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初期親子関係について考える—日生財団シンポジウム"親と子の絆"に参加して
根ヶ山 光一
1
1大阪大学人間科学部
pp.245-247
発行日 1983年3月25日
Published Date 1983/3/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611206202
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人類の誕生以来現在に至るまで,人の数だけの親子関係があったわけだが,にもかかわらず,その積み重ねもしくは試行錯誤によって,昔の人たちよりも子育てが上手になってきたとか,子にとってより望ましい親のあり方がわかってきたとかいうことは,今のところどうひいき目にみてもなさそうである。それどころか,ますます多くの情報が氾濫し,混迷の度を増しているという印象もないわけではない。親—子の問題,これはわれわれ人類にとって累積性を欠く永遠の課題なのであろうか。
昨今は特に,家庭内暴力などの親子関係の歪みが社会問題化しているということもあって,親子の絆の成り立ちの解明がひときわ今日的課題となっている。そういった背景のもとに,日本生命財団シンポジウム"親と子の絆──6つの学際的アプローチで探る"が,昨年11月19・20日の2日間にわたり大阪で開催された。そこでは内外から参加した20名余りの演者が,生物学・人類学・医学・心理学・教育学といった諸分野の立場から"親子"の問題を多面的に論究した。こうした学際的シンポジウムにありがちなように,内容の豊富さに比べて与えられた時間が少なく,問題点の羅列にとどまってしまった感がある。というわけで,その多彩な報告のすべてを網羅的に紹介するよりは,その中から特定の領域をピックアップし,感想を述べてみようと思う。
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