medicina 55巻1号 (2018年1月)

特集 気管支喘息・COPD診療に強くなる

青島 正大
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 現在,慢性閉塞性肺疾患(COPD)は主に喫煙と関連する生活習慣病の1つと位置づけられており,日本人の死因の10位,男性の死因の7位を占めているが,実際に診断され適切な治療を受けているのは一部であり,多くのCOPD患者は適切な診療を受けていないと想定されている.一方で気管支喘息による死亡(いわゆる喘息死)は吸入ステロイド(ICS)の普及により急速な減少を遂げたが,喘息死ゼロを目指すキャンペーンにもかかわらず,いまだゼロにはなっていない.実臨床では気管支喘息か,COPDか判断に迷うケースも少なからず存在し,日々の診療で悩むことも少なくない.

 COPDも気管支喘息も,ともに最もcommonな呼吸器疾患であり,治療は慢性期のコントロールと急性増悪時の治療とを分けて考えるというコンセプトは共通しているが,治療薬物の主体は異なる.しかしながら重症例のコントロールには共通して吸入ステロイド(ICS),吸入長時間作用性β2刺激薬(LABA),吸入長時間作用性抗コリン薬(LAMA)の3剤によるいわゆるトリプルセラピーが推奨されてきた.ところが逆にCOPDに対するICSの使用は肺炎のリスクを高めるということも知られており,増悪歴を有するCOPDにはICSを併用すべきであるか否か矛盾に満ちた部分も多く,専門医でも迷う機会が多い.本文中でも述べられるが,近年の大規模ランダム化比較試験によりCOPD診療ガイドラインではICSの位置づけが大きく変わった.COPD,気管支喘息ともにガイドラインが定期的にアップデートされていくため,これらの改訂にcatch upしていくことは必ずしも容易ではない.さらに両者の境界とも言える喘息合併COPD(asthma COPD overlap:ACOに呼称が統一される見込み)の存在が治療をさらに混沌とさせているのが現在の診療の実情であろう.

特集の理解を深めるための28題

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本特集では,気管支喘息,COPDという呼吸器疾患のなかで最もcommonな2疾患を取り上げます.これらの疾患では,たびたび疾患概念やガイドラインの変遷がありました.今回の座談会では,日常診療の現場で実地医家がどのようにこれらの変化に対応し,診療を組み立てていくのかについて,大学病院および市中のクリニックに勤務されている先生にそれぞれの立場でお話しいただきます.(青島)

最近の気管支喘息・COPDの考え方の変化

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Point

◎COPDの診断には,1秒率<70%に加えてphenotype診断が重要である.

◎気管支喘息の診断は,治療サイクル(評価)のなかに組み込まれている.

◎COPDの診断にあたり,典型的COPDはむしろ少ないことを認識する必要がある.

◎気管支喘息は,喘息症状のtotal controlを目指し,治療の観点から行う.

◎ACOSの診断も治療の観点から行うべきである.

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Point

◎フェノタイプは,遺伝的素因と環境要因によって形成された臨床像に基づき分類された疾患のサブタイプを意味する.

◎気管支喘息とCOPDの臨床像は多彩で,フェノタイプ分類を行うことによって個別化医療への発展が期待される.

◎スペインのCOPDガイドライン(GesEPOC)では,フェノタイプ分類に基づく薬物療法の選択を推奨している.

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Point

◎FeNOは好酸球性気道炎症を反映するが,低値でも喘息を否定できない.

◎FeNOは,喘息でのICS中止,不安定期の増量の指標として有用な可能性がある.

◎末梢血好酸球数が多いほど喘息に対する抗IL-5抗体の有効性が高い.

◎喀痰好酸球は喘息,COPDともにICS反応性と相関する.

◎COPDにおけるFeNOや末梢血好酸球とICS反応性の関連は十分確立していない.

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Point

◎気管支喘息は単一の疾患ではなく,複数の病態から成る疾患群としての側面をもつ.

◎近年,気管支喘息の病態を分類する試みとして,病態生物学的な機序に注目したエンドタイプという分類が注目されている.

