助産婦雑誌 37巻3号 (1983年3月)

特集 ペッサリー指導30年—羽生たき氏のあゆみを追う

グラフ

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本号でご紹介する羽生たき氏のペッサリー実地指導を見学するため,12月半ばの土曜日,杉並区にある羽生助産院を訪問した。指導日には杉並助産婦会に所属する助産婦も,ペッサリー指導の技術を磨くため羽生助産院に集合してくる。この日もすでに4,5人の助産婦が準備万端整えて,指導を受けに来る人たちを待ち受けていた。羽生氏は一般の人を指導するとともに,実地指導員の技術向上の指導にもあたるわけである。また,若手の助産婦も,ペッサリーに取り組もうという意欲に燃える人々が,技術習得のために勉強をしにきていて,羽生氏は期待のまなざしを向けていた。

インタビュー

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 佐藤 先生は戦後間もない頃から長年ペッサリーの指導をなさっていらしたわけですけれども,最近は若い女性の間でペッサリーによる避妊法が人気を得始めているということを聞きます。今日はそこで,ペッサリー指導の現在の状況を中心に,今までの活動のプロセスなどをお伺いしたいと思います。

評伝 羽生たき 中重 喜代子
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はじめに

 羽生さんは,ペッサリーの指導について学生に話されるとき,まず,人と人との結びつき──つまり愛情が大切であることを話される。よい相談相手であること,信頼されること。二番目には,技術を十分に身につけるということについて,その技術を自分のものにしていこうという気がまえが大切なのだ,と言われる。淡々と話される一言一言が,貴重な日々の体験にうらづけられたものであるから,重みをもって迫ってくる。50数年間を,開業助産婦として生きてこられた羽生さんの中に流れているこの人間性と,仕事への情熱が,どのように生まれ,はぐくまれてきたのか,そしてどうあゆんで来られたのか,これまで折にふれて話していただいた事柄の中から探ってみたいと思う。

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大変思いあがったいい方を敢えて許していただくならば,私との出会いというものがなければ,おそらく,「ペッサリーの羽生さん」として外国にまで紹介されるようになった今日の羽生さんはなかったと思うし,それはまた,全く同じように私にもいえることなのであって,昭和28年も暮れようとしていたある日の羽生さんとの出会いがなければ,おそらく今日の私はなかったろうと思う。羽生たきという助産婦さんは,私にとって,終生忘れられない人なのである。

特別寄稿

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カトリック・ナースの一員としてオーストラリアを訪問

 1982年3月28日から4月2日までオーストラリアのメルボルンで第12回カトリック看護国際会議が開催され,私もカトリック・ナースの一員として出席の機会を得ることができた。そして会議の一環として4月5日にはシドニーのウイメンズホスピタルの見学もできたので,その概要を述べたいと思う。

 オーストラリアは天災はほとんどなく,治安も世界一といってよいほど安全が保障され,日本の20倍もある広大な土地に人口は約1,500万人という少なさだが,天然資源には恵まれた国である。しかし,一日のうちに四季を経験することができるといわれるほど,気候の変化の激しい地でもあり,我々もその変化に対応するのが大変であった。

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 過去10数年間に進歩してきた新生児医療は,新生児生理学の進歩に負うところが多い.また最近の周産期医学も,胎児・新生児生理学の多くの知見によって,医療の内容が拡大され変貌してきたことはいうまでもない.特に母児相関(feto-maternal interaction)という立場から,胎児の胎外生活がいつ頃から可能になるか,また子宮内環境でも各臓器が総合的に機能し,個体として自律性(autonomy)を持つようになるのはいつ頃か,という問題が討論されるようになってきた.

 現在,周産期医療のなかでも,特に呼吸・循環器系の進歩した管理方式によって,生残率が著しく向上したことはいうまでもない.したがって,今回は周産期生理学のうちでも,特に分娩前後の時期に焦点をあて,呼吸・循環系の適応に関する問題をトピックス的に取りあげようと思う.なおその他の点については,各論を述べる際に,随所に生理学的背景を取りあげ,理解が深められるよう努力するつもりである.

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はじめに

 出生率は年々低下し,分娩は施設内分娩が99%という現象は当分続く傾向にある。こうした中で,助産婦が主体性をもって積極的に追究すべき業務の1つとして,家族計画指導がある。

 私たちは,昭和53年6月より長崎大学医学部附属病院(以下「本院」という)において家族計画指導教室を開催している。

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はじめに

 周産期医学の発展とともに,分娩管理はめざましく進歩してきたといえるが,同時に産婦の立場を十分考慮した「自然分娩」に対する関心が高まっていることは,興味のふかいところである。しかし,一口に自然分娩を指向するといっても,そのなかには種々の考え方が入り混っていることも明らかである。まったく人工の手を加えないというものから,産婦の希望を少しでも取り入れようという考え方まで,幅広い「自然分娩」に対する取りくみ方がある。

 当院では,分娩時に視聴覚機器を取り入れた,「テレビ分娩」と名づける分娩方式を試みている。それは,出産時の状況をすべてカメラでとらえ,その画像を見ながら出産するというもので,視聴覚的方法を通じ産婦自身が分娩時の状態と経過を知ることにより,従来の分娩様式より更に助産婦との対話を深め,産婦の不安と緊張をやわらげ,少しでも人間的な雰囲気のなかで,分娩を遂行することを目的としている。

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はじめに

 医療の進歩は,母・児の救命という点では大きな成果があげられているが,しかし,多くの新たな問題点も生じつつある。たとえば,なんらかの障害を持って生まれた子どもは,治療や管理のため,早期より長期間の母子分離をしなければならないことがしばしばある。関係者として,母子関係確立への援助には十分な配慮が必要である。

