medicina 53巻1号 (2016年1月)

特集 糖尿病治療薬Update—適正使用に向けて

長坂 昌一郎
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 2009年のDPP-4阻害薬の発売以来,糖尿病診療は大きな転換期にある.2010年にはメトホルミン製剤の増量が可能となり,またGLP-1受容体作動薬も上梓され,さらに2014年にはSGLT2阻害薬も発売された.多彩な選択肢は大きな魅力であり,糖尿病データマネジメント研究会(http://jddm.jp/)の報告でも,糖尿病患者の血糖コントロールが全般的に改善していることが窺える.一方,経口薬の選択や併用のあり方,GLP-1受容体作動薬やインスリン導入のタイミングなど,実臨床に混乱が生じていることも否めない.

 2010年にはHbA1cを取り入れた新しい糖尿病の診断基準が発表され,2013年には患者の個別性を重視した新しい治療目標(HbA1cの目標値)が発表された.また,2010年には持続血糖モニタリングが保険適用となり,HbA1cはあくまでも平均血糖の指標であり,個々の患者の血糖変動を必ずしも反映しないことも明らかになった.さらにここ数年,重症低血糖と心血管合併症との関連,糖尿病自体ないしその治療薬と癌との関連,糖尿病と認知症との関連など,糖尿病合併症を新しい視点から捉えたデータも蓄積されてきた.

特集の理解を深めるための30題

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長坂 今回は東京都府中市の基幹病院である都立多摩総合医療センターの辻野先生と,同市の府中よつやクリニックで第一線で糖尿病の診療をされている市川先生をお招きしています.お二人は実際に連携して診療されていますので,忌憚のないご意見を伺いたいと思います.

Overview

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ポイント

●血糖コントロールの主な指標として,空腹時血糖,食後血糖,HbA1cがあるが,合併症の予防・進展阻止を目標とするには,HbA1cが最も有用で,信頼度が高い指標である.

●血糖コントロールをHbA1c 7.0%未満で維持すると,1型,2型糖尿病ともに糖尿病性細小血管障害の発症・進展は明らかに抑制され,大血管障害に関しても長期間で評価すると抑制効果が認められる.

●低血糖のリスクを誘発せず血糖コントロールができるならば,より厳格にコントロール(例えばHbA1c 6.5%未満)されるべき患者層がある.罹病期間が短い,余命が長い,心血管疾患の既往がない,メトホルミン単独療法,などが含まれる.

●より緩やかに血糖コントロール(HbA1c 8.0%未満)されるべき患者層がある.重症低血糖の既往あり,余命が短い,進行した細小血管障害あり,重度の併存疾患あり,罹病期間が長い,などが含まれる.

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ポイント

●1型糖尿病か2型糖尿病かを診断することが重要であり,1型糖尿病の場合には最初からインスリン療法が必要である.

●2型糖尿病において膵β細胞が慢性的に高血糖にさらされると,β細胞機能はさらに低下する.この現象は高血糖毒性と呼ばれる.

●日本人の2型糖尿病症例の場合,インクレチン製剤(DPP-4阻害薬,GLP-1受容体作動薬)が適している場合が多く,また早期に使用することが重要である.

●SGLT2阻害薬は,副作用に注意し適正に使用することが重要であるが,高血糖毒性を解除させる手段としてはきわめて有用である.

経口血糖降下薬の特性と注意点

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ポイント

●インスリン分泌が低下していると思われるやせ型の2型糖尿病患者に適応がある.高齢者は腎機能が低下していることが多いので避ける.

●空腹時CPRが0.6ng/mL未満であればインスリン療法の適応である.

●少量(グリメピリド0.5〜1.0mg/日か,グリクラジド20〜40mg/日)から開始する.効果不十分な場合,増量よりも多剤併用が望ましい.

●インスリン療法と併用した場合,コントロールが改善すれば,最初に減量中止すべきである.

●DPP-4阻害薬やSGLT2阻害薬を追加する場合は,必ずSU薬は減量すべきである.