◎エンドタイプに分類することによって,今後,喘息の個別化医療がさらに進んでいくことが期待される.

気管支喘息・COPDの初期診断はこうすべき

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Point

◎スパイロメトリーはCOPDの診断には必須の検査であり,気管支拡張薬吸入後の1秒率が70%未満であれば,気流閉塞ありと判断する.

◎慢性期の進行したCOPDやCOPD増悪では,治療方針決定のために,高炭酸ガス血症の有無を確認するため動脈血ガスを実施することが望ましい.

◎喀痰好酸球数,末梢血好酸球は,吸入ステロイドの有効性や増悪リスクの予測因子になりうる可能性が示唆されているが,今後のさらなる検討が必要である.

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Point

◎気管支喘息の診断には,特徴的症状を反復している病歴,呼吸機能検査,他疾患の除外が重要である.

◎COPDや心不全との鑑別に注意し,気管支喘息の原因,アスピリン喘息,気道感染の合併に留意して問診を行う.

◎初診時には,SpO2測定,血液検査,胸部X線撮影,気道可逆性検査を含む呼吸機能検査が必須である.

◎可逆性の気流制限に関しては「可逆性の有無」と「気流制限」の2つの観点から評価する.

◎起座呼吸を認める場合は中発作以上,歩行不能や会話困難を認める場合は大発作以上と考え,速やかに治療を開始する.

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Point

◎呼吸器症状に乏しくても,喫煙歴やそれに相当する危険因子があり,かつ40歳以上の場合には,積極的にCOPDを疑う.

◎労作時呼吸困難や慢性的な喀痰,咳嗽や喘鳴を訴える,あるいはこれらの呼吸器症状とともに身体活動性が低下しているときにはCOPDを疑う.

◎上気道炎または肺炎を含む下気道炎を反復し,来院あるいは入院する場合にはCOPDを疑う.

◎胸部X線で肺の過膨張あるいは胸部CTで低吸収領域がある場合にはCOPDを疑う.

◎ただし,上記のいずれの場合でも,症状が類似する疾患や,気流閉塞をきたす他疾患を除外する必要がある.

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Point

◎気管支喘息,気道型COPDの主な肉眼的変化は壁肥厚である.

◎気管支喘息の胸部単純X線では,肺野の過膨張と気管支壁肥厚が認められる.

◎気管支喘息のCTでは,気管支壁肥厚,気管支拡張,粘液栓,小葉中心性粒状影,エアトラッピング,浸潤影などが認められる.

◎両者の鑑別においては,臨床所見による診断を行ったうえで,所見と整合性があるかという観点で画像を利用する姿勢が正しい.

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Point

◎気道可逆性試験でFEV1.0が400mL以上改善する場合は喘息と考えられるが,可逆性に乏しいリモデリングのある喘息とCOPDの鑑別は難しい.

◎DLCO,DLCO/VAが80%未満となるような肺拡散障害はCOPDの特徴であるが,障害の程度は気道病変でなく気腫性病変に相関する.

◎末梢気道病変優位型のCOPDやACOでは,肺拡散障害は軽度にとどまる.

◎末梢気道病変を反映する⊿N2,CV,CCの値から,喘息とCOPDを単純に鑑別することが難しい症例がある.

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Point

◎呼吸苦,息切れ,咳,喘鳴など,気管支喘息・COPDの急性増悪症状に類似した症状を呈する疾患は多岐にわたる.

◎上記症状を主訴とする代表疾患は気管支喘息,COPD,心不全,上気道狭窄,肺梗塞である.

気管支喘息・COPDの類縁疾患─どう鑑別し,対応するか

咳喘息 新実 彰男
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Point

◎咳喘息とは咳を唯一の症状とする喘息であり,慢性咳嗽の日本最多の原因疾患である.

◎咳は夜間から早朝に悪化しやすく,しばしば季節性を示す.約半数がアレルギー性鼻炎を合併する.

◎喘息と同様に気道の好酸球性炎症やリモデリングがみられる.約6割が何らかの抗原への感作(特異的IgE抗体陽性)を示す.

