特集 エンパワメントに着目した活動を
エンパワメントと保健活動—エンパワメント概念を用いて保健婦活動を読み解く
麻原 きよみ
1
1信州大学医療技術短期大学部
pp.1120-1126
発行日 2000年12月10日
Published Date 2000/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662902359
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保健婦が用いる保健婦活動を指す言葉の中で,言葉としてはわかりやすいが,具体的かつ明快に説明できないものに出くわすことがある。「地域づくり」や「住民主体」,はては「地域づくりは人づくり」などである。しかし,保健婦活動の基本理念や本質は時間の経緯に応じて大きく変化するものではないし,現場の実践は研究者による活動の理論化より常に先行しているわけだから,あたかも新しい考え方ややり方が現れたように見えても,実は保健婦が行っている活動を言い換えたに過ぎなかったりするものである。
「エンパワメントempowerment」もそんな概念の1つかもしれないと思いながらも,個人や地域が「自己の生活をコントロール・決定する能力を開発するプロセス」を示し,保健婦活動を一言で表現してくれているような言葉にすっかり魅せられてしまった。事実,エンパワメントは個人,地域など対象によって,また時間や物理社会的状況によって異なるとされ,その定義はいまだ発展途上にある。しかし,このエンパワメントの視点からの切り口が,明確に説明できない保健婦活動を読み解く鍵になるかもしれないと考えた。エンパワメントの定義が曖昧だからこそ,自分なりの解釈が許されるかもしれないと都合よく判断し,エンパワメント概念を用いて保健婦活動を読み解くことを試みたい。
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