保健婦雑誌 19巻2号 (1963年2月)

特集 保健婦と研究会活動

研究とはどんなものか 福田 邦三
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 研究という言葉

 教育の畑で研究という言葉が安易に使われるようになつてから,研究という単語の意味が少しぼけてきたようである.小学生が「桜の花と桃の花のちがいを研究しましよう」などというときは英語のstudyくらいの意味である.昭和の初め頃に外務畑の生えぬきでない外務大臣が,外国の駐日大使から或る交渉を持ち込まれて,I will consider it.と答えたので,大変手ちがいになつたという話を聞いたことがある.これでは「御希望に沿うように配意する」という意味になるそうである.これなどはI will study it.(よく研究します)とでもいう所ではあるまいか.

 要するにこの意味でいう「研究」とは,条理整然と考えたり,観察し,記録し,分析する,というような知的活動のことらしい.呑気な気持で見まもる,眺める,とか,美的価値に心をひかれて鑑賞(あるいは観照)するというのとは趣きが違う.

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 研修や研究会活動をどうすすめるかという問題について,従来のいろいろの経験からみていくつかの点について考えてみよう.

保健所長がとらえる研究会活動

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 1.はじめに

 よく「保健婦ほど研修の機会が多いものはない」ということを耳にする.なかには「同じ会にそんなに大勢出なくても,帰つてからみんなに伝達すればよいだろう」と交代で出席するよう指示されたという話もきく.確かに保健所の月例業務研究会,月1〜2回の所内研究会のほか,県でもたれる衛生や国保の研修会,保健婦会の講習や研究会そのほか事業別の講習会や協議会等々,はたからみると,よくも研究することがあるものだとか,保健婦ほど研究ずきなものはないということにもなるだろう.

 保健婦活動は社会の移りかわりにしたがつて漸次その幅を広げ,深さを増しながら進展してきたが,ときに本来の目的を忘れ,目標を見失い,波にゆられて流されたり,壁に突き当たり混乱したこともあつた.そのようなとき,公衆衛生看護事業を支え,立ち直らせた大きな力は,業務に対する研究的な態度ではなかつたろうか.現在の研究会活動,とくに月例業務研究会のもち方には,多くの問題があるように思うので,これを中心に書いてみたい.

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 はじめに

 「保健婦さん方は,どうして立派な知識と技術と意慾とをもつていながら,よい仕事ができないのだろうか」先日,北海道国保連合会で話し合つた際,いわれたことであるが,このとき私は,現場における保健婦の教育訓練が,いかに貧困であるかをあらためてつくづく感じたものである.そして現在保健婦の現場教育訓練は,それぞれの職場内で,あるいは職場外で,いろいろな形で行なわれているが,これらをどうとらえ,関連させ位置づけるかということは,管内保健婦の業務について,指導監督の立場にある保健所長としては,共同保健計画,国保の保健施設活動など,社会的要請もあり,所長業務の重要課題としてむずかしい問題ではあるが,真剣に取り組まねばならないものの一つであると考えている.

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 1.はじめに

 T管内における管内保健婦が,共同で研究会を持つており,偶数の月は保健所,奇数の月は国保側担当というように実施していた.その内容について昭33年,ただ漠然と保健所の婦長の意志だけで決めていた傾向があり,保健婦達も研究会にとくに興味ももたず,1月に1回,おのおのの保健婦がおかれている立場,苦しいこと,楽しいことの話し合いをする時間としてあつたように思う.私も会をもつことに大きな負担をもち,町村側からは(一部の国保課長ではあるが)保健婦の出張が多すぎる.何を研究しているのか,その効果がさつぱり現場業務に生かされていないなどの声も聞かれるようになり,これを動機に大いに反省,検討しこの研究会を将来継続するためには,もつと地域の問題をとり入れた意義あるものにしていく必要があるのではないかと痛感しはじめたわけである.それ以後行なつて来たものを以下に述べることにする.

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 保健所,市町村(国保),事業所などに勤務する保健婦は,保健所管内の公衆衛生看護事業をよりよく進めてゆくために協同して活動しなければならない.

 このためには保健所管内の保健婦は,それぞれの所属する市町村,施設の目標にしたがつて,住民の保健指導のために,すぐれた看護サービスを提供してゆくべきであると考える.

