助産婦雑誌 43巻1号 (1989年1月)

特集 生命倫理と看護

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倫理学は「人」に注目する

 最近の医療は,「病気」ばかりを見て,「人」を見なくなったとよくいわれます。バイオエシックス(生命倫理)とは,そういう医療の傾向のなかで,あくまでも病気になった「人」に注目して,これからの医療の進むべき道について考える試みです。

 バイオエシックスは一種の倫理学です。倫理学というと,難しくてとっつきにくい学問だと思われる方も多いでしょう。しかし,本当はもっと身近なものなのです。倫理学とは,人がこの社会の中でどのような行ないをしてゆけばよいかについて考える学問なのです。バイオエシックス,つまり生命倫理学とは,医療の現場で,医師や看護者や患者や家族などの「人々」が,いろいろな場面でどのようにふるまい,どのような行ないをしてゆけばよいかについて考える学問です。

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はじめに

 人間一人一人の生命の重みは皆同じはずで,すべての人の命は尊重されなければならない。しかし,一人一人の「生命」が実際同等に大切に考えられているかといえばかなり疑問がある。

 総理府の障害者対策推進本部が1987年7月に行なった「障害者に関する世論調査」の結果をみると,障害者との触れ合いを経験した人は46.6%で,半数近い人が体験していることは私には意外なうれしさであった。しかし,さらに「一緒に食事をしてくれますか」「一緒に入浴は……」という質問には,否定的な答えが多くなる。そして,「結婚相手として考えられますか」と聞くと,ほとんどの人は「NO」と答える1)。この結果は何を物語っているのであろうか。私はここに,障害者は別の人間,いや,それ以上に障害者は排除するものという思想を感じずにはいられない。この意識は出産に携わる助産婦においても変わらないのではないだろうか。

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はじめに

 私が,助産婦として臨床と助産婦学生の教育にたずさわってから30年の月日がたった。

 この間の産科領域における医学の進歩には,目をみはるものがある。そして多くの母子が恩恵にあずかってきた。しかし,最近になって医療の進歩というよりは,技術の進歩と呼ぶべき性質のものが多くなってきたと感ずるのである。たとえば胎児診断技術,さらに,体外受精技術の進歩,極小未熟児の延命介護などにおいてである。

産むことについて 森崎 和江
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産むことのふしぎさ

 秋のいい日和です。

 雲ひとつ見えない,まっさおな空がひろがっています。こんないい日に,家の中にいて机に向かわなきゃならないとは,なさけなやと思います。

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周産期の生命倫理;かかわる人々のかかわり方

 森岡 生命倫理のテーマには安楽死とか人体実験とかいろいろありますが,今日は周産期にまつわる倫理問題に的を絞って議論してみたいと思います。

 周産期の生命倫理に直接かかわる人を4つのグループに分けることができます。ひとつは両親。もうひとつは胎児や新生児。もうひとつは医師のグループ。4番目は看護者のグループ。私は周産期の生命倫理とは,これら4つのグループの人々がどのようにかかわってゆけばよいかという問題と考えます。

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アクティブ・バースのメッセージ

 皆さんはアクティブ・バースという言葉をすでに何回か見たり聞いたりしていらっしゃることでしょう。なかには,ラマーズだアクティブ・バースだと,流行を追って変な風潮だと感じていらっしゃる方もいるのではないでしょうか。

 私も最初は"アクティブ・バースなんてなんなのだろう"といぶかしく思いましたが,イギリスでは産婦を型にはめない出産様式であるアクティブ・バースが主流を占めつつあると聞いて,正確なことを知りたいと思いました。

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 サセックス州立病院の分娩部はタワーブロックと呼ばれる建物の13階にあります。最上階の14階には,未熟児室と入院児の家族が泊れるファミリー・ルーム,助産婦学校,総婦長室,総助産婦長室などがあります。12階と11階は褥室になっています。

 分娩室の見取り図を,思い出せる範囲内で書いてみました(次ページ)。ここでは年間約3000のお産があるそうです。

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 助産婦の仕事は思春期から老年期まで女性の一生の健康にかかわると,教科書にはある.しかし実際には,医療施設での周産期の仕事にほぼ限られているといえよう.

