講座
社会保障と医療のありかた
末高 信
1
1早稲田大学
pp.15-18
発行日 1954年6月10日
Published Date 1954/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662200748
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ひとの一生は「稼いで食う」ということの連続であつて「稼ぎ」が多ければ立派に暮せるし「稼ぎ」が少なければ生活は苦しくまた「稼ぎ」がなければ食えない.これは誰れも疑わない世間のおきてである.従つて,何人も立派に暮したこいと考えて,稼ぐために懸命の努力をするのである.だから老令になつて稼ぐ力がなくなつたり,病気で稼げないとか,仕事がないので仂けないという場合でも,收入がなくなり食えなくなるということは,その当人が運がなかつたのだから止むを得ない,あきらめて死んで行くのが当然だと考えられていたのである.
けれどこれは全くむごい話であつて,ひとは老令,病気,失業等の事熊にあつても,なお生き抜きたいと切なる願いをもつのであつて,その人間の奥深く存する願望に基いて生存権が確認されるに至つた.
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