助産婦雑誌 45巻7号 (1991年7月)

特集 新カリキュラム助産婦教育の1年(Ⅰ)

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はじめに

 18年ぶりに改定された新しいカリキュラムが,1990(平成2)年4月から実施され1年が経過した。この1年の間,教育にあたった教員をはじめ臨床の場で指導した助産婦は,新しいことに取り組むときの不安や緊張をもちながら実施してきたように思う。

 1年間の実施を経て,助産婦教育課程検討委員会での検討結果を中心に,旧カリキュラムと対照しながら新カリキュラムの主旨を再確認する意味で述べてみたい。

新カリキュラムに基づく教育の展開

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千葉県医療技術大学校の概要

 本校は1971(昭和46)年に保助合同課程としてスタートし,1977(昭和52)年助産婦単独課程となった。その後,社会の変化に対応した変遷を経て,現在は助産婦,保健婦,看護婦(3年,2年課程),理学療法士,作業療法士の6学科を設置する養成所となっている。各学科の学生が共に学習する機会は少ないが,教科外活動などにおいて交流を深めている。

 1971(昭和46)年の開設以来,カリキュラムは保助合同課程から助産婦の1年課程になり,今回の新カリキュラムとなった。本助産学科の設立主旨は地域で活動する助産婦を目指していた。そのため旧カリキュラムでは,地域母子保健の時間数増ならびに健康管理論・疫学の科目を加えていた。本校は医療機関から独立しているため,臨床実習は6つの病院に委託し,3名の教員が指導に当たっている。

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はじめに

 今回のカリキュラムの改正には,社会情勢の変化によって,高い専門性と幅広いケアが助産婦に求められるようになったことが大きく影響している。そのため新カリキュラムでは,人間の生殖や性に関する専門職として実践活動ができる能力を育成すること,また対象のニーズに柔軟に対応できる基礎的能力の育成を目的として,その実現のために,ゆとりのある教育をめざし,学生の主体性尊重がうたわれている。

 岐阜県立衛生専門学校助産学科においても,新カリキュラムによる教育を1年間実施してきたので紹介する。

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こうとらえた新カリキュラム

 筆者が,当大阪大学医学部附属助産婦学校に1981年に就任して以来8年経過後の1989年,カリキュラム改正(保健婦助産婦看護婦学校養成所指定規則の改正)という予期しなかった大きな経験をすることになった。これも前世からの縁と心得,とにかく,新カリキュラムという相手をよく知ろうと考え,6月の厚生省・文部省の説明会はもちろん,その他の研修会等,すべてに出席し情報を収集した。

 収集した情報を整理してみると,今回の改正案の概要は,近年の医療の高度化,社会情勢の変化に伴い,看護職が専門的知識や技術とともに,優れた観察力,判断力,応用能力を求められるようになっていることがわかった。それに対応できる諸能力の養成をめざすに至ったという背景もわかった。さらに,助産婦課程は助産婦として実践活動ができる基礎的能力を育成することによって,母子および家族の健康に貢献し,地域母子保健の充実ならびに助産実践の向上に寄与することを目標とし,妊産褥婦・新生児および乳幼児の健康審査,保健指導を行なうのに必要な知識と技術を習得させるとともに,ライフサイクル各期に対応できる能力を育成すること,また人間の生殖や性の課題に携わることから,対象のもつ心理,社会面や人間の行動の基盤となる性科学に関する学習を深め,助産を全人的に把握し,それに対応できるよう必要な能力を育成することとなったのである1)。以上のことを筆者は理解した。

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はじめに

 1990(平成2)年4月から新カリキュラムによる教育を実施した。

 改正カリキュラムの検討を始めたのは,1989(平成元)年8月からで,わずか9か月という短期間の検討では十分に内容を吟味したり,担当講師や実習指導者に改正カリキュラムの意図するところを伝えることができなかったが,スタートせざるをえなかった。実施後1年を経過した段階でいくつかの問題点が見えてきたので,これらの問題点を検討し,1991(平成3)年度のカリキュラムを修正した。皆さまのご批判を仰ぎたい。