●グリニド系薬剤との併用は,保険適用もなく,効果もないため行わないこと.

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ポイント

●KATP/SU受容体は膵β細胞,心筋細胞,骨格筋および血管平滑筋細胞に存在する.インスリン分泌促進薬の種類によってその特徴も異なる.

●心血管イベント既往のある症例において,インスリン分泌促進薬は予後を悪化させる可能性がある.

●薬物代謝酵素を考え,併用薬に注意する必要がある.

αグルコシダーゼ阻害薬 成田 琢磨
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ポイント

●αグルコシダーゼ阻害薬は小腸粘膜で二糖類分解酵素を阻害し,糖吸収を遅延させる.また,食後血糖上昇を抑制し,インスリン分泌を抑制する.

●腹部手術後などイレウスが懸念される症例や,肝硬変など重度の肝障害のある症例では,慎重に投与を検討する.

●GLP-1分泌を増幅し,GIP分泌を抑制する.

●大血管障害抑制や2型糖尿病発症予防にもエビデンスがある.

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ポイント

●ビグアナイド薬は肝糖産生抑制,骨格筋糖取り込み促進などにより,血糖降下作用を発揮する.

●ビグアナイド薬は2型糖尿病の初回治療の第一選択薬となりうる.

●用量依存性に血糖降下作用は増強し,肥満の有無にかかわらず有効である.

●適切に使用すれば,乳酸アシドーシスの危険性は低い.

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ポイント

●チアゾリジン薬は,脂肪細胞の分化促進を介してインスリン抵抗性を改善させる.

●血糖改善効果の発現は緩やかであるが,長期間にわたりHbA1cの改善が維持される.

●抗動脈硬化作用を有しており,心血管疾患予防効果が期待される.

●使用にあたり,体重増加,浮腫,骨折,膀胱癌などにつき注意が必要である.

DPP-4阻害薬 北村 忠弘
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ポイント

●DPP-4阻害薬による抗糖尿病作用は,主にGLP-1とGIPを介している.

●GLP-1はβ細胞において,PKAとEpac2を介してインスリン分泌を促進する.

●GLP-1のα細胞におけるグルカゴン抑制機序はいまだ不明な点が多い.

●DPP-4阻害薬にはインスリン抵抗性改善作用もある.

●8種類のDPP-4阻害薬は特性に違いがある(表1).

●DPP-4阻害薬の心血管イベントに対する非劣性(安全性)が証明された.

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ポイント

●健常人では糸球体で濾過されたグルコースは,近位尿細管のSGLT2およびSGLT1ですべてが再吸収される.

●SGLT2阻害薬はグルコースの尿細管再吸収を阻害することで血糖降下作用を発揮する.

●SGLT2阻害薬はインスリン分泌を介さず,またSGLT1による代償機構が働くため,単剤では低血糖を生じにくい.

●SGLT2阻害薬は糸球体過剰濾過を是正し,腎症進展を抑制する可能性がある.

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ポイント

●SGLT2阻害薬に最適な患者像は,インスリン分泌が保たれており,比較的年齢が若く,合併症が進んでいない肥満糖尿病患者である.

●高齢者,ADL低下,インスリン分泌低下,やせ,糖尿病治療薬の多剤併用,尿路感染症の既往,合併症の進行例,アドヒアランス不良の患者への投与は原則避ける.

●投与時には脱水予防のための飲水励行,シックデイ時の休薬の指導を行う.

●SGLT2阻害薬の治療効果を十分に得るためには,薬剤開始後も食事・運動療法を継続することが重要である.

2型糖尿病治療 【第一選択薬と併用療法】

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ポイント

●ビグアナイド薬(メトホルミン)は,大血管症リスク低下が実証されており,第一選択薬として強く推奨される.

●SU薬・グリニド系薬は大血管症リスクを低下させる可能性が示されている.

●DPP-4阻害薬,チアゾリジン薬,α-グルコシダーゼ阻害薬はRCTにおいて,大血管症リスクの有意な低下を認めていない.