 昨年9月,神奈川県の戸塚駅近くにオープンした横浜女性フォーラムには,女性の心とからだについて考え,また市民の相談に応じる「健康サロン」というスペースがある.看護職が一般施設の活動に全面的に携わる例は多くない.高橋ひとみさんは,この健康サロンを担当する助産婦である.

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無罪でも有罪でもなく いまは

道ばたに咲く コスモスの花の季節でも なかったから あなたは

ニュースを読む

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小さなビッグニュース

 この2か月余り新聞・テレビ報道は連日,消費税・リクルートで明け暮れている。消費税の導入は私たちの生活にさまざまな影響をおよぼすものであり,看過できないニュースではあるが,連日の大量報道には,正直なところいささかうんざりだ。

 リクルートコスモス未公開株の譲渡問題で,国会答弁を二転三転させてきた宮沢蔵相が12月9日ついに辞任に追いこまれたのも,マスコミの力があったればこそと思う。しかし,一体どれだけの読者がこの膨大なニュースを読みこなせただろう。少ない紙数で切れ味の鋭い記事が望まれるところだ。私自身自戒せねばならないが。

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はじめに

 親となる準備は,実際には結婚し妊娠する過程でなされるものであると思われるが,母性の形成や育児に必要な知識や態度は,成長過程の環境や親から伝達されるところが大きいと考えられる。ところが現状は,家族や社会構造の変化に伴い,身近での体験学習が少なくなる一方,性に関する情報はちまたに満ちあふれている。このように社会的,身体的,精神的アンバランスの中で,女子高生は,自分の性をどのようにとらえ,母性として,どのような体験学習をしているか調査を行ない考察をした。

インターホン

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 横浜女性フォーラムでは,女性と男性がともに自立し,協力しながらいきいきと暮らせる社会をつくるために,さまざまな事業を展開しています。事業には8つの柱があり,その1つに心とからだ健康事業があります。この事業を行なうために,50人ほどが体を動かせるフィットネスルームと,その隣りに,本やビデオをゆっくり見られる机とイス,ベッドやケア用品も用意された15坪ほどの健康サロンがあります。わたしは助産婦として,その健康サロンを担当しています。心とからだ健康事業の目的は,男女平等.生命尊重の確立,女性のからだの自己管理能力の確立,心とからだの健康づくりです。

 私がこの仕事にかかわりはじめたのは昨年の3月からです。それまで社会教育の勉強をしながら,(社)日本家族計画協会オープンハウスクリニックの電話相談と診療介助をしていました。思春期・青年期の人へ,病院とは違う対応の仕方で,地域や家族も含めてかかわってきました。今まで看護婦,助産婦をして学んできた生命の尊さ,心とからだの関係について,医療施設ではない場で何ができるか考えていたところでしたので,横浜女性フォーラムのことを知り応募しました。

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はじめに

 今回,私たちは分娩後弛緩出血のため輸血をし,その後非A非B型劇症肝炎を起こした症例の急性期・亜急性期の看護を行なったので,ここに報告する。

開業助産婦の週間日記・22

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 野本寿美子さんは,1938年に産婆資格取得後,賛育会病院勤務などを経て,1947年から東京郊外の古刹深大寺に近い現在で開業。最近では地元の活動だけでなく,各地の講習会などを通じて後進の育成にも力を注ぎ,本日記のとおり多忙な毎日を送っておられる。ラマーズ法を主体にした自然なお産に徹し,1人の事故もないようにと心に誓い,寝食を忘れた援助ぶりで,妊産婦から絶大な信頼を得ている。

