをふまえての現在の実践をご紹介いただきました。読者の皆様のお悩み解決のヒントとなれば幸いです。

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はじめに

 看護師養成課程の学生を対象とするテキスト1)(以下、系看『看護学概論』)の執筆者の1人として、はじめて「看護学概論」を担当する先生方への応援メッセージとして本稿の執筆をお受けした。私が看護学概論の授業を最初に担当したのは15年前になるが、それまでは重鎮の先生が担当するものという固定観念が強く、私にできるのだろうかという不安にも似た複雑な感情を覚えたことを思い出す。その頃を思い出しつつ、科目担当者として、また、テキストの執筆者の1人として、その内容構成を解説しながら論じていきたい。

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はじめに

 「看護学概論」における教授内容は多岐にわたります。実際の授業で網羅することは時間的に難しく、担当する教員が選別して教授することが多いと思います。まず、この段階で悩む教員が多いのではないでしょうか。そして、教えるべき内容を決めても、それらをどのように伝えればいいのかも難しい問題です。私自身、この原稿を書きながら「看護学概論」という授業を振り返り、整理しながら、今後に活かせるようにしていきたいと思います。

 私はいたって普通の看護師で、認定看護師や専門看護師などの資格をもっているわけではありません。いわゆるジェネラリストです。また、教員免許をもっているわけでもなく、教育方法に関して教育機関で勉強した経験もありません。そんな私が教員になったばかりの頃でも、看護技術の授業はなにをどう教えるべきかある程度イメージできていました。理由は簡単です。看護師として毎日行っていた看護技術ですので、それらを学生に「〜ができる」という学習目標を設定し、それらを達成できるようにすればいいわけです。もちろん、学生への指導が簡単というわけではなく、教員としてやるべきことがイメージできていたという意味です。

 しかし、「看護学概論」は違っていました。なぜ看護師である私は、看護の概論という、看護の基礎についてなにをどのように教えるべきかをイメージできなかったのでしょうか。そこから考えていきたいと思います。

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はじめに

 高知県立大学(前高知女子大学。以下、本学)は、1952年にわが国で初めて4年制の看護大学として誕生し、開設当初から保健師看護師統合カリキュラムで看護基礎教育を行っています。私は臨床で看護師として勤務した後、母校で慢性期看護学領域の教員として看護基礎教育に携わることになりました。がんを含む慢性疾患をもっている方々の看護ケアの経験から、“病気との折り合い”について関心をもち、現在の専門領域はがん看護学です。基礎看護学が専門ではありませんが、「看護学総論」を担当する機会をいただきました。担当者になってあらためて、看護の本質とは、基礎教育のなかで教授しなければならない看護学のコアとは、などについて考え、看護の初学者にどのように看護学を、看護の魅力を伝えればよいか手探りで取り組んでいます。

 現在は教科書・教材の種類や内容が豊かになり、看護学の発展を実感する一方で、何をどこまでどのように初学者に伝えればよいか、悩まれる方がいるのではないかと推察しています。今回紹介する実践内容がみなさんの授業のヒントになれば幸いです。

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 富士市立看護専門学校(以下、本校)は1993年、静岡県富士医療圏の看護師不足の充足に向けて設立され、2021年3月現在985名の卒業生を輩出している。看護の専門職として人々の健康と福祉に貢献できる豊かな人間性を基盤とした看護教育を行うこと、そして、看護師を志すものとして学習に励み、あたたかな感性を育み、学ぶよろこびを自らのものとすることのできる学生の育成をめざす、という教育理念のもと「1人ひとりを大切に育み、看護の喜びを実感できる教育をめざす」ことを目標に掲げ、日々看護師の育成に努めている。

 私は副校長となった2016年に初めて、看護学概論を担当することになった。それまでは成人看護領域を中心に、成人看護学総論・成人臨床看護・臨床看護総論などの科目を担当していた。そのため、看護学概論を担当するにあたって、概論とはなにを教授するものかを検討するところから始めた。

