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はじめに
わが国では,近年の不妊治療や周産期医療の進歩に伴い,多胎児の出産率が増加しつつある。特に双胎は1980年代前半までは出産1000に対して6〜7であったが,その後漸増し,1994年には8.3に上昇してきている1)。双胎の死産率は年々減少してきている2)が,双胎妊娠は妊娠中毒症や早産などの異常が高率におこり,約半数が低出生体重児3)であるなどリスクは高い。乳児死亡率も単胎に比べると約5倍4)であり,依然周産期医療の重要な課題であることは疑いない。
1994年に改正された母子保健法において,住民の多様なニーズに対応した,妊娠・出産から育児・乳幼児保健まで,一貫したきめの細かいサービスを提供することが,地域母子保健の中心的課題であるといわれている5)。多胎などハイリスク母子の妊娠中から育児期までのケアに関しては,市町村と保健所が連携して取り組んでいかなければならない重要課題であろう。また双胎においては,妊娠中からの保健指導や出産後の育児支援が手薄であることは指摘されているが6),現在のところ,双胎に関する妊娠・出産・育児の情報は少なく,双子を妊娠・出産した母親や家族への保健医療機関に対するニーズは極めて高い状況にある。最近は保健所で「双子育児教室」などの育児支援活動7)の報告も増えてきているが,地域的に限られていることもあり,多くの双子をもつ親のニーズに十分にこたえられているとはいえない。さらに双胎に関しては,基礎となる資料も不十分であり,ニーズの把握から行っていくことが必要である。
そこで,双子をもつ母親と家族への援助の実態を調査し,医療施設や保健所を含めた地域における援助のあり方を検討するため,妊娠期から育児期までの専門家による援助の現状と評価について調査した。
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