書評
—Pranatharthi H. Chandrasekar 編 青柳 有紀,兒子 真之 監訳—チャンドラセカール—移植・免疫不全者の感染症
谷口 修一
1
1虎の門病院血液内科
pp.97
発行日 2018年1月10日
Published Date 2018/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402225296
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本書は,「がん患者の感染症」「臓器移植」「造血幹細胞移植」など免疫不全の病態を5つのSECTIONに分けて,それぞれに発症しやすい感染症を実際の症例を基に記載されている.我々は複雑な要因で生じる病態の異なる免疫不全の患者に対し,経験的に感染対策や診断,治療を行っている.本書のように,まず対象となる患者を,その免疫不全の病態別に考えることは極めて重要で,これだけ幅広く記載したものは他に例を見ない.
単に免疫不全といっても単純ではない.血液疾患だけでも,主に好中球がなくなる急性白血病,好中球は維持されるが液性免疫が低下する多発性骨髄腫,また成人T細胞性白血病は後天性免疫不全症候群(AIDS)で減少するCD4陽性のTリンパ球の腫瘍化であるため,AIDSと似た易感染性を呈する.化学療法による影響もまた一様ではない.急性骨髄性白血病では骨髄抑制が前面に出るが,リンパ性白血病や悪性リンパ腫では,骨髄抑制だけでなく,リンパ球を破壊する薬剤が選択される.RituximabのようにCD20陽性Bリンパ球を長期間破壊する分子標的治療も広く行われ,感染対策をややこしくする.
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