◎β2刺激薬の有効性確認で確定診断し,中用量以上の吸入ステロイド薬を中心に治療を開始して長期継続する.

◎治療抵抗性の患者では,吸入薬の種類変更,抗メディエーター薬の活用,しばしば合併する胃食道逆流症の治療追加を考慮する.

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Point

◎アトピー咳嗽は咳喘息とともに遷延性慢性乾性咳嗽をきたす最も頻度の高いアレルギー疾患の1つである.

◎アトピー咳嗽は咳喘息と異なり,メサコリンによる気管支平滑筋収縮に対する咳反応は亢進しないが,カプサイシン咳感受性が亢進する.

◎アトピー咳嗽は咳喘息と異なり,β2刺激薬やロイコトリエン受容体拮抗薬は無効であるが,ヒスタミンH1受容体拮抗薬は有効である.

◎アトピー咳嗽は咳喘息と異なり,喘息に移行しない.

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Point

◎びまん性汎細気管支炎は呼吸細気管支を中心とした慢性炎症性気道疾患であり,持続性の咳,痰,息切れを主症状とする.

◎わが国でその疾患概念が確立されたが,もっぱら東アジア人に好発する疾患である.

◎その成因として気道の防御機構やクリアランスに関わる遺伝的要因と後天的環境要因の関与が想定されている.

◎胸部画像では両肺に分布するびまん性小粒状陰影,過膨張,気管支拡張,気道壁肥厚などの所見が認められる.

◎かつて予後不良の疾患であったが,マクロライド薬少量投与により病態は制御可能であり,予後は劇的に改善された.

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Point

◎リンパ脈管筋腫症は,主に妊娠可能年齢の女性に発症する腫瘍性疾患である.

◎喫煙歴のない女性で,進行性の労作性呼吸困難や反復する気胸などがある場合,本疾患を疑う.

◎COPDや他の囊胞性疾患との鑑別には,高分解能CT画像が有用である.

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Point

◎ABPAは気道内に腐生したA. fumigatusに対する免疫炎症反応により喘息や肺浸潤を生じる疾患である.

◎標準的な治療に抵抗する喘息を含む慢性呼吸器疾患の症例を診た際には,ABPAを考慮する.

◎黄褐色の粘液栓子の喀出や胸部CTにおける中枢性気管支拡張の存在は本症の診断に有用である.

◎治療は全身ステロイドの投与が主体であるが,一部の症例では抗真菌薬の併用が有効である.

◎近年,真菌の関連した重症喘息の一病型としてSAFSという概念も注目されている.

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Point

◎好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)の90%は,重症喘息と好酸球性副鼻腔炎から発症する.

◎EGPAの診断には,ACR分類基準と厚生労働省の診断基準を用いる.

◎EGPAの最も強い予後不良因子(FFS)は心障害である.

◎治療はステロイド薬の全身投与で,重症例ではシクロホスファミドなどの免疫抑制剤を使用する.

◎EGPAの神経障害には免疫グロブリン製剤を使用する.

気管支喘息・COPDの慢性期コントロール

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Point

◎喘息,COPDの重要な治療薬は,吸入薬である.

◎吸入薬を処方する場合は,適切な吸入指導が重要である.

◎喘息では,新しい作用機序の抗体製剤により,喘息コントロールの改善が得られる可能性がある.

気管支喘息の慢性期治療 横山 彰仁
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Point

◎気管支喘息の慢性期治療の基本薬は吸入ステロイド薬(ICS)である.

◎近年はICSと長時間作用性β2刺激薬(LABA)の合剤が使われることが多い.

◎コントロール状態に基づいて治療薬の量や種類・組み合わせ(治療ステップ)を増減する.

◎長時間作用性抗コリン薬のソフトミスト製剤は,LABAの代替えあるいは追加薬として使用できる.

◎一般医では吸入薬の選択や吸入指導を個別に行い,アドヒアランスを向上させることが重要である.

難治性喘息への対応 浅野 浩一郎
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Point

◎難治性喘息は標準治療下でも,症状,増悪頻度,呼吸機能などの基準からコントロール不良と判定された喘息である.