●SGLT2阻害薬による大血管症リスク低下も期待されている.

●細小血管症リスク低下に関しては,どの薬物を使用しても同様の効果が見込まれる.

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ポイント

●Initial combinationは,β細胞機能保護の観点からも有用であると考えられる.

●β細胞機能保護作用のあるインクレチン関連薬を軸にinitial combinationを考慮する.

●低血糖のリスクを避けるため,個々の患者の背景を考慮しadd-onまたはinitial combinationを選択する.

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ポイント

●消化器症状が問題とならない限りは,まずはメトホルミンを1,000〜1,500mgまで増量してから,併用薬を考えるべきである.

●メトホルミンの併用薬の候補は,SU薬,DPP-4阻害薬,SGLT2阻害薬,チアゾリジン薬,αグルコシダーゼ阻害薬である.

●メトホルミンを基軸として治療を開始し,個々人の病態ならびにライフスタイルに合わせ,適切な併用薬を選択することが肝要である.

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ポイント

●DPP-4阻害薬と他剤の併用の際には,患者個々の病態を考慮して選択する必要がある.

●DPP-4阻害薬の長所を生かすためには,併用するスルホニル尿素薬は必要最少量とする.

●スルホニル尿素薬,グリニド薬,インスリン以外との併用であれば低血糖のリスクは非常に低い.

2型糖尿病治療 【経口血糖降下薬で効果不十分例への対応】

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ポイント

●内因性インスリン分泌が低下すると経口血糖降下薬無効例となる.

●HOMA-β,CPIなどから内因性インスリン分泌を評価し,経口血糖降下薬無効例を見極める.

●HOMA-β,CPIなどの内因性インスリン分泌評価指標は血糖値や腎機能などの影響を受けるため,注意が必要である.

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ポイント

●GLP-1受容体作動薬は低血糖リスクが低く,体重減少が期待できるなどの利点を有する.

●インスリン分泌能がある程度低下した症例では,インスリンと併用することでGLP-1受容体作動薬の効果が期待できる.

●インスリンとGLP-1受容体作動薬の併用療法では,低血糖リスクの低下や体重増加の抑制が期待できる.

●長時間作用型と短時間作用型のGLP-1受容体作動薬では,血糖改善効果をきたす作用機序が異なる.

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ポイント

●食事・運動療法や経口血糖降下薬内服にもかかわらず血糖コントロール目標に到達しない場合,インスリン療法の導入を検討する.

●基礎インスリンによるインスリン導入は,追加インスリンに比べて血糖測定・インスリン注射回数が少なく簡便で,体重増加や低血糖リスクも小さい.

●追加インスリンは食後高血糖のコントロールに優れ,内因性インスリン分泌が保たれている症例では空腹時血糖をも制御可能であり,質の高い血糖コントロールに寄与する.

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ポイント

●糖尿病状態ではα細胞からのグルカゴン分泌の亢進により,肝糖産生が亢進し空腹時高血糖となる.

●基礎インスリンから開始する目的は,空腹時血糖値を下げ膵β細胞から内因性インスリン分泌を回復させることである.

●内因性インスリン分泌を回復させるためには,低血糖なく空腹時血糖値を100mg/dLまで(高齢者や合併症症例では120mg/dL)改善する必要がある.

●高齢者,進行した糖尿病網膜症や腎症,不安定な大血管症を有する症例では,目標空腹時血糖値を120mg/dLとする.

●基礎インスリンからの開始では,インスリン補充を行いながら食事運動療法のself-efficacy(自己効力感)を構築できる.

●基礎インスリンから開始し食後血糖値をモニターすることが,次の追加治療の必要性についてのインフォームドコンセントとなる.

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ポイント

●食後高血糖から始まる2型糖尿病の病態に対して,追加インスリンから導入する治療は適っている.

●追加インスリン分泌不十分例,ステロイド糖尿病,肝性糖尿病,周術期など短時間で血糖管理を要する場合などが良い適応である.

