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縦隔鏡を用いて食道切除を最初に行った報告は,文献上1993 年のBumm らによるものと思われる1)。Bumm らはendodissector を頸部創から挿入し,working channel を通じてはさみ,電気メスなどを使用し,またendodissctor を360°回転させることで,食道の剥離が可能としている。また,その操作は下縦隔までおよび,気管分岐部ならびに心嚢までみえることが論文中の図で示されている。Bumm らの主目的は,それまでblind で行われていたいわゆる食道抜去術blunt dissection,transhiatal esophagectomy(THE)を安全に行うことであり,リンパ節郭清には触れていない。食道抜去術を最初に報告したのは,1933 年のTurner であり2), その際の道具は「指(finger)」であった。頸部創,腹部創から手を縦隔に入れて指で食道周囲の線維組織を引っ張り出してきては切るというやや乱暴なものであった(実際,筆者もこれまではそのように行っていた)。その後,1975 年にAkiyama らは指以外のring dissector やstripper を用いた食道抜去術を報告している3)。それでもblind であったことは間違いなく,その意味で,Bumm らのdirect vision下で食道を剥離するという試みの意義は大きかったものと思われる。ただし,食道抜去術,THEは縦隔内リンパ節郭清が不十分であり,適応は下部食道腺癌や開胸困難症例に限られていた。2004年にTangoku らは独自に開発したmediastinoscopeを用いたTHE を報告している4)。適応はやはり同様に限られるが,上部食道周囲リンパ節郭清が可能であり,左反回神経がきれいに露出されている写真が示されている。食道抜去術,THE においてもデバイスの進化が重要であることを示す史実と考えている。
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