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 私たちは今,先生を入れて6人の小サークルで心理学の基礎学習をしています.会員は全員保健婦学校当時の同級生で,発足当時は皆町村の勤務でしたが,一年たつた今では,町村,健保組合,病院勤務となつています.会合は月一回,先生の研究室で,時にケーキをつつき,先生の入れて下さるコーヒーでのどをうるおしながら,町村の話,先生の豊かな話題に楽しく時をすごして,むずかしい個所もなんのその,来月はもつと面白い会をと期待して帰ります.

 そもそも私たちのサークルの誕生は61年9月,そして学校卒業後3年目の事です.

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 最近つくづく考えさせられるのは,保健所という仕事をする場は,建物にせよ,部屋の中にせよ,また職員にせよ,清潔で,健康的であらねばならないしその様なムードが欲しいものであるという事である。しかし実際は,その反対のところが多いのではあるまいか。建物は古くさいし,部屋も汚いし,職員もつかれ切った様な顔をしているし,これではむしろ被保健所といった方がよい位であるいつだったか,便所にいたら,保健所の便所がこんなに汚いのに,我々業者にはああだの,こうだのとやかましくいうなんてけしからんなぞといっているのを聞いて愕然とした事かある。本当に反省しなければならない事は,こんな事ではないか、建物の古いのは致し方ないとしても,清潔な保健所,温い感じをあたえる保健所づくりはできないものか。あまり金をかけないで清潔にするには,また職員の観念の持ち方等々あれこれ考えたが,結局,まずみんなで徹底的に掃除をしようという事であつた。

 化学洗剤を使って再三再四,床を磨いて見たら驚く程きれいになった。便所の金網を取りかえ,蓋を直し,玄関にある履物入を新しく作り,草履もきれいなものに取り換えた。幸い私は絵や写真が好きで,色々集めたものを全部もって来て,各部屋や,それぞれのところに飾った。花瓶も沢山買って部屋や廊下にすえつけ,花の方は所友会の文化部で受持つ事になった。

読者からの手紙

私は保健婦 奥村 怜子
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 ねぼうは日曜日と眼もうつろで台所に入る.テレビは10時で「私のみた日本の中学生」という,スエーデン,イスラエル,アメリカ,中国,日本の各国の中学生の座談会がはじまつていました.中学生の学生生活のいろいろの話のあと,司会者が将来の希望について質問しました.この男の学生からは建築家,科学者,外交官,女子学生からは看護婦,新聞記者という希望が出ました.この女子学生の中,看護婦と答えた人はアメリカ人で,新聞記者と答えた人は中国人でした.もし日本の女子中学生が出席していましたらどうでしたでしようか,我が味方を思いがけず得て非常に嬉しく思いました.アメリカでは女性として最高の職業であるとは以前なにかの機会で聞いておりましたが.

 また話は変りますが,私がときどき考えさせられていることの一つに,私の保健所の管内に在日米国陸軍医療団本部があります.そこに保健婦が1人居ります.そして陸軍の軍人,家族の健康管理,保健指導,健康教育を行なつております.ときどき連絡にまいりますが,お国柄のこともあつて,よくいろいろな人を紹介して下さいます.その時「私は保健婦です」といい終らない中に,「貴女は保健婦ですか」と,他のいかなる職種の人でも一応親しげな尊敬のあるまなざしで,その場の雰囲気になじませて下さいます.もしこれが日本人であるなら,保健婦についてあれこれと説明させられることでしよう.

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ローカル・ニュース
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 保健婦さんに感謝します

 身近の者に赤ちやんができました.初産なので,いろいろ心配でしたが,保健婦さんに通知を出すと,たずねてくださつて,とてもテキパキと,乳児についてお話してくださり,おふろの入れ方まで,実地に教えてくださるなど,みんなが心強く思いました.

 そのうえ茶菓などは固く遠慮なされます.市の公僕だからでしようが,よく義務を果たされた人だと感心させられました.世間には,保健婦さんを呼べばお金がいると,遠慮されている人も多いと思いますが,若いおかあさんがたは,もつともっと,保健婦さんを利用されるとよいと思います.

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 昨年12月昭和37年厚生白書(厚生行政年次報告)が発表された.今回の白書は,とくに人口革命ともいうべき人口構造の大きな変革と,近年の世界にも類のない経済の高度成長を背景として,人口資質の向上,老齢人口の増加と老後の保障,中高年齢層問題,都市問題,農村問題,中小企業問題,低所得階層対策の7つの問題について,厚生行政の現状を明らかにし,今後の長期的課題を提起すると同時に,その解決の方法をしめしている.今回の白書では,これまでの形を採用せず,各制度については,そのおもな動きを統計資料と一緒に巻末にまとめる大きな特色をだしている.