連載 話の聴ける助産婦になるために・10

カウンセリングによる心の理解

自己を養う 大須賀 克己
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そのときの状況を感じとる

 私はこれまで,カウンセリングの原理を中心に,心に関することを話してきました。助産婦のみなさんにもぜひカウンセリングの精神と技法を実際の仕事のなかで応用してくださることを願います。

 それには,まず相手をよりよく理解する能力を養い,健全に生きる日常の心を育てることです。それから後に,どのように表現したら相手に受けとってもらえるか,言うべきでない言葉は何かといった,さまざまな側面について学ぶべきです。しかし,それは人間の生きる過程でのことですから,私がここで述べるわずかな項目だけではなく,学ばなければならないことは無限にあります。

連載 続・ペリネータルパソコン入門臨床応用篇・10

電子カルテ 大橋 克洋
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 今回ご紹介する「電子カルテ」は,今までご紹介してきたものと同様,自分自身の道具として使いたいということで開発を始めたものです。

 はじめに,先月号でご紹介したことをちょっと復習してみる必要があります。これが「電子カルテ」開発の背景になっているからです。

JJM誌上講座・22 効果的な専門職教育のために

教育の方法(その3) 平野 朝久
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 前回は,様々な個人差観に基づいた個別指導の方法について,クロンバックによる分類に添いながら話を進めてきた。今回と次回は,その中でも個別指導の方法の有力な根拠および手がかりとなる3aと3bに関する研究について述べてみたい。

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 かつて長い間,産科と小児科のはざまにおかれていた新生児ケアは,最近の周産期医療の進歩によって,その考え方と医療のあり方が完全に変わってきました。最近では,①胎児診断の技術の進歩による,出生周辺における産科的介入・適応の拡大,②出生中・直後からの新生児ケアの徹底,③とくに超未熟児・極小未熟児に対する分娩室,NICUでのケア技術の高度化,④親子関係の重視による,出産直後からの親子の絆への配慮,⑤新生児・未熟児医療の地域化がなされるようになってきました。このために看護の内容や質も変化し,必要とされる専門的知識・技術の量も増大しています。

 新生児・未熟児のケアに携わっていると,忙しい毎日のなかで,ともすると病棟の日課に追い回され,気がついたときには,日課をこなすベテランにはなっていても,児を観察し,判断し,ケアするといったこととは,かけ離れた状況になってしまうことがあります。しかし,言葉で訴えられない新生児をケアしていくには,児がどういう状態にあるかを観察するなかでとらえ,どのようなことが予測され,どうケアしていくかを判断していくことが重要になります。それらはただ漫然と臨床経験を積み重ねても,なかなか身につくものではなく,つねに自ら学んでいかなければなりません。

Medical Scope

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 伝染性紅斑という病気を皆さんは知っていますか?この疾患は子供に多くみられ,風疹に似た発熱と発疹を示すもので,一般的には「りんご病」として知られています。この発疹性疾患の原因についてはつい最近までわからなかったのですが,1983年にヒトパルボウイルスというウイルスの感染によることが解明されました。しかし,今日でも,まだこのウイルスは分離培養はできていません。ただ,ヒトの血液からの抗体の証明ができるので,このウイルスに感染したことは診断ができます。

 もし妊婦が伝染性紅斑に罹患すると,このヒトパルボウイルスは胎児に何か悪影響を及ぼすのではないかとすぐ考えたくなるのですが,実はこの予測が当たってしまいました。1984年になって,伝染性紅斑に罹患した妊婦の胎児が,全身の著しい浮腫を示す胎児水腫Hydrops foetalisとなり,胎児死亡となることが報告されました。妊婦が妊娠12週から20週あたりに伝染性紅斑に罹患すると,ヒトパルボウイルスは母体の血中から絨毛膜をこえて胎児の血液に入り,赤血球のなかで増殖し,それを破壊するために胎児は著しい貧血となり,胎児水腫になることがわかりました。

基本情報

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助産婦雑誌
43巻1号 (1989年1月)
電子版ISSN:2188-6180 印刷版ISSN:0047-1836 医学書院

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