小児科 61巻6号 (2020年5月)

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小児ぶどう膜炎はぶどう膜炎全体の3~8%と少ない.女児は男児の2倍と多く,前部ぶどう膜炎,両眼性の症例が多い.眼科初診時年齢は平均8歳,中央値11歳前後で年齢が上がるにつれ増える傾向にある.原因不明例が50~68%と多く,原因疾患としてchronic iridocyclitis in young girls,若年性特発性関節炎に伴うぶどう膜炎,腎尿細管間質性腎炎に伴うぶどう膜炎が多い.矯正視力1.0以上の予後良好例が50~85%と多いが,0.1以下の予後不良例もある.治療としてステロイド局所治療,ステロイド・免疫抑制薬・生物学的製剤の全身治療が行われている.

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ぶどう膜炎を伴う尿細管間質性腎炎症候群は,原因不明の間質性腎炎にぶどう膜炎を伴う症候群である.思春期の男女に好発するが,成人や老人にも発症する.何らかの宿主側の要因に環境因子が作用することによって異常な免疫応答が惹起され,疾患が進行すると考えられている.症状は,発熱や倦怠感,多尿,羞明や視力障害など非特異的である.疾患特異的なマーカーはなく,診断は除外診断による.とくにサルコイドーシスとの鑑別が重要であるが,しばしばその鑑別は困難である.治療は従来,ぶどう膜炎に対する治療を中心に組み立てられてきたが,慢性腎不全に至る症例もあり,ステロイドの適応など治療方針は慎重に判断する必要がある.

3.若年性特発性関節炎 安村 純子
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若年性特発性関節炎関連ぶどう膜炎(JIA-U)はJIAの重要な関節外症状であり,治療の遅れまたは不十分な治療により失明の危険性もある.多くが無症候性・潜行性であり,関節炎の活動性とは並行しないため,定期的な眼科診察が重要となる.

4.サルコイドーシス 水内 一臣
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小児ぶどう膜炎は,成人とは異なった特徴や原因疾患を有する.自覚症状が少ないため,初期には気づかれないことも多く,慢性例が多い.サルコイドーシスの眼病変は肉芽腫性ぶどう膜炎としてみられ,前眼部病変には厳重な瞳孔管理をしながら,主にステロイド点眼薬で治療する.点眼への反応が悪い場合や,視機能障害を伴うような眼底病変にはステロイド薬内服も必要となるが,その副作用に注意しながら使用する.併発白内障が進行した場合には手術が必要となり,続発緑内障も点眼で眼圧コントロールが不良の場合には手術が必要となる.また,4歳以下で発症し,ぶどう膜炎,皮膚炎,関節炎を3主徴とする全身性肉芽腫性炎症性疾患はサルコイドーシスと臨床的に酷似し,Blau症候群とよばれる.

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若年女子の慢性虹彩毛様体炎は,少関節型若年性特発性関節炎に合併して起こる難治の両眼性ぶどう膜炎である.眼病変の発症年齢がはっきりせず治療開始が遅れるため,視力予後は不良で25~40%は最終視力が0.1以下となる.とくに角膜帯状変性,併発白内障,続発緑内障は重篤な眼合併症である.成人とは異なり,眼合併症の手術治療成績は不良のため,散瞳薬やステロイド薬による局所点眼治療に加えて,ステロイド薬,免疫抑制薬,生物学的製剤などの全身治療を長期にわたり継続する必要がある.女児の慢性虹彩毛様体炎では関節炎が出現しない症例もある.したがって,本病の診療にあたっては小児科医と眼科医の十分な連携,相談が必要である.

綜説

子ども虐待と脳科学 友田 明美
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近年,児童虐待と “傷つく脳” との関連が脳画像研究からわかってきた.例えば,暴言虐待による “聴覚野の肥大”,性的虐待や両親のドメスティックバイオレンス(DV)目撃による “視覚野の萎縮”,厳格な体罰による “前頭前野の萎縮” などである.虐待を受けて育ち,養育者との間に愛着がうまく形成できなかった愛着障害の子どもは,報酬の感受性にかかわる脳の “線条体” の働きが弱いことも突き止められた.こうした脳の傷は “後遺症” となり,将来にわたって子どもに影響を与える.しかし,子どもの脳は発達途上であり,可塑性という柔らかさをもっている.そのためには,専門家によるトラウマ治療や愛着の再形成を,慎重に時間をかけて行っていく必要がある.