●追加インスリン導入に際して,患者に対して低血糖と体重増加に対する配慮が必要となる.

●膵β細胞機能の回復には,超速効型インスリン3回注射+DPP-4阻害薬内服の組み合わせが有効である.

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ポイント

●インスリン強化療法でブドウ糖毒性が解除され,インスリン離脱することも多い.

●責任インスリンの考え方でインスリン量を調整し,補正インスリンを追加する.

●スライディングスケールは医原性高血糖・低血糖を招く可能性があり,血糖が凸凹に変動する.

●絶食時はインスリン静脈内持続投与や補液内へのインスリン混注を使用する.

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ポイント

●現在測定することのできる膵島関連自己抗体にはGAD抗体,IA-2抗体,IAA,ICA,ZnT8抗体などがある.

●1型糖尿病を疑う症例では,発症早期に複数の膵島関連自己抗体を組み合わせて測定するのが望ましい.

●発症時には2型糖尿病の病態を示す症例においても,緩徐進行1型糖尿病との鑑別のため,発症早期の段階でGAD抗体を測定することが望ましい.

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ポイント

●GAD抗体陽性であっても,全例がインスリン依存状態に進行するわけではない.

●GAD抗体陽性の場合,抗体価にかかわらず,年齢が若い例,あるいはほかの1型糖尿病関連の自己抗体が陽性である場合には,進行が速い.

●GAD抗体陽性インスリン非依存状態の症例に対しては,早期のインスリン導入が有用と考えられるが,全例に使用したほうがよいとは証明されていない.

●GAD抗体陽性インスリン非依存状態の症例に対しては,SU薬の使用は避けるべきであるが,ビグアナイド薬やDPP-4阻害薬については,有用である可能性がある.

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ポイント

●MDIは,インスリンを確実に投与できるという利点を有するが,暁現象への対応が難しく,低血糖時にインスリンを減量できない欠点がある.

●CSIIには,きわめて柔軟にインスリン投与量調節できる利点があるが,MDIより医療費が高額で,注入回路の閉塞・液漏れなどによりケトアシドーシスを起こすリスクを伴う欠点がある.

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ポイント

●CGMには後ろ向きのprofessional CGMとリアルタイムCGM(personal CGM)がある.

●リアルタイムCGMは,CSIIおよびMDI(頻回インスリン療法)においてHbA1c改善効果が高い.

●リアルタイムCGMと持続皮下インスリン注入療法(CSII)の併用をSAPという.

●リアルタイムCGMでは,重症低血糖の改善効果は望めない.

患者管理のポイント—質の高い糖尿病治療に向けて

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ポイント

●高齢者糖尿病の治療目的は,QOLの維持・向上を目指すことにある.

●高齢者は個人差が大きいため,各人に応じた治療方針を立てる必要がある.

●低血糖を起こしにくく,簡便で安全性の高い薬剤の選択・調整が必要である.

重症低血糖を避けるコツ 辻本 哲郎
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ポイント

●低血糖,特に重症低血糖は心血管リスクや死亡リスクを上昇させる.

●重症低血糖時には1型と2型糖尿病で異なる状態を呈し,2型糖尿病においては著明な心血管ストレスを惹起する可能性がある.

●低血糖発症に関連する代表的なリスクファクターとしては,インスリンやSU薬の使用,高齢,認知症,腎不全,肝硬変,アルコール多飲などがある.

●「患者に合わせた治療の個別化」を提供することが,重症低血糖を避ける最も重要なポイントである.

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ポイント

●「健康寿命を延長する」という真の糖尿病治療の目標を達成するために,糖尿病治療薬を使用することを,患者が納得できるように対話する.

●服薬アドヒアランスを良くするための解決策を,患者とともに考える.

●シックデイや災害時の対策など,緊急事態への対処方法を具体的に指導しておく.

合併症治療の進歩

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ポイント

●厳格な血糖コントロールは,糖尿病性腎症の発症や進展を抑制する.

●血糖の正常化や,より厳格な血糖コントロールによって腎症の寛解も認められる.

