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関節リウマチの患者が前のドアから入ってくれば,医師は後ろのドアから逃げ出す,とは,かのオスラー博士のお言葉のひとつである.すなわち,関節リウマチの治療がいかに難しかったかを顕著にあらわす表現として,われわれリウマチ医のあいだではよく知られている.しかし,近年の薬物療法の進歩により,関節リウマチの予後は格段に改善した.正しく治療介入されれば,この疾患は6割以上が寛解導入可能であり,さらに寛解が維持されれば,副作用回避あるいは医療費軽減のために抗リウマチ薬の減量については中止することも可能とされている.このような医学の進歩の恩恵をわれわれ医療者が患者に提供するまず第一歩は,関節リウマチの正しい診断であることは言うまでもない.関節リウマチの診断,あるいは治療効果判定には,画像診断の技術が欠かせない.
本書は,リウマチ画像診断学の本邦の第一人者,杉本英治博士と,その弟子にあたる神島 保博士が,これまでの経験と知識を駆使して,関節リウマチの診断のための基本知識をまとめたものである.関節リウマチを含めた関節炎の評価に必要な画像の基礎知識からはじまり,リウマチに関する画像診断学のA to Zが初学者からベテランまで幅広い読者を対象に記載されている.関節リウマチと鑑別が必要なリウマチ性疾患についても,詳細に画像所見の比較が記載されているため,画像診断の哲学だけではなく日常診療にすぐに対応する構成となっている.さらに,関節リウマチの臨床試験に必要な単純X線写真の画像評価方法であるシャープスコア変法,先進的な研究に応用されるMRIのラムリススコア,超音波評価法など,臨床研究の実践に有用な知識もふんだんに記載されている.これからリウマチ学を学ぼうとする者はもちろん,リウマチ学を極めようとするシニア層の先生方にもぜひご活用いただきたい書物である.
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