 今回,重症の先天性心奇形児で,出生直後より各種の治療を重ねたにもかかわらず,生後3か月後に児の死亡した事例を受け持ち,出生から死にいたるまでの母と子のつながりについて観察する機会を得たので,その概要を報告する。

第19回ICM大会講演翻訳シリーズ・8

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 スウェーデンにおける両親教育は,妊婦や小児の健康管理の分野では,新しいことではありません。グループ活動の形での教育は,たとえば,出産準備としての母親教室やラマーズ法の訓練のように,妊婦クリニックにおいて,長く行なわれてきました。そしてこれらの集団指導の教育は,助産婦によって指導されていました。また,小児健康管理クリニックでは,看護婦たちが両親と子どもをまじえて,グループ活動を組織していました。

 家族の立場とその幸福は,今までの社会と同様に現在も,社会が人々に何を提供できるかにかかっています。今日では,生活水準が向上し,労働時間が短縮され,子どもの保育施設が拡張され,生活しやすい状況になっています。これらはすべて家族の幸福が続く限りは,肯定的にとらえることができますが,しかし,私たちはこれらの文明化に伴うマイナスの局面を無視してはなりません。人々は,家族や友人のいる住み慣れた土地から移動しなければなりませんでした。以前は,3,4世代が同居していましたが,今日では,2世代が家族を構成する核家族の時代を迎えました。

海外文献紹介

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 夢を抱いて新しく母親になった者は,現実を受け入れ,悲嘆作業を完了すれば,自分の役割に適応していける。看護婦はこれらの課題を果たすためのカギである。

調査研究実践講座・13

人の特性[2] 林 謙治
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前回に引き続き,人の特性が調査研究のなかでどのような側面を持つかについて述べてみたい。

連載小説 田中志ん物語・終りなき旅・9

第3章 産声讃歌 島 一春
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結婚の条件

 「おまえが独り身で,いくら成功したっておれはちっとも嬉しくはねえ」と長五郎は言った。

 「人間の寿命には限りがあるんだ。東京でおまえがいくら大金を稼いできたって,その時は,おれはこの世にいないかも知れないんだよ。石田のところの婆さんをみろ」

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 人類の誕生以来現在に至るまで,人の数だけの親子関係があったわけだが,にもかかわらず,その積み重ねもしくは試行錯誤によって,昔の人たちよりも子育てが上手になってきたとか,子にとってより望ましい親のあり方がわかってきたとかいうことは,今のところどうひいき目にみてもなさそうである。それどころか,ますます多くの情報が氾濫し,混迷の度を増しているという印象もないわけではない。親—子の問題,これはわれわれ人類にとって累積性を欠く永遠の課題なのであろうか。

 昨今は特に,家庭内暴力などの親子関係の歪みが社会問題化しているということもあって,親子の絆の成り立ちの解明がひときわ今日的課題となっている。そういった背景のもとに,日本生命財団シンポジウム"親と子の絆──6つの学際的アプローチで探る"が,昨年11月19・20日の2日間にわたり大阪で開催された。そこでは内外から参加した20名余りの演者が,生物学・人類学・医学・心理学・教育学といった諸分野の立場から"親子"の問題を多面的に論究した。こうした学際的シンポジウムにありがちなように,内容の豊富さに比べて与えられた時間が少なく,問題点の羅列にとどまってしまった感がある。というわけで,その多彩な報告のすべてを網羅的に紹介するよりは,その中から特定の領域をピックアップし,感想を述べてみようと思う。

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実を結んだ"性"への生物学的アプローチ

1 助産婦雑誌に連載された「サルとヒトの比較産科学」が,このたび『サルとヒトのセクソロジー』という性科学のいわゆる教養本として,メディサイエンス社より発行された。表紙には,母ゴリラと,美人で大地のごとく豊かな肉体をもった母親とが,互いに子供を抱き,何かいいたげに向かいあっている姿がユーモラスに描かれている。

 著者自身も述べているように,「サルとヒトの比較産科学」は,最初はサルとヒトのお産だけを語るつもりだったという。しかしお産を語るには,性や妊娠を抜きにしては語れず,お産を語れば,その哺育までもと,テーマは次第に広がっていき,結局はそれがわれわれ読者の願うところとなって,今日,『サルとヒトのセクソロジー』に変身し,登場したわけである。

Medical Scope

妊婦とお酒 島田 信宏
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 妊娠しているひとに「お酒をのんでしまったのですけれど,おなかの赤ちやんに影響ないでしょうか?」とたずねられたことはありませんか。最近ではマスコミを通じて,お酒(アルコールという意味)は男性だけのものではなく,みんなのためにあるのだというような宣伝がよくみられます。そして,女性の方でも大いにメートルをあげておられる風景がみられるようになりました。家庭でもどこでも,妊婦がアルコールを口にするチャンスはいくらでもあることでしよう。そんなときに,ふと胎児への影響はどうなんだろう……と考えるのは誰しもでしょう。それに対する答えは何といったらよいでしょうか。助産婦である諸君は母性保健指導の面からも,しっかりとした考えを根拠に持って,妊婦を指導する立場からもう一回考えてみて下さい。

 アルコールと胎児の話題が論じられるようになったのは胎児性アルコール症候群(FAS)という疾患が明るみにでてからです。母親が妊娠中にお酒をのみすぎ。アルコール中毒のようになっていると,胎児もアルコールづけになり,神経系の発達をおくらせ,出生後も著しく全ての発達,ことに精神神経系の発育が遅れ,心身障害児となってしまうことがあります。これを胎児性アルコール症候群というのです。

基本情報

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助産婦雑誌
37巻3号 (1983年3月)
電子版ISSN:2188-6180 印刷版ISSN:0047-1836 医学書院

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