●どの糖尿病治療薬が腎症の寛解に有用であるかは明らかになっていない.

●血糖のみならず,血圧コントロールや生活習慣是正を含めた集約的治療が求められる.

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ポイント

●糖尿病性神経障害の初期は陽性症状(しびれ,痛み)が目立ち,進行すると陰性症状(感覚低下)が主体となる.

●エパルレスタットは,陽性症状が主体の病期に血糖コントロールを行いながら投与する.

●疼痛治療はプレガバリン,デュロキセチン,三環系抗うつ薬を第一選択薬とする.

●第一選択薬は初期用量で開始し,効果と副作用を評価しながら常用量に漸増する.

●常用量で効果不十分な場合,最高用量とするか,忍容性を考慮しほかの薬剤を併用する.

糖尿病治療薬のトピックス

糖尿病治療薬と癌 草鹿 育代
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ポイント

●糖尿病患者では,癌罹患リスクが高まることが報告されている.

●糖尿病治療薬と癌罹患リスクの関連は,いまだ十分なエビデンスがない.

●ピオグリタゾンは添付文書に従って使用することが望まれる.

糖尿病治療薬と骨 山本 昌弘
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ポイント

●チアゾリジン薬は,骨密度が低下し,女性において骨折リスクの増加がある.

●インクレチン薬の骨代謝に対する影響は,一貫した成績がなく,結論が得られていない.

●SGLT2阻害薬の骨代謝に対する悪影響は確認されていない.

●少なくとも脆弱性骨折を有する患者では,血糖降下薬の選択において骨代謝への影響を考慮する必要がある

連載 異常所見を探せ! 救急CT読影講座・13

“間質”を克服しよう 石田 尚利
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80代の男性.受診前日より労作時呼吸苦や喘鳴を認め,自宅で様子をみていた.しかし,受診当日の夕方に動けなくなり,救急外来を受診.問診にて以前にも同様の症状で他院入院歴のあることが判明.血圧166/97mmHg,脈拍88/分,SpO2 91%(室内気),体温37.0℃.胸部単純X線写真で肺野異常陰影を認めたため,さらなる精査にて胸部単純CTを施行.

連載 Choosing Wisely Japan その検査・治療,本当に必要ですか?・4

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 Choosing Wiselyは,診断や治療の選択において,エビデンスに基づいた医師・患者の対話を促すための世界的キャンペーン活動である.具体的な活動として,各国の臨床医学系メジャー学会は,一般の人々に向けて推奨リストを挙げている.今回はCanadian Rheumatology Associationの推奨を表1に示す1)

 では,今回のケースをみてみよう.

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77歳の男性.受診4日前より顎の痛み,咽頭違和感を自覚し近医救急外来を受診した.発熱,呼吸器症状,消化器症状などは認めなかった.血圧が160/80mmHgと高値であるものの,全身状態良好で身体所見に大きな異常所見を認めず,バイタルも安定しているので,顎関節症の疑いにて非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)を処方され帰宅となった.しかし,その後も症状は改善せず,顎の痛みのためか,口を開くこと,話すことも難しくなり,頸部や背部にも痛みを認め,当院救急外来を受診した.

連載 診断力を上げる 循環器Physical Examinationのコツ・10

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心雑音とは

 心音は持続の短い瞬間的な音であるのに対し,心雑音は各心音の間に存在する比較的持続の長い音である.

連載 目でみるトレーニング

連載 いま知りたい 肺高血圧症・4

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CTEPHの病態

 慢性血栓塞栓性肺高血圧症(chronic thrombo-embolic pulmonary hypertension:CTEPH)とは,器質化した血栓により広範囲の肺動脈が慢性的に狭窄・閉塞し,肺高血圧症[安静仰臥位での平均肺動脈圧(mean pulmonary arterial pressure:mPAP)が25 mmHg以上]を呈した病態である.慢性の定義としては,一般に6カ月以上にわたり,肺血流分布ならびに肺循環動態の異常が大きく変化しない状態とされている.適切な治療がなされなかった場合,右心不全から死に至る予後不良な疾患であり,Riedelら1)の1982年の報告によると,mPAPが30mmHg未満もしくは肺血管抵抗(pulmonary vascular resistance:PVR)が300 dynes・sec・cm-5未満の症例では予後良好だが,mPAPが30mmHg,40mmHg,50mmHgと上昇するにつれて,5年生存率は約50%,30%,10%へ低下するとされている.

