Medical Scope
伝染性紅斑と胎児水腫
島田 信宏
1
1北里大学病院産科
pp.83
発行日 1989年1月25日
Published Date 1989/1/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611207553
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伝染性紅斑という病気を皆さんは知っていますか?この疾患は子供に多くみられ,風疹に似た発熱と発疹を示すもので,一般的には「りんご病」として知られています。この発疹性疾患の原因についてはつい最近までわからなかったのですが,1983年にヒトパルボウイルスというウイルスの感染によることが解明されました。しかし,今日でも,まだこのウイルスは分離培養はできていません。ただ,ヒトの血液からの抗体の証明ができるので,このウイルスに感染したことは診断ができます。
もし妊婦が伝染性紅斑に罹患すると,このヒトパルボウイルスは胎児に何か悪影響を及ぼすのではないかとすぐ考えたくなるのですが,実はこの予測が当たってしまいました。1984年になって,伝染性紅斑に罹患した妊婦の胎児が,全身の著しい浮腫を示す胎児水腫Hydrops foetalisとなり,胎児死亡となることが報告されました。妊婦が妊娠12週から20週あたりに伝染性紅斑に罹患すると,ヒトパルボウイルスは母体の血中から絨毛膜をこえて胎児の血液に入り,赤血球のなかで増殖し,それを破壊するために胎児は著しい貧血となり,胎児水腫になることがわかりました。
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