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賛育会病院助産婦学校の教育目的

 当賛育会病院助産婦学校の教育目的は,学校案内に明確に記載してある。「本校は賛育会の主旨に基づき,基督教の精神を尊び社会福祉の理念と最新の科学的理論,豊富な臨床例により,助産婦に必要な倫理と基礎的知識,技術を習得し,助産婦として,主体的に活動できる能力を啓発し,すぐれた実践家を養成する」ということが本校の教育である。また,学則には「助産婦として,母子保健を専門家として,推進していくために必要な教育を行ない,かつ人格の陶冶に資することを目的とする」と謳っている。

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 宮里 助産婦活動は臨床も教育も常に課題をかかえているような状態ですが,本日は助産婦教育に熱心に取り組んでいらっしゃる先生方と,日頃のご苦心談や疑問点,助産婦教育の展望などを率直に話しあってみたいと思います。私事ではございますが,この4月から私自身助産婦教育にかかわっていますので,今日の話し合いを大いに参考とさせていただきたいと思います。

特別寄稿

女性の本の現在(いま) 木下 明美
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はじめに

 —いまやホテルや新聞社の主催するお昼下がりの女性サロンは子育てが終わり余裕のできた女性たちであふれかえっている。文化は女性の側に蓄積され,女性がいなければ小説家という職業が成立しなくなり,映画も作れないし,テレビもという現状。それにひきかえ男性は…。

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 1981年1月,京都市上京区の松香堂書店は全国で初めての女性の本の専門書店,ウイメンズブックストアの名のりを上げた.以来10年,店主の中西豊子さんとスタッフの,時代を読み取る能力と努力に支えられて,松香堂書店は,女性問題に関心を寄せる人々にとってなくてはならない存在となった.

 松香堂書店に来れば,全国のミニコミ誌をはじめ,女性の本と情報に関してはほぼ入手が可能だ.「女性学」の発展にも寄与しているといえよう.

地球の子どもたち・5

チャイの出前 長倉 洋海
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 パキスタンのペシャワール。7月は猛暑の真っ只中。じっとしていても汗が吹き出してくる。路地裏には駄菓子屋、氷屋、床屋さんが軒を連ねているが、暑さのせいか人通りは少なく、閑散としている。ちょっと先の町工場からは、ブリキを加工する音や金属を焼き切る匂いがしてくる。

 路地のチャイ・ハナ(茶店)から少年が顔を出した。町工場へのお茶の出前だろう、チャイをかついでいる。少年が上半身、裸なのは汗でシャツがすぐ濡れてしまうからだ。

連載 とらうべ

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 去る3月に新潟市で開催された「日本助産学会」の懇親会で,ある方とお目にかかった。話題は看護研究のこととなり,ビールの勢いも手伝って,私は「患者のためにするのが真の看護研究であって,研究者や学者が自分のためにするのは看護研究ではない…」などと,かなり言いたいことを口にした。しかし,その方の「妊産婦は研究のためのモルモットじゃない…」とつぶやいた言葉に,きついことを言うなあと思うと同時に,ドキッとさせられた。

 懇親会が終っても「妊産婦はモルモットではない」という言葉に,なぜ自分がドキッとしたのか非常に気になった。そしてその答えは自分自身を幻滅させるものだった。

連載 フランス出産事情—変わりゆく出産・助産婦・病院・13

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リラへの道

 リラは,日本ではほとんどその名を知られていないが,フランスでは有名なパリ郊外のラディカルな産院である(注1)。しかし,その評価は2つに分かれていた。1つは,夫のみならず子どもにも出産立ち会いを許している進んだ産院という評判であり,もう1つは,十分な医療水準を持たずに自然出産を唱える,問題のある産院という噂である。ピティヴィエのように地域の中心になっている公立病院ならば,一定の医療水準を備えているはずだという信頼が寄せられるが,リラは小さな私立の産院だったから,いろいろと疑いが持たれたのだろう。

 しかし,私の身近な研究者仲間の1人は意識的にリラを選んだし,研究指導者ルークスさんの一番末の妹であるショーシャール=ガルニエさんも,リラを選んで無事に高齢初産していた。彼女たちはこぞって,リラは訪ねるに値するよい産院だと私にすすめた。特に,ガルニエさんは,ジャンヌという名前の麻酔科医はすはらしいから,ぜひ会って話を聞いたらよいと言った。

連載 新生児学基礎講座[臨床編]・24

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 前号で先天性代謝異常の総論的な内容を解説したが,本稿ではその代表的な疾患のいくつかについて述べる。

連載 りれー随筆・84

子離れ,10年をふり返り 池田 容子
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 鈴木郁美さん,御紹介ありがとうございました。娘の出産の時,こけし雛をプレゼントして下さったことが昨日のことのように思い出されます。あれから10年です。はやいですね。あの時鈴木さんは独身でしたが,今は3人のお母さん。私も子だくさんと言いたいところですが,この子ひとりです。

 他ならぬ鈴木さんからの「りれー随筆」のバトン,お受けすることにしました!

