手術 72巻6号 (2018年5月)

特集 小児外科における消化器内視鏡外科手術

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近年の内視鏡外科手術の発展は目覚ましく,映像システムや細径器具の発展に伴い,小児外科領域においてもその適応がますます拡大されている。鼠径ヘルニア,横隔膜ヘルニア,虫垂炎,胃食道逆流症,肥厚性幽門狭窄,ヒルシュスプルング病,高位鎖肛といった多くの代表的小児外科疾患に内視鏡外科手術が導入されている。さらに2016年度の診療報酬改定によって難度の高い胸腔鏡下先天性食道閉鎖症根治手術,腹腔鏡下総胆管拡張症手術が新たに保険収載された。小児では成長・発達を考慮した術式が必要で,従来は大きな切開で開胸・開腹手術が行われていた疾患に対し,内視鏡外科手術は,小さなポート創のみとなり,低侵襲で整容面に優れるだけでなく,骨格の変形がないなど機能面でもメリットが大きい。一方,小児外科で扱う患者は,体重2~3 kgの新生児から体格的には成人と同じ年長児あるいは高度の側彎などがある重症心身障害児までを対象としており,体型に合わせたさまざまな工夫が必要である。

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先天性食道閉鎖症はおよそ3,000出生に1人の割合で発生する先天奇形の1つであり,瘻孔の有無,位置により5つの型に分類される(図1)。また,VATER症候群〔椎体異常:vertebral anomaly,直腸肛門奇形:anorectal malformation,気管食道瘻:trachoesophageal fistula(TEF),橈骨奇形および腎奇形:radial and renal anomaly〕やCHARGE症候群(虹彩欠損:coloboma,心疾患:heart defects,後鼻腔閉鎖:atresia of choanae,成長発達障害:retarded of growth and development,泌尿生殖器奇形:genital abnormalities,耳介変形・難聴:ear anomalies〕に代表されるさまざまな合併奇形を併発することが知られている。近年の画像診断技術の進歩に伴い胎児診断症例も次第に行われるようになっている。

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小児,とくに新生児期の内視鏡外科手術は,ここ20年の間に広がりをみせており,さまざまな疾患に適応されてきた。先天性横隔膜ヘルニア(congenital diaphragmatic hernia;CDH)に対しての胸腔鏡下横隔膜ヘルニア根治術は,1995年にSilenら1)によってはじめて報告されているが,それは年長児の症例であった。

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胃食道逆流症(gastroesophageal reflux disease;GERD)に対する腹腔鏡下噴門形成術は,主に成人例であるが,本誌にも多く取り上げられており1,2),成人小児を問わず広く普及した術式と考える。小児外科領域においては標準化されている手術であり,最近では開腹術より明らかに腹腔鏡手術が普遍的な術式となっている3)。

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肥厚性幽門狭窄症に対する手術術式は,1912年にRamstedtにより報告された粘膜外幽門筋切開術が現在でもgold standardである。そのアプローチ方法としては,幽門直上で開腹する右上腹部横切開法に加え,これまで臍上部弧状切開法,臍sliding window法,腹腔鏡手術が報告されている。そのなかでも腹腔鏡手術,すなわち腹腔鏡下幽門筋切開術(以下,本術式)は,術後の嘔吐が少ないことや創部の整容に優れることなどが長所とされている。しかし,本術式では幽門部の固定がやや難しいことや臍上部弧状切開法でも良好な術後整容性が得られていることなどから,現状では第一選択術式としていない施設が多いと思われる。

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先天性胆道拡張症に対しては右肋骨弓下切開または上腹部横切開による従来からの開腹手術が広く行われているが,腹腔鏡手術も施行されるようになり1-3),平成28年度の保険診療報酬改定において腹腔鏡下胆道拡張症手術が保険収載されたため今後はさらに普及すると思われる。本症は男女比が1:3と若年女性に多いことから整容性に優れた腹腔鏡手術の良い適応と考えられる4,5)。

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胆道閉鎖症に対する肝門部空腸吻合術は,1959年,世界に先駆けて本誌「手術」に葛西によって初めて報告された1)。その後,1968年にJournal of Pediatric Surgeryに葛西によって世界に発信され,この手術が行われるまでは,治療の方法がなくほぼ100%が亡くなっていた胆道閉鎖症の子どものうち約半数が,この手術のみによって助かるようになり,現在では世界共通の標準術式となっている2)。

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1991年の成人領域での報告に引き続き,Tulmanら1)が1993年に小児外科領域で初めての腹腔鏡下脾臓摘出術の報告をして以降,技術と手術器具の進歩と多くの研究の集積がなされている。そして,現在では腹腔鏡下脾臓摘出術は小児領域でも標準術式と考えられる。日本内視鏡外科学会が実施しているアンケート調査でも小児外科領域で1990~2015年までに618例の腹腔鏡下脾臓摘出術の症例が登録されている。

