臨床皮膚科 75巻4号 (2021年4月)

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要約 60歳,男性.ワルファリンカリウム内服中.初診1か月前に左足外顆の皮下腫瘤を自覚した.初診2週間前に近医を受診し,ガングリオン疑いで穿刺された.その後,皮下腫瘤は増大傾向となり,疼痛も出現したため前医整形外科を受診した.MRIにて陳旧性血腫を認め,当科紹介受診した.初診時,左足外顆に径5cm大,びらんを伴う暗紫紅色の皮下腫瘤を認め,発赤と腫脹を伴っていた.造影CTで活動性出血を示唆する所見なく,皮下血腫の二次感染を疑い抗生剤投与と圧迫療法を開始したが増悪傾向で第7病日に局所麻酔下で血腫除去術を施行した.術中,深部動脈からの活動性出血を認め結紮処理した.脂肪組織と筋膜の間に血腫を生じており,自験例をdeep dissecting hematomaと診断した.血腫が出血源を圧迫していたため出血が持続的ながら緩徐であり,画像検査で活動性出血を同定できなかったと考えられた.臨床的に血腫の拡大を疑う場合は,画像所見にかかわらず早期の外科的治療介入が重要と考えた.

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要約 12歳,男児.アトピー性皮膚炎と気管支喘息をもち,これまでクルミとカシューナッツにアレルギー症状を起こしている.クルミ,ぺカン,カシューナッツ,ピスタチオ,ピーナッツ,アーモンド,マカダミアナッツのプリック・プリックテストはすべて陰性,特異的IgE抗体はクルミとJug r1,カシューナッツとAna o3が陽性であり,クルミとカシューナッツアレルギーと診断した.Jug r1とAna o3は症状誘発に強く関連するアレルゲンコンポーネントであり,粗抗原の特異的IgE抗体に比べ感度が高い.近年ナッツアレルギーが増加しクルミ,カシューナッツ,アーモンドの順番であるが,報告は小児科,アレルギー科からが多く,皮膚科領域からは少なくクルミアレルギーの報告も5例のみである.自験例は幼少から手に湿疹病変を繰り返し,経皮感作したと考えた.他のナッツ類のアレルギーについても,クルミのJug r1,カシューナッツのAna o3と同様の検査が可能になり,皮膚科医でも診断が容易になることに期待する.

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要約 64歳,女性.イオパミドール(イオパミロン®370)を用いた造影CT施行後翌日より全身に紅斑が出現し,5日後には40℃の発熱を認めたため当科受診となった.当科受診時,軀幹・四肢に浸潤を伴う米粒大の紅斑が散在し,腰部や大腿には非毛包性小膿疱を伴っていた.細菌・真菌培養は陰性だった.組織では角層下膿疱と表皮内に海綿状態を伴う好中球浸潤があり,真皮上層は浮腫状で,リンパ球・組織球を主体とし好酸球を混じる炎症細胞浸潤を認めた.イオパミドールのDLSTは陰性だったがパッチテストは陽性であり,イオパミドールによる急性汎発性発疹性膿疱症と診断し,常用薬継続のまま補液とステロイド外用にて軽快した.またイオパミドール以外の非イオン性ヨード造影剤はいずれもパッチテスト陽性で,イオン性ヨード造影剤はすべてパッチテスト陰性であった.ヨード造影剤による重症薬疹の症例では,被疑薬の同定だけでなく,使用可能な造影剤検索も行うことが望ましい.

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要約 49歳,女性.10年前から胸部に皮疹を自覚し,1年前から月経周期に伴い出血するようになったため当科を受診した.初診時は月経中であり,左胸部に紫紅色丘疹を認めたが,月経終了に伴い縮小,平坦化した.異所性子宮内膜症を疑い,皮疹が最小化した時期に切除した.病理組織学的所見では子宮内膜組織は認めず,真皮浅層に,内皮細胞に異型性のない拡張した毛細血管の増生を認めたため,毛細血管奇形と診断した.月経周期に伴い出血を繰り返したため性ホルモンの関与を考え,免疫組織化学的検討を行った.エストロゲン受容体は陰性でプロゲステロン受容体は微弱陽性であった.月経周期に伴い変化することが知られている皮膚疾患として異所性子宮内膜症の報告が多いが,過去にも自験例と同様の変化を示した血管奇形の報告があり鑑別すべき疾患の1つとして重要と思われた.

