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わからせる教育の方法—ティーチング・マシンの発生
矢口 新
1
1国立教育研究所
pp.49-51
発行日 1963年2月10日
Published Date 1963/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662202756
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1.
われわれは人に話をするときに,相手にわかるように話すことを考える.わかりやすいということを考えることは当り前であるが,さてそれでは実際にどうしたらわかりやすくなり,相手がわかつてくれるであろうか.こういう質問をされると大ていの人は一寸まごつくであろう.わかりやすいというのは,それ以上言いようがないではないかと思うであろう.しかし病気の苦痛を人にわかりやすく伝えることはなかなか出来ないようなもので,話によつてはわからせることは出来ないこともないのである.相手の人がもつていない経験を土台にした話などというものは一向に通じないのが普通である.
これを聞く人の立場に立つて考えてみるとどうであろうか.相手の人の話がわかるということは相手の口から出た音が耳に伝わるからわかるのであるが,しかし音が鼓膜を刺激するからわかるのであろうか.ただそれだけではない.その刺激は大脳細胞を刺激して大脳が働くのである.人の話がわかるというのを,全く話した人と同じようにわかるというような状態を想像してみると,それは大脳の働きが話した人と全くおなじように動いているという場合であろう.
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