綜説
子ども虐待と脳科学
友田 明美
1
1福井大学子どものこころの発達研究センター
キーワード:
児童虐待
,
マルトリートメント(不適切な養育)
,
トラウマ(こころの傷)
,
愛着(アタッチメント)障害
,
脳科学
Keyword:
児童虐待
,
マルトリートメント(不適切な養育)
,
トラウマ(こころの傷)
,
愛着(アタッチメント)障害
,
脳科学
pp.871-877
発行日 2020年5月1日
Published Date 2020/5/1
DOI https://doi.org/10.18888/sh.0000001348
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近年,児童虐待と “傷つく脳” との関連が脳画像研究からわかってきた.例えば,暴言虐待による “聴覚野の肥大”,性的虐待や両親のドメスティックバイオレンス(DV)目撃による “視覚野の萎縮”,厳格な体罰による “前頭前野の萎縮” などである.虐待を受けて育ち,養育者との間に愛着がうまく形成できなかった愛着障害の子どもは,報酬の感受性にかかわる脳の “線条体” の働きが弱いことも突き止められた.こうした脳の傷は “後遺症” となり,将来にわたって子どもに影響を与える.しかし,子どもの脳は発達途上であり,可塑性という柔らかさをもっている.そのためには,専門家によるトラウマ治療や愛着の再形成を,慎重に時間をかけて行っていく必要がある.
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