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要約 80歳,男性.当科初診の3年前から右上腕に小潰瘍・丘疹を自覚していたが,放置していた.初診1か月前に健康診断で肺野の結節影を指摘された.その後,精査のため受診した近医内科で右腋窩リンパ節の腫大も確認されたため,当科を紹介され受診した.初診時,右上腕に周堤状に隆起する硬結を伴った11×13cm大の皮膚潰瘍局面がみられた.皮膚生検で基底細胞癌(basal cell carcinoma:BCC)の所見が得られた.右上腕のMRI検査では上腕骨骨膜への浸潤が疑われ,PET-CT検査では多発肺転移,右胸膜播種,右腋窩・鎖骨上窩リンパ節転移を認めた.以上より,基底細胞癌pT3N2M1 stage Ⅳと診断し,ドセタキセル療法,および右上腕原発巣・右腋窩リンパ節転移部への放射線療法による化学放射線療法を開始した.その後はドセタキセル単剤療法を継続したが,転移性病変は増大傾向を示し,初診から45か月後に死亡した.BCCの転移症例は稀で既報告例も少なく,集学的治療に際しては十分な検討が必要である.

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要約 66歳,女性.既往歴なし.当科初診4日前より臍周囲に熱感を伴う淡い発赤が出現した.近医皮膚科にて抗菌薬治療を開始されたが改善に乏しく,当科紹介受診となった.初診時,臍周囲に淡い発赤を認め,熱感を伴っていた.造影CT検査で臍部に多房性皮下腫瘤を認め,周囲脂肪織の濃度上昇を伴った.また,腹腔内には子宮と連続する6cm大の腫瘤を認め,当院産婦人科にて行われた経腟針生検により卵巣漿液性腺癌と診断された.臍部皮下腫瘤の病理組織では核異型を有する類円形細胞がリンパ管内に集簇しており,卵巣癌臍転移(Sister Mary Joseph's nodule)と診断した.化学療法開始後,腹部発赤は速やかに色素沈着化し,原発巣・転移巣ともに縮小した.根治的切除術と術後化学療法を行い,診断後1年の時点で再発・転移所見を認めていない.過去の報告でSister Mary Joseph's noduleは臍部腫瘤を契機に診断されているが,腹部丹毒様症状を診た際も鑑別に挙げ,臍部を詳細に診察すべきである.

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要約 症例1:60歳,女性.左背部の悪性黒色腫Stage ⅡB切除後半年で肺腺癌が見つかり切除した.症例2:77歳,男性.左前腕の悪性黒色腫Stage ⅡB切除後3年で肺腺癌が見つかり切除した.症例3:74歳,女性.2年前より縦隔小細胞癌で治療中,左足踵の黒色結節が増大し悪性黒色腫の診断で切除した.センチネルリンパ節転移を認めStage ⅢBであった.胸部CTで肺癌を疑う結節影を認めた場合,充実型か部分充実型か,すりガラス型かで原発性か転移性かを推測できるが,病理検査による確定診断が必要である.近年p53遺伝子やPD-1リガンドなど多臓器に共通する癌の発症,増殖因子が解析され,重複癌が起こりうることが示された.また,高齢化により皮膚悪性腫瘍の他臓器癌合併が増加している.自験例でもフォロー中に肺癌の合併を発見しえた症例では早期の診断や治療を行うことができた.悪性黒色腫の経過観察中,発見した他臓器の腫瘍病変が原発性か転移性かを正確に判断することで適切な治療へ結びつけることができる.