連載 あたらしいリウマチ・膠原病診療の話・8

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 医療のどのような分野においても,「この疾患・病態に『ステロイド』はどうだろうか?」という疑問は,医師の念頭を去らない.それは,私たちが診療する疾患の臨床症状は,かなりの部分が「炎症」から形成されているからであり,ステロイドが強力な抗炎症作用を有するからである.

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HIVの標準診療のやり方がすべて網羅されている本

 治療薬の開発のおかげで,HIV感染症はいまやコントロール可能な併存疾患となった.しかも,新規感染患者は増加してきているので,感染者全体の数はどんどん増えてきている.もはや,感染症専門医のみがHIV感染患者を診療するというのではなく,総合系の医師もHIV診療に関与する必要性が出てきている.実際,総合系の医師は,急性HIV感染の診断,ニューモシスチス肺炎などの日和見感染症の患者の治療を行うことが多かった.今後は,ART療法の導入に加え,HIV感染の合併症治療,治療薬の副作用などの診断と管理などを,総合系の医師も行う必要性が出てきている.

 そこで必要となるのは,標準診療を行うためのエッセンスが記載されているリソースであろう.それがこの本の役割である.これが手元にあれば,HIVの標準診療がただちに実施できる.検査について,適応,実施頻度,結果の解釈,耐性検査についての迷いを解決できる知識ベース.治療についても,第一選択薬の組み合わせと具体的な用法・用量,そして通院フォローの頻度,副作用や治療の失敗への対策など.また,他の薬剤内服中の患者についての薬剤間相互作用の注意点,曝露前後の予防,妊婦での感染対策などもすぐに調べることができる.もちろん,急性HIV感染の診断アプローチに加え,さまざまな日和見感染症の治療法も表に整理されており,すぐに見つけ出すことができる.

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 小室一成先生が監修され,小室先生に信頼を受けている3人の優秀な医師が,この新しい本を執筆している.

 この本の最大の特徴は,画像を印刷された紙の上でだけ見るのではなく,またCDやDVDで見るのではなく,パソコンおよびモバイル端末の指定のブラウザで画像(動画)を観察できる.今までのようにCDやDVDを持ち歩かないでも心エコー画像が観察される.

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 薬物治療は現代医療の基幹をなしていますが,多様なメカニズムをもつ新薬が続々と登場するとともに,また,高齢化に伴う薬物治療の複雑化により,有効性とともに副作用(有害反応)のリスクも明らかに高まっています.こうした薬物治療の最前線で,安全で確実な薬物治療を実践するためには,膨大な医薬品情報の効率的な利用と高度な判断力を要します.従来,副作用が疑われる場合は,個々の薬品の添付文書の記載から副作用を確認するとともに,その治療・対応は治療マニュアルに当たらなければなりませんでした.本書は,目前の患者に副作用が疑われた場合,その症状や検査値から原因薬物を推測し,適切な対応を行うという,著者の言う「逆引きする」実践を重視した書となっています.

 本書では,多彩な副作用を,「アレルギー機序または偽アレルギー機序」「内分泌・代謝」「腎機能・電解質」「血液」「循環器」「上気道・呼吸器」「消化器」「眼科領域」「耳鼻科領域」「筋・骨格」「神経」「精神科領域」「その他の分類できない副作用(全身性を含む)」に分類して章立てし,112にものぼる副作用について解説しています.

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medicina
53巻1号 (2016年1月)
電子版ISSN:1882-1189 印刷版ISSN:0025-7699 医学書院

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