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近年,小児外科領域においても内視鏡外科手術の普及は目覚ましく,とくに新生児外科疾患の手術にも幅広く適応されるようになってきている。その要因としては鉗子の細径化,カメラやモニターなどの光学機器の精細化,外科医の内視鏡外科手術手技の技術向上などがあげられる。

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小児では,開腹虫垂切除術においても全身麻酔を必要とし,成人領域に比較して鑑別疾患も多いため,腹腔鏡下虫垂切除術が多くの施設で標準手術となっている。近年では,急性虫垂炎に対する手術適応そのものが,小児領域のみならず,成人領域においても大きく変化してきているが,小児外科領域では多孔式腹腔鏡下虫垂切除術,単孔式腹腔鏡下虫垂切除術,腹壁吊り上げ単孔式腹腔鏡下虫垂切除術が行われている。

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小児腸重積症は乳幼児期の代表的な腹部救急疾患であり,治療が遅れると血流障害から腸管壊死をきたすため,迅速な診断と治療を必要とする。80~90%は非観血的整復法で整復できるが,整復が困難な症例や先進部に器質的疾患の合併がある症例は観血的治療,すなわち手術の適応となる。従来,本症に対する観血的整復術は開腹によるHutchinson手技が行われてきたが,近年では本症に対しても腹腔鏡下整復術が積極的に行われるようになった。

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ヒルシュスプルング病(以下,H病)の手術術式はSoave法,Swenson法,Duhamel法の3法が知られている。Georgesonら1)により,1995年に腹腔鏡下pull-through(LAEPT)の報告が行われて以来,残りの2術式についても腹腔鏡下の手術例が報告されるようになった。1998年にはTorre-Mondragonら2)により腹腔鏡を用いないtransanal endorectal pull-through(TEPT)が開発され,今日,多くの施設でH病の根治術式として採用されている。

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腹腔鏡下幽門側胃切除(laparoscopic distal gastrectomy;LDG)は現在では中下部早期胃癌に対する標準治療の1つと位置付けられており,広く普及してきている1-3)。幽門下領域リンパ節(No.6)郭清はLDGにおける難所の1つであるが,それは複雑な層構造や多彩な血管分岐形態,内臓脂肪や生理的癒着などによる解剖学的な個人差が大きく影響しているためと考えられる。

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胆管結石の治療には,内視鏡治療,外科治療(開腹手術,腹腔鏡手術),経皮経肝治療があり施設によりさまざまである。近年は内視鏡治療の技術向上により内視鏡的逆行性胆管膵管造影(endoscopic retrograde cholangiopancreatography;ERCP)を行い,内視鏡的乳頭切開術(endoscopic sphincterotomy;EST)や内視鏡的乳頭バルーン拡張術(endoscopic papillary balloon dilatation;EPBD)による治療が標準的に行われている1)。しかし,結石の大きさや数,または過去の胃手術などで内視鏡治療による採石が困難な症例に対しては,外科治療の胆管切石術が施行される。なかでも原発性の胆管結石は高齢者に多く,乳頭機能不全による胆管拡張・巨大結石を有し,採石術を施行しても再発する可能性が高く難治性である2,3)。当科では2007年より高齢者の原発性胆管結石を疑うような難治性胆管結石症に対し,再発予防を目的に胆管十二指腸吻合術を付加してきた。今回,われわれは当科で施行した胆管十二指腸吻合術についてretrospectiveに検証した。

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先天性食道狭窄は25,000人に1人発症するまれな疾患である1)。原因としては気管原基性狭窄,筋線維性狭窄,膜様狭窄の3つが知られている2)。治療としてはバルーンカテーテルによる食道拡張術や狭窄部の切除が行われ,それぞれ個々の病態にあわせた適応は定まっていない。手術方法は筋層切除や狭窄部部分切除・横縫合,狭窄部切除・端々吻合などがある。近年では腹腔鏡や胸腔鏡を用いた術式も報告されている3,4)。

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大型3型や4型胃癌,あるいは高度なリンパ節転移を有する進行胃癌では,根治切除が行えたとしても予後がきわめて不良であり,このような症例では予後改善のために術前化学療法が有効であると報告されている1)。一方,高度進行胃癌では腫瘍による幽門狭窄のために経口摂取が不十分となり,術前化学療法を施行することが困難な症例も存在する。今回われわれは,幽門狭窄を伴う高度進行胃癌に対して,腹腔鏡下胃空腸バイパス手術と化学療法後に根治切除を施行し,長期生存が得られた2例を経験したので報告する。

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手術
72巻6号 (2018年5月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:0037-4423 金原出版

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