助産婦雑誌 45巻6号 (1991年6月)

特集 周産期ME機器マニュアル

ME機器とは 橋本 武次
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MEの由来

 ここでいうMEとは,メディカル・エレクトロニクス(Medical Electronics 医用電子工学)あるいはメディカル・エンジニアリング(Medical Engineering 医用工学)などの略字であり,ME機器とは電気の作用を利用した医療機器の総称である。現在ではその多くにマイコンが組み込まれていて,性能が高度化されている。

 電気といえば,昔は電燈・ラジオ・モーター・電熱器などを想像したが,現今では蛍光灯・テレビ・家電機器・コンピュータなどが日常の必需品になっている。ほとんどの医療機器にエレクトロニクスの機構が取り込まれており,周産期医療の現場でも多くのME機器が使用されている。

ME機器の正しい取り扱い 馬場 一憲
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 ●現代の医療現場は,ME機器にあふれている。そこで働くプロとしては,それらを安全に正しく使いこなすため,個々の機器の取り扱いに習熟している必要がある。

 ●しかし,ME機器を取り扱う以前に,最低限身につけておかなければならない電気に関する基礎知識がある。

分娩監視装置本体 金岡 毅
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分娩監視装置とは

 従来,胎児心拍数はトラウベ産科聴診器で胎児心音を5秒ごとに3回数え,11-11-11というような表現をしてきた。これでは胎児心拍数の平均値を計っているにすぎず,連続した胎児心拍数の記録や,陣痛に対しての胎児心拍数の変化を知ることはできない。ME機器によって瞬時胎児心拍数と陣痛活動の同時・連続記録を取るのが分娩監視装置である。

 しかしながら,頸管の開大度・展退度・硬度・位置,児頭下降度,母体の血圧・脈拍数・体温など,分娩の際のすべての要素を監視するものではなく,また最近は,ノンストレス・テスト(NST)としてむしろ妊娠後期の胎児評価に使用することが多くなり,分娩監視装置という名前それ自体の反省がある。

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自動胎児診断補助装置

■原理

 分娩監視装置の陣痛・心拍数出力信号をデータとして経時的に取り込み,組み込まれた判定プログラムにより胎児の状態,胎児仮死の発生の可能性を診断として出力する。ナースステーションなどベッドサイドから離れた場所でモニタが可能な警報盤もある(図1)。

ドプラ胎児心拍検出器 吉田 幸洋
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 妊娠の全期間を通じて,胎児の生死を確認することは妊産婦管理の基本である。胎児心拍動を検出することは胎児生存を最も確実に証明することのひとつであり,その方法にはドプラ胎児心拍検出器の他にも,トラウベによる胎児心音の聴診や,リアルタイム超音波断層法によるBモードやMモード画像上で心拍運動を確認する方法などがある。

 このうち,ドプラ胎児心拍検出器(図1)による方法は最も簡便であり,また,心拍音をスピーカーを通して医師や助産婦のみならず妊婦自身も聞くことができ,安心感や希望を与え得るという点で妊産婦管理上他の方法にないメリットがある。しかしながら,ドプラ胎児心拍検出器により胎児心拍が聴取可能となるのは一般に妊娠11週以後とされ,妊娠初期には応用できない点,さらに,妊娠末期や分娩時における胎児心拍数モニタリングのためには分娩監視装置が必要である点などを考慮しなければならない。

超音波断層装置 岡井 崇
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 現在,産婦人科の日常診療において超音波診断装置はなくてはならないものになっており,エコーあるいはBスコープと呼ばれて,盛んに使用されている。医療に携わる人は診断面のことは良く理解しているが,装置のハード面に関しては日頃あまり関心がなく,原理や構造を知ろうとする人は少ない。しかし超音波診断装置の性能をフルに発揮させ,診断に役立たせるためには,原理や装置の特性を多少なりとも理解することが必要で,常に良い状態で装置を使いこなし,診断精度の向上を目指さなければならない。

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原理

 超音波血流計測装置は体内の血管を流れる血液の速度および速度の変化を計測し,病気の診断に役立てようとする装置である。この装置は,非侵襲的であること,比較的操作が簡単であること,リアルタイムで情報が表示されることなどの利点を持っている。

 したがって,普通の方法で血圧を測ったり,尿量を見たりすることができない胎児の生理的,病的状態を把握するために周産期領域で広く用いられるようになってきた。現在,周産期領域ではおもにパルスドプラ法という方法を用いてさまざまな胎児の血管,子宮動脈の血流を測定し,その波形を解析して臨床に役立てている。

母体循環動態の監視装置

血圧モニタ 日高 敦夫
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血圧測定の意義

 血圧を測定する臨床的意義は,生体のポンプ機能として全身に血液を送り出す力を知ることである。血圧は左心室の収縮によって生じる圧力が大動脈血管を経て全身の動脈へと伝わり,これが動脈壁に及ぼす圧力である。この血圧の構成要因として,左心室収縮力(圧力),循環血液量,末梢血管抵抗,血液粘着性などを挙げることができる。

 測定方法には,一般に非観血式血圧測定法(間接法)と,血管内にカテーテルなどを挿入し,血圧トランスデューサーによって連続的に血圧波形を測定する観血式血圧測定法(直接法)がある。ここでは非観血式血圧測定法につき述べるが,用手測定法(聴診法)については成書にゆずる。

心拍出量モニタ 日高 敦夫
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 臓器機能維持にとって血流は極めて重要である。中でも,心機能は血流量を制御する基本となる。この心機能を測定するには,今日まで各種の非観血的,観血的な方法が用いられてきた。観血的な方法としては,電磁血流計や超音波血流計による測定,Fick法,指示薬希釈法,熱希釈法などがある。一方,非観血的方法として,超音波心エコー法,インピーダンスカルジオグラフィーImpedance cardiographyなどがある。

 これらのうち,臨床的には,非観血的,連続的に測定し得る方法が望ましく,それは超音波心エコー法よりもやや精度に難があるといわれてはいるが,インピーダンスカルジオグラフィーが勧められる。

出血モニタ 日高 敦夫
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 手術時や分娩時,または妊娠経過中に偶発的に出血をみる子宮外妊娠,前置胎盤,胎盤早期剥離などにおける出血の状態を知ることは母児管理上,極めて重要である。

 正確に出血量を測定することは容易なことではないが,現在では種々の直接的,間接的な方法を組み合わせ,簡便にしかも総合的に出血程度を知ろうと試みられている。

分娩室の機器

吸引娩出器 佐藤 章 , 大川 敏昭
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使用目的

 急速遂娩の適応,つまり,子宮口全開大ないしそれに近い状態で,陣痛微弱,分娩第2期遷延,胎児仮死の兆候発現,出血増加の傾向,娩出時間の短縮などの必要のある時,吸引カップを胎児の先進部に吸着させ,陰圧を利用して胎児を経腟的に娩出させる器具である。

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使用目的

 分娩室や帝王切開の行なわれる手術室で使用されるインファントウォーマ(開放式保育器)は,救急を要する新生児の仮死蘇生に際し,時間のロスが少なく,体温維持が容易であり,さらに児への対応が直接できること,すなわち気管内挿管や血管確保などの処置が容易にできることなどの利点を有する。

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使用目的

 胎児および新生児仮死,呼吸障害,さらに,心疾患などを合併した新生児は,体循環障害を起こし低酸素血症に,ひいては代謝性アシドーシスになる。分娩進行時の児頭採血によるガス分析結果は,急速遂娩の時期の選択に,娩出直後の新生児の血液サンプルのガス分析結果は,治療および予後の判断に有用である。

超音波洗浄装置 佐藤 章 , 大川 敏昭
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使用目的

 超音波と殺菌液や洗浄液の相乗作用により,手術時だけでなく診察時の手洗いや,手術時の機械器具の殺菌およびミクロ単位の汚れを落とす。特徴として,短時間で均一な洗浄結果が得られ,複雑な形状のものでも洗浄が可能であり,ほとんどのものが利用対象となる。

産科麻酔器

吸入麻酔器 西島 正博 , 野田 芳人
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 産科麻酔は,帝王切開時麻酔と経腟分娩時麻酔(無痛分娩)とに分けられる。無痛分娩による母児に対する安全性もほぼ確立されており,広く臨床に利用されている。本稿では,経腟分娩時麻酔に使用される機器や使用法1)2)について述べる。

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 部位麻酔は,無痛分娩時に意識を残すことを希望する産婦や禁飲食が不十分な場合に行なわれる。主に陰部神経ブロックと硬膜外麻酔が施行されており,傍頸管ブロック・脊椎麻酔・サドルブロックは現在ではあまり使用されていない。

新生児の保育用機器

保育器 清水 光政
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 保温,栄養,感染予防は新生児医療の重要な三本柱である。特に,保温は新生児医療のすべての場面で考慮する必要がある。

 保育器(インキュベータ,クベース)は新生児を保温する(=児に最適な温度環境に保つ)ための医療機器である。

酸素濃度計 清水 光政
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 呼吸管理の基本的な手段が酸素投与であるが,その原則は必要最低限の酸素投与で酸素化を適切に行なうということである。

 酸素投与を行なっている児においては,投与酸素濃度の測定と調節を,バイタルチェックと同様に定期的に正確に行なう必要があり,その場合用いられるのが酸素濃度計である。

酸素コントローラ 清水 光政
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 酸素コントローラ(図1)は酸素濃度の増減に応じて,供給流量を調節する機器である。保育器や酸素フードを用いて酸素を投与する場合に使う。

新生児の監視装置

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モニタはよきパートナー

 新生児・未熟児医療の発展は,モニタなどを中心とした医療機器の開発・導入に負うところが大きい。特に未熟児のintact survival(後遺症なき生存)の向上は,無呼吸監視装置によって成されたと言っても過言ではない。

 自ら訴える術もない新生児では,急速に状態が悪化することが多く,たとえ1対1の看護体制をしていたにしても,その注意力が持続するのはせいぜい30分ないしは1時間であり,それを過ぎると,目の前で児が無呼吸になっていてもぼんやりと見過ごしてしまうことが起こり得る。このような人間の能力を補うのがモニタであり,単に人手を省くためのものでなく人間の注意力の限界をカバーするもの1)であり,モニタを気難しいよそもの扱いでなく「よきパートナー」としてつきあってほしい。

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 NICUで用いられる多くの呼吸心拍モニタ(図1)は,心電図・呼吸曲線がディスプレイに表示され,誤作動の確認や無呼吸・徐脈などの意味づけが可能なものが適当である。また,両者の電極は併用されている。

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 新生児,特に未熟児管理において動脈血酸素分圧を測定することは極めて重要であるが,動脈穿刺などは感染,血栓形成などの問題があった。1969年にHuchら1)によって経皮的酸素分圧測定装置が開発され非侵襲的に連続測定が可能となった。最近パルスオキシメータの登場でどちらかというと窓際族になりつつあるが,その新生児における経皮的酸素モニタの有用性は,特に急性期において未だ重要である。

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 近年,パルスオキシメータ(図1)は,その非侵襲性,装着の簡便性,迅速な反応性により,未熟児・新生児医療においてもその使用が増加してきている。しかし,新生児での酸素化の指標として長い間PaO2のみに慣れ親しんできた我々にとって,パルスオキシメータの測定する酸素飽和度(SpO2)による酸素化の管理はなじみの薄い概念でもある。

 酸素飽和度とは,ヘモグロビンと酸素の結合の程度を示したものである。空気と血液が平衡に達した時,空気中の酸素分圧に比例して酸素は血液中に溶解する。この物理的な溶解は,血中酸素の2%程度を占めるに過ぎず,大部分の酸素は血液中のヘモグロビンと結合して運ばれ,この割合を酸素飽和度という。この飽和度は酸素分圧と直線関係はなく,S字状カーブとなっている(図2)。

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新生児の血圧測定

 血圧をモニタリングする方法としては,直接血管内にカテーテルを留置し,観血的に測定する方法が最も正確で連続的モニタリングが可能であるが,新生児・未熟児においては侵襲的であり合併症の問題があるため,重症例を除いては,非観血的血圧測定が行なわれている。

 非観血的血圧測定法には,下記のようないくつかの方法が考案されている。

新生児の治療用機器

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新生児の特殊性

 新生児期は,周生期の仮死や児の未熟性により,呼吸障害の頻度が高く,呼吸不全への進行が早い。したがって,人工呼吸器(レスピレータ)の使用頻度は高く新生児集中治療室(NICU)での医療には欠かせない。また,人工呼吸器のトラブルは児の生命に直接関与するため,NICUの従事者はその整備に習熟している必要がある。

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 呼吸停止が20秒またはそれ以上続き,チアノーゼならびに徐脈(<100bpm)を伴う場合に無呼吸と定義される。新生児特に未熟児にとっては非常に危険な状態である。

 原因の鑑別,治療を行なうとともに,無呼吸の状態から速やかに呼吸の回復を図る必要がある。

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 現在の新生児医療において輸液療法の占める割合は大きい。未熟児や病的新生児の水・電解質バランスの解明が進み,輸液機器の役割も増大している。特に未熟児への輸液は,時間当たりの輸液量が少ないため,その正確性が重要視される。

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 光線治療器は,新生児高ビリルビン血症の予防・治療のための光線療法に用いられる。

 高ビリルビン血症は新生児疾患の中でも頻度が高く,本機器は使用方法が容易なこともあり,日常診療において頻繁に使用されている。

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黄疸計

簡易血清ビリルビン測定器

原理

 分光光度法に基づき,血清ビリルビン濃度を測定する。アルブミンと結合した血清ビリルビンは460nmの波長で最大の吸光度を示し,ビリルビン濃度が460nmでの吸光度に比例することを利用している。

 ヘムもこの波長での吸光度をもつが,575nmにおいても最大吸光度を示し,同時に測定することで溶血補正を行なっている。

コンピュータ 原 量宏
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コンピュータの応用範囲

 コンピュータの発達と普及は,周産期の診療に大きな影響を与えている。周産期管理の内容は妊娠週数,子宮底長,児頭大横径,胎児心拍数などの数値を中心とする妊娠管理,長時間連続する胎児監視,新生児の心拍呼吸監視,さらに年間の統計分析などに分類されるが,これらの業務はコンピュータに最も適している。また婦人科診療においても,子宮ガン検診の結果や検査間隔の管理などに役立てることができる。用途は異なるが,医事会計の効率化を目的としたレセプトコンピュータやパソコンの利用が診療所レベルでも急速に普及している。

 コンピュータをいったん導入してしまえば,ソフトを入れ替えるだけで,看護婦や職員の勤務スケジュールの作成にはもちろん,患者の疾患ごとの看護手順,看護上の注意点などのリストアップ,食事の指示,さらに外来,入院患者への指導など,あらゆる業務に応用できる。

カラーグラフ

基本情報

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助産婦雑誌
45巻6号 (1991年6月)
電子版ISSN:2188-6180 印刷版ISSN:0047-1836 医学書院

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