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家族性高コレステロール血症(FH)はLDL処理系に障害を有する遺伝性疾患で,著明な高LDLコレステロール(LDL-C)血症を呈するため動脈硬化の進展が早い.早期発見と小児期から適切な対応が求められる疾患である.2017年,“小児FH診療ガイド” が策定され,とくにFHヘテロ接合体の薬物療法について明記された.すなわち,第1には食事を含めた生活習慣の改善であるが,LDL-Cの高値(180mg/dL以上)が持続する場合,10歳を目安にスタチンの使用を考慮するというものである.管理目標(LDL-C 140mg/dL未満)も定められた.この診療ガイドにより,小児科医のFHに対する関心度の高まりとともに,診断率も向上し,また,診療もしやすくなったものと思われる.

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「授乳・離乳の支援ガイド」が12年ぶりに改定された.妊娠から離乳完了までに必要な情報を適切に提供し,妊産婦や子どもへ支援することを目的としたものだが,乳幼児期に発症する頻度の高いアレルギー疾患についても,近年のエビデンス構築に伴い関連する記載が改定されている.本稿では,妊娠・授乳中の母親の食物制限や母乳栄養の話題,離乳食の開始時期や食事内容によるアレルギー疾患発症への影響について,「授乳・離乳の支援ガイド」改定の過程で掲げられたクエスチョンを中心に概説し,アレルギーの発症予防の観点から離乳食の進め方について検討する.

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「幼児肥満ガイド」は5歳以下の幼児に適用する.肥満の発生機序として,developmental origins of health and diseaseの概念が重要である.将来の肥満発生はアディポシティーリバウンドの時期によって予測可能で,ARが早いほど将来肥満が生じやすい.幼児期の体格評価には肥満度またはカウプ指数を用い,経時的な評価には成長曲線を用いる.肥満幼児にかかわる際は二次性肥満の鑑別が必要である.

幼児期から肥満に伴う健康障害が生じることはまれであるが,高率に学童期以降の肥満に移行するので予防が大切である.幼児期からの肥満予防対策として,適切な食と身体活動の確保に加え,十分な睡眠時間の確保や思慮深いIoTとのかかわり方を身につけることがポイントになる.

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静岡県小児科医会会員に対し,保冷庫管理を中心とした日常のワクチン管理についてアンケート調査を行った.クリニック開設者63名(46%)と病院勤務医23名(64%)から回答を得た.調査中に大規模停電が生じたため,急遽その被害状況と対策についても追加調査を行った.保冷庫内は,扉の開閉なしでも停電3時間後に10°C近い環境となるため,早期の対応が求められる.停電被害報告をいただいた15施設中2施設でワクチン破棄が確認された.本稿ではアンケートと実証実験の結果をもとに,停電時の保冷管理と日常の備えについて検討した.

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わが国で初めての無過失補償制度となる産科医療補償制度が2009年1月に創設され,これまでに約2,800件が補償対象となった.当院では11件で本制度の申請にかかわり,うち8件が補償対象となった.産科,小児科を有する地域の総合病院では,両科で本制度に関与する機会がある.これまでの補償対象者数が予測よりも少ないことから,脳性麻痺児とその保護者や周産期医療機関に対して,本制度のさらなる周知が必要と考えられる.

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毛髪胃石は呑み込んだ毛髪が胃内で絡まって塊となり胃内容物の通過障害をきたす疾患である.抜毛症を合併することが多く,抜いた毛髪をそのまま呑み込んで胃石が形成される.20歳未満の女性に多くみられ治療には精神科的介入も必要とされている1).今回3歳女児例で突然の嘔吐で発症し胃腸炎を疑って輸液療法を行うも急速に代謝性アルカローシスが進行した症例を経験したので報告する.

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腸管気腫症(pneumatosis cystoides intestinalis:PCI)は消化管の粘膜下や漿膜下に含気性小嚢胞が貯留する比較的まれな疾患である.無治療で自然軽快するものから腹腔内遊離ガスを呈し急性腹症の診断で緊急手術を要するものまで経過はさまざまである.今回われわれは,IgA血管炎の治療中に発症し保存的治療により軽快したPCIの1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

[連載] 最近の外国業績より

血液 日本医科大学小児科学教室
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背 景  小児急性リンパ性白血病(ALL)は国立がん研究所(NCI)分類,遺伝学的特徴,治療反応性[細胞形態学や微小残存病変(MRD)]によってリスク分類される.高リスク(HR-ALL)群の長期の無病生存率(EFS)は65~80%と報告されている.再寛解導入療法を2回繰り返すことで治療成績が改善したことから,AIEOP-BFM(Associazione Italiana di Ematologia e Oncologia Pediatrica:Berlin-Frankfurt-Munster)ALL 2000の臨床試験ではHR群の早期強化療法後の治療として以下の比較試験を行った.

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小児科
61巻6号 (2020年5月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:0037-4121 金原出版

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