◎難治性喘息の診断確定の前に,他疾患との鑑別,吸入手技・アドヒアランスの評価,難治化因子への対応が必須である.

◎難治性喘息には複数の表現型があり,①若年発症アレルギー型,②成人発症肥満型,③成人発症好酸球優位型,などが代表的である.

◎難治性喘息の治療には抗体医薬やbronchial thermoplastyなどがあるが,これらの治療を行う前に専門医へコンサルテーションすべきである.

COPD慢性期治療 桂田 直子 , 西村 善博
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Point

◎慢性期治療の目標は,症状の改善と増悪リスクの軽減である.

◎薬物治療では,LAMAが第一選択薬である.

◎LAMAあるいはLABA単剤で効果が不十分な場合,LABA/LAMA配合薬を用いる.

◎症状が強く増悪リスクの高い場合やアドヒアランスの向上を期待する場合,LABA/LAMA配合薬を最初から用いる.

気管支喘息・COPDの増悪への対応

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Point

◎喘息発作に対しては,個々の患者が医療機関を受診する前に実行できる対処法(アクションプラン)を書面で記載し渡しておく.

◎喘息発作の疑いで医療機関を受診した患者に対しては,①診断確定(他疾患の除外),②発作強度の判定,を速やかに行い,適切な薬物治療・非薬物治療を開始する.

◎入院診療の必要性に関しては,ハイリスクグループやガイドラインの入院適応を参考にすることが勧められる.

COPD増悪への対応 室 繁郎 , 高橋 珠紀
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Point

◎COPD増悪の原因の多くは気道感染であり,息切れ,咳嗽,喀痰,喘鳴の増加などを認め,安定期の治療の変更あるいは追加を要する状態を示す.

◎COPD増悪から肺炎は除外するが,実臨床では増悪と肺炎は合併していることが多い.

◎増悪治療の3本柱はABC(抗菌薬,気管支拡張薬,コルチコステロイド)である.

◎原因治療とともに,全身管理(循環動態,体液量,栄養)が重要である.

気管支喘息・COPDの非薬物治療

ワクチン 永井 英明
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Point

◎インフルエンザおよび肺炎球菌性肺炎は,気管支喘息およびCOPDの病状を悪化させる.

◎インフルエンザワクチンおよび肺炎球菌ワクチンはCOPD患者への接種が推奨されており,有効性が認められている.

◎インフルエンザワクチンおよび肺炎球菌ワクチンは気管支喘息患者への接種が推奨されているが,有効性を示すデータは不十分である.

◎卵アレルギーの人にもインフルエンザワクチンの接種は可能な場合が多い.

禁煙 吉井 千春
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Point

◎COPDは喫煙による代表的な疾患であり,原因の除去と症状軽減のため,禁煙は最も重要な治療である.

◎喫煙はニコチン依存症という薬物依存症であり,自力で禁煙できない場合には,禁煙外来での治療を勧める.

◎禁煙補助薬にはニコチン製剤とバレニクリンがあり,それぞれの特徴を考慮して治療法を選択する.

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Point

◎COPD患者の日常活動性は,死亡率,COPD増悪,健康関連QOL,呼吸困難,運動耐容能などに影響を及ぼしている.

◎COPD患者の日常活動性評価には,質問表,歩数計,加速度計などが用いられる.

◎COPD患者では早期から日常活動性の低下を認めるため,日常活動性向上に向けた取り組みが重要である.

◎日常活動性向上には,薬物療法,呼吸リハビリテーション,行動変容などが挙げられる.

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Point

◎気管支サーモプラスティは気管支に直接,高周波電流を流すことによって,気管支平滑筋を減少させる画期的な治療法である.

◎既存の治療法でコントロールできない難治性喘息患者で,気管支鏡検査が安全に行える患者が対象となる.

◎5年間にわたって重篤な喘息発作を抑制する効果が証明されているが,元々の気道炎症を改善させるわけではない.

◎現時点では再施行できない1度きりの治療法であるため,どういった患者に有効であり,いつ施行するのが最良であるかを,今後検討する必要がある.