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要約 症例1:39歳,男性.15年前から両腋窩などに排膿を伴った瘻孔の出現と消退を繰り返していた.化膿性汗腺炎(HS)と診断した.international hidradenitis suppurativa severity score system(IHS4)重症度分類では重症と判断された.来院時に蜂窩織炎を合併していたため抗菌薬を投与し,感染徴候が軽快した時点でアダリムマブ(ADA)を開始した.ADA投与後約4か月目で略治した.症例2:58歳,男性.2年前から左臀部に排膿を伴った瘻孔を認めた.IHS4は中等症であった.ADAとロキシスロマイシン(RXM)との併用を開始し,排膿は消失した.その後,RXMを休薬すると排膿が再発したため,RXMとの併用を再開し,治療約5か月目で略治した.従来のHS治療は,抗菌薬投与や外科的治療であった.自験例のように,IHS4は病勢を正確に評価でき,ADA単剤またはADAに抗菌薬などの従来の治療を併用することで,HS治療成績の向上が期待できる.一方,ADA治療で生じる医療経済上の課題について考える必要がある.

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要約 病変が肛門周囲に及ぶ臀部慢性膿皮症の3症例を経験した.3例とも造影MRIおよび外科医による肛門鏡を用いた診察で痔瘻の所見はなく,1期目にストーマ造設,デブリードマンおよび戻し植皮を行い,2期目に残存した欠損部に大腿をドナーとした分層植皮を行った.経過中,戻し植皮を含め明らかな創部の感染徴候はみられなかった.ストーマ造設,閉鎖を含め計3回の手術で治療は完了した.肛門周囲を含む臀部の創は感染制御が困難であるが,デブリードマン時にストーマ造設術を行うことで感染制御が容易となった.また,戻し植皮の生着も良好であったため,正常皮膚からの採皮面積を減少させることができた.肛門周囲に病変が及ぶ重症例の術後感染制御には,他の排便コントロールに比べ一時的なストーマ造設が優れていると考える.

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要約 15歳,女性.基礎疾患なし.初診2か月前より右膝外側に紅斑が出現し,徐々に拡大して潰瘍化した.皮膚生検組織を小川培地で培養したところ17日後に白色のコロニーを形成し,DNA-DNAハイブリダイゼーション法でMycobacterium abscessusと同定された.ミノサイクリン塩酸塩(MINO)を内服し,4か月で濃褐色の色素沈着と軽度の硬結を残して瘢痕治癒した.難治性の皮膚潰瘍においては非結核性抗酸菌症の可能性を考慮し,組織の培養検査で菌種の同定が必要である.皮膚Mycobacterium abscessus感染症の標準的な治療法は確立されていないものの,治療が長期に及ぶため,耐性菌の出現を考慮し多剤併用療法が推奨されている.自験例ではMINO単剤内服で比較的短期で治癒したが,耐性菌の出現を考慮すると多剤併用療法が望ましく,使用薬剤の1つとしてMINOは効果があると考えられた.

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本論文は取り消しとなりました。同症例については、新たな論文として本誌75巻12号pp1025-1029に掲載されています。

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要約 81歳,男性.下咽頭癌に対して,左頸部郭清術,術後化学放射線治療が施行された.化学放射線治療終了の約1か月後,右上背部に水疱が出現し,徐々に右上肢に拡大,しびれも伴うようになったため,当科を紹介された.左上腕,体幹および両足関節に汎発疹を伴った右C5,C6領域の帯状疱疹と診断し入院の上,抗ウイルス薬の全身投与を開始した.入院後3日目に38度台の発熱と意識レベルの低下,項部硬直が出現した.髄液から水痘・帯状疱疹ウイルスDNAが検出され,水痘・帯状疱疹ウイルス髄膜炎の合併と考え,抗ウイルス薬を増量した.髄膜炎症状や皮疹は改善傾向であったが,右上肢の運動神経麻痺が出現した.退院後も運動神経麻痺と疼痛は残存し,疼痛コントロールやリハビリテーションを継続している.高齢,担癌患者,化学放射線療法は,いずれも帯状疱疹の重症化リスク因子となるため,合併症の有無を注意深く観察し,早期に治療介入することが重要である.