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はじめに

 太田高等看護学院(以下、本学院)は、1953年に「太田准看護婦学校」として創立しました。その後、1958年に2年課程の看護師養成所となり「太田高等看護学院」と改称、1992年には3年課程の専修学校へと変更し、今日に至っています。設立主体を同じくするSUBARU健康保険組合太田記念病院は、第三次救急医療機関であると同時に、多くの医療従事者育成のための実習を行う教育機関でもあります。本学院の特色は、太田記念病院に隣接することをフルに活かしたカリキュラムを編成し、充実した学習環境が備わっていることです。本学院の教育理念、教育目的・目標は、各専任教員が担当している看護基礎教育の専門科目に落とし込み、学生の育成につなげています(表1)。

 私は現在、看護学概論の科目を担当していますが、看護教育に携わることになってから、この科目を担当するのは今回で2度目になります。1度目は、太田記念病院で看護師として10年間の臨床経験の後、現職場で専任教員を13年間経験したときでした。当時は、教務主任として看護学概論の講義を担当していました。そして再び臨床に戻り、病棟の師長、副院長兼看護部長を経験した13年後に、現職である看護教育の道を再び歩むことになりました。臨床現場と教育現場を行き来した経験は、私にとって看護について考えるよい機会となり、看護基礎教育の重要性を再認識しています。この経験を活かしながら、看護師を志してきた学生に看護についての学びを伝えていきたいと思っています。

 現在、看護教員として担当している科目は、1年生を対象にした「看護学概論」「コミュニケーション技術」「生涯発達と健康」「保健医療福祉Ⅱチーム医療」の4科目です。また、「看護の機能と役割」「理論と実践Ⅰ」「理論と実践Ⅱ」の科目を、3年生を対象に講義しています。担当科目の講義の3分の2は1年次に行っているため、入学したばかりの1年生とのかかわりが多いです。入学時の学生の看護に対する思いはさまざまです。その思いを大切にしつつ、これから看護を学ぶ学生に、看護の楽しさを少しでも感じ取ってもらえる授業を念頭に置いています。

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 読者のなかには、看護学概論という抽象度の高い授業をどのように展開したらよいかと悩んでおられる方が多いのではないかと考えています。筆者も日々探究中です。ここに紹介する筆者自身の経験が、少しでもお役に立てるのであれば幸いです。

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 福島県看護学校協議会では、会員校が協働し、共通する看護教員ラダーおよびガイドラインの作成を実施しました。本誌では2号にわたり、取り組みの経緯と内容をご紹介します。後編となる本号では、ラダー開発の経緯と、実際の活用について解説いただきます。 『看護教育』編集室

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 前回は、東京都立看護専門学校(以下、都立看学)の臨地実習の考え方に続き、基礎看護学・地域・在宅看護論の臨地実習の構成について報告した。後編となる今回は、成人・老年看護学実習、精神看護学実習、小児看護学実習、母性看護学実習、看護の統合実習について報告する。

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はじめに

 看護基礎教育の現状と課題として「自分で考えて行動する」学修の不足が問題視され、講義・演習・実習の効果的な組み合わせ1)による看護実践能力の育成が提唱されている。また、対象との人間関係を形成する基礎となるコミュニケーション能力の不足とさらなる強化の必要性2)も指摘され、2022年度からの新カリキュラムでは対人技法を用いたコミュニケーション能力の獲得が新設された。

 正常褥婦の入院期間は1週間弱であるため、母性看護学実習においては、3〜5日間程度のきわめて短い期間で褥婦の状態を適切に把握し、看護ケアを行う必要がある。学生は実習環境に慣れる時間的猶予もなく、褥婦との良好なコミュニケーションを築くことや日々変化する退行性変化を観察する能力が求められる。そこで本学(岐阜協立大学看護学部の前身の大垣女子短期大学看護学科)の母性看護学演習では、褥婦の観察場面における知識と技術の統合をめざすとともに、実習のイメージ化を意識したロールプレイ演習を2017年度より導入し、学生の学修成果と授業評価による改善を行っている。