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Point

◎肺容量減量手術に比べ低侵襲的な気管支鏡的肺容量減量術(BLVR)の臨床研究が進んでいる.

◎一方向弁によるBLVRで治療効果を得るためには,治療対象肺葉に向かう側副換気がない症例を選択し,気流を完全に遮断するよう一方向弁を留置することが必要である.

◎形状記憶型コイルによるBLVRは側副換気に影響を受けずに効果を得ることができるが,患者選択基準や有害事象などのさらなる検討が必要である.

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Point

◎COPDの肺移植適応基準には,1秒量に加え,全身機能や栄養状態も含まれる.

◎肺移植医への紹介は,肺移植適応となる前段階(55歳未満,HOT導入時)が望ましい.

◎日本のCOPDに対する肺移植はほとんどが脳死片肺移植で,その成績は良好である.

気管支喘息・COPDのコントロバシー

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Point

◎asthma・COPD overlap(ACO)は「慢性の気流閉塞を示し,喘息とCOPDのそれぞれの特徴を併せもつ疾患」と定義される.

◎ACOの患者は,喘息,COPDのみの患者に比べて,重症度が高く,予後が不良であるため,適切に診断し管理することが必要である.

◎ACOの治療においては喘息の治療を優先し,ICSを第一選択とすることが重要である.

◎ACOの気流閉塞の程度に応じて,LAMA,LABAまたはその両方をICSに追加する.

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Point

◎COPDの治療指針は呼吸機能によらず,症状の評価と増悪の頻度により分類される.

◎COPD治療におけるICSの位置づけは増悪をきたす例に対し,追加または変更で導入される.

◎COPDに対する治療で,ICS併用による肺炎の合併に注意する必要がある.

◎現行の治療で増悪や呼吸機能低下をきたす例,気管支喘息の特徴を有する例はICSの導入を検討する.

◎非専門医でもCOPDの存在を疑い,積極的に呼吸器専門医と連携を取っていくことが重要である.

連載 フィジカルクラブpresents これって○○サイン!?・10

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70代男性.来院数時間前より10回以上嘔吐を繰り返し,救急搬入された.腹痛はなく,右鼠径ヘルニアの手術以外は特に既往なし.

腹部を立位で観察すると…

連載 目でみるトレーニング

連載 Inpatient Clinical Reasoning 米国Hospitalistの事件簿・18

Hamster in a wheel 石山 貴章
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「いい加減,下がってきてもよい頃だと思うんだが…」

 いつまでたっても解熱しない患者を前に,湧き上がる不安を抑えきれない自分がいた….

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 関節リウマチの患者が前のドアから入ってくれば,医師は後ろのドアから逃げ出す,とは,かのオスラー博士のお言葉のひとつである.すなわち,関節リウマチの治療がいかに難しかったかを顕著にあらわす表現として,われわれリウマチ医のあいだではよく知られている.しかし,近年の薬物療法の進歩により,関節リウマチの予後は格段に改善した.正しく治療介入されれば,この疾患は6割以上が寛解導入可能であり,さらに寛解が維持されれば,副作用回避あるいは医療費軽減のために抗リウマチ薬の減量については中止することも可能とされている.このような医学の進歩の恩恵をわれわれ医療者が患者に提供するまず第一歩は,関節リウマチの正しい診断であることは言うまでもない.関節リウマチの診断,あるいは治療効果判定には,画像診断の技術が欠かせない.

 本書は,リウマチ画像診断学の本邦の第一人者,杉本英治博士と,その弟子にあたる神島 保博士が,これまでの経験と知識を駆使して,関節リウマチの診断のための基本知識をまとめたものである.関節リウマチを含めた関節炎の評価に必要な画像の基礎知識からはじまり,リウマチに関する画像診断学のA to Zが初学者からベテランまで幅広い読者を対象に記載されている.関節リウマチと鑑別が必要なリウマチ性疾患についても,詳細に画像所見の比較が記載されているため,画像診断の哲学だけではなく日常診療にすぐに対応する構成となっている.さらに,関節リウマチの臨床試験に必要な単純X線写真の画像評価方法であるシャープスコア変法,先進的な研究に応用されるMRIのラムリススコア,超音波評価法など,臨床研究の実践に有用な知識もふんだんに記載されている.これからリウマチ学を学ぼうとする者はもちろん,リウマチ学を極めようとするシニア層の先生方にもぜひご活用いただきたい書物である.