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要約 爪白癬に対しホスラブコナゾールの内服を開始した139例に対し内服前,内服4週間後,8週間後で血液検査を行い,AST,ALT,ALP,γ-GTP,LDHの異常値出現について検討を行った.来院しなくなった中断例は11例,副作用による中止例は22例で12週の内服継続率は76%と高かった.異常値出現はγ-GTP 45人(35.2%),AST 6人,ALT 11人,ALP 9人,LDH 0人で,γ-GTP上昇の半数以上が単独上昇,また添付文書に記載のある異常値出現率と比較してAST以外では高率であった.厚生省の医薬品等副作用の重篤度分類基準のグレード1が39人,グレード2が9人で合計48人,滝川らの薬剤性肝機能障害分類における肝機能障害に該当するのは18人であった.異常値出現時期は内服8週間後が最も多かった.厚生省,滝川らの基準のいずれでもγ-GTPは肝機能障害の項目に含まれないが,γ-GTPが正常上限の3倍以上,かつ他の値が正常の場合内服継続するかなど今後の議論が必要と考えた.

マイオピニオン

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1. はじめに

 メラノーマは,ここ数年で劇的に治療法が進歩した癌種の代表格でしょう.それは免疫チェックポイント阻害薬と分子標的治療薬の登場によるところが大きいわけですが,これらが世に出るまでには基礎研究や臨床研究に携わってきた数多の研究者や皮膚科医の努力があったことは申すまでもありません.私は,これらのお薬の開発に直接は関わっておりませんが,同じ時代にメラノーマの診療・研究をしてきた1人の皮膚科医・研究者として感じたことや,今後期待することを本コラムに述べさせていただきます.

連載 Clinical Exercise・164

考えられる疾患は何か? 大西 誉光
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症例

患 者:84歳,男性

主 訴:右下顎の結節

家族歴:特記すべきことなし.

既往歴:高血圧症,前立腺肥大症

現病歴:約2年前に口唇の右下方の下顎に自覚症状のない半米粒大の皮疹が出現し,徐々に増大するため受診した.

現 症:口唇の右下方の下顎に6×6×7mm大の淡紅色調を呈する光沢のある隆起性結節が存在していた.結節は境界明瞭で尖塔状に外方に突出し弾性硬に触知され,下床との可動性は良好であった.結節の頂部は白色調で透明感があり,基部の表面に拡張した血管が透見された(図1a, b).

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目次

欧文目次

文献紹介

書評

次号予告

あとがき 大山 学
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 「巨星墜つ」という言葉があります.著名人の訃報を耳にしてもその言葉を心から実感することはなかなかないのですが今回ばかりは違いました.とても悲しく,また残念なことですが,北海道大学大学院医学研究科皮膚科学分野 名誉教授 清水 宏先生が先日ご逝去されたのです.謹んで哀悼の意を表したいと思います.最近はご体調がすぐれないとのことを噂では伺っておりましたが,これまで何度も不死鳥のごとく復活されてきたお姿を拝見しており,先生ならどのような苦境であっても絶対乗り越えられると信じておりましたのでいまだに信じられない思いです.私にとって(そして多くの先生方にとって)「憧れの皮膚科医」であり続けた先生の訃報は,まさに耳を疑いたくなるものでした.

 私は清水先生が慶大皮膚科にご在籍されたうちの5年間,ちょうど私がフレッシュマンからオーベンであった時代にご指導いただきました.最初の英語論文をご指導くださったのも清水先生です.当初,邦文誌に投稿予定で書きはじめたものの,なかなか書き上げることができなかった私でした.「まだか」「まだか」と尻を叩かれるうちに,いつの間にやら「もういっそのこと英語で書きなさい」(正直,その理論は訳がわかりません.でもすっかり乗せられました.これぞShimizu流ともいえます)ということになり,結局はビギナーにしては立派すぎる英文誌に掲載されるまでご指導くださいました.先生が人をやる気にさせる天才的方法論を確立されていたことは間違いなく,私のような体験をされた先生方は数多くいらっしゃることでしょう.

基本情報

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臨床皮膚科
75巻4号 (2021年4月)
電子版ISSN:1882-1324 印刷版ISSN:0021-4973 医学書院

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