 本稿では、褥婦や夫の役割演技による対象理解の促進、看護師として対象とのコミュニケーションを尊重し、アセスメントしながら観察する能力の獲得、およびグループでのLearning Through Discussion(LTD)を重視した産褥期の実践を報告する。

連載 ナーシング・リープ 看護教育を一歩前進・5

Authentic(真正)×看護教育 寺本 美欧
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この連載では、私がこれまで出会った「教育に関するキーワード」を1つ選び、理論家や文献から得た知識をご紹介しながら、等身大の目線で看護教育への応用を考えていきます。小さな一歩でも、日々積み重ねていけば大きなリープ(跳躍)になるという希望を込めて。

連載 はじめての医療経済学・2

医療費増加の要因とは 康永 秀生
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 前回は、国民皆保険制度の理由について説明し、さらに日本では、公的医療保険は多額の税金を投入しないと成り立たなくなっていること、税金と保険料の役割分担が不明瞭になっていることなどを述べました。これをふまえながら、第2回では国の医療費についてみていきましょう。

連載 看護教員のICT活用教育力UP講座・8

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連載のねらい

IoT(Internet of Things)やAIなどのデジタル技術によりさまざまな知識や情報が共有され、新たな価値が創造される社会となりました。医療においても、病院、診断・治療、健康・生活システムにICTが導入される時代へと進んでいきます。看護学生が看護実践能力とともに情報活用能力を身につけることができるように、まずは私たち教員がICT活用を進めていきませんか?全12回の連載により看護基礎教育での「ICTを活用した授業設計」の習得をめざします。

*本連載の動画や資料を視聴するためにはQRコードを読み取る必要があります。QRコード読み取りの詳細は第1回をご確認ください。

連載 発達障害など、対応が難しいと感じる学習者への教育・支援・5

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本連載では、教育者が対応に難しさを感じる学習者に対しての、教育・支援のあり方のヒントをお伝えします。ところで、看護の教育や支援のゴールはどこでしょうか。国家試験の合格でしょうか、就職できることでしょうか。筆者は、「学習者支援のゴールは、多様性のある学習者が生きがいをもって社会で役割を果たせることへの支援」と考えます。理想論ではありますが、対処ではなく、そうした支援をめざし、Q&Aの形式にてできるだけのアイディアをご紹介します。

連載 教育哲学を使って考えてみよう・5

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私たちがいつの間にか当たり前だと思い込んでしまっている事象を、立ち止まって考えてみる。教育哲学を実践する連載です。答えではなく、新たな問いへ。あなたをいざないます。

連載 看護教育×法律相談 知っておきたいトラブル対応のポイント・17

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事例

 4月に入学したばかりの学生が、5月の連休明けになって、学校を辞めたいと言ってきました。入学前に見たパンフレットや説明会などから想像していたものと比べて、学校の設備や教育内容が明らかに劣っているため、期待を裏切られたとのことです。退学にあたって、入学金や授業料も返してもらいたいと言っています。

 入学希望者が少なくなりつつあるなかで、宣伝が過剰気味だった部分もなくはないのですが、このような理由で辞めていく学生に対して、学校が法的責任を負うおそれはあるのでしょうか。

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目次

新刊紹介

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「まんが」を「教材」にする

 在宅看護における実習は、地域で暮らす人々の生き方や生活を知り、多様な価値観に触れながら看護を創造することができるものです。しかし現在、新型コロナウイルス感染症の影響で実習の実施が難しいなか、いかにして訪問看護現場のリアルを学生に伝えるかは喫緊の課題となっています。2021年2月に発行された本書は、リアルな訪問看護の現場が描かれており、この本を教材にして、学生の思考力や倫理的感受性を高めるグループワークを行うことが可能です。本書を使って私が行った実践を紹介したいと思います。

INFORMATION

基本情報

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看護教育
62巻5号 (2021年5月)
電子版ISSN:1882-1391 印刷版ISSN:0047-1895 医学書院

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