連載 ちょっとサイエンス

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 マウスという動物は,基礎医学を含む生物学研究に貢献していることでよく知られている。この5月15日付の朝日新聞にも,受精卵の段階でマウスに組み込まれた「人工遺伝子」が,大人になってから白血病を引き起こすウイルスの働きをブロックし,発病を抑えることに成功したという記事が載っていた。同じような人工遺伝子を使う手法で,将来はエイズを抑えることも考えられるという。マウスは現代の医学研究にとってなくてはならないものである。

 そのマウスには,遺伝的な突然変異による各種の系統が数多く存在する。それらは各系統の特性を損なうことがないように,特別なセンターにおいて維持・保存されている。なかでもヌードマウスは,研究用マウスの中でもとくに最近注目を集めている系統である。

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ともに生命観に触れた開会・閉会講演

 4月5日〜7日まで,第23回日本医学会総会が開かれた。4年に1度開催されるが,今年は史上最高の3万2000人の登録があった。新聞各紙も,臓器移植,脳死,生命倫理,そして,インフォームド・コンセントなど,諸問題を取りあげていた。

 筆者も3日間出席したので,簡単に報告したい。

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はじめに

 母乳栄養哺育は,栄養面や免疫面,また母子関係の早期確立面から,その必要性はいうまでもない。厚生省の統計をみると,生後1月未満で59.9%(1985年)が母乳栄養哺育である1)。京都府立医科大学附属病院(以下,当院)の調査では,退院時,2週間後,1か月後の母乳栄養哺育率は80%2)である。

 当院の妊娠中の問診においては,母乳栄養哺育希望者がほぼ全例を占めており,母乳哺育に対する意識が高い。

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 この春,びっくりすることに,助産婦もののドラマが2つ続いた。どちらもNTV系で,2月に「プサマカシ」,3月に「天使の誕生」が放映された。2作とも一般公募の大賞作品をドラマ化したものだ。

 そして私はご縁があって助産婦として「天使の誕生」制作のお手伝いをすることになった。初めてのぞいた世界は驚くことばかりだったが,助産婦ドラマ誕生の秘話(?)を皆様にも共有していただけたらと思う。それでは,まず私のプロフィールから。

Medical Scope

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 5月号につづけて抗リン脂質抗体と胎児の話題をお知らせします。前回,自己免疫抗体はもっているものの,全身性エリテマトーデスなどの病気にならないひとがいるということをお話ししました。抗リン脂質抗体の場合がもっとも多いので,今日では,そのような症例のことを抗リン脂質抗体症候群と呼んでいます。この女性では,一般に流産,死産の確率が高いことは前回述べたとおりです。第1回目の分娩はうまくいっても,次回の妊娠では,何とその80%もが流産してしまうそうです。ですから,2回目以降に流産をくり返すような症例では,抗リン脂質抗体のチェックも必要となるでしょう。

 今日,この抗リン脂質抗体陽性例の治療には,膠原病の治療に用いるプレドニンなどの副腎皮質ホルモンが用いられます。この治療で患者さんの体内の抗リン脂質抗体は減少してくることがわかっています。できれば,妊娠する前からプレドニンなどを投与しておいて,6ヵ月ぐらいするとかなり抗リン脂質抗体の量が減ってくるので,その時点で妊娠するように指導するとよいこともわかりました。さらに,妊娠中も副腎皮質ホルモンの治療はつづくことになります。しかし,妊娠中には,副腎皮質ホルモンの投与量を少なくしたいのが私たちの希望です。1日20mg以内に,できれば1日15mg以内にしたいのです。

基本情報

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助産婦雑誌
45巻7号 (1991年7月)
電子版ISSN:2188-6180 印刷版ISSN:0047-1836 医学書院

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