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 著者の山崎直仁先生は毎年開催される「循環器physical examination講習会」の主要メンバーである.彼のレクチャーはわかりやくす,またウィットに富んでおり,毎回参加者からの評価も非常に高い.その高評価の本質はしっかりした基本とその上に積み上げられた豊富な経験と知識に裏付けられた彼の実力である.いわば,毎日数千回に及ぶヒンズースクワットで鍛え上げられた足腰の上に百戦錬磨の実戦経験を積んだ本格派ストロングスタイルである.

 本書は内科臨床誌『medicina』の連載「診断力を上げる 循環器Physical Examinationのコツ」を再編成したもので各論は,基本編とも言える「1.循環器Physical Examinationのコツ」と,実践編の「2.症例から学ぶ 循環器疾患の診かた」の2部構成になっている.両編とも一つひとつの記載がしっかりしていてあいまいなところがなく初学者にもわかりやすい.

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 本書は,「がん患者の感染症」「臓器移植」「造血幹細胞移植」など免疫不全の病態を5つのSECTIONに分けて,それぞれに発症しやすい感染症を実際の症例を基に記載されている.我々は複雑な要因で生じる病態の異なる免疫不全の患者に対し,経験的に感染対策や診断,治療を行っている.本書のように,まず対象となる患者を,その免疫不全の病態別に考えることは極めて重要で,これだけ幅広く記載したものは他に例を見ない.

 単に免疫不全といっても単純ではない.血液疾患だけでも,主に好中球がなくなる急性白血病,好中球は維持されるが液性免疫が低下する多発性骨髄腫,また成人T細胞性白血病は後天性免疫不全症候群(AIDS)で減少するCD4陽性のTリンパ球の腫瘍化であるため,AIDSと似た易感染性を呈する.化学療法による影響もまた一様ではない.急性骨髄性白血病では骨髄抑制が前面に出るが,リンパ性白血病や悪性リンパ腫では,骨髄抑制だけでなく,リンパ球を破壊する薬剤が選択される.RituximabのようにCD20陽性Bリンパ球を長期間破壊する分子標的治療も広く行われ,感染対策をややこしくする.

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 小林弘明先生のご執筆による胸部画像診断の入門書『誰も教えてくれなかった胸部画像の見かた・考えかた』が刊行された.胸部単純X線写真に関する数多くの教科書が存在するが,本書はこれまでの他書とは異なる視点で記載されている.すなわち「画像の見えかたのメカニズム」から考える読影法が紹介されている.どうしてその陰影・線が見えるのか,反対に見えないかを解説しながら,陰影・線の写り方,見かたを習得し,1枚の画像からより多くの情報を取り出すことを目標としている.

 その目標を達成するために,本書には多くの工夫がなされている.まず,Introductionのところで,本書で使用されている最低限押さえておきたい画像ないしシェーマが紹介されており,特に重要なものは付録の「読影時必携!お役立ちシート」に掲載され,実際の画像を読影する際に有用である.CTの横断像やMPR画像が適切に配置されており,読者が胸部単純X線写真上の「陰影や線の成り立ちを考える」ことを容易にしている.また,さまざまな知識の習得と整理を目的として,たくさんのコラムが散りばめられている.本書には極めて多数の手術写真や病理標本,細胞診,組織像が掲載されているが,これらは,ほぼ全てが著者によって撮影されたものである.呼吸器外科医でありながら,画像診断から病理診断までを一人で手がけてこられた著者だからこそなし得た偉業であり,著者の豊富な知識と経験に基づいた完成度の高い専門書である.

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medicina
55巻1号 (2018年1月)
電子版ISSN:1882-1189 印刷版ISSN:0025-7699 医学書院

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