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 1.

 われわれは人に話をするときに,相手にわかるように話すことを考える.わかりやすいということを考えることは当り前であるが,さてそれでは実際にどうしたらわかりやすくなり,相手がわかつてくれるであろうか.こういう質問をされると大ていの人は一寸まごつくであろう.わかりやすいというのは,それ以上言いようがないではないかと思うであろう.しかし病気の苦痛を人にわかりやすく伝えることはなかなか出来ないようなもので,話によつてはわからせることは出来ないこともないのである.相手の人がもつていない経験を土台にした話などというものは一向に通じないのが普通である.

 これを聞く人の立場に立つて考えてみるとどうであろうか.相手の人の話がわかるということは相手の口から出た音が耳に伝わるからわかるのであるが,しかし音が鼓膜を刺激するからわかるのであろうか.ただそれだけではない.その刺激は大脳細胞を刺激して大脳が働くのである.人の話がわかるというのを,全く話した人と同じようにわかるというような状態を想像してみると,それは大脳の働きが話した人と全くおなじように動いているという場合であろう.

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 特集のしめくくりをこの座談会にしました.

 橋本先生が各地での研究会をごらんになっての良い助言を軸に,現状の各問題,こうやっているという話合いの中から,御出席のみなさんの問題点で,やはり大きなものは,忙しさに,勉強すること,研究会を持つことがおし流されて行くことでした.——しかし,その忙しさを断ち切るためにも業務の研究会をしなければならない,という方向が出ていると思います.ここに盛られている研究会を持っていくための,いろいろの示唆を十分に御活用いただきたいと思います.

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 38年の新春,消えていた看護の灯がともされた.この灯が,あかあかと看護界をてらすことができるかどうかは,今後の課題であるにしても厚生省に看護課が復活することは,看護行政の今後に大きな影響をおよぼすことになるであろう.

 厚生省から独立課としての看護課が消え医事課の中に吸収されたのは31年3月末のことであった.中央官庁の行政機構改革,合理化の一環の中で,いくつかの課とともに,看護課も廃止された.なんとも,割り切れないできごとであったし,その理由は全国の保健婦,助産婦,看護婦にとって,納得のいきかねるものであった.しかし,このことが,地方看護行政にもたらした影響は大きかった.投げられた石の波紋がひろがっていくように,県における看護課,あるいは看護係は,少しずつ縮少への道をたどらざるを得ない状況であった.人員獲得もむずかしく,ひとり三役をひき受けるような形で,地方の看護係は,必死でこの苦境にたち向って来たのだった.「なんとかしなければ…」という焦燥から,何回となく,全国看護係長の話し合いがもたれ,「看護行政研究会」も発足したりした.そして,以来7年間,年中行事といわれるくらい,看護協会員は,折あるごとに陳情につぐ陳情を行なって,看護課の復活を願ったものであった.

ルポルタージュ

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 編集部で席をならべる看護教育担当者西村クンが仙台の研究学会へ出かけました.そこでかねて"ムードのある保健所"とうかがっていた塩釜HCをルポしてきてもらつたのです.

コンタクトレンズ(38)

正月だけの東京の空 長谷川 泉
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 東京のスモッグ禍は,ほんとうのことをいえば,今に始まったことではなく,心ある識者には大気汚染と公害の問題として,心を痛めざるを得ないことがらであったのだ.それが去年の暮から急にクローズ・アップされたのは,スモッグで有名なロンドンに始まって,気象の特殊状況から広範囲にわたって各地を襲うようになったからである.ジャーナリズムのとりあげ方もかなりしつように神経質であったこともあげられよう.

 ジャーナリズムのとりあげ方が,かなり神経質ではあったが,この問題の本質は,ほんとうはあんなものではなくて,もっと深刻なのであろう.ことは急に解決されるわけではなく,東京の現実からするならば,このような恐るべき状態は,ますますひどくなる一方であって,年と共にその被害がひどくなることが予想されるからである.学者とジャーナリズムが神経質になって,政治を動かし,世論をも背景として,問題解決の方向へ一歩を踏み出すことになったのは,公衆衛生関係者としては喜ぶべき現象なのだ.かつて,横浜ぜんそくという不名誉なことばが生み出され,それがまた東京ぜんそくという不名誉な,そして肉体をじょじょにむしばむ恐るべき毒ガス都市を生み出すようになったことが,何とか早く改善されるような方策がとられることは有難いからである.

編集者から読者へ

2つの白書から 栗原 弘
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 各省から毎年出されるいわゆる白書について,国民は案外関心が少ないのではないか.時に特徴的なトップ見出しにでも使えそうな内容のものでもない限り,日刊紙もパッとしない2,3面に目立たない扱いをするようだ.

 ところで,昨年末示された厚生省の「厚生白書」はいろいろと興味をひく内容が盛られていた.例年のものを見なれた目では,構成スタイルが違っていたこと,問題別に厚生行政の目をすえていたことは新鮮であった(これについては本文記事の解説をごらんいただきたい).各紙の扱い方も,その見出しで追って見ると,これが高度成長経済,所得倍増政策を唱える政府所管の役所から出されたものとはちょっと考えられない,暗いムードのものであった.

研究報告

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 口絵で紹介しましたムードづくりの中からうまれたのが,この塩釜保健所の共同保健計画です.セクト主義をなくした成果のほどがうかがわれるようです.

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 はじめに

 岡山県においては,各保健所地区で,成人病の検診が実施されているが,検診の結果,発見された要注意,要治療者に対して,保健婦の家庭訪問指導を実施するにあたり,保健婦の訪問票の必要にせまられ,当総社保健所においては,一昨年より新しく成人病訪問票を作成したので,この訪問票を紹介し,みなさんの参考にしたいと思う.

 訪問票を使用するにあたっては,医師,栄養士,保健婦のチーム・ワークをよくすることが非常に大切である.

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 はじめに

 近年,母親の育児に対する関心が非常に高まつてきたことは,乳幼児の体位の向上や公衆衛生機関の利用ぶりにもその一端をみることができます.育児相談や保健指導においてとりあげられる問題は多種多様でありますが,昨今は栄養状態の改善,伝染性疾患の減少などにともない先天性股関節脱臼,筋性斜頸,内反足などの整形外科的疾患が,将来長く精神面にも影響を及ぼすことからも,とくにクローズ・アップされてきているように思われます.

 私共は今回,当愛染園附属愛染橋病院(以下当院と略す)における過去1年間の出生児について,斜頸に関する二,三の調査を行ないましたのでここに報告し,併せて私共の実施しているその対策面について触れてみたいと思います.

講座

弱視について(2) 秋山 晃一郎
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 社会的弱視

 毎春行なわれる就学児童の視力検査の際には弱視児の問題についてきまつていくつかのはげしい論争がくり返されている.眼鏡をかけても視力が0.1位しか出ず眼科医から治療は困難であると診断された弱視児をもつ母親の訴えである."この子が盲学校へゆくのは可哀そうだ.医学が発達して来れば視力が出てくるかも知れないから,是非普通の小学校へ上げたい"という意見である.しかし小学校の先生の側からみれば,"母親のいうことはよく解るが,50人も一しよに教育しなければならない場所で,そのように乏しい視力で果してみんなについて来れるだろうか.もしついて来れないとすれば,ある意味ではかえつて不幸にするのではないか"という意見がある.ここにおいて点字教育を必要としない程度に視力のある児童を,拡大鏡や大きな活字をつかつて普通教育あるいはそれに近い状態で指導するという弱視学級の必要性を再認識せざるを得ないであろう.普通教育と点字教育の差を考えるならば,これは1人の母親の訴えに関する問題ではなく,学校教育の立場からみてもゆゆしき問題であるからである.

めずらしい病気

シビガッチャキ症 成田 昌弘
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 1.まえがき

 青森県津軽地方の方言の中に,シビまたはガッチャキというのがある.シビとは皮膚が荒れ皸裂を生ずる状態をいい,また,ガッチャキとは肛門,陰部の痒みを言うのである.シビガッチャキ症とは,かかる方言に由来し名付けられた病名である.

 古くから住民の間ではこれは伝染病であり,また遺伝病であり,進行すると脳を侵し,ついに発狂死亡すらみるおそろしい病気である,といいつたえられているもので,専ら家伝薬とか秘法とかによって治療されてきたのである.

基本情報

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保健婦雑誌
19巻2号 (1963年2月)
電子版ISSN:2185-4041 印刷版ISSN:0047-1844 医学書院

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