講座
弱視について(2)
秋山 晃一郎
1
1横浜市学校保健会
pp.67-69
発行日 1963年2月10日
Published Date 1963/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662202762
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社会的弱視
毎春行なわれる就学児童の視力検査の際には弱視児の問題についてきまつていくつかのはげしい論争がくり返されている.眼鏡をかけても視力が0.1位しか出ず眼科医から治療は困難であると診断された弱視児をもつ母親の訴えである."この子が盲学校へゆくのは可哀そうだ.医学が発達して来れば視力が出てくるかも知れないから,是非普通の小学校へ上げたい"という意見である.しかし小学校の先生の側からみれば,"母親のいうことはよく解るが,50人も一しよに教育しなければならない場所で,そのように乏しい視力で果してみんなについて来れるだろうか.もしついて来れないとすれば,ある意味ではかえつて不幸にするのではないか"という意見がある.ここにおいて点字教育を必要としない程度に視力のある児童を,拡大鏡や大きな活字をつかつて普通教育あるいはそれに近い状態で指導するという弱視学級の必要性を再認識せざるを得ないであろう.普通教育と点字教育の差を考えるならば,これは1人の母親の訴えに関する問題ではなく,学校教育の立場からみてもゆゆしき問題であるからである.
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