- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
はじめに
母乳は,新生児にとって,また健康な成熟児にも病児にも,最高の食べ物である1)。母乳はすぐれた栄養を提供し,疾病予防効果を持ち,児の発達を促進する1)。これは人工乳には含まれない,防御因子,成長因子,ホルモン,酵素,また,長鎖不飽和脂肪酸という神経の発達・視機能の発達に重要な物質などが母乳に含まれているためである2,3)。低出生体重児にとって,その児の母親の母乳(own mother's milk)は,児の未熟性に適した栄養を提供し,消化吸収が良好で,腸管の蠕動・成長促進が得られ,壊死性腸炎,敗血症,日和見感染のリスクを減らすことがわかっている1,2,3)。早産児母乳は成熟児母乳に比べ,脂肪の濃度が高く,脂肪球が小さくて早産児に適しており2),脂肪酸の組成の差は最大6か月まで続く4)。
成熟児の場合は生後約半年までは,母乳だけで完全に栄養が摂取できる1)。低出生体重児の中でも,出生体重2,000g以上の児は成熟児と同様母乳だけで特別な不足症状なしに発育する。しかし,出生体重1,500g未満の極低出生体重児は,生後1か月を過ぎると,母乳のみでは,蛋白・ミネラル・ビタミンの不足を招くことが知られている5)。その理由は,①極低出生体重児は,胎内で十分な栄養素の備蓄なく出生することと,②生後も慢性肺疾患,無呼吸などのため十分量の乳汁を摂取できないことが多いからである。また,生後1か月以降は母乳成分中の蛋白・ミネラル濃度が,はじめのころの未熟児母乳特有の高濃度から通常の成乳の濃度へと徐々に低下し,たとえ母乳摂取量が十分であっても,これらの栄養素の不足を招く5)。現在の極低出生体重児の栄養法として最良の方法は,母乳を基本とし,母乳添加物質やミネラル・ビタミンを補っていくことである